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細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

謝罪と、再生の誓い

2025-04-11 09:46:21 | 人生論

「謝罪と、再生の誓い」


コンクリート研究分野の新入生(B4、M1など)、メンバーの皆様へ

細田です。昨日、4月9日の1限の初回のゼミでは、衝撃を受けた方もおられたかもしれません。そのことへの謝罪と、私自身の再生の誓いをお伝えします。

ご存じ?の通り、私は嘘を付けない人間ですので、これから皆さんと研究室での大切な時間を共有していくためにも、以下をお伝えします。

2024年度の1年間、私は心身の病に侵されていました。理由は異常なほどの過労です。2023年の1年間は、盆と正月を含めても、全く仕事をしなかった日は2日しかない、という異常な忙しさでした。普通の大学教授の職務に加え、2023年4月に立ち上がったばかりの豊穣な社会研究センターのセンター長、そして土木の留学生プログラムのディレクターも兼務でした。一部の大学教員の異様な忙しさも知っておいてください。

2024年3月末ごろに、さすがに心身に異変が生じ始めました。3月30~31日は能登の被災地に出張しており、豊穣センターの松永所長(元気なインフラ研究所)らと調査しましたが、被災状況に衝撃を受けたのか、頭がボーっとするような感覚を覚えました。

2024年4月に入り、心身が壊れていきます。1年生用の国土学の講義でも、ろれつが少し回らなくなるような状況でした。

2024年度は豊穣センターの2年目で、学長からの特別の重点支援(年間1100万円)の最終年度でもありました。心身が壊れていく中、豊穣センターを何とか形にしていかなくてはならない、というプレッシャーもあったのでしょう。家族はもとより、行動にストップをかけようとする周囲の思いやりとは無縁に、私は松永所長らと全国のフィールドを過密スケジュールで飛び回った5~7月でした。

おまけに引越しが3件も重なりました。家族の引越しに伴う川崎での一人暮らし、鞆の浦の家の購入(30万円)、そして教授室の移動。極限的な状態で何とか9月の初旬にたどり着きました。

2024年10月からの秋学期は不安な状態でスタートしました。講義もアップアップ。研究は学生たちの自主性で何とか前に進みましたが、もっと100%の力で彼らと格闘したかったです。

何とか12月の年末までこぎつけ、年末の数日間を鞆の浦で過ごし(ひたすらだらけて)、正月を浦和の実家で過ごした後、私の精神状態は極限まで低下します。深刻な鬱病でした。国家的な?入試行事の主任試験監督もできなくなるほどの状況でした。

皆さんも不安になったり、不調になることもあるかもしれません。

鬱病の状況だと、「あなたはこれまで頑張ってきた人だから大丈夫!」などの励ましをしてもらっても、「過去の自分」と「今の自分」は全くの別人なので、本当に苦しみます。

私は、もちろん誠実で、努力を重ねる人間ですが、エネルギーやパワーもすさまじく、その分、鬱状態では「全く中身の無い自分」という感覚に苦しめれます。

何度も自殺しようと思ったのはもちろん(消えた方が楽ですからね)、休職やその先の退職は毎日のように考えて、もだえ苦しみました。

実は、20年くらい止めていたタバコを2024年6月に一本吸いました。精神の高揚や暴走を抑えた方がよいという気持ちからです。その後、本数は徐々に増えました。

地獄のような2ヵ月、一人暮らしの私の家には母親、それから独身で働いている妹が入れ替わりで泊まって面倒を見るような状況でした。3月中旬に復活の兆しを感じ、下旬に一気に良くなり、奇跡的に新年度を良い状態で迎えることができました。

4月からは都市基盤学科の学科長を務める予定でしたが、周囲の温かいご配慮で、藤山先生に交代していただきました。

さて、前置きが長くなりましたが、昨日の4月9日は私の誕生日でした。もう回復したけどまだ心配な母親が家にいて、昼食はそごうのうなぎ屋で私がごちそうしました。

昨日のゼミでは、教員からの研究活動紹介と私が思い込んでいましてフライングしましたが、精神が高揚していたのでしょうね、何と席に戻った私は、タバコに火をつけて吸い始めました。衝撃を受けた人もいたかと思います。藤山先生が近づいてきて、小声で「やめてください」と言われ、消して捨てたのは当然です。

