細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

岡山見学会(津田永忠)の募集中

2016-07-29 15:16:23 | 職場のこと

YNU土木見学会ファンの皆様

見学会の土木史シリーズも回を重ねてまいりました。今回は、昨年の土木学会全国大会の特別講演で紹介された、津田永忠の偉業を巡る見学会です。

津田永忠のことを非常に詳しい、両備HDの小嶋光信会長のご講義もいただきますので、とても充実した見学会になると思います。 小嶋会長は、地方公共交通の再生請負人の異名ももつお方で、昨年の特別講演は大変に面白かったです。

土木の学生の皆さんは、ぜひぜひ応募してください。 


サイエンスフェア

2016-07-18 14:38:24 | 職場のこと

7月16日(土)に横浜そごう9Fの新都市ホールで開催された、サイエンスフェアに横浜国立大学を代表して研究ブースを出展し、10:00~17:30の間、中高生やそのご家族を中心とする来場者に研究の説明をしました。

私にとっても初めての経験でしたが、事前に予想していたよりも負荷もはるかに大きく、しかしその分、手伝ってくれた研究室のスタッフや学生たちにとっても得るものの大きい機会であったように思います。

最初にこの話を受けたのは2015年度の終盤で、理工学部長の福富先生からの依頼であったようです。福富先生にはこれまで私もいろいろとお世話になりましたので、二つ返事で承諾しました。そのときは、何とでもなるとは思ってましたが、これほど負荷が大きいとは思いませんでした。

他の大学や企業と一緒に、サイエンスに関する研究ブースを運営するわけです。土木のコンクリート、ですが、4月に大学で発明表彰もいただいたSWAT等を保有する研究室なので、自分たちにできるベストを尽くして臨むつもりではいました。コンクリートとは何か?なぜこれだけ利用され、どのように現代文明を支えているのか?地震や津波によりどのような被害を受け、何が課題なのか?環境作用による劣化のメカニズムと、そのような劣化をしないための方策はどのようなものがあるのか?非破壊試験技術の最新動向は?

結果的に、 4つの動画を画面4分割表示で常時流すようにし、7つのポスターを貼り、SWAT・トレント試験・硬化コンクリート気泡計測装置・鉄筋の非破壊探査試験のデモを行い、凍害で劣化したコンクリートを展示し、7月上旬のJCI年次大会のキング・オブ・コンクリートコンテストで3位に入賞したコンクリートコマを自由に回してもらう、準備をして臨みました。研究室のTシャツを4年生の上原さんにデザインしてもらい、皆がお揃いのTシャツを着て臨みました。



私自身はこれらの展示に対してどのような説明もできますが、手伝ってくれた学生たちは必ずしもそうではありません。最初は私が説明をし、その中の情報やスキルも盗んでもらって全体チームのレベルアップができればと思っていました。

しかし、10時にサイエンスフェアが始まった直後に、一気にお客さんが来て私の構想は崩壊。研究ブースの各所で、チームのメンバーそれぞれが対応に追われる状況になりました。これが結果的にチームのメンバーの当事者意識を活性化させ、能力の向上につながったようです。やはり人間は追い込まれてからが成長のチャンスです。

 
中高生やそのご家族等の一般の方々に、土木、コンクリート、コンクリートに関する研究を魅力的に伝えるのは容易なことではありません。でも、魅力的に伝える努力を重ねる過程で、伝える対象のことをより深く知ることになるし、伝える側も魅力に気付くことになります。また、他大学や企業がたくさんブースを出展する中で、お揃いのTシャツを着ていることもあってか、横浜国立大学に対する自校愛や、自分たちの研究室に対する愛着も湧いてきたように思います。



JCI年次大会(博多)のキング・オブ・コンクリートのコマ大会のために作製したコンクリートコマも大活躍してくれました。ただ単に回すだけで来場者は喜びますが、どんな形でも造れるコンクリートの魅力も教えられるし、重いという短所が大きな慣性力につながる「長所と短所は表裏一体」の本質を説明することもできるし、コンクリートコマをきっかけにコンクリートの研究の説明に導かれる方々も多かったです。使えるものは手段を選ばず使う、という私のいつものやり方が今回のサイエンスフェアで本領発揮したかと思います。



