goo blog サービス終了のお知らせ 

細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

暑中コンクリート

2025-04-08 13:56:22 | 研究のこと

暑中コンクリートの計画・設計・施工に関する指針(案)の概要

近年、夏季の高温多湿な気候条件において、コンクリートの施工における品質管理や作業者の安全確保が重要な課題となっています。特に、コンクリート施工時の温度管理は、施工品質に大きな影響を与えます。このような環境に対応するために、コンクリート業界では「暑中コンクリート」に関する指針(案)が策定され、施工現場での実施方法が具体的に示されています。本稿では、この指針(案)の内容を概説し、施工現場における実務的な取り組み方を探ります。

1. 暑中コンクリート指針(案)の目的と適用範囲

この指針(案)は、暑中期におけるコンクリートの計画、設計、施工のための標準を示すものであり、特に日平均気温が25℃を超える夏季におけるコンクリート施工を対象としています。具体的には、打込み時のコンクリート温度が38℃以下の場合に焦点を当てています。これは、過去の施工実績を踏まえた上で、安全性や品質の確保を目的に設定された温度範囲です。実際に、日本国内ではコンクリート温度が38℃を超える事例は非常に少なく、これを超えると施工の難易度やリスクが大きくなることが指摘されています。

また、この指針(案)は場所打ちコンクリートを主な対象とし、現場で直接製造されるコンクリートに焦点を当てています。一方で、プレキャストコンクリートや現場練りコンクリートについても言及されており、これらの施工においても暑中対策が有効であることが強調されています。

2. 暑中コンクリートにおける品質確保

高温環境でのコンクリート施工では、品質を確保するために特別な対策が必要です。指針(案)では、施工現場での品質管理を確実に行うために、以下のような対策が提案されています。

  1. 温度管理と品質確保
    暑中期においては、コンクリートの温度管理が最も重要な課題です。コンクリートの打込み時温度が高いと、フレッシュ性状(新鮮なコンクリートの状態)や強度、施工性、温度ひび割れなどが影響を受けます。このため、施工時のコンクリート温度を38℃以下に保つための対策が必要です。これには、コンクリートの配合設計において温度を下げるための材料選定や冷却方法が含まれます。

  2. 混和剤の活用
    コンクリートの品質を確保するためには、暑中対策用の混和剤を使用することが推奨されます。これにより、コンクリートの流動性を長時間保持し、適切な凝結時間の遅延を実現することができます。特に、35℃以上の高温環境では、これらの混和剤が重要な役割を果たします。

  3. 施工計画と調整
    暑中コンクリートの施工計画は、現場の気温や湿度に応じて柔軟に調整する必要があります。例えば、施工時期を早朝や夜間に変更することで、気温が低い時間帯に作業を実施することができます。これにより、コンクリートの品質を損なうことなく施工を進めることが可能となります。

3. 作業者の安全衛生対策

高温環境下での作業は、作業者の健康や安全にも深刻な影響を与えるため、暑中コンクリートの施工においては安全衛生対策が不可欠です。この指針(案)では、作業者の安全を守るための対策として、以下の点が強調されています。

  1. 熱中症対策
    高温環境での作業は、熱中症のリスクを高めます。そのため、作業者が適切に水分補給を行えるような環境を整備し、定期的な休憩を設けることが重要です。また、作業時間を短縮したり、作業の負荷を分散することも効果的です。

  2. 安全設備の導入
    近年では、安全設備として空調服や冷房設備を備えた休憩所の導入が進んでいます。これらを活用することで、作業者が快適に作業を行い、過酷な環境下でも安全に施工を進めることができます。

  3. 施工時期の調整
    作業環境が極端に暑い場合には、作業時期を変更することが必要です。早朝や夜間など、気温が低い時間帯を選んで施工を行うことで、作業者の負担を軽減し、コンクリートの品質も守ることができます。

4. 施工現場での具体的な取り組み

この指針(案)に基づく施工現場での具体的な取り組みとしては、以下のような方法が考えられます。

  • 事前の施工計画と調整
    工事の初期段階で、気温や湿度、施工条件に応じた施工計画を立案することが重要です。必要に応じて、工期の調整や施工方法の見直しを行い、暑中期におけるリスクを最小限に抑えることが求められます。

  • コンクリートの温度管理
    現場で使用するコンクリートの温度を管理するために、冷却方法を取り入れることが必要です。例えば、冷却水を使った冷却や、コンクリートの製造時に温度を下げる方法を導入することが効果的です。

  • 品質管理と検査
    コンクリートの品質が確保されているかどうかをチェックするための品質管理と検査体制を整備することが不可欠です。温度管理が徹底されているか、混和剤が適切に使用されているか、施工後の品質が設計通りであるかなどを確認します。

5. 結論

暑中コンクリートに関する指針(案)は、酷暑の環境下でもコンクリート構造物が所定の品質を満たすよう、施工方法や対策を具体的に示しています。施工者、発注者、設計者、製造者が協力し合い、安全衛生対策や温度管理を徹底することが、コンクリート施工の成功に不可欠です。今後は、これらの指針を実践し、猛暑に対応できる施工環境を整えることで、より高品質なコンクリート構造物を提供できるようになるでしょう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。