細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

施工学

2015-08-27 08:05:20 | 研究のこと

良質の、耐久性の高いコンクリート構造物を造る方法は「一応」分かっている。

でも、すべての現場でそのような構造物が造られているわけではない。ましてや、維持管理の補修・補強が、構造物に求めるべき性能を付与するように適切になされている保証は決してない。

このような状況をどのように改善していくか。

手法はいろいろあろうかと思います。

もう数年近く前になるかと思いますが、前川宏一先生から、「君のやろうとしていることは、施工学、だな」と言われたことがあります。

いざ、品質確保、耐久性確保の実践的な取組みが、産官学の「真の」協働でなされ始めると、実構造物において品質や耐久性が確保されていく割合が増えていくことはもちろん、これまで予想もつかなかった工夫や取組みが出現してきます。また、私たちが本来、求めるべき性能も、少しずつ明らかになってくる場合もあります。

要は、改善することだらけだし、まだ分かっていなきこともたくさんあるのです。

「施工学」という領域を確立できる(≒しっかりと教科書を書ける)よう、復興道路、各地域での品質確保、耐久性確保にしばらくは全力を注力したいと思います。

今日は8月27日。私は日帰り出張ですが、仙台で10時~17時の予定で、品質確保、耐久性確保の産官学の勉強会です。私も30分の持ち時間で、今日発表すべきことを発表します。全体がさらに加速するためのガソリン投入です。

21日は久留米で九州地方整備局と意見交換会。24~25日は南三陸の現場群の視察。27日は仙台で終日勉強会+懇親会、とお盆休み明けの8月下旬は350どっぷりです。 


実践力

2015-08-22 14:35:29 | 人生論

行動力、と実践力は意味も違うと思いますが、行動力のないところに実践力はないかな、とも思います。

Ability to take action,というような意味でしょうから,成功するしないにかかわらず,行動することは基本的には誰にでもできます。

実践力,となるとskillも伴うでしょうか。英語の辞書を調べてみると,practial skillというような訳語も見当たります。

日頃から考えていることを実践するのが実践力でしょうから,ほんのちょっとしたことにも実践力が問われます。昨日は久留米で九州地方整備局の方々とコンクリート構造物の品質確保,ひび割れ抑制についての講習会,意見交換会でした。私の出番もいくつかありましたが,つねに「実践」することを意識して行動しました。

今,自分に求められている言動は何か。この瞬間に尽くせるベストは何か。それを常に考えて,その瞬間に実行していきます。それが実践かと。

また,先ほど,書きかけていた論文,「学校での防災授業を活用した地域防災力向上に関する研究」を完成させました。8月31日の防災シンポジウムで発表します。地域防災力向上についての研究を3年前から始めましたが,これに関する私自身の論文は初めてです。これからも研究を続けるつもりですので,いろいろと情報発信していければと思います。

改めて,論文としてまとめてみると,原稿を関係者に配布することもできるし,いろいろと波及効果がでてきます。自分の考えていることを文章に取りまとめることは,やはり極めて重要です。形に遺るし,考えもより正確に他者に伝わります。8月31日のシンポジウムでも,この原稿を後で読んでいただけるよう,発表においてもベストを尽くしたいと思います。

考えていることを実践し,実践して学んだことをまた文章にまとめて考えを整理する。

この連続ですね。

以前から,行動力がある,とは自分自身思っていませんが,実践力は少しずつ身に付いているように感じます。第一線に立っている教育者,工学系研究者,技術者,として,常に実践を意識したいと思います。


村上さんと日常

2015-08-19 19:35:41 | 趣味のこと

もりもり読書している状況ではありませんが、気張らずに夏休みらしい自分のペースでの読書を続けています。

村上さんのところ」を書店で見つけて購入しました。

私は村上春樹の大ファンですが、ファンになったのは大震災の後、と比較的新しいファンです。ファンになった後は、いくつもの長編小説、短編集、エッセー集など読み漁っています。

村上さんの「常識」が好きです。

今回の「村上さんのところ」は、メールで村上春樹に寄せられた3万を超える質問に対して、村上春樹が回答した問答を厳選したものです。「量が質に換わる」とは、私の師匠の言葉の一つですが、村上さんもこれに相当することをこの本の冒頭で述べられており、読み進めるうちに私もそれを感じました。

一般人の、あまりにも多種多岐に渡る質問、相談に、村上春樹が答えていくわけで、そこには様々な人間模様や、村上春樹の根幹も多くの場面で垣間見えます。

どんな困難な状況も、日常の淡々とした着実なリズムが凌駕する、というニュアンスの回答がありました。

健康に気を付けて、肉体の活動を主軸に据えたステディーな、リズミカルな日常を実践していると、大抵の不安や不調は去って行ってしまう、というアドバイスです。

私も心からそう思います。

また、人生に悩む相談者は多く、人生の意義を問う質問者に対し、人生など「容れもの」であって、その中の中身が重要であり、「容れもの」の意義など考える暇があったら、そこに何を入れるかを考えよう、という村上さんの回答に全く賛同です。

