細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

2012年の最後の日

2012-12-31 12:34:00 | 職場のこと

2012年も最後の日となりました。今日は大晦日ですが、出勤しています。12/29~1/3は載荷など危険な実験作業は禁止で、もし行う場合は指導教員が立ち会うこと、というルールなので、私の指導学生たちが2件の載荷を実施するため、出勤しています。

ですが、年末年始の間にやるべき仕事が山積しており、奥さんの実家からの行き帰りの湘南新宿ラインでもたっぷり仕事ができますし、オフィス滞在中に複数の研究ミーティングも実施できるので、むしろ私にとっては好都合です。

今年も活動しまくった1年となりましたが、世の中も激動でした。毎年、自身のメンタル面のコントロールも含めて、そのときの私にできる全力に近い努力を重ねているので、なかなか実力を向上させていくことが容易ではなくなってきています。ですが、2012年は、これまでとは大きく異なる、新たな出会いが非常に多かった一年になりました。

鞆の浦のことなど何も知らなかったのに、4年生の赤間君を切り込み隊長に、鞆の浦の研究を行うことになりました。また、山口県のシステムを研究してきましたが、いよいよこのシステムで学んできたことを東北の復興道路の品質確保に応用する段階に至り、私自身もさらに鍛えられ始めました。熱血ドボ研の立ち上げも大きかったように思います。

活動の舞台が広がることで、視野も大きく広がりました。これまでは「コンクリート馬鹿」だったかと思います。タコツボ(広義の)を徹底して掘り下げるスーパー研究者も必要だし、 いろんな技術を駆使して問題解決を達成するエンジニア、マネジャーも必要です。みんなが自分の真の役割を認識して実行し、適切に連携すればよい。

私はどちらかというと実践的な問題解決派ですが、しかし、タコツボの研究も行うようにしています。一つのことを突き詰めていく中で鍛えられ、学ぶことも非常に多いからです。

結果として、2012年もこれまで以上に刺激的な1年になったように思います。土木史の講義の担当が私にフィットしたように、私が本来持っている広い範囲への興味が、自分の活動範囲と一致をし始めた年であった、とも感じています。

自身の課題はいくらでもあります。ですが、それらを改善するよりも、2013年は足元を固めることから。2013年は研究室のスタッフの交代も生じるので、まずは研究室の活動をしっかりとリードし、かつ支え、全体がうまく回るように、今こそマネージャーの本領発揮を心がけたいと思います。

2013年は私自身にとっても大きな環境の変化を体験する年になりそうです。不安はゼロではありませんが、変化の中でこそ人間は鍛えられることは知っているつもりですので、楽しんで過ごせればと思います。

2013年度の前半戦である春学期は、例年の2倍の講義を担当し、学生実験もTAと連携して担当することになると思いますが、大学にいる時間が長くなることをフルに活用して、研究室の体制をしっかりと固めたいと思います。

新年に向けて、ふつふつと気合が沸き起こってきておりますので、皆様、ご迷惑かもしれませんが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。 


山口県の目視評価まつり

2012-12-31 12:15:25 | 研究のこと

12/25の夜に山口県に入って、3泊で、26-27日に山口県の構造物の「目視評価まつり」を行いました。

いつもいつも、私の思いつきに対してパーフェクトに段取りしていただいて、山口県の皆様には本当に感謝しております。
今回は、坂田さんを筆頭に鹿島の技研の方々にもご協力いただき、坂田さんらが開発された目視評価を、山口県の構造物で実践させていただきました。また、東北地方整備局からも係長に来ていただき、いろんな今後の動きにも影響を与える「まつり」になったかと思います。

私は「まつり」という表現を少しずつ使うようになってきています。私は、自分が主催したり、中核となって実施するイベントは、なるべく参加者の皆さんにとって有意義な時間となるようにマネジメントします。それが学会の委員会であっても、研究のミーティングであっても、今回のような大人数の調査であっても、どんな場においてもです。皆さん、貴重な時間とお金を費やして参加してくださっている。しかも、我々の活動は、大きな方向性を共有していますので、毎回を全力で有意義な時間にする努力が、次へとつながり、連鎖していきます。

みんなが「協働」でわいわいと楽しく仕事をすること、もちろん充実した仕事の後には楽しく懇親すること、楽しい懇親の中からアイディアが次々と湧いてきます。これらを「まつり」と呼んでいるのです。

