細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

46回/2ヶ月

2014-11-27 15:47:41 | 職場のこと

フランスから帰国して、2ヶ月が経過しました。10月2日に秋学期の講義も開始し、今学期は間違いなく、過去最高のペースで講義を実施しています。

国立大学の教員としては相当に多い方かと思いますが、先ほど手帳を確認したところ、ここまでの2ヶ月で46回の講義を終えました。そのうち4回は外部からのゲストティーチャーを招いての維持管理計画学の講義(大学院)でしたが、私も4回すべて聴講しました。大学の講義は基本的に、1回が90分ですから、結構な負担にはなります。

ここまでのところ、一回も予定を変更することなく、無事にスケジュール通りにこなしてきました。学部の講義は特に、ガチガチのスケジュールとなっており、300名近くもの学生を対象にする土木史の講義などは、とてもとても予定変更などできません。大学院の講義は、比較的柔軟に対応できますが、なるべく当初の予定通りに進行するべくベストを尽くしてきました。

講義はすべて、火曜日と木曜日に集中的に配置しました。教室のご理解があっての臨時対応です。そのため、火曜日と木曜日は3連続や、4連続での講義となり、大変ではありますが、その他の日を研究に有効に使うこともできるので、何とかうまく回っています。

今のところ、講義に関してのストレスはほとんどありません。さすがに12年目なので、経験値が大きくなっていることもあるでしょうし、本当に講義が好きになっているのだと思います。

学生たちの研究の取りまとめの時期が近づいて来ていますが、研究の成果も出始めており、楽しみです。

一時期よりも、私自身も研究の最前線に立つ機会が圧倒的に増えており、以前より「研究室」らしくなっているようにも感じ、楽しいです。

真の現場で研究する大変に貴重な機会を与えていただいていることに心から感謝し、実践研究の醍醐味を私自身も感得し、その楽しさを周囲に伝えていければと思っています。

 


忘却、忙殺と、自由と

2014-11-26 08:05:58 | 人生論

退屈な毎日。

先の見えない日本、世界。

考えることを止めた方が楽になる。

本当は問題だらけなのだけど、見ないようにした方が楽になる。

たった3年前にとんでもないことが起こったはずなのに、もはや大半の人は忘れているのでしょう。忘れないと前進できないことも分かります。

忙殺されていることに愚痴をこぼす人は多いけれど、忙殺されている方が実は思考停止の格好のいいわけになります。

実は私たちがどれだけ自由を享受できる立場にあるのかをよくよく考えた方がいい。

私もがんじがらめの状況で生きていますが、自身の精神は自由を謳歌しています。

考えることの楽しさ、素晴らしさを、特に学生や、子どもたちに伝えたい。

大人が思考停止をしている世の中で、多くの学生たちも考えることをやめてしまっています。精神が死んでいる。

精神を躍動させよう。

自分たちがやる、と決意するしかない。

明日から、5泊の東北出張です。南三陸国道事務所の管内の構造物(復興道路)の品質調査と、仙台での戦略会議+大勉強会(300名程度)。

年末にさらにもう一度、三陸国道事務所の管内へ出張(勉強会+α)しますが、私の年内の活動も山場を迎えました。

私に出来得る最善を尽くします。 


家族との再会

2014-11-24 15:14:18 | フランスのこと

束の間の休息が終わりました。

約二ヶ月ぶりに家族と会いました。これだけ離れたのは私にとっては初めての経験です。

金曜日の早めの夕方に自宅に到着しました。日本へ送る船便の手配のため、奥さんと次女が自宅にいました。

私が家に入ると次女が早速大騒ぎして、奥の部屋に行って早速本を読んでやったり、遊んでやりました。

その後、次女と近所に買出しに出かけました。ボジョレーヌーボーの季節ということもあり、ワインやチーズなどを少し買って、二人でバーで飲み物を飲んで帰宅。

少し待っていると17時半くらいに長女が帰宅。金曜日の放課後に公文を習っており、何とか早く終わらせて飛んで帰ったそうで、帰宅後、飛びついてきました。娘二人に抱き付かれて至福の状況。