私が村上春樹のファンである理由は、村上さんの常識が私の考え方に非常にフィットするからなのだ、とこの本を通して改めて感じました。

8月18日からの一泊の、鴨川シーワールドと千葉の山奥での一泊の子供たちとの旅行は、大変に面白い時間で、私も人生で初めて、山ヒル(小さなやつでしたが)に血を吸われたりもしましたが、自分の日常をダイナミックに取り戻す、よい機会になりました。

今日は、私の2015年の夏休みの最終日でしたが、自宅で十分に仕事もし、昼食、夕食ともに非常に健康に気を付けた食事を作って子どもたちと食し、洗濯・掃除等にも精を出しました。 

明日からハードな仕事に復帰しますが、様々な段取りも整えたので、ひたすら日常を歩むのみです。

毎年恒例の10月からの激務の5ヵ月も近づいてきましたが、突入してしまえば日常です。 


夏休みとインフラ

2015-08-19 12:18:27 | 人生論

今年は、8日間の夏休みをとることができました。家族旅行にも行きましたが、車での移動がほとんどで、道路インフラを十分に活用させていただきました。

首都高速道路を経て、中央高速道路。とても涼しい蓼科で家族でリラックスして過ごしました。

15日には、初めて諏訪湖の花火大会にも行き、諏訪湖周辺のインフラの整備状況を考えて、花火の前後の行動も慎重に計画しました。

花火大会の最寄駅はJR東日本の上諏訪駅です。会場周辺の駐車場は午前中で一杯になるとWeb情報にあったので、車は富士見という駅の近くに置いて、電車で上諏訪へ20分ほど。往復の切符を買っておかないと帰りは大変、とのことでした。

19時からの花火でしたが、上諏訪に着いたのは13時過ぎ。会場周辺の状況を確認して、結果的にはセブンイレブンの駐車場を花火鑑賞に開放しているところで観ることにしました。一人2000円。家族で8000円。他にも選択肢はあったかもしれませんが、日差しが強烈であったこともあり、決断しました。とても、その会場で待ち続けるわけにはいかない暑さだったので、近くの日陰で、屋台の食べ物等も購入して、まったりとくつろぎました。

19時開始後の花火は圧巻。最後は全長2kmのナイアガラだそうですが、帰りの混雑はすさまじいものになるのは目に見えているので19時50分くらいで退散。幸い、駅には無混雑で到着し、すぐに来た電車で富士見駅まで座って戻れました。Web情報によると、花火が終了してから戻ると、上諏訪駅まで2時間の行列。松本駅に到着できるのは24時ごろ、だとか。

普段は5万人の人口の諏訪に、50万人もの花火の客が集まるときのインフラの貧弱さ、を身をもって経験しました。この状況で火災や自然災害等が発生したらどうなるだろう、とも想像しました。

18日からは子供二人と私とで、千葉へ一泊。鴨川シーワールドでシャチのとんでもないショーでずぶ濡れを楽しんで、山奥で一泊しました。おそらく4年半ぶりに東京湾アクアラインを通りました。非常に交通量が多く、圏央道の整備もかなり進んでおり、力強く首都圏の交通・物流を支えるアクアラインに感激しました。劣化も少し心配になりましたが。

一泊後の19日は、長女の塾が9時からあったため、千葉の山奥の宿を7時前に出発。圏央道まで30km弱、一般道を走りましたが、圏央道に到達してからは非常にスムーズで、アクアライン経由で都心にほぼ無渋滞で戻りました。羽田空港の近辺で数kmの渋滞がありましたが、交通は緩やかに流れていました。

インフラの重要性、交通・物流の重要性を、自分で高速道路等を走りながらもずっと感じていました。東京湾アクアラインは、私が大学生のころにちょうど建設中でしたが、これほど重要なインフラになるとは思ってもいませんでした。

インフラの重要性が分かる、ということは社会というものの大きさ、大切さが分かる、ということなのだろうと思います。若いころの私は、インフラに支えられる社会の大きさ、大切さが分かっていませんでした。