そして、今回の目視評価まつりの懇親会において、坂田さんから「まつり」というネーミングが素晴らしい、とほめていただきました。政治もまつりごとだし、先祖をまつる、などなど、「まつり」という言葉には物事を動かしていく非常に根源的な意味がこめられていそうなので素晴らしい、というご意見でした。「まつり」という言葉について、しっかりと勉強してみようと思います。

今回の「目視評価まつり」では、40名近い方々に評価に参加していただき、大変貴重なデータが取れたと思います。これを、間に合えばJCI年次論文集に投稿したい。私が筆頭著者で執筆する予定で、年末年始に書けるところは書いてしまうつもりです。また、初日の大人数での懇親会も素晴らしかったですが、27日の夜の、田村先生、二宮さん、森岡さん、学生4名との瓦そばでの懇親会も、会話が止まらない感じで、今後の戦略を練り合いました。これも「まつり」です。

来年も、いろんなまつりを仕掛けていきたいと思います。ぜひ、東北で大々的な祭り(施工状況把握や、表層品質調査など)が出来るとうれしいです。 


角田先生インタビュー

2012-12-25 18:04:47 | 研究のこと

JCIのランドマーク委員会(通称,今本啓一先生委員長)の活動として,北大名誉教授の角田先生にインタビューをしました。

2009年のJCIの年次大会@札幌にて,ランドマークセッションⅠ~Ⅲを,通常の論文発表のセッションと並列で実施させていただきました。これが今回のJCIランドマーク委員会の前身なのですが,2009年当時の有志たちが,我が国のコンクリート工学,セメント化学のランドマークとなる秀逸な論文・研究の紹介をする,というものでした。単に研究の紹介をするだけでなく,論文の行間を読んで,優れた研究の魅力を世の中に発信する,またそれを通して我々も深く勉強する,という取組みでした。

2012年度からJCIランドマーク委員会が同様の目的で正式に活動を開始しました。私も幹事の一人として中核を担います。

2009年のランドマークセッションで私が紹介した「曲げひび割れ幅算定式」を構築された角田先生への念願のインタビューが本日,実現しました。

曲げひび割れ幅算定式については,JR東日本の石橋さんらが,実構造物での調査結果や室内実験結果に基づいて,角田先生の算定式の精度を向上させるための研究も行っておられます。石橋さんには2009年6月に,示方書勉強会のインタビューを実施しました。 このインタビューも,示方書勉強会で練り上げた質問をぶつけましたので,とてもしびれる内容でした。

真の技術力で世の中を牽引してこられた大先生や一級の技術者へのインタビューからは非常に多くのことを学ぶことができます。

2012年3月5日に,12時間に渡って,岡村甫先生とお話しすることができたのも,私にとっては非常に貴重な時間でした。示方書のことも話題に挙がりましたが,社会のこと,マスコミとの付き合いのこと,マネジメント,研究,教育,などなど多岐に渡り議論することができて楽しかったです。私も不肖の弟子ではありますが,今は最前線で働いておりますので,師匠と「議論」ができたことがうれしかったです。

石橋,岡村インタビューに続いて,本日の角田先生インタビューとなりました。

私自身の体調がやや優れず,100%とは言えない準備の状況だったのですが,大変に勉強になりました。前川先生が角田先生のことを「ミスター示方書」と呼ぶだけあって,その真髄に触れることができたように思います。これまで,岡村先生のオリジナルかな,と思っていた示方書関連の業績も,実は角田先生が最初の引き金を引いておられることもあったりと,独創的なアイディア,やり方に感銘を受けました。

インタビュー中にワードで6ページくらいの速記メモを作ったのですが,今日の札幌-->羽田,羽田-->山口宇部への移動時間も活用して,速記メモをブラッシュアップして,ランドマーク委員会のコアメンバーに配信しようと思います。

そして,コンクリート工学誌に,ランドマーク論文を紹介する連載を始めることになると思うのですが,その第一号か第二号の記事として投稿できるよう(角田,石橋インタビューの成果も踏まえ,物語風に)に早めに原稿を仕上げたいと思います。

今日のインタビューは,時期もあまり良くなかったのか,札幌で開催であったためか,6名しか参加しませんでした。トップレベルの情報を吸収できる非常に貴重な機会ですので,ぜひ多くの方々が参加できる形へと改善も検討したいと思います。

