細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

今後の社会のあり方とは?

2024-09-06 08:33:34 | 社会問題

失われた30年、という言い方をよくされます。

経済政策の失敗(緊縮財政、デフレ状況で政府が適切な財政出動=投資をしっかりしてこなかった)という見方もよく言われますし、その背景には大東亜戦争での敗北(受け入れざるを得なかった)の後の、アメリカの強烈な占領政策の影響があるのは間違いないと思います。

とは言え、時代は激変していくし、私たち日本人もこの激動の世界をたくましく生き抜いていく必要があります。

大雑把に言うと、産業革命の影響が日本にも明治維新のころから及ぶようになり、いわゆる近代化の中で、人間の力(田+力=男)でやるべき仕事が、機械に置き換わりました。膨大なエネルギーや資源を使って、苦行から解放されてきた、という歴史が一つあります。武田邦彦先生は日本においてはその頂点が1970年ごろであった、とのことです。

その後、いわゆる重厚長大から、ソフト分野が大きな進展を見せ、ITの時代が始まりました。日本では1990年ごろからと言われています。皆さんがパソコンや携帯電話などを普通に使い始める時代です。

産業革命により人間が「力」から解放されたのに続いて、今度はIT革命により人間は「知」、頭脳労働からも解放されようとしています。

30年間が失われた時代だとしても、その間、とてつもなく便利な時代になりました。

そして、この先は、何を「豊かさ」としていくのか。

GDPに象徴される単純な経済発展の時代は終わった、とする識者もいます。

GDPがどんどん縮小してよいとは私は思いませんが、物質や情報を得ることだけで幸せが得られるとは全く思いません。

見た目には、物質にも満たされ、情報(ガラクタ情報も含め)に溢れた社会になっている。

だけれども、多くの方々が幸せである、とはとても思えない。

今後は、どのような社会を目指すべきなのでしょうか。

私は、「絡合」、適切につながる社会、であろうと思っています。

私の専門のインフラも、IT技術も、基本的には人々をつなぐためのものです。

特に日本においては、強力な絡合的な社会であった状態を、分断と孤立、という悲惨な状況に追い込まれてきました。

今さら大家族制が復活するとも思えませんが、生物の本質である絡合的な生き方(人間の体も、無数の細胞が絡合して、一つの生命体を成している)に向かっていくべきだと思っています。

同志たちでつながり合い、生命体のように自律分散的に、かつ、ゆるく大きな正しい方向性に向かって進化していく。正しい方向性とは何か、についても常に議論が必要ですが、私は本来の日本人の伝統・文化・死生観などは、世界の正しい方向性のために重要な役割を果たすと思っています。

絡合、つながる、とは仲良しこよしのお友達グループ、というわけではありません。生命体、生物集団は強い。弱肉強食や壮大な食物連鎖の中で生き抜くための根源が、絡合です。絡合はしなやかであり、強靭なのです。

絡合。つながり。どのようにつながるか、がつながり方。

豊穣な社会研究センターのつながり方研究所、の役割は大きいと思っています。


「豊穣祭」?「新嘗祭」? ー米と土木ー

2024-09-05 08:43:56 | 研究のこと

11月23日が何の日かご存じですか?以前は、新嘗祭の日だったことをご存じでしょうか?今は、へんちくりんな名前の日になってしまっていますが、なぜ変わったのか(大東亜戦争で敗北を受け入れたことが関係しています)、ご存じで無い方は勉強してみてください。

さて、11月24日(日)に、豊穣センターのイベントを実施することになりそうです。23日に実施したかったのですが、コアメンバーの予定が合わず、23日は前夜祭的なイベント(都合の付く方々で遅めの午後からイベント)、24日の午前にイベント本番、としたいと思っています。

「食糧」とくに、「米」をテーマにします。

私は、土木、インフラの重要性を、個人の生活への影響や、社会の健全な発展、防災・減災などの観点から話すことが多いのですが、理解していただける場合も多いですが、なかなか一般に浸透しません。