そして、社会を支えるという覚悟のもと、インフラの整備、維持管理に当たっている方々のご苦労、ご努力に敬意の念をいだいた夏休みでした。

かなり以前にも思いましたが、長野県の一般道の舗装はかなり質が低いように思います。いまだに、一時の県の公共投資削減の影響を引きずっているのでしょうか。


師匠の言葉

2015-08-06 06:54:08 | 教育のこと

昨日は、内閣府の研究プロジェクト(SIP)の大きな打ち合わせでした。

ゲストとして、私の師匠の岡村甫先生と、岡村先生が技術者として尊敬しておられる御子柴さん、大内さんが来られました。14時から18時前までの研究に関する濃密な議論と、その後は立食での懇親会もありました。

私は会議の最終盤に、復興道路の品質確保の動向を紹介しました。発表時間は10分でした。

懇親会の場で、師匠の岡村先生に「しかし、あなたの実行力はすごいな。」とおっしゃっていただきました。

学生時代や、博士課程が終わった後ぐらいには、研究でほとんど褒められることはありませんでしたので、師匠の言葉は素直にうれしいものです。

「復興がそのように進むのは素晴らしいことだね。本当に頑張ってほしい」とも、一番最後、お別れするときにも言われました。

また、首都高、メンテナンス会社で長らく活躍された大内雅博さんからも懇親会で、「あなたのような方が今の時代でも頑張っているのを見てうれしく思った」とおっしゃっていただきました。

今の時代のやり方と異なるのかもしれませんが、私には私のやり方しかできません。

周囲の同志たちと自律分散で連携しながら進んでいる方向が、本当の大先輩方から見ても間違っていないのだな、と改めて感じました。

勇気を持って前進いたしましょう! 


地域防災の研究

2015-08-04 10:46:35 | 研究のこと

1年のフランス留学もあったので、日本の各地域で研究を行うことには多少の苦労もありました。

私の研究はとにかく地域で実践するものが多く、コンクリート構造物の品質確保にしても、地域防災力向上にしても、そうです。

過去3年間、広島県福山市の鞆の浦を主戦場の一つとして地域防災の研究に取り組んできました。今年以降も継続します。私が鞆の浦に行く機会が少し減っていますが、初代の卒論生の赤間君も社会人ですが鞆の取組みに復帰しており、 福山市の市制100周年に向けて様々な取組みが活性化していくものと思います。今年度、開講した鞆の浦塾で9/11-12に私も地域防災の講師として登壇しますので、これもとても楽しみです。

今日は、保土ヶ谷区区民会議の方々が私を訪ねてこられました。

11月14日に区民のつどい、というイベントがあり、そこで家具固定について講演と実践を行うことになっています。

30分の予定で話し始めましたが、とても盛り上がり、いろいろと連携のアイディアが湧いてきました。すべて実践に移すと思います。

今週末の7日(金)には今日の方々をご紹介していただいた、保土ヶ谷区の防災担当に我々の取組みを説明に行きます。

大学の地元の保土ヶ谷区の自治会での防災力向上や、学校での防災授業等が活発になっていくととてもうれしいです。

しっかりと本質的な取組みを日ごろから行っていれば、いざ大きく展開していくときにも柔軟に対応できます。

今日は、私の論文としては初めての、学校防災教育に関する論文を書いています。8月31日の防災シンポジウムで発表します。 


物語

2015-08-04 09:07:15 | 人生論

週末にテレビを見ていた時に、佐藤真海さんのことを取り上げていました。ご存知の方も多いかと思いますが、学生時代に足首の骨肉腫でひざ下を切断し、その後、パラリンピックで大活躍、東京五輪の招致の際も活躍された、笑顔の素敵なアスリートです。

癌を経験してどうであったか、と、同じく乳癌を経験した、佐藤さんに憧れてきたレポーターが問いかけ、佐藤さんは答えました。癌を経験したからこそ、出会った人たちがあまりにも多く、失ったものよりも、得たものの方が大きい。笑顔の裏の強い思いや、様々なことを受け入れてきた懐の深さに、感銘を受けました。

人生をやり直すことなど決してできませんが、やり直したいかと問われても、やり直したいとは決して思いません。

私自身の人生に悔いが無いわけではありませんが、これまでの選択を重ねてきた結果、非常に多くの方々と出会うことができ、楽しい仕事もすることができています。人生をやり直したとしたら、それらの方々との出会いは無いわけで、そのような人生は今の私には想像もできません。

社会人になって以降の私自身の人生においても、すでにいくつかのステージがあったように思います。2009年からは、私の中では山口物語が始まり、それは東北復興物語へも発展していきます。

山口物語はまだまだ終わっておらず、今後も進化を重ねていくとは思いますが、実は今年は一つの大きな区切りの年です。

区切りの年ならではの種々の取組みもすでに種まきの段階から発芽へと入ってきており、とても楽しみです。

物語はいつまでも続くからこそ、物語です。

一つ一つの区切りを大切に、人との出会いを大切に、です。