私が直接担当するインタビューとしては,池田尚治先生,岡村甫先生(ランドマーク版)を近々企画して,実行したいと思います。 


クリスマスイブの打ち合わせ

2012-12-24 23:02:12 | 研究のこと

近年,年末は国内出張のチャンスの時期でして,今年も各地を飛び回っています。特に,数日連続での調査を実施する場合は,年末はまとまった時間を確保できるので,昨年の12/26-28の山口県構造物のSWATによる調査に続いて,今年も12/26-27に目視評価による調査を行います。

一方で,学生との研究の打ち合わせにも,多くの時間が必要です。

今日24日は,夕方から札幌に移動するため,世にいうクリスマスイブではありますが,12時~17時までびっしり打ち合わせ。特に,15~17時は,カイロ大学のハメド先生とWeb Meeting。真摯に,我々に津波による橋梁の損傷の解析のためのモデル作りをご指導いただいており,心から感謝です。時差が7時間あるので,ピンポイントを見つけながら,コミュニケーションを重ねています。

札幌,山口の出張から帰ってくる28日も,11時に羽田に到着した後,そのまま大学に向かう予定です。到着後,多くの打ち合わせをこなし,おそらく15時からはまたまたハメド先生とWeb Meeting(3回目)。その後,夜は,研究室の有志で鍋をつつきながら忘年会をすることになりそうです。

研究の打ち合わせは,内容も充実してきており,私としては楽しい時間を過ごさせてもらっています。担当の学生たちは,それこそ死力を尽くしているものと思います。新しい知見を発見するためには,死力を尽くすというプロセスも必要であり,その前後の十分な議論も大事だし,アイディアも大事です。結果を適切に整理することも大事です。

1つの区切りが,JCI年次論文集の締切の1/10(木)になりますが,皆で叱咤激励しながら,頑張りたいです。 


貧血

2012-12-24 22:49:57 | 人生論

私の血管はとても細いです。採血するときも看護師さんによく,とても細い,と言われます。

血管が細いので,すぐに血管がはちきれそうになるのでしょうか。熱血の根本的な原因かもしれませぬ。

私の母方の祖父は,私の外見のルーツになった方ですが,晩年に二回ほど脳梗塞で倒れました。私も,体に気を付けているつもりでいても,いつか脳卒中でバタンと倒れるんだろうなあ,と漠然と思ったりします。

10年以上前に,友人たちと座ってお酒を飲んでいるときに,貧血のようになり,意識がかすんでソファーの上で横に倒れました。割とすぐに回復しました。

先ほど,羽田から札幌に向かう機内で,急に気分が悪くなり,腕や手が少ししびれた感じになり,冷や汗も出てきたので,席を外れてスペースのあるところで床に座り込んでいました。スチュワーデスさんが来て,横にならせてもらい,飛行機が降下するまで休んでいました。

一応回復して, 当初の予定の飛行機が欠航になった影響もあって,23:14に札幌駅着,と遅くなりましたが,何とかホテルにたどり着けそうです。

よく休養も取っているので,過労ではないと思いますが,明日の札幌での角田先生インタビュー,その後の山口県での目視評価による構造物の調査(初日26日は40人くらいが参加するビッグイベントになりました)で,ご迷惑をおかけするかもしれませんが,ご了承お願いいたします。


背負う

2012-12-22 13:09:17 | 人生論

以前から(大学4年生くらいのころから)ときどき言われることなのですが,私は「ものすごいたっぷりと愛情を注がれて育った」ように見えるそうです。先ほど鳥取から帰ってくるANAの飛行機の中でふとしたきっかけでそのことを思い出しました。

両親からの愛情,祖父母からの愛情が並々ならぬものであったことに心から感謝です。やはり親は子供に無償の愛を注ぐべきですね。それが根っこにあれば,子供はしっかりとした土台の上で自然に成長しますし,成長し続けます。私が成長し続けているのも,根っこには注がれた愛情があるからです。もちろん,私も娘たちに最大級の愛情をストレートに注いでいるつもりです。

私の諸活動の根本には愛情があると思っています。人への愛,それが結果的に我が国への愛にもつながります。

ですので,人とのつながりもどんどんと広がっていくし,お互いに深く信頼できる関係がそれこそ無限に広がっていく感覚を最近は持っています。実際に広がっていくのでしょう。この数年で,広がり方が指数関数的になっていく感覚を抱いています。