「食」をテーマにした方が面白いし、身近に感じるのではないか、と以前からぼやっと思ってはいましたが、昨日の、元気なインフラ研究所の所長のマツさんと、仙台でゆったりと昼食を取りながらの対話で、双方が確信し、今回のイベントを実施することにしました。

日本人にとっての最重要な食糧とは?間違いなく、米です。

新嘗祭。五穀豊穣を祝う、最重要とも言える神事。

米を食わなくなり、小麦食が激増し、健康を失った日本人。大きな圧力が、戦後かかり続けていることは当然ご存じかと思います。

ベトナムに数多く出張しますが、様々なおいしい麺の食事がありますが、米の麺ばかりです。私の周囲にはずっと力説していますが、小麦の麺などやめて、米の麺を普及すべきと思います。ものすごくおいしいですよ。

自然災害に対する防災も大事。でも、まずはとにかく食糧安全保障、です。食わなければ死にます。

米、大豆、魚。極論すると、この三つを死守すれば、日本人は生きていけると思っています。我が国家、国民は、この三つをどれくらい大事にしてますか?本当に飢える時代が迫ってますよ。

極端な減反政策。食糧安全保障を捨てて、札束で食糧を輸入し、増えた人口を危険な土地に密集させて住む。災害が増えるに決まってます。

米の問題から、国土の利用の仕方、個人の健康問題、新嘗祭をはじめとする日本国の成り立ちや伝統・文化への興味・憧れ、様々な話題に発展できます。

とにかく日本の食事はおいしい。8月下旬にアメリカの西海岸に一週間ほどおりましたが、使いやすいフリーウェイ(高速道路)と大谷翔平の活躍をドジャースタジアムで観たこと以外、アメリカに魅力を何一つ感じませんでした。食事はまずいし、高すぎる。

食事は楽しいですね。食文化と言いますから、日本の良さを見直すことにもなるでしょうし、少なくとも食事をしない人はいませんから、極めて多くの方々の関心につなげることができると思います。

米と言えば、日本酒。日本酒も、戦前は純米酒しかなかったことをご存じですか?日本酒にはいろんな種類がありますが、私は基本、純米酒しか飲みません。大吟醸、吟醸、などとこだわっている方もおられますが、そもそも純米でないかどうか、そちらの方が重要と思います。なぜ、純米酒で無いものがこれほど多く出回っているのかも知ってますか?結局、敗戦(終戦)がきっかけです。

米、五穀豊穣、豊穣な社会、土木、食文化、安全保障、国土、田園、天皇、古事記、・・・

キーワードは増えるばかりと思いますが、

11/23、24にイベントを開催しますので、ぜひご参集ください。イベントの詳細は、追ってご案内します。


素直さ

2024-09-05 08:08:36 | 人生論

「素直であること」の大切さについては、私の過去のブログでも何度か書いてきました。今の時点で、改めて、素直さの大切さを強く感じていますので、土木学会全国大会で仙台に来ている今、書こうと思います。

時代は激変しています。100年に一度くらいの変化が生じていると言う人もいますし、もっと大きな変化だと言う人もいます。私もそう思います。また、過去の古き良き時代があるとして、そこに戻りたいという気持ちを持つ人も少なくないと思いますが、我々人類は、前に向かって進んでいくしかありません。

人口爆発、食糧・エネルギー不足、大都市の過密化と地方の過疎化、人間個人の分断と孤立、先の見えない時代における不安、問題は限りありません。豊穣センターが真正面から立ち向かう、防災・減災や、インフラの長寿命化・維持管理なども、極めて大きな課題です。

時代や社会が変わるのですから、人間個人も変わらざるを得ないと思います。何のために変わるべきなのでしょうか。

幸せに生きるためだと思います。

何をもって幸せ、豊穣、豊穣な社会、というのか。それこそ、今、そして今後、問い続けるべきです。問うて、実践すべきです。

変わるためには何が必要か。素直さ、でしょうね。

私の周囲を見ていても、素直でない人はとても多い。私の本当に近くにいる方々は、素直な方が多いです。

素直でない人と話していると疲れる。もう一度話したいとあまり思わない。話していても、受け入れる様子もないし、とにかくクリエイティブに会話が進まない。

素直な方、学ぼうとする方、変わっていく時代、社会に適切に対応し、少しでも貢献したいという気持ちを持つ方々とは、話していて楽しいし、その時間こそが幸せ、豊穣、であると感じます。