51年の人生を昨日終えました。あと何年生きるかはわかりませんが、生まれ変わって、何とか日本の再生に貢献すべき、死力を尽くします。良くない習慣のタバコはもちろん止めるつもりでしたが、昨日、ケリを付けたく、「不良ぶって」吸いました。鬱から復活してやる気に満ち溢れると、生来のいたずらっ子は、いたずらをしたくなるものなのです。冗談にもほどがありますよね。

51年の人生の終了とともに、不適切なタバコの習慣にもさよならをしました。昨夜は、母親とゆっくり、質素な夕食を食べ、就寝前には二人でマンションのベランダから下の桜を見て、私は日本の復活、豊穣な社会を夢見ながら、そして、みなさんへの謝罪と、私自身の再生を誓いながら寝ました。

コンクリート研究室へようこそ。藤山先生、小松先生は誠実な、素晴らしい先生です。

皆さんの大切な一年間、素晴らしい日々になりますように。私も一緒に努力をします。

細田 暁

 


そのうち出版したい土木史の教科書のイメージ(AIにまとめてもらいました)

2025-04-08 16:16:04 | 研究のこと

土木と文明:記憶の風景をたどる旅

『土木文明史概論』から学ぶやさしい土木の話


1. 土木って、そもそもなんやろ?

私たちが暮らすこの世界には、道があって、橋がかかっていて、町がある。
でもそれらは、いつからあって、どうやってできたんやろ?

答えはシンプルで、でも深い。
風が吹いて、川が流れて、地面がちょっとずつ変わっていく――
そこに「人の手」がそっと触れてきたことが、すべての始まりなんや。

この「人の手で自然と関わること」。
それが 土木(どぼく) なんやね。


2. 文明と土木は、いっしょに育ってきた

文明って聞くと、ちょっと大げさに聞こえるかもしれんけど、
もし「文明ってなんやろ?」と聞かれたら、こう答えてみてほしい。

「それは、人が自然と語り合いながら、
思いを形にしてきた旅のことやと思うんよ」

川を渡りたい、道を通したい、雨をしのぎたい。
そんな小さな願いから始まって、やがて町ができ、国ができ、文化が生まれてきた。
その土台にはいつも、土木のしごとがあったんや。