それとともに,背負うものも大きくなっていきます。これまで,私にいろいろとご指導いただいた先生や先輩技術者たちの思いも背負っていきます。どんどんと重くなっていくと思いますが,足腰がしっかり成長していけば大丈夫です。この足腰とは,実はメンタル的な度量だと思っていますが,これが強化されていくのも愛情で支えられた根っこがあるからです。

自分の組織の後輩や学生たちに限らず,それこそ日本中の(留学生教育を通して世界も)人を育てることが我々のミッションであり,そして我が国に最も求められていることだと思っています。責任はどんどんと重くなっていきますが,それこそ貴重な生を受けて一生をかけてやるべき,やりがいのあるミッションだと思っています。 そのために,もっともっと自分を鍛えないと!


シンポジウム案内(実質的に,「第7回 コンクリート材料-構造の最先端技術に関する研究会」)

2012-12-21 10:38:46 | 研究のこと

以下のようなシンポジウムを,2/19(火)の午後に,横浜で開催します。横浜国大ではなく,日本大通り駅の近く(横浜からも遠くない)の会場で行います。正式案内はこれから行いますが,基本的に私の知り合いや私の周囲の方々,どなたでも参加OKです。参加費もほぼ無料かと思います。興味のある方はとりあえずご予定にいれておいてください!

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基調講演3件

13:00~14:00 JR東日本 松田芳範 氏 「鉄道構造物の戦略的な維持管理と耐久的な構造物を建設するための技術開発と仕組みづくり」(仮題)

14:00~15:00 首都高速道路 谷 雅史 氏 「首都高速道路の構造物の現況と維持管理戦略・将来像」(仮題)

休憩

15:15~16:00 細田 暁 「山口県のコンクリート構造物の品質確保システムの説明と復興道路の品質確保への応用」(仮題)

要素技術5件 (16:00~17:15)

・表面吸水試験 (林 和彦) (10分)
・既設橋梁の復元設計 (椿 龍哉) (15分)
・ステンレス鉄筋 (愛知製鋼 中川氏) (30分)
・クリンカ細骨材による自己治癒モルタル(細田 暁)(10分)
・国際会議報告(10分)

 


研究

2012-12-21 10:24:30 | 研究のこと

やはり研究は楽しい。特に,私は研究の議論が好き。技術に関する議論や,我が国の将来に関する議論も好き。

15日(土)~16日(日)は,熱血ドボ研の合宿で宮崎で世界初のバタフライウェブ橋を,開発者リーダーの春日さんに直々に見学案内していただき,深夜まで議論。帰りの日曜日も飛行機の中でも議論沸騰。

18日(火)は終日,仙台にて復興道路の品質確保の議論。議論がスパークしました。私も本気で持てる手段をすべて駆使して情報提供しました。すごかった。

19日(水)の午前は,首都高のASRの現場を見せていただき,補修方法について議論しました。今後も継続的に議論させていただけるとのこと。ありがたい。

20日(木)は津波Day。午前中の土木学会の津波委員会の議論も非常に濃密でした。私は幹事長という立場ですが,多くを学ばせていただいております。もちろん,自分たちの研究室でも貢献できるような研究をしたいし,委員会報告書の取りまとめや講習会においては重要な情報を発信する責任を肝に銘じて努力したいと思います。

午後は,カイロ大学のハメド先生(東大コンクリ研の先輩)とウェブミーティング。津波による橋梁被害を数値解析していくときに強力なツールになりそうなELSというソフトの指導を受けました。元々とても仲のよい方なので,楽しく,充実した指導を受けることができました。担当学生も横に置いて,英語でのやりとりで時々日本語で解説する,という結構脳みそを酷使するミーティングでした。

こうしてみると,多くの時間を研究,研究的な時間で過ごしていることに改めて気付きます。脳みそが刺激されて,進化していくのを感じます。脳みそも疲れるので,夜はぐっすり寝ています。

さあ,あと一週間。今日は鳥取出張。24日(月)の午後はウェブミーティングの2回目,学生たちの指導の後,札幌へ出張。そのまま札幌から羽田経由で山口県の調査出張へ出かけます。すべて研究。年末年始も非常に多くの仕事をこなすことになりますが,いよいよ恒例のスクランブル体制です。心身充実しているので,突っ走っていけるでしょう。