私自身は、素直な方だと自覚しているし、いろんな方に「素直ですね」と言われるので、おそらく素直な素質は持っているのだと思います。そのように育てていただいた両親や先輩方に深く感謝いたします。

私自身、本質的には生まれたときからそれほど変わっていないとは思いますが、多くの方々の導きや、自身が置かれた環境において、数知れず、変化を遂げてきました。

今回、2024年の3月末くらいから経験した、自身の体調の不良(基本的には過剰な業務、責任から来ていた)、精神面での脱皮、心身のバランスを高次元で確保するための人生設計・生活環境・生活スタイル・仕事スタイルの大転換、は私自身にとって極めて大きな学びの期間となりました。

その期間、本当に信頼できる方々とたくさんコミュニケーションを重ね、多くの新たな出会いがあり、同志が増え、豊穣な社会を目指していく人のつながりが急速に増えてきました。

素直であり続け、学び続け、そして誠実であり続けるために努力を重ねる。

逆説的ですが、素直であるためには、したたかさも必要です。

私が素直で、学び続けられるのは、そして誠実であり続けられたのは、研究者であるから、という面が大きいと思っています。

自然科学、工学の場で研究、実践をしていると、自分の仮説や思い込みが覆されることなど日常茶飯事。日々、学びます。そして、自分の思い込みほど恐いことはない、と思い知らされます。

社会で実践、技術や考え方などを社会に実装、していくとなると、素直なだけでは上手く行きません。原動力は素直さでよいと思うのですが、誠実かつ、したたかさ、たまにはずる賢さも合わせ持っていないと、大きな改善は形になりません。

清濁併せ呑む、というような言葉もあります。

今回の仙台出張は、とても大きな仕事はすでに終わりましたが、自分一人の時間も多く、休養も取りつつ、その時間を貴重に使わせていただいています。また、多くの方々と懇親する場もいくつかあるので、豊穣な社会のための、豊穣な時間となるよう、素直さを前面に出して全力で懇親します。。。


ベトナムのダナンの出張レポート(前半)

2024-08-17 15:36:38 | 研究のこと

今年度、初の海外出張となりましたが、4月頭からの地獄のような「脱皮」「大転換」の4ヶ月を、「無事に」?乗り切って、今回の出張にたどり着きました。

ダナンに来るのは10回目くらいだと思いますが、多くの教え子やその仲間たちにいつもサポートしてもらい、充実した出張になります。今回は、生コン工場、ゼネコン、山岳トンネルの運用やメンテナンスも担当しているゼネコン、大学の研究者たちとの交流や将来の協働のための議論を、たくさんさせてもらっています。

私自身の言葉で書いてもよいのですが、私の出張の前半に同行した、長岡生コンの宮本充也さんのブログが面白いので、それらをご紹介します。。。

1. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート① 「やっぱ最初からトラブル」

2. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート② 「なぜかダナンでひとりぼっちなんダナン」

3. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート③ 「生コン工場さえあれば世界中どこでもオワコン」

4. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート④ 「お仕事の合間に観光で骨休め」

5. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート⑤ 「建設コンクリートグループDUFAGO訪問」

6. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート⑥ 「ベトナムの残コン現場視察」

7. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート⑦ 「インフラ大手DEOCA訪問」

8. 何かとお騒がせ中 【ホソヤン】 と行く! ベトナムダナンのコンクリート視察レポート⑧最終章 「日本のゼネコンが手がけたトンネル視察。ありがとうベトナム」









元気なインフラ研究所 第5回セミナー(8月10日17:00~)

2024-08-08 09:55:34 | 研究のこと

豊穣な社会研究センターの元気なインフラ研究所の第5回のセミナーを開催しました

土曜日の夕方ですが、ビールでも片手に、お気軽にご参加ください!
⇒ 私はそのように参加しました!