その後、奥さんが夕食の材料の買出しに出かけ、ホタテ貝のバター醤油焼きがメインのおかずになり、日本からお土産で持ってきた辛子明太子や鞆の浦のチリメンもおかずになり、皆でワイワイ食べました。

私は時差もあったので眠たく、次女と二人でぐっすりと寝てしまいました。

翌日以降、土曜日と日曜日は、家族と過ごしました。土曜日には、長女がバスケットボールの試合に初めて出場し、一つか二つ年上のチームに借りだされた状況での出場、と推察しましたが、スタメンで登場、お世辞抜きで大活躍でした。得点も決めたし、とにかくパスカットが多い。ナイスパスもたくさんあり、チームの原動力となっていました。

土曜日の夜は、長女のバスケットボールのデビュー戦に皆で乾杯し、長女はものすごくご機嫌。私も、これほど親に褒められたことは無いんじゃないかな、と思います。そして、またまた私は次女と二人で寝てしまいました。

日曜日は、朝のパンを次女と買出し。朝食後、皆がそれぞれのやるべきことをやって、次女とマルシェに買い物。

昼食前に、長女とバスケットの練習を少しやりました。

昼食には、明太子のおにぎり、から揚げ、ソーセージ炒め、アスパラガスなどを作りました。昼食、夕食と私が作りました。今回の滞在中に5食、担当しましたが、私の得意とするところなので、多少は役に立ててよかったです。

日曜日の夜は、娘たちと一緒にお風呂に入りました。その後、本の読み聞かせを二人にしてやって、三人で寝ました。

家族が元気そうでよかったです。私も、滞在中の週末には昼寝もたっぷりさせてもらい、体力も回復しました。

火曜日の早朝に羽田に到着予定で、そのまま大学に向かい、講義をします。

27日の木曜日の夜には釜石に乗り込み、構造物の調査、仙台での会議、勉強会などです。

怒涛のように12月も過ぎていくことでしょう。

次の家族との再会は一ヶ月後です。離れて分かる、家族のありがたさ、です。


研究室のHP

2014-11-20 02:04:45 | 職場のこと

以前は、私が手作りで作っていた研究室のHPですが、さすがに編集するための時間が取れなくなって久しく、長らく更新が滞っていました。情報発信を、ブログやfacebookに頼っていました。

ですが、学外の受験生の皆さんや一般の方々に対しては、やはり研究室のHPは重要な情報発信の場です。特に、研究室の研究活動など、古い情報が残ったままで大変に失礼いたしました。

研究室のHPの再構築に向けて動き出しました。研究活動に関する内容や英語版などまだまだですが、小松さんを中心に組織的に改善を始めました。やはり情報発信は極めて重要ですので、努力したいと思います。

学生にとっても非常によい環境だと思いますので、ぜひ、この寺子屋?道場?への入門者、お待ちしております。お気軽にお問合せください。


「監督職員」について

2014-11-15 13:54:14 | 研究のこと

昨日、11月14日に、朝一番の便で山口宇部空港に入り、一日、山口県の官学共同研究のミーティングや現場実習に参加させていただき、夜は四人の少人数で濃厚に議論を深めました。非常に楽しかったです。

その中で、「監督」という言葉について議論を深めました。まだまだ深める必要がありますが、記録に残しておく意味も含めてブログに要旨をまとめておきます。

公共工事を進めていく上で、発注者の中の監督職員が大きな役割を担います。国土交通省では監督官と言ったりもしますが、「監督」をする発注者の職員です。

発注者にはいろいろな役割の人がいますが、監督職員とは別に、検査を行う役割の人もいます。工事の出来栄えを検査し、合否を出す人です。

監督職員は、検査官とは異なりますが、どういう役割を果たす人でしょうか?