 


手段を選ばず

2012-12-19 19:45:31 | 研究のこと

昨日は,東北地方整備局にて,復興道路の品質確保のための打ち合わせでした。

10:00~17:30前くらいまでの濃密な打ち合わせで,私にもいくつかの役割が割り当てられていました。メインの役割は,山口県のひび割れ抑制・品質確保システムの要素で,復興道路の品質確保に応用できるものを,もろもろの実態も踏まえた上で分かりやすく説明し,実践のための有意義な議論をすること。

今回の打ち合わせで3回目でしたが,過去2回とは次元の違う濃密な双方向の打ち合わせになり,感激しました。

私も自分の役割を全うすべく,まさに手段を選ばずにプレゼンをしました。プレゼンというよりはライブ,ショーという感覚でした。過去,様々な経験をしてきていますが,私が真の本気を出してプレゼンをした何本かの指に入ると思います。まさに全力でした。

そのかいもあって,山口県の「施工の基本事項の遵守」をどうやってシステムとして達成しているのか,またその中のツールの一つである「施工状況把握チェックシート」の真の役割についても,深い深い議論ができて,東北地方整備局の方々にも十分に理解していただけたようでうれしかったです。実践に向けてはいくつも高いハードルがありますが,ハードルが高いほど燃える我々です。

私の役割が終了した15:45ごろには,脳みそが酸欠状態になり,質問を理解できない状況になりました。そこでバトンタッチ。

夜の懇親会も含め,本当に充実した議論でした。品質確保が少しずつ実践に入ることを心から願います。 


少人数ゼミレポートNo.3

2012-12-19 18:15:18 | 教育のこと

少人数ゼミの学生からのレポートの3つ目です。今年度はこれでおしまい。

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少人数ゼミを終えて

今井 雅貴

今回の少人数ゼミを通して、自分自身ついてよく振り返ることができた。正確には、振り返る時間を意識的に確保することができた、と言うべきだろう。ともかく、少人数ゼミが始まって2ヶ月間、今までにないくらいの時間を自分というものと向き合うことに費やせたと思う。細田先生に勧められた「7つの習慣」という著書を軸に数冊の本を読み、それについて意見を交換し合うという簡単な作業の中で、話し合われたものを一つ紹介したい。

7つの習慣を読み進める上でもっとも考えさせられた言葉が「まず初めに、自分が死んだときの状況をイメージして欲しい」というものである。どの部分に考えさせられたのかといえば、「まず初めに」にである。これこそが普段私たちが意識することなく、しかしながらまず初めによく考えておくべきことだと感じた。

私たちは普段複数の行動基準で生活している。特に、仕事中心であったり、友人中心であったり、お金中心であったり。中心を外から与えられる刺激に置いてあることが多い。現に私も、友人中心であったり、敵中心で生活していたため、生活は友人や自分に害を及ぼしそうな人物の言動によってすぐに不安定な状態となった。そこで、死んだときのイメージから、まず自分はどのような人物になりたいのか、どのようなものを残したいのかを丁寧に自分の中から引っ張り出してきた。そうして出てきた原則を中心に行動すると、生活は安定し、行動はすべて自身の描いた像へと直結しているものだと感じることができた。このように、まず初めに、自分の死と向き合っておくべきなのだろうと思う。

国立大学とあって優秀な人が多く、大量の知識や技術で武装している人をよく見かける。しかしながら、重い荷物を持つほどまっすぐ歩くには強靭な足腰が必要となり、人生の足腰となるのは自身の原則となるであろうから、しっかり死と向き合って欲しい。忘れてはならないのが、原則が公共に益となるものでなければ、それはまた自己中心の行動基準となってしまうことと、私たちは土木技術者であることだ。

以上のことが、今回の少人数ゼミを通して私が学ぶことができたことの1つである。最後に、ここまで読んでいただいた皆さんには「細田先生の話をよく聞け」だとか「7つの習慣を読め」だとかはもちろん大切だが、そういったこととを言いたいのではなくて、大学生というたくさんの時間の中で「私は○○である」と胸を張って言えるような人物になってもらえるとうれしく思います。