豊穣だより、第2号、第3号

2024-06-24 07:53:08 | 研究のこと

豊穣な社会研究センターの発行する、豊穣だより、第2号第3号がリリースされました。

手作りで広報しておりまして、第1号の発刊から少し時間がかかりましたが、ご愛顧のほどお願いいたします。



豊穣な社会研究センターの秘書さん公募!

2024-06-23 06:47:17 | 職場のこと

皆さんへ 豊穣Cの秘書さん、公募です!

https://www.ynu.ac.jp/hus/ias/31979/detail.html

周囲にいい方おられたら、ご紹介してください!


「スランプ保持型の混和剤の活用について」

2024-06-18 04:52:04 | 研究のこと

「スランプ保持型の混和剤の活用について」

 本稿では,スランプ保持型の混和剤を用いたコンクリートの土木分野での活用の状況や今後の方向性について,筆者が知る情報をお伝えする。

 筆者の学部の卒業論文の指導教員である小澤一雅先生の博士論文は,自己充填コンクリートの開発であった。しかし,土木分野では長らくスランプ8cmが当たり前とされ,ようやく12cmに標準的な値が移行するような状況であり,スランプの比較的小さなコンクリートが今でも用いられている。そして,スランプロスの問題が当然に品質確保の達成を阻害する大きな要因となる。

 筆者が2009年から関与する山口システム(品質確保システム)の発端は,田村隆弘先生(当時,徳山高専)をリーダーとするコンクリートよろず研究会(一期目)であるが,長い休止期間を経ての二期目(筆者もメンバーの一人)の活動テーマが混和材料であった。その動機は,コンクリートに関わる産官学の様々なプレーヤーのほとんどが,混和材料についての深い知識をほとんど持っていないことであり,今後のコンクリートは混和材料なしには成り立たないことは自明であろう。

 コンクリート用化学混和剤を使用する際,現場で重視される機能は何かについて,コンクリートよろず研究会が業界関係者へ幅広くアンケートを実施した。約2ヶ月間の実施期間で全国から521件の有効回答を得た。「化学混和剤を使用する際に重視している項目」,「化学混和剤について機能を追加,強化して欲しい項目」への回答を集計したところ,いずれの問いにおいても,最も多くの回答が寄せられたのが「スランプ保持性能」であった。スランプロスの問題が業界で大きな課題になっている証左であろう。

 筆者は,2023年に改訂された土木学会コンクリート標準示方書の施工編の改訂部会の代表幹事を務めた。その改訂において,スランプロス問題に風穴を開けるため,暑中コンクリートの35℃問題に取り組んだ。コンクリートの打込み温度が35℃を超え,38℃以下の極めて厳しい暑中環境において,十分なスランプ保持性と適切な凝結遅延性を与える混和剤の使用を条件とすることとした。暑中期にスランプロスの問題が顕著になり,施工時の不具合が発生するリスクが極めて高くなるからである。JIS規格が十分に整備されていない領域の混和剤であったため,JSCE-D504「暑中環境下におけるコンクリートのスランプの経時変化・凝結特性に関する混和剤の試験方法」を制定した。この試験方法による試験を実施し,示方書の施工編に示される判定基準を満たした混和剤を用いる仕組みとした。

 この改訂は,土木分野で深刻化するスランプロスの問題を改善するための重要な一手,というのが筆者の認識である。筆者は個人的には,フレッシュコンクリートの世界からスランプロスという問題が無くなることが理想と思っている。一気にその状態に飛ぶことはできないため,今回はその出発点としてでき得ることをやったという認識である。

 上記の改訂のための準備は,土木学会コンクリート委員会の3種委員会である「養生および混和材料技術に着目したコンクリート構造物の品質・耐久性確保システム研究小委員会」(356委員会,委員長は筆者)のWG2(菅俣匠主査)で行い,JSCE-D504の叩き台を作成した。その叩き台が土木学会コンクリート委員会の規準関連小委員会での度重なる審議を経て,制定された。