終盤近くの17:00前に、会場全体の客数も減ったこともあるのか、私たちのチームの疲労も大きくなったのか、客足がパタッと止まりました。他のブースは基本的には実演の時間を決めて、整理券も配るなどして、メリハリをつけて対応しているようでした。私たちのブースはそのようなやり方でなく、「四六時中やってます」方式で行きました。この立て看板の内容も、当日の朝、4年生の上原さんに指示をして描いてもらいました。この看板を見て吹き出しているいる人が老若男女問わず多くいました。

このまま尻すぼみで終わってはつまらない、ということで急遽、SWATの実演をすることにし、子どもたちのコマ回し大会(時間を競う)も急遽行うことにし、皆で最後の力を振り絞ってお客さんたちに接しました。最後、もう一盛り上がりして終わることができ、研究室のメンバーも充実感を味わい、大変であった片付けも連携して一気に行い、大学での機材の荷卸しも終えて、大学に近いお好み焼き屋さんで打上げをしました。

どうせやるなら、一所懸命やる。やっている姿はいろいろな人に見られている。一つ一つを一所懸命やることで、次の何かにつながっていく。

研究活動を通じてこそ、教員の本質的な考え方は学生たちに具体的に伝わると思っていますし、そう言ってきましたが、今回のサイエンスフェアはそのような意味でもとても良い機会になったと思います。手伝ってくれたスタッフや学生の皆さんに感謝します。

今年度はいろいろな取組みがプラスに連鎖するようになってきたと感じますが、今後のコンクリートカヌー大会、研究室夏合宿、そして各メンバーの研究活動へと勢いが連鎖していくことを願っています。


研究室

2016-07-13 12:53:15 | 職場のこと

大学の研究室、って何をしているところなのだろう、と理系の大学のことをあまりご存知ない方は思われるのではないかと思います。

私は、東大のコンクリート研究室に6年間所属しました。30歳からは横浜国大のコンクリート研究室のメンバーになり、 椿先生に温かく見守っていただいた(?)おかげもあり、研究室の運営を実質的にリーダーとしてやってきました。もう13年近くになります。その間、フランスの中央土木研究所であるIFSTTARに1年間、客員研究員として所属する機会も得ました。

研究室として肌で知っているのはその3つになります。

横浜国大の室井尚先生が主催する公開討論会が5回連続で開催されており、1回目は内田樹先生、2回目は吉見俊哉先生がゲストでした。毎回、大学とは何なのか、何のためのものなのか、どうあるべきなのか、について興味深い考え方や知識を吸収できて、私も大いに刺激されています。

大学は大きく変化を強制させられており、時代の激動の中で止むを得ない面もあったかとは思いますが、その根本にはデフレがあったのだと思います。デフレは藤井聡先生も何度も各所で強調されているように国家の死に至る病であり、現状は国家の自殺的行為が各所で重ねられている状況かと思います。

デフレを完全脱却し、今の緊縮財政病から一刻も早く日本が抜け出せるよう、私にもできることはいろいろあると思うので少しでも貢献できればと思います。 

研究室には多くのメンバーが集っています。また、すでに研究室を卒業して社会人として活躍している方々もたくさんいます。これから研究室に入ってくる未来の仲間もたくさんいます。

私たちの現在の研究室での活動はもちろん大切なのだけど、研究室という場は現役のメンバーはもちろんですが、先代の先生方や卒業生、社会の様々な方々や、そもそも大学に支えられて存在しています。逆に、研究室での活動をしっかりと行っていくことは、それらの多くの関係者にも何らかの素敵なものをお渡ししていくことにもなるのです。

研究室では、自由闊達に議論しながら、自分たちが心からやりたいと思うことを、思う存分できる場をつくるべきと思います。 そういう場でないなら、存在しなくてよいし、そうできない教員であれば交代した方がよいでしょう。また、研究室で行われることは必ずしも研究だけに限る必要はありません。研究室の構成員が長い人生の中で大きく持続的に成長し、社会への貢献を通して充実した人生を歩んでもらうことにつながることであれば、どんなことをやってもよいと私は思います。

学生には、本当に研究が好きでのめり込むような人もいれば、卒業に必要だから仕方なく研究をしている人ももちろんいます。私自身も、研究がよくできる優秀な学生、ではありませんでした。