少人数ゼミレポートNo.2

2012-12-19 13:07:07 | 教育のこと

少人数ゼミの学生からのレポートの2つ目です。

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「人間力」のゼミを受けて

薄木 克弥

自分はいままで、いったい何を目指し生きるのか、何が正しいのか、どんな国に住み、どんな役割があるのか、ほとんど何も考えてくることがありませんでした。考える、ということの力はとても大きく、自分自身に大きな影響を与えるということは自分でもよくわかっていましたが、まだ考えるための安定した方向性を持たず、迷ってばかりなうちに自ずと考えることを避けていたのだと今となっては思います。

ゼミでは「7つの習慣」を中心とした何冊かの本をよみ、いままで考えることから逃げていた部分を意識して考えることにより、様々な変化がありました。自分は典型的な理系人間で、社会科科目が嫌い、特に歴史アレルギーといっても過言ではない状態だったのですが、ミッションステートメントを考えていくにつれて、自然と社会への興味が沸いてきて、ちょうど総選挙の時期だったのもあり、細田先生に紹介していただいた、今の日本、世界の経済状況などについての本をのめりこむように読んでしまいました。それからは派生的に、アレルギーだと自分で感じるほどだった歴史にすら興味が沸いて、初めて自分から歴史を勉強しようと思いました。

政治、経済、歴史について自分なりの勉強をし、土木技術者として生きようとしている自分が、理系だからといって政治、経済、歴史など全くおろそかにできないと気づいた後にミッションステートメントを考えなおすと、最初は全然考えられなかったミッションステートメントが、それでも満足とはいえませんが、少しは考えられるようになっていて、短期間の間に自分の考える力が如何に変化したかを感じられました。もちろん「7つの習慣」もですが、それだけでなく、様々な本を読んだ、色々なお話を聞いた、というのが自分の考える力の成長の要因となったのだと思います。

自分が細田先生のゼミで得た最大のものは、目指すべき方向性を与えてくれる様々な本、様々なお話、いわば考えるための種のようなものをもった状態で考えるということが、どれだけ自分にとってのプラスに働くか、ということを知れたこと、そして、自分だったら政治・経済への興味から歴史への興味というように、次々と考えるための種を見つける、という習慣がついたということだと感じています。

自分が決めた、もっとも重要度の高いミッションステートメントは、「日本社会の役に立つということ」です。これを本当の意味で遂行できるのは社会人になってからかもしれません。しかし、自分のミッションステートメントとしてこれを定めることにより、自分の羅針盤として活かし、学生生活も有意義にできると思っています。ゼミ自体は終わってしまいましたが、これからもゼミで得たものを活かし、社会人となってから日本社会にいい影響を与えられるように、貪欲にまだまだいくらでも存在する自分の力となるものを求め、「人間力」を育みたいです。


少人数ゼミレポートNo.1

2012-12-19 13:02:55 | 教育のこと

学部3年生の3名の学生に対して、合計5回の少人数ゼミを実施しました。
ゼミのタイトルは「人間学とリーダーシップについて考える」です。

3つの記事に分けて、紹介します。公開することは学生たちから了解を取っています。

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遠山祐貴

今回の少人数ゼミは自分を見つめ直す良い機会になった。スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」という本を中心にゼミは進められ、最終成果物として自分の中心に置くべき「原則」を完成させた。そこに至るまでの大きな過程を2つ書こうと思う。

1つ目は、自分は「何により行動しているのか」、「何に依存しているのか」考えさせられた。ここで私が強い印象を受け、伝えたいと感じたことは、「主体的」であるか「反応的」であるかだ。人は常に外からの「刺激」にさらされているが、「反応的」であれば自分の行動はその刺激により決定され、「主体的」であれば行動は原則により、つまり自分の責任で決定される。様々な本にあるような、自分の意志だと思い込む、というような処方的なものと違い、こういった事を考えることで、自分の日々の行動が変わった実感がある。

2つ目は、最終成果物となった「原則」の作成である。人は何も「刺激」だけにより行動しているのではなく、誰しもが中心においているものがある。私の場合は、家族・友達・遊び、が中心に置かれ行動していた。これを否定された時は悔しくすぐには認められなかったが、ゼミで意見を交わしていく中で、「原則」ではありふれている家族・友達・仕事などが複雑に絡んだ状態も筋の通った考えができる、という解釈に至った。こういった事を考えることで私は次のような原則を作ることができた。