 現在,コンクリート委員会の2種委員会である「暑中コンクリートの設計・施工に関する研究小委員会」(253委員会,委員長は筆者)が指針の原案の初稿が出来上がり,常任委員会での審議にかけられるよう段取りを進めている。この指針には,スランプ保持型の混和剤の活用がさらに進む社会となるような仕組みが盛り込まれるよう,全力を尽くしているところである。

 ここからは,国内外でのスランプ保持型の混和剤の活用状況について事例を紹介する。

 筆者は,2021年12月に,広島県の生コン工場を視察した。この工場では,2021年6月にJIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)に規定され,JSCE-D504に準拠した試験で示方書の施工編の判定基準も満たすスランプ保持型混和剤(暑中対策用混和剤)を社内標準化した。同工場では土木配合による暑中期の打設において,スランプロスの慢性化が課題となっていた。更に山間部の災害復旧現場では運搬時間だけで60分以上を要するため, 汎用の高機能AE減水剤ではスランプロスが生じ現場での品質確保が困難となる事例があった。そこで,スランプ保持型の混和剤を採用し,その結果,フレッシュコンクリートの性状は極めて良好な状態が保持され,スランプ値は製造直後から2時間経過後においてもJISの規定範囲を維持する品質となった。筆者は,生コン工場を視察した同日に,災害復旧現場の砂防堰堤を視察した。コンクリートの仕上がりは素晴らしく,筆者らが開発した目視評価法で私が点数を付け,非常に素晴らしい出来であることを定量的な数値でも確認した。なお,この工場では,混和剤を切り替えた後は,厳しい暑中環境下においてもスランプロスによるクレームはゼロであったとのことである。

 JIS A 6204に規定されているスランプ保持型の混和剤は,ある混和剤メーカーにおいては,全国で使用されるAE減水剤の年間数量ベースで1割程度(西日本では2割)の使用とのことで,普及が進んでいる状況にある。生コン工場数の減少は,生コンの安定供給の観点からはゆゆしき事態であると認識しているが,荷卸しの時間制限,土木分野での打込みに関する時間制限,打重ね時間に関する時間制限などの緩和についても,構造物のコンクリートが品質確保されることが前提で,慎重な検討が重ねられることを期待したい。

 国外での動向を述べる。シンガポールなどの日本より厳しい暑中環境の国では,このような化学混和剤の活用について日本よりも進んだ状況にあるようであり,生コンの製造会社にヒアリングを行った。

 ヒアリングは,2023年7月18日(火)に,シンガポールの第2番目の規模の生コン会社であるISLAND CONCRETE (PTE) LTD.のSenior Technical Managerに対して筆者が行った。ISLAND CONCRETE社は,シンガポールで2番目の規模の生コン会社であり,7工場で,一月の出荷量が200,000m3/月程度をほこる。ちなみに,シンガポール最大の会社は,350,000~400,000m3/月程度の出荷量とのことであった。

 暑中コンクリートの温度について尋ねたところ,コンクリートの温度に対して付加価値が認められており,28℃以下の場合に+12ドル(シンガポールドル),30℃以下の場合に+8ドル,32℃以下の場合に+4ドル,とのことであった。ちなみに,コンクリートの単価はおよそ100ドル/m3とのことであった。フレッシュコンクリートの温度を下げるために氷が使用され,練混ぜ水の35%程度を氷で置換することもあるようで,氷はマレーシアから輸入しているとのことであった。1トンの氷が90ドル程度とのことであった。

 水和熱を低減するために,高炉スラグ微粉末を70%以上置換したコンクリートも出荷されているようで,+5ドルの付加価値とのことであった。フライアッシュは,産業廃棄物との扱いで近隣の国からは輸入できない状況のようで,日本からフライアッシュを輸入しているそうである。フライアッシュを30%程度置換した,水和熱抑制型のコンクリートが出荷されているとのことであった。