英語では、supervisor といいます。

大学で大学院生などの研究を指導する、指導教員も supervisor です。私も、supervisor なわけです。

supervisor とは、実際に研究を行う人や、公共工事であれば工事を行う施工者を、適切に結果が出るように導く役割を持ちます。あくまで研究や工事の主役は、大学院生や施工者であり、そのコーチ役、と言った方がよいでしょうか。
 
野球の監督は、英語では supervisorとは言いません。manager です。これは、ホテルの支配人と同じで、指揮権を持ちます。

supervisor と manager は明確に異なるのに、日本語では同じ「監督」という言葉を使っています。ここにも、問題の根源があるようにも感じます。

監査、監視、などのように「監」という言葉が現代ではあまりいいイメージを伴いません。どうしても、監督する側が、施工する側を見下すような語感を、現代のわれわれは持ってしまいます。

supervise と advise は共通する部分を持っていますので、よく調べていませんが、語源をともにするのでしょう。

大学の教員は、実際に最前線で研究を行う大学院生と同じ知識を持つ必要は必ずしもありませんが、大学院生が適切な方向に研究を進めて行けるように、アドバイスしたり、困った状況を打開してあげる必要があります。そのために、どのような見識や能力が必要か、想像していただけるのではないでしょうか。研究指導は容易ではありません。

品質確保の委員会(350委員会)では、「性能」や「品質」などの言葉についても深く考察を行っていますが、「監督」という言葉なども含めて、本来のあり方を、言葉の適切さも含めて深く議論を重ねていきたいと思います。

今日、15日の土曜日の午前は、二宮さんと二人で、山口県のひび割れ抑制システムの運用前後の構造物を二つ見て回り、システム運用前の構造物で様々なひび割れが多発している橋台を題材に、工夫して動画コンテンツを撮影しました。主演が二宮さんで、私が監督です。かなり良い仕上がりかと思いますので、品質確保チャンネルへのアップをご期待ください。

これから、新幹線で福山に移動して、いろいろと予定が詰まっています。 


長女のすごさ

2014-11-13 07:17:08 | 家族のこと

以前も、ブログで書いたことがあるかもしれませんが、我が家の長女について。

個性豊かなメンバーが集う私の家族において、長女はもっとも配慮のできる人間だろうと思います。まだ小学校4年生ですが。

奥さんとも、もし長女がいなかったら、我が家はバラバラになっていたかもね、と冗談で話すことがあるほど、我が家のキーパーソンでもあります。

昨夜は少し早く帰宅できたので、実家でおいしい夕食をいただき、夕食後に少しぼーっとし、来週に会う家族のことを考えていました。子どもたちのことを書いた自分のブログを見て、笑ったり、会いたい気持ちを募らせていました。夜も久しぶりにぐっすり寝ることができ、体調も回復しました。

今朝、シャワーを浴びているときに、長女のエピソードを思いだし、改めてすごい子だな、と感激したので、以下にそのエピソードをまとめておきます。

長女が一歳になった直後の9月ごろ、奥さんがパリだったと思いますが、海外出張にでかけました。一週間以上の行程だったと思います。

私と長女が二人で生活していました。奥さんが出張に出かけた後のある朝、私と一緒に寝ていた長女がベッドで目を覚ますと、 口を開けて「マ、」といいかけて止めました。ママ、と言いかけて止めた瞬間を私ははっきりと覚えています。

彼女は一歳になった直後だというのに、自分のママが出張に出かけていないことを分かっており、ママと呼んでもどうにもならないことを分かっており、我慢したのです。その後、母親の出張中、「ママ」と口に出すことは一切ありませんでした。

何とすごい子なのだろう、と感心し、私は長女をギューッと抱きしめてやりました。

その後、長女が保育園でプール熱に感染し、さらに私も感染して大変な高熱が出て、私の両親たちにアシストしてもらうことになってしまい、確か奥さんも出張の行程を短縮して帰国したように覚えていますが、もう9年以上も前の話です。

私は家族それぞれと大切な関係があり、これからも構築していきますが、長女とは上記のような特別な体験をたくさん共有しており、それが根底の信頼関係にあるのだろうなと思っています。