・完璧な自分になる―正直に生きる。誠実に生きる。前向きに生きる。感謝を忘れない。ユーモアを忘れない。
・主体性を発揮する―自分の意志によって行動する。自らの行動に責任を持つ。
・率先力を発揮する―自ら状況を改善する。周囲に良い影響を与える。
・能力を向上させる―失敗を恐れず、成長の機会を逃さない。助言を素直に受ける。
・家庭を築く―無償の愛を示す。自分の欲求を家庭のニーズに沿わせる。
・社会に貢献する―
・全力を尽くす―上記を達成するために、自分の才能・時間・持てるすべてを捧げる。

まだ完璧なものではないが、これから生活していく中で何度も見直し、必要があれば修正や追加、削除などをして、常に最善の「原則」にあるようにしていく。また、これは自分が周囲に約束・保証することである。

今回の少人数ゼミで内面的な事について意見を交わす機会をもてたことを幸運に思う。ゼミ以外の時間でもこういった事について話す時間が増え、またその時間がとても有意義であった。これから影響の輪を徐々に広げ、多くの人との意見を聞き、自分の持っているものを分かち合いたいと考える。


年内講義終了

2012-12-17 16:47:59 | 教育のこと

今学期は、講義の数が多いのでそれなりに苦労しながらマネジメントしてきました。

学部の講義が2つ。「土木史と技術者倫理」と「構造系力学演習Ⅱ」。どちらも必修。
これに加えて、少人数ゼミが5コマと、演習のようなものが2コマ。

大学院の講義が1.5。 一つは英語での少人数の講義で現在進行中。もう一つは日本語でのオムニバスで私は6コマ担当ですでに終了。

イメージとしては、合計で2.5+1.5=4つの科目を担当していることになるでしょうか。 

今週は学部の講義の時間に重要な外部での打ち合わせが重なり、年末ということもあり休講にしちゃいました。

本日の午後、大学院の英語の講義を一つこなして、年内の講義はすべて終了、ということにいたしました。

明日、18日(火)は終日、仙台に出張で、東北地方整備局等との濃密な打ち合わせ。復興道路の品質確保に向けてできることを全部やるつもりです。

年末、年始の間は研究+論文執筆モードです。
 


予測と検証

2012-12-13 12:01:20 | 研究のこと

「研究は誰でもできる」と師匠の岡村甫先生はおっしゃったり、文章で残されたりしています。

その方法は、「仮説」を立てて、それを「検証」する、ということ。それを繰り返していくことで誰でも研究ができるようになる、と。

研究とは、何も研究者がやる小難しいことばかりではなく、どんな人でも日常生活でやるべきことと私は思っています。「研究的」なものの見方とか考え方は非常に大切。日常の問題点を発見して、改善していくことが、どんな人にでも求められると私は思っています。皆がそのようなものの見方をできるようになれば、日本は簡単に立ち直ると思っています。そして、日本人には本来、そのような素質があると思っています。

ところが、「仮説」と「検証」とは簡単なようで簡単でない。私は「仮説」を立てることと「検証」する、ということが具体的にどのようなことであるのか、もちろん分かっています。ところが、多くの研究室の学生はできない。分かっていないからできないのだと思います。

今日の研究室ゼミ(M2の発表)でも、このことを以下のように分かりやすく説明しました。

「仮説」というから分かりにくいのであって、「予測」の方が分かりやすいと思います。

例えば、こういうメニューで実験をやろうとしている、という説明をよく受けますが、その結果がどうなると予測しているのかを説明してほしい。当然に、研究には目的があると思うので、その目的を達成するために実験したり調査したり数値解析したりするわけです。自分の実験はこういう結果になると予測している。その予測の結果を打ち合わせや発表でも示して欲しいのです。

「予測」する、ということはその裏には「仮説」があります。予測した結果を示して議論する、ということが、実は仮説をブラッシュアップすることにつながるのです。

そして当然、予測は「検証」されることになります。実験であったり、調査結果であったり、数値解析であったり。検証して、予測どおりのこともあれば、仮説を修正する場合もあるでしょう。こうやって、研究の作法が身についてきます。

ゼミでも、「手段」である実験のメニューばかり見せられてもクリエイティブな議論はできません。何人かの学生は、予測の結果を示し、それに基づく議論がなされていました。あと数ヶ月で今年度も終わりです。良質の仮説となるようブラッシュアップを重ね、しっかりと検証していきましょう。