 スランプ保持型の混和剤についても,スランプ保持時間の付加価値が付いたものが流通している.日本のJIS製品に近いと思われる”Concrete Family”と呼ばれる一般的なメニューには無いそうであるが,発注者が希望すれば,通常2時間程度のスランプ保証が,4時間,6時間,8時間,10時間といった長時間のスランプ保持が可能なコンクリートが出荷されている。また,アジテータ車が9~12m3を積載可能なものがシンガポールのRoad Authority(道路管理者)のルール変更により許可されており,生産性が向上しているとのことであった。工場のミキサーも4.5m3の容量とのことであった。自己充填コンクリートの普及率は5%程度であろう,とのことであった。ヒアリングを通じて,シンガポールの生コン会社に大きな活力があることが感じられ,コンクリートの温度やスランプ保持時間などの品質に明確な付加価値を認める市場が形成されていることに大きな刺激を受けた。

 以上,筆者の知る情報を述べた。読者の何らかの参考になれば幸いである。

 

 


豊穣な社会研究センター 爆走?体制が構築

2024-05-24 03:39:42 | 研究のこと

豊穣な社会研究センターが設立されて1年1ヶ月が経過しました。

準備に時間がかかりましたが、2024年度に入ってメンバーも変更となり、体制も構築され、3つの研究所の所長も確定しました。

メンバー表に掲載されているメンバー以外にも、学外に無数の連携者がおり、さらに増えていきます。豊穣Cのメンバーは今後、どんどんと充実していきます。

豊穣Cの本質は、「コンサルティング」です。お悩みに寄り添い、必ず解決策を提示します。不安が解消します。

「困ったら?」

「豊穣センターへ!」

あなたが知っている豊穣Cのメンバーや関係者に、なんでも相談してください。様々なプロが、どんなお悩みにも相談に乗り、具体的な解決策をご提示します。

行政、民間企業、大学関係者、一般の方々、
インフラや、数値シミュレーションなどに限らず、
(インフラについては、すでに「元気なインフラ研究所」のコンソーシアムが設立。申し込みはいつでも)

「つながり方研究所」という、人と人のつながりについてもプロ集団がそろっていますので、「孤立と分断」という近代社会の象徴的な現象の中で苦しんでおられるあなたも、ぜひご相談ください。

様々なイベントも展開していきます。

1) 「和のAI・コーチング」をYNUから発信!2024年5月27日(月)15:00~17:30
https://note.com/hojo_ynu/n/n541acf5e9d59

2) 真に我が国が発展するためのインフラのありかた 2024年5月28日(火)13:30~15:30
https://note.com/hojo_ynu/n/nd5eaeeea0395

3) YNU dialogue 「福島の今を知り、100年後の豊穣な社会を考える」のご案内  2024年5月28日(火)18:00~
https://note.com/hojo_ynu/n/n952e35a34a31?magazine_key=m76da01fc3a4f

今後の豊穣Cの様々な展開に、乞うご期待!


体調の回復

2024-05-17 08:47:42 | 人生論

私のことを心配しておられる方もおられると思いますが、体調がようやく回復しました。

5/10(金)にほぼ完調に戻った感覚を持てたのですが、それまでアップアップで乗り切っていたので、いろいろとご迷惑をおかけしたかと思います。

5/13(月)の週も、「生き返った」ような状況において、慌ただしい日常生活をどう回していくか、に適応していくのに時間がかかり、私を支えるスタッフたちと連携しながら、回復のプロセスがほぼ完了しました。リハビリがほぼ完了した、というイメージです。

まだ少しご迷惑をおかけしてしまうことがあるかもしれませんが、ほぼ回復しましたので、ご安心ください。

5/16は一泊で岡山へ出張しておりました。

来週あたりから動きが激しくなり、5/27の一週間は、激動となります。何とか心身が付いていけるよう、整えたいと思います。


YNU dialogue 「福島の今を知り、100年後の豊穣な社会を考える」のご案内

2024-04-18 14:58:16 | 人生論

豊穣センターの主催で、5月28日(火)の夕刻に、素敵なセミナーを開催します。

とみおかワイドメーヌ代表の、遠藤秀文さんをスペシャルゲストにお招きします。

私は、遠藤さんのことを2024年3月3日に初めて知りました。富岡町で活躍する様々な方々の実際のお話を伺う2日間のツアーに参加し、何度も感激するような素敵なツアーでしたが、ツアーの二日目の朝に、遠藤秀文さんのお話をオンラインで伺いました。