私も彼女に負けないように、もっともっと周囲に配慮できる人間になりたいと思います。 


見学会、どんどんいきますよ。

2014-11-12 11:24:35 | 教育のこと

YNU土木見学会ファンの皆さんへ

中村文彦先生の企画で2件、お届けします。

(1) 新東名の伊勢原の深夜橋梁架設  (12月6日の深夜)

(2) 都電沿線と赤羽地区の市街地状況視察  (12月6日の午後)

(3) 立体交差工事、城山ダム、調整池の現場見学 (12月13日)

さあ、みなさん、「活物同期」するのである!ワイワイ見学会で盛り上がりましょう。私は、(1)には参加します。体力に余力があれば、(2)にも参戦を考えます。。。 


経験値

2014-11-12 10:52:11 | 教育のこと

「土木史と技術者倫理」の講義で、300枚近いレポートを、毎週読んで翌週に学生に返していることはこのブログでも何度か書いているかと思います。

よくそんな大変なことできるね、といろんな方に言われます。

ですが、私は本当にこのレポートを読むのが楽しみで、本を読むよりも面白いです。

現実の、「生の」学生たちの声を、しかも数百人の声を、毎週聴くことができる、というのは実は大変に貴重な経験なのであると、感じ始めています。

私は本当に、心の底から誠意を持って学生たちに接しています。

それでも響かない学生もいないわけではありません。そういう学生たちは、人生の中で良き師に出会うことを願うのみです。簡単ではないでしょうけどね。

さて、響いてくれる多くの学生たちのレポートからは、心を揺さぶられることも多々あるし、私が勉強になることも多々あるし、そして何よりも、今の学生たちが何を考え、何を悩んでいるのか、どのように希望を見出そうとしているのか、を私自身、浴びるように吸収させていただいています。

これが積み重なることは、実は実は大変に大きな経験値になるのだろう、と昨日辺りから思い始めています。

数百人の学生と毎週対話を重ねた大学教員がそれほど多くいるとも思いません。本当の現場を知らない教師はものすごくたくさんいます。

学生たちの目線で講義のできる教師、子どもたちの目線で授業や対話、教育のできる大人、が非常に少なくなっているように思います。

私が今のやり方でいつまで現場の最前線に立ち続けられるか分かりませんが、力の続く限りはチャレンジしてみたいと思っています。


つなぐ

2014-11-11 08:47:24 | 教育のこと

今日は火曜日なので、講義が3つ連続である日です。午前の維持管理計画学には、先週からゲストティーチャーを招いていまして、先週がJR東日本の小林薫さん、今日がJR東日本の松田芳範さんです。お二人とも、私の元上司で、真のエンジニアですので、学生たちは多くを感じてくれるものと思います。ちなみに来週がショーボンドの平塚慶達さん、その次が鉄道総研の上田洋さんです。4回の前後の2回は私が担当して、全15回程度のうちの6回を私が担当する、という設計です。学生たちに実社会のすごさ、面白さが伝われば、と思っての設計です。

さて、午後の一つ目の講義が例の「土木史と技術者倫理」で、今日で6回目です。今日のタイトルは「自然災害の克服」です。これだけで10回くらいは話せそうですね。。。

私はこの講義では、全力で珠玉の情報を提供しますが、学生の脳裏にこびりついて離れなくなるであろうようなキーワードを掲げて、それにつながるような情報を畳み掛ける戦法もよく使います。

これまでに使ったキーワードの中で、学生たちにかなりの影響を与えているように思われるのが、「当事者意識」です。学生たちのレポートを読んでいても、これまでいかに当事者意識が欠けていたか、ということについて考察するものが多いです。

学生たちや子どもたちの中に当事者意識が欠けている人たちが多かったり、増えているとして、それは彼らのせいではありません。大人のせいであるし、すでに亡くなった先人たちの中にもその原因を作った方々はもちろんおられます。そして、現在の学生たちに非が無いわけでも決してない。

みんなのせいなのです。ですが、悪者探しをしても状況は改善しない。当事者意識をもって実践するしかない。

今日もいくつかのキーワードを提示して話を紡ぎますが、今日の最重要キーワードは「つなぐ」です。つながる、というキーワードも黒板に書きますが、やはり能動的な「つなぐ」が重要でしょう。