3. 昔の人も、自然と向き合ってきた

『土木文明史概論』を読むと、
世界中の人たちが、昔から自然と向き合って生きてきたことがよう分かる。

  • ナイル川のそばでは、水とともに暮らす知恵が育った

  • メソポタミアでは、洪水を予測しながら空を見ていた人がいた

  • 中国の万里の長城を築いた人たちは、ただ石を運んでたんやなく、
    遠い未来を見つめながら作業してた

  • 日本でも、川を治め、山を整えながら、自然と「仲良くやっていく」ために工夫を重ねてきた

これ全部、土木の話なんやね。


4. 土木は、自然と「うまくやる」ための知恵

よくある誤解は、「土木って、自然に勝つためのもんやろ?」っていうやつ。
でも、実際はぜんぜんちゃう。

土木は、自然と“戦う”んやなく、“うまくやる”ための技術
いわば、自然と手を取り合う“しぐさ”みたいなもんなんや。

  • 土を掘る

  • 水を引く

  • 石を積む

どれも地味でシンプルな作業やけど、そこには人の「願い」や「未来への祈り」が込められてる。


5. 土木がつくる「かたち」と「こころ」

土木って、見えるものだけやない。
見えない「気持ち」や「想い」も運んでるんよ。

たとえば――

  • は、人と人をつなぐもの

  • は、「遠くにいる誰かに会いたい」って気持ちのかたち

  • ダムは、まだ生まれていない未来の人たちへのプレゼント

こういう考え方をすると、街の風景の見え方もちょっと変わってくるんちゃうかな。


6. 日常にひそむ、土木の気配

実は、私たちのまわりにも、土木のしごとはたくさんある。

  • 駅前の歩道

  • 通学路の段差

  • 雨の日に水が流れる溝

それらは全部、誰かが考えて、手を動かして、つくってくれたもの。
つまり、**「誰かの技術」と「誰かの気持ち」**がそこにあるってことやね。


7. 『土木文明史概論』という本について

合田良実さんの『土木文明史概論』は、土木の知識を教えてくれるだけやなくて、
もっと深い、「土木の心」や「人の歩んできた道」まで教えてくれる。

言うならば――

これは、“知識の本”であると同時に、“風景の詩集”でもある。

ページをめくるたびに、どこかで聞いたような風の音や、
誰かが汗を流して石を運んだ音が、ふわっとよみがえってくるんよ。


8. いま、そして未来へ

土木の仕事は、過去の話やと思われがちやけど、
実は、今もこれからも、ずっと私たちのすぐそばにあるものや。

いま歩いているこの道も、これからつくられる街も、
そのすべてに「人の手」が関わっていく。
その積み重ねが、また新しい“記憶の風景”になっていくんやと思う。


おわりに

土木とは、自然と人との、静かで、長い対話の歴史やった。
そしてそれは今も続いてるし、これからも終わることはない。

気づかんうちに、足元に広がってる。
それが、土木という名の記憶の風景なんやね。


合田良実「土木文明史概論」

2025-04-08 14:13:08 | 研究のこと

土木という記憶の風景
――『土木文明史概論』をめぐる、ひとつのやさしい物語

風が吹く。
川が流れる。
地面が少しずつ変わり、人の手がそっと触れていく。

その営みの果てに、道ができ、橋が架かり、町が生まれた。
文明とは何か――と誰かに尋ねられたら、私はこう答えたい。
それは、自然に語りかけながら、人と人とが寄り添い、記憶をかたちにしてきた旅路のことだと。

合田良実の『土木文明史概論』は、そうした旅の物語を静かに紐解いてくれる。
教科書のような硬さはない。むしろ、ページをめくるたびに、耳をすませば聞こえてくるような、古の人々の声がある。

ナイルのほとりで、水と共に生きた民。
チグリスとユーフラテスの狭間で、洪水の予兆に耳を澄ませ、空を見上げた知者たち。
長城を築きながら、遙かなる地平を見つめていた、名もなき石運びの男。
そしてこの日本で、流れる川に土を盛り、崩れる山をなだめ、神のように気まぐれな自然と、そっと手を取り合って暮らしてきた人々。

土木とは、自然をねじ伏せるものではなかった。
それはむしろ、自然と和解し、共に生きるための、やさしい“仕草”だったのかもしれない。
土を掘り、水を導き、石を積む。その繰り返しの中に、誰かの願いや、不安や、未来への想いがひそんでいた。

たとえば、道は人と人をつなぎ、
橋は遠くを想う心をかたちにし、
ダムはまだ見ぬ世代への、贈り物として存在している。

日々の景色のなかに、私たちはふとした瞬間、土木の気配を感じる。
それは駅前の歩道かもしれないし、通い慣れた通学路の段差かもしれない。
けれどそのひとつひとつに、誰かが思いを寄せ、技を注ぎ、時には夢を託してきたことを、忘れずにいたい。

『土木文明史概論』は、知識の本であると同時に、
私たちがどこから来て、どこへ向かっているのかを教えてくれる、風景の詩集のような一冊でもある。

過去は静かに眠っているようで、
実は今この瞬間も、そばにいてくれる。
土木という名の記憶の風景は、いつだって、足もとに広がっているのだ。


暑中コンクリート

2025-04-08 13:56:22 | 研究のこと

暑中コンクリートの計画・設計・施工に関する指針(案)の概要

近年、夏季の高温多湿な気候条件において、コンクリートの施工における品質管理や作業者の安全確保が重要な課題となっています。特に、コンクリート施工時の温度管理は、施工品質に大きな影響を与えます。このような環境に対応するために、コンクリート業界では「暑中コンクリート」に関する指針(案)が策定され、施工現場での実施方法が具体的に示されています。本稿では、この指針(案)の内容を概説し、施工現場における実務的な取り組み方を探ります。

1. 暑中コンクリート指針(案)の目的と適用範囲

この指針(案)は、暑中期におけるコンクリートの計画、設計、施工のための標準を示すものであり、特に日平均気温が25℃を超える夏季におけるコンクリート施工を対象としています。具体的には、打込み時のコンクリート温度が38℃以下の場合に焦点を当てています。これは、過去の施工実績を踏まえた上で、安全性や品質の確保を目的に設定された温度範囲です。実際に、日本国内ではコンクリート温度が38℃を超える事例は非常に少なく、これを超えると施工の難易度やリスクが大きくなることが指摘されています。