私は、遠藤さんのお話の後半はずっと泣いていました。魂が震えるような感覚でした。

16,000本のワインのための葡萄の木を植える。もうすぐ16,000本に届きます。この数字は、大震災の前の富岡町の人口。

葡萄の木は時間をかけて質が高まっていくそうなので、まさに100年後の富岡が豊穣になるための取組みを実践しておられるのです。

2024年4月13日に、富岡町で開催された「福島再生塾」の開塾式に私も参加させていただき、そこで遠藤さんと初めて対面でお会いしました。

福島再生塾での遠藤さんのご発言の中に、「双葉郡8町村は、復興の方向性がバラバラで、方向を見失っているように思える。分断と孤立が加速している。」というような主旨のものがありました。これは、我が国の状況そのものではないか、と私は瞬間的に感じました。

さあ、5月28日に、遠藤秀文さんを横浜にお招きします。対面で参加できる人数には限りがありますが、ぜひぜひ、オンラインでもなるべく多くの方々に遠藤さんのヴィジョンを聴いていただき、福島の、そして我が国の将来について考えませんか?



豊穣センターのニュースレター

2024-04-18 11:39:58 | 研究のこと

豊穣な社会研究センターのニュースレター第1号が、発刊されました。

広報担当の古川さんが、デザインしますので、細田のテイストとはかなり異なった素敵な感じになります。。。

豊穣センターでは、様々な魅力的なセミナーやイベントも開催していきますので、ぜひ、ご興味のあるものに参加いただき、仲間になってください!


「品質確保物語」から「元気なインフラ物語」へ

2024-04-10 09:05:43 | 研究のこと

道路構造物ジャーナルNETという、ウェブ上の専門誌にて、「品質確保物語」という連載を続けてきました。

私が2009年3月3日に出会って衝撃を受けた「山口システム」(当時は、コンクリート構造物のひび割れ抑制システム。現在は、ひび割れ抑制も含む品質確保システムへ拡張。)が立ち上がる経緯や、発展していく経緯、2011年の東日本大震災の後に復興道路で多くの構造物の品質確保や耐久性確保へとチャレンジが展開していった状況を、物語として連載してきました。

連載は、49回まで続き、皆さんが見やすいように、私自身が運営しているHPに集約してあります

ところが、出版社の事情で、道路構造物ジャーナルNETは今後、更新がなされないことになってしまいました。というわけで、「品質確保物語」も終了となります。

ところが、ところが、同様のウェブ専門誌が別途立ち上がり、私の連載も新装開店で4月下旬ごろにオープンすることとなりました。

新連載の最初の原稿はすでに書き上げ、編集者に送りました。

新連載の名称は「元気なインフラ物語」としました。なぜ、このような名称にしたのか、どのような内容を発信していく予定か、も初回の原稿に記しました。オープンになったら、皆さんが読みやすいように私のブログや、豊穣な社会研究センターのHPからも発信していきます。

引き続き、ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします!


断酒生活のその後

2024-04-05 12:38:51 | 趣味のこと

2022年4月6日から断酒しました。その前、飲み過ぎていたということもあり、「飲み飽きた」という理由にしております。

断酒してから最初の2週間くらいは飲酒欲が強かった時期があったのを記憶していますが、その後はほとんど飲みたい欲もなくなり、1年9ヵ月ちょっと全く飲酒していませんでした。その間、飲みたいとも思わず、お酒にまつわる執着心とか、飲んだ後などに生じ得る嫌な気分、体調不良などからは全く解放され、自分では断酒生活を気に入っていました。

2024年1月下旬にイタリアに出張があり、ミラノ、ヴェネツィア、ブラノ島などを訪れ、まあいいか、ということで白ワインを飲んでしまいました。この出張中、2日間でワインを飲酒。