人間が生きることの意義そのものも問いかけます。

大河津分水路の工事の陣頭指揮を執った宮本武之輔のビデオも見せますが、宮本と講義を聴く学生たちがつながっていることも、今日の講義で分かるでしょう。間接的には、廣井勇先生を通して宮本も、私も、私の講義を聴く学生たちもつながっています。

10日後に家族の待つパリに出発しますが、私自身の肉体的な疲労が蓄積しており、肌の調子が良くなくなるなど、少し危険シグナルが出ています。自分をコントロールする術は身に付けているつもりなので、パフォーマンスを落とさないよう、努力します。肉体面で余裕が無くなると、精神面でも余裕が無くなり、研究室の学生の指導にしわ寄せが行きがちで申し訳なく思っています。8名もの修士2年生(うち2名は留学生)を抱えており、研究指導だけでかなり時間を必要とします。学生たちの指導は、最重要事項ですから、心の余裕をもって臨むよう、今の私にできる最善を尽くしたいと思います。遠慮せず、相談に来ていいよ。


家族の待つパリへ

2014-11-07 08:26:01 | フランスのこと

二週間後にほんの数日ですが、パリに行きます。プライベートです。

土日はフルにパリで過ごせるスケジュールにしました。そうすると、24日の月曜のかなりの早朝にパリの家を出発して、午前の飛行機に乗り、25日火曜の朝7時前に羽田に到着して、大学に移動して講義連チャン、というタフスケジュールになります。

すでに6週間、家族と離れており、私の人生で初めての経験です。会いたい気持ちが募っています。

私が日本に戻って6週間ですが、まさに息付く暇が無いくらいの状況になっていますが、それもまた楽しいです。

2週間後にパリに行ったときは楽しいに決まっているでしょうが、その後の年末までの超繁忙期もまた目一杯頑張るでしょうから楽しみです。

年末は、再びパリに行き、家族四人で最後の時間を一緒に過ごし、年始に一緒に帰国します。

帰国後はかなりバタバタするとは思いますが、新たな生活を、様々な方々のサポートもいただきながら構築していくことになります。

それも、また楽しいはずです。

一日一日が大切であり、もちろん先を見据えた計画が重要であることは論を俟たないですが、やはりその日、その時間にできうるベストを尽くすしかありません。

今日は青森河川国道事務所での委員会+研修会で日中の仕事も楽しみですし、夜の懇親会も大変に楽しみ。

明日、土曜日はせっかくの機会なので中尊寺辺り(あくまで予定)を一人で散策し、夕方に私の妹と合流して陸前高田に向かって宿泊。

明後日、日曜日は、南三陸を初めて訪れる私の妹とともに、早朝からレンタカーで南下し、石巻辺りまでをずっと視察して、仙台から帰宅する予定です。


11/8(土) 首都高 生麦JCT 桁の夜間架設の見学会

2014-11-06 07:57:14 | 勉強のこと

YNU土木 見学会ファンの皆様

見学会もガンガンやり始めました。何といっても、自称、全国一の質・量の見学会を誇るYNU土木、ですからね。

以下、急遽の企画ですが、あっという間に希望者で埋まってしまうと思うので(定員10名)、参加希望者はここを要チェックです。 


無知=情報弱者

2014-11-05 07:31:43 | 教育のこと

毎週火曜日の、「土木史と技術者倫理」も5回目が終わりました。相変わらず数百枚のレポートを毎回受け取って読んで、翌週に返しております。

昨日受け取ったレポートの中に、以下のようなものがありました。

「毎回、先生の講義では様々な新しい知識や物の見方を学べて、無知の知を自覚できるし、刺激的で楽しいと思っていた。でも、段々と、無知ということは恐ろしいことであり、ある意味では弱者なのかもしれない、と思うようになってきた。」

というようなものです。

そのように自覚して、知ることを楽しい、と思えるようになってもらえれば、放っておいても伸びるようになります。それが、教育の目指すべきところです。

「弱者」という言葉は、様々な誤解を与える可能性があると思うので、私なりの解釈を示しておきます。

自分自身が情報における「強者」だとは思っていません。私ももちろん無知であり、無知の知には至っています。そして、知る、ということの本当の喜びも知っているつもりです。

何のために知るのか?自分自身の楽しみのため、だけでしょうか?