また、この指針(案)は場所打ちコンクリートを主な対象とし、現場で直接製造されるコンクリートに焦点を当てています。一方で、プレキャストコンクリートや現場練りコンクリートについても言及されており、これらの施工においても暑中対策が有効であることが強調されています。

2. 暑中コンクリートにおける品質確保

高温環境でのコンクリート施工では、品質を確保するために特別な対策が必要です。指針(案)では、施工現場での品質管理を確実に行うために、以下のような対策が提案されています。

  1. 温度管理と品質確保
    暑中期においては、コンクリートの温度管理が最も重要な課題です。コンクリートの打込み時温度が高いと、フレッシュ性状(新鮮なコンクリートの状態)や強度、施工性、温度ひび割れなどが影響を受けます。このため、施工時のコンクリート温度を38℃以下に保つための対策が必要です。これには、コンクリートの配合設計において温度を下げるための材料選定や冷却方法が含まれます。

  2. 混和剤の活用
    コンクリートの品質を確保するためには、暑中対策用の混和剤を使用することが推奨されます。これにより、コンクリートの流動性を長時間保持し、適切な凝結時間の遅延を実現することができます。特に、35℃以上の高温環境では、これらの混和剤が重要な役割を果たします。

  3. 施工計画と調整
    暑中コンクリートの施工計画は、現場の気温や湿度に応じて柔軟に調整する必要があります。例えば、施工時期を早朝や夜間に変更することで、気温が低い時間帯に作業を実施することができます。これにより、コンクリートの品質を損なうことなく施工を進めることが可能となります。

3. 作業者の安全衛生対策

高温環境下での作業は、作業者の健康や安全にも深刻な影響を与えるため、暑中コンクリートの施工においては安全衛生対策が不可欠です。この指針(案)では、作業者の安全を守るための対策として、以下の点が強調されています。

  1. 熱中症対策
    高温環境での作業は、熱中症のリスクを高めます。そのため、作業者が適切に水分補給を行えるような環境を整備し、定期的な休憩を設けることが重要です。また、作業時間を短縮したり、作業の負荷を分散することも効果的です。

  2. 安全設備の導入
    近年では、安全設備として空調服や冷房設備を備えた休憩所の導入が進んでいます。これらを活用することで、作業者が快適に作業を行い、過酷な環境下でも安全に施工を進めることができます。

  3. 施工時期の調整
    作業環境が極端に暑い場合には、作業時期を変更することが必要です。早朝や夜間など、気温が低い時間帯を選んで施工を行うことで、作業者の負担を軽減し、コンクリートの品質も守ることができます。

4. 施工現場での具体的な取り組み

この指針(案)に基づく施工現場での具体的な取り組みとしては、以下のような方法が考えられます。

  • 事前の施工計画と調整
    工事の初期段階で、気温や湿度、施工条件に応じた施工計画を立案することが重要です。必要に応じて、工期の調整や施工方法の見直しを行い、暑中期におけるリスクを最小限に抑えることが求められます。

  • コンクリートの温度管理
    現場で使用するコンクリートの温度を管理するために、冷却方法を取り入れることが必要です。例えば、冷却水を使った冷却や、コンクリートの製造時に温度を下げる方法を導入することが効果的です。

  • 品質管理と検査
    コンクリートの品質が確保されているかどうかをチェックするための品質管理と検査体制を整備することが不可欠です。温度管理が徹底されているか、混和剤が適切に使用されているか、施工後の品質が設計通りであるかなどを確認します。

5. 結論

暑中コンクリートに関する指針(案)は、酷暑の環境下でもコンクリート構造物が所定の品質を満たすよう、施工方法や対策を具体的に示しています。施工者、発注者、設計者、製造者が協力し合い、安全衛生対策や温度管理を徹底することが、コンクリート施工の成功に不可欠です。今後は、これらの指針を実践し、猛暑に対応できる施工環境を整えることで、より高品質なコンクリート構造物を提供できるようになるでしょう。