2月に鞆の浦で一回飲酒。高岡市での懇親会でおちょこにほんのわずか飲みましたが、これは無視できる量。

2024年3月は途中から解禁状態になってしまい、14日において飲酒。特に、3月の最後は23日から31日まで9日間連続で飲酒し、Finish。

それで、2024年4月に入り、新年度ということもあるのか、3月末に9日間連続して飲酒してやはり飲んでいる状態に不快感を感じ、再び断酒スタート。今日で5日目となりました。やはり飲まない方が体調が良いし、余計な執着心から解放され、心地よく感じます。

断酒についての報告は以上。

⇒ 順調に?断酒が継続されるものと思ってましたが、誕生日直前の4/7に、ここのところ低かったバイオリズムがさらに低くなり、酒に頼ってしまいました。。。さて、今後の展開はどうなることやら。。。(この部分、4/10に追記)

2024年1月30日から、坐禅を始めました。自宅でも出張先でも、毎日基本的に朝に15分間の坐禅を日課としています。今日で67日連続です。坐禅については、別のエッセーにて。


「和のコーチング」をYNUから発信! 2024年5月27日(月)15:00~17:30

2024-04-04 15:50:38 | 研究のこと

豊穣Cのセンター長の細田です。

豊穣な社会研究センターの「つながり方研究所」の具体的な活動の一つとして、「和のコーチング」(細田の付けた暫定タイトル)というプロジェクトを立ち上げます。

5月27日(月)に、横浜国立大学のメディアホール(中央図書館内)にて、「和のコーチング」の公開セミナーを開催することが決まりました。学長も参加されます。

今回は無料の公開セミナーとしますが、今後、これを契機にプロジェクトを進め、上手く運べば、大学で受講できる講義として「和のコーチング」が実装されるヴィジョンを私は描いています。

さて、「和のコーチング」とは何か?

このプロジェクトは、プロのコーチたちと連携します。東京コーチング協会のつわものたちです。

私も彼らとしっかりと対面したのは2023年7月末の「コーチング祭り」というイベントにおいてでした。コーチングの達人たちは、プロスポーツ選手や、誰でも知ってる大企業の重役さんなどをコーチングしたりしています。クライアントの持っている能力をフルに引き出すための伴走者、というイメージです。コーチング祭りでは、まさにコーチング界のレジェンド級の方々4名の講演をたっぷり生で聴かせていただき、私自身は講演者たちの考え方やメソッドに共鳴するところが多々ありました。

私も大学教員として、まさに学生たちをコーチングしているわけだし、「コーチング」というものはもっと社会に開かれ、活用されていくべきものであると感じたのです。私の認識では、コーチングとは、対話であり、傾聴、質問力、内省力、思考力であり、人間のポテンシャルをフルに引き出すための考え方です。

「和」と付けたのはなぜか?

私の認識では、コーチングという方法も西洋から入ってきたものです。それはそれで良いのですが、現在は日本が大ピンチの状況で、日本人としての誇りも失いかけている危機的状況。日本人や日本が本来持っている強さ、美しさ、誠実さ、などを前面に押し出して、もしくは取り戻して、社会を良くしていきたいと私は思っています。そこで、「和のコーチング」。

5/27の公開セミナーでは、「つながり方研究所」に集う、本物の僧侶の方も参画予定。私も大ファンの素敵な僧侶の方々です。

近代という社会は、個人がそれこそバラバラの砂粒のようになってしまいかねない、生き方を見失いやすい難しい社会です。

宗教と科学もこれまでは別物だったのかもしれませんが、物事の真理を追究していくと、同じところに行き着くのではないかと我々は議論しています。

つながる、ということは、我々が人間らしく生きていく上での根幹と思います。

プロのコーチたち、現役の僧侶、つながり方の研究者、学長、学生、豊穣な社会への挑戦に興味のある方が集い、つながって、「和のコーチング」を一緒に模索していきませんか?

皆さんのご参加、心よりお待ちしております!