私は教育が職業です。研究も行っていますが、私の第一のミッションは教育であると認識しています。

そうであれば、知ること、知る努力を続けること、知る楽しみを若者に伝えることは、私の義務です。

そして、いわゆる「弱者」の方々も、教育システムの中で育まれた人たちが支える社会の中で活き活きと生きていけるはずです。

そして、いわゆる情報「弱者」の中からも、素晴らしい才能を持った方々がたくさん育ち、素晴らしい仕事なり、芸術なり、をなされるはずです。そして、それらの恩恵を、社会のみんなが享受するのです。

いわゆる情報「強者」は、そのような社会になるように、ある局面をリードする必要はあると思います。決して自己の欲望のための情報独占であってはならない。

まだまだ、学生たちとの真剣勝負は続きます。次回は、「自然災害の克服」です。 


目的からのマネジメント

2014-11-01 12:14:33 | 研究のこと

私たちのコンクリート構造物の品質確保の取組みは、マネジメントだと思っていますが、小澤一雅先生と議論を始めてから、私自身がマネジメントについてより考察するようになったように思います。

マネジメントについては、様々なところに定義がなされているのかもしれませんが、どうもしっくりくるものがありませんでした。日本語が無い、ということは日本にもともと無かった概念である、ということですね。

よく、マネジメントとは「やりくり」である、と言われます。人、物、金などの種々の制約条件がある中で、最善の結果を出すためのやりくり、ということでしょう。

この解釈には同意できますが、本来のマネジメントはもっと深いものであると思っています。

以下は、英英辞典(Oxford)に示されている、managementの説明の一つです。これが、私にはそれなりにしっくりきます。

"the act or skill of dealing with people or situations in a successful way"

「人々や状況に対処するための行為やスキル。ただし、成功しなければならない。」というようなニュアンスです。

日本語の国語辞典等でのマネジメントの定義は、まったく私には理解不能です。

さて、昨日は、横浜市の職員の研修で講師を務めました。タイトルは、「目的からのマネジメント」としました。

目的あっての、マネジメントです。困った状況等がある中で、適切に現状を把握し、状況を改善するための適切な目的を設定し、それを手段を選ばずやりくりして達成すること、それがマネジメントであろうと思います。

様々なマネジメント、マネジメント論が世の中に溢れていますが、目的がよく分からないものや、目的が間違っているんじゃないの?と思うケースもしばしばです。というかほとんどです。

ですから、まずは目的を適切に設定する必要がある。これが実は非常に難しい。

物事の本質が見通せていないと、課題を解決するための目的を適切に設定することはできません。

私は、24歳のときに「7つの習慣」を恩師の岡村甫先生から薦められ、弟子たちでむさぼるように読んで議論し、どうすればその本に書かれているような生き方をできるか、自分の人生で実践を重ねてきました。自分自身の行動原則を定める必要がありますが、それをミッション・ステートメントと呼びます。以下が、現時点での私のミッション・ステートメントです。昨日の研修でも配布資料にこれを記載しました。(このエッセーを書いた後も、少しずつ、ミッション・ステートメントに追記しています)