でも、私も時間をかけて学んできていますが、やはり研究とはとても面白いことだし、研究を通じてでないと学べないことも多いし、しつこくやっていれば私の研究室でもそれなりに社会に貢献できるようにはなってきます。研究室なのだから、研究活動を通じて、構成員たちが大きく大きく成長してもらうような場であってほしい。

そういう意味で、昨年度まではどうも学生たちとのコミュニケーションが十分でなかったように思います。以前より劣化していました。教員の間のコミュニケーションも十分ではないと思います。

今年はそのような状態を改善すべく私も意識的に様々なアクションを起こしています。学生たちも呼応して、少しずつ改善されてきているように思います。

昨夜は学部4年生8人とビアガーデンに行きました。私の学部2年の講義「材料と複合」でコンクリートを実験室で練混ぜる授業をサポートしてくれたメンバーたちとの打上げです。現時点での彼らの思いを一人一人スピーチしてもらい、私も思ったことを伝えました。

今週の土曜日は、またまた彼ら4年生と、横浜そごうで開催される中高生のための「サイエンスフェア」に、横浜国大を代表して私の研究室がブースを出します。頑張って準備しています。

暑い夏がやってきましたが、充実した夏にしたいと思います。 





 


憑き物が落ちる?

2016-07-11 14:34:42 | 職場のこと

6月下旬、7月上旬を日本各地を転々としながら過ごしておりました。

・6/18(土)-20(月)、沖縄の北大東島、塩害暴露試験場での調査
・6/22(水)-23(木)、群馬県の品質確保講習会で講師
・6/24(金)、新潟でのPC工学会の講習会で、津波防災委員会の活動報告、関屋分水路の調査
・6/24(金)深夜、小田急線の代々木八幡の駅改良工事の見学
・6/25(土)夜、新東名の夜間橋梁架設現場の見学
・6/26(日)、福山市および鞆の浦の土砂災害調査
・6/27(月)、茅ケ崎の八洋コンサルタントを訪問し、実験および実験室の見学
・6/28(火)~29(水)、陸前高田の新気仙大橋の高炉セメントを用いた高耐久床版の打込みの見学
・7/3(日)、YNU土木同窓会
・7/5(火)、鞆の浦の土砂災害の民家復旧のお手伝い
・7/6(水)~7(木)、JCI年次大会@博多
・7/8(金)、熊本震災調査、九州地方整備局と熊本国道事務所に復興における品質確保と耐久性確保のご提案
・7/9(土)、高専編入試験

といったスケジュールで、週末に仕事が何度か食い込んだせいもあるのか、終盤は意欲が減退しておりました。

弱り目にたたり目、と言いますか、そういう時は細部にも不具合が生じるものです。7月1日だったかに買い直した折り畳み傘との相性が非常に悪く、7月4日に壊れました。その帰りに購入した折り畳み傘との相性も悪く、8日の熊本の震災調査中に暴風雨で壊れました。傘の取扱い中に指を切り、出血する負傷もしました。

その他、いろいろとあったのですが、8日に熊本の震災調査に入った際は、大雨で風も強く、被災した橋梁群を調査している間、びしょ濡れになりました。その際に、傘も壊れました。博多には一度はずぶ濡れになった作業着や安全靴のまま新幹線で戻ったのですが、博多に戻って着替えている際に、ベルトの金具も疲労破断しました。運気が下がっていたのでしょうね。

ですが、自然とはやはり人間の愚かな想像や能力を超える偉大な力を持つようで(当たり前ですが)、その大雨や風により、私自身に宿っていた邪気、憑き物のようなものも一緒に洗い流していただいたようです。

今日は久しぶりに一日、大学で仕事です。夕方からは、室井尚先生の大学改革についてのシンポジウム(第2回、前回は内田樹先生がゲスト、今回は吉見俊哉先生がゲスト)でとても楽しみにしています。大学改革なる愚行も、結局は「デフレ」が根本原因です。藤井聡先生の「国民所得を80万円増やす経済政策-アベノミクスに対する5つの提案」に、教育やインフラへの投資が真っ先に削られてきたことや、今後の財政出動においてまさに教育、テクノロジー、インフラへのワイズ・スペンディングこそが求められていることが、非常に理性的に、分かりやすく説明されています。大学改革が非常に良くない状況にあることはもう皆分かっているので、ぜひこの状況を打開することを議論できればと思います。

仕事に対する意欲がようやく通常レベルに戻り、締切りが近い原稿の完成にいそしんでおります。。。