○ この世に生を受けたことに感謝し、私の心身を健康に保ち、生きがいを持って生活する。
○ 学び続ける。
○ 妻と子供とともに、健康で明るい家庭を築き、家族として高まりあい、真のレクリエーションを楽しむ。
○ 親からは「これが私の息子です」、妻からは「これが私の夫です」、子供からは「これが私の父親です」と胸を張って言ってもらえる人間になる。
○ 家族、親、兄弟などが、健康で明るく、コミュニケーションを十分に持ち、お互いを信頼する集団になるように、行動する。愛情は素直に表現する。
○ 日本人であることを誇りに思い、日本の歴史・伝統・文化を大切に思う気持ちを持ち続ける。
○ 私の能力を最大限に向上させるように努力し、その能力を自身だけでなく周囲のために活用する。
○ 所属する組織、および社会活動においてリーダーシップを発揮するため、リーダーとしての自覚を持ち、適確な方向性を示すための自己研鑽を怠らず、適切なマネジメント能力を身につける。
○ 学者として、誠実に、真実を探求し、「豊穣な社会」を構築するために有用な知識を発信する。
○ 自らを向上させながら、国家の最重要システムである教育に全力を注ぎ、多くの若者の育成に貢献する。また、シビルエンジニア(土木技術者)として日本および国際社会に貢献する。
○ 私にしかできない観点で研究を行い、土木工学の進展に寄与する。
○ 大学にいる環境を活かし、多くの人と議論し、一流のシビルエンジニアになるべく研鑽を積む。
○ 学生たちが「この人からはいろんなことを吸収したい」と思うような魅力的な人間になる。
○ 私の信念に基づく行動が周囲にとっても良い結果をもたらすような人間になる。
○ 私の信念に基づいて目標を設定し、それを確実に達成していく人生にする。
○ 私がいることによってその場が明るくなるような人間になる。 

私は自身の中に確固たる原則があるので、自身の判断や行動はすべてこれらの原則に基づいています。 もちろん、マネジメントするための目的も、これらの原則に基づいて設定します。

私自身、マネジメントの本質が最も凝縮されている本は、この「7つの習慣」であると今、感じています。ドラッカーの本等ももちろんたくさん読んでいますが、そう思います。

自分自身をマネジメントできない人が、家族や組織をマネジメントできるはずがない。

自分自身の時間の使い方を上手にできること、がマネジメントの本質です。第三の習慣は、「最重要事項を優先する」であり、重要であるが緊急でない、第二領域に属することを、どれだけ自分の日常の時間に組み込めるか、です。

以下、昨日の研修の時間に紹介した、私の10/24~31のスケジュールです。研修で見せるために、移動の横須賀線の中でしこしこ作りました。

黄色はいわゆる研究的な時間。ブルーは飲み会ですが、すべて濃厚な、この国の将来を良くするための議論をしている懇親会です。私にとっては欠かせない時間で、ある意味では研究の時間です。ピンクも普通の人であれば嫌な時間(会議等)なのでしょうが、すべて大事な、研究的な時間です。講義も、普通の先生にとっては負担かもしれませんが、私にとっては皆さんご存知のように無くてはならない大事な時間です。この週は、木曜日が、大学全体で金曜日の講義の振替日になっており、普段であれば行う2限と3限のがありませんでした。今学期は、前学期がフランス滞在で不在であったことの埋め合わせのため、講義や講義の準備だけでもかなりの時間を費やします。

 

現在は浦和の実家に住んでいることもあり、移動の時間が長いときもありますが、その分、育児や家事をしなくてよいので、このような過密スケジュールが成り立っている面もあります。

上記のスケジュールのほとんどの時間は、私にとっては第二領域の時間になります。どうやって、そのような時間の過ごし方に持っていくか、が自身のマネジメントの肝になります。

誰だって忙しい。大学教員だって決して暇ではなく、特に工学系の教員はむしろ激務の職業の一つでしょう。だから、マネジメントが重要になります。

上記のスケジュールはごく一部ですが、このようなスケジュールが3週間、休みなしで続いたため、最後の方、夜の黒い部分(寝てる)が増えてきてます。疲労が蓄積してきたのですね。

今日、久しぶりの休養日で、完全復活できるよう、もうすぐ昼寝です。

仕事の準備時間も、基本は移動時間等でこなすしかありません。 そのための能力を中長期的に高めていく必要がもちろんあります。また、質の高い仕事をしていれば、アウトプットが高まるので、実は、準備に必要な時間が格段に短くなってきます。外部での講演や研修も、過去の資料を少し手直しするだけで十分に使えたり、また、資料などなくても何時間でも話すことだってできるようになる。これも、質を高めた時間を重ねることによってのみ、できるようになることです。

マネジメント論に戻ります。

視野を広げて、見識を高めた上で、現状を適切に分析して、課題を解決するための目的を設定しなければならない。

解決する、ということは「実践する」ということですが、そのためにも知識やスキルがないとできない。

だから、マネジメントとは、皆にできることではない、というのが私の結論です。

誰もかれもが、大きな課題を解決するマネジメントをできる必要はない。逆に、マネジメントできる人に任せなければならない。舵取りを、です。その中で、皆が力を合わせて実践し、課題が解決され、状況が改善されていくのです。

ですが、誰でもマネジメントできます。身の丈に合ったマネジメントをすればよいのです。

自分のことがマネジメントできていない人はまずは自分のことを。自分のすべての時間をマネジメントできない人は、ごくごく一部でもよい。

少しでもできるようになれば、その領域を少しずつ拡げていけばよい。私もそのようにやってきたつもりです。

昨日の研修では、私の理解する、上記のマネジメントの本質を伝えた上で(参考図書等も紹介し)、私が実際にマネジメントした事例を紹介しました。

一つは、 10/29(水)に横須賀高校で行った講義の事例。講義そのものをマネジメントしました。結果的に、驚くほどの双方向の講義が達成でき、その成果は生徒たちと一緒に作り上げたワークシートで検証します。

次の事例は、山口県のひび割れ抑制システムです。それで時間が切れて、復興道路の品質確保のマネジメントは概要説明だけに留まりました。

非常に具体的な事例(課題)の中で、私が実際にどのような判断、行動を、どのような考え方に基づいて実践したのか、をすべて公開しました。

一人でも多くの方々が、マネジメント力を身の丈に合って養っていくことが、この国の状況を改善するための重要な要素になろうかと思っています。 


外国を知ると

2014-11-01 09:25:07 | フランスのこと

よく一般論として、外国を知ると、日本を深く知れるようになる、というようなことを聞きます。

フランスに留学する前に、埼玉大のM先生とお話ししたときに、「海外留学するから日本を知れるようになるわけではない。そういう人もいるけど、そうでない人もいる。人次第ですよね。」と私がお話ししたら、「まさにその通り」とM先生は言われました。

人間はどうしても無意識の思い込み、というものも存在します。自分の考え方が間違っている、と思う人はほとんどいないでしょうから、どうしても自分の見方に縛られてしまう。特に組織には、文化があり、システムもあり、物の見方を上から強制される場合もあるため、自然自然に物の見方が凝り固まってしまう場合が多い。もちろん組織にいても、縛られない人もいます。

私は、組織という意味では、JR東日本と、横浜国立大学を見てきました。 また、学生時代の東京大学コンクリート研究室ももちろん、組織です。

複数の組織を見た、ということは物の見方が偏向的になることを抑制する原動力になっていると思います。

私はよく人から、「変わっている」と評されることが多いですが、私からすると、私のことを変わっていると思う人の方が、変わっている方だなあ、と感じます。私は、真っ当に思うことを誠実にやっているだけ、だからです。

そして、フランスで一年を過ごしました。

自分では明確に理由は分かりませんが、やはり、日本のことを以前よりは深く理解できるようになったようには感じます。

外国に真の興味を持つことができた、ということが理由なのでしょうか。

外国(今回は特にフランス)にも真の興味を持ち、いろいろと観察をし、同時に日本に対する興味もさらに強くなりました。

日本やフランス、さらには世界の状況、歴史について知りたいという気持ちが強くなったので、様々なツールを用いて勉強をしたのだと思います。読書ももちろんですが、人と話すことや、現地を見ることなども通して。

視点が増えると、また、思考の軸が増えると、自分自身も拡がっていきます。

日本に帰国して、とにかく人に会う機会がさらに激増し、ほぼ常に人に会っている状況になってきています。

自分自身の専門分野の人たちに限らず、様々なジャンルの方々と会う機会が増えてきている。そうすると、また視点も増えてきます。

たくさん、勉強することだらけです。