Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

Quincy Jones the 80th Celebration 7/31@東京国際フォーラム

2013-08-04 21:57:08 | その他のライブ
「32年振り、奇跡の来日公演」とサブタイトルが付く。
ありえないこと、またこれを逃したら二度とないかもしれない千載一遇のチャンス。
クインシーに会える、そしてクインシー・ジョーンズのファミリー、
パティ・オースティン、ジェームズ・イングラム、サイーダ・ギャレット、
ハウスバンドの面々も共にやってくる。

ジェームズ・イングラム、前回の来日、いったい何年前だっただろう。
雪の降った寒い日、1月の終わり、8年前だったような?
今回はパティ・オースティンとオリジナルのデュエットも聴けるはず。
クインシーの楽曲には慣れ親しんできただけに期待も膨らむ。

結果から先に書くと、この日は7時から8時半までが日本のトリビュートアーティストの公演。
その後30分の休憩を挟んで9時からクインシーが選び連れてきた新人若手アーティスト、
彼らのパーフォーマンスが約1時間強、その後、大御所の登場となり、
終了は11時をまわった。

日本の若手達、彼らの熱烈なファン達も多く来ていて、
クインシーのファンと彼らを観に来たファンとこの日は二種の観客がいたようだ。
辛口のコメントは避けたいと思うが、全体として大舞台での緊張もあったとは言え、
やはりそのジャンルに相応しい歌唱法、発声発音、
この日のイベントの趣旨、会場の大きさに添ったステージマナー、
一か所の見せ場だけでなくトータルな面で一曲を最後まで歌い切ってこそ、
プロと言えるのではないだろうか。

またこの日に選ぶ若手アーティストとしてせめてある程度のキャパのライヴハウスで、
単体でショウを持てるくらいのレベルの人を選んでほしかったと思う。
もちろん健闘していた人、楽しませてくれた人、好感の持てるアーティストもいました。

小野リサ、10年以上前にブルーノートで観ているが、
相変わらず美しく落ち着いた佇まいで「ワンノートサンバ」

小曽根真とNo Name Horses、2009年の夏、ブルーノートで観て以来だが、
この会場、国際フォーラムの大きさがビッグバンドにフィットする。
ノーネームホースの面々の中に
我社で学生時代アルバイトとして2年ほど働いた岡崎正典の姿をみつけ興奮する。
岡崎はソロも取る。
その後観客席をノーネームホーセズ達は練り歩き、客席と一体化する熱い演奏を聴かせた。
小曽根眞のトークとピアノも冴える。
クインシーはバークリイ音楽院出身、小曽根も同窓なら、
岡崎もまた奨学金を得てバークリイに留学している。
クインシーはこの日の後半で小曽根の挨拶と演奏に触れ称賛した。

ゴスペラーズ、次に続くクインシーファミリーへ渡すバトンとして、
相応しいパーフォーマンスを見せた。
「このイベントに呼んでいただけたこと、この日に仕事が入っていなかった幸運に感謝。」
という思わずもらした本音のコメントには個人的に吹いてしまう。
なぜなら親しいアーティストの方から基本的に先に声が掛かった仕事を優先するために
後から来た美味しい仕事を逃すことがある、と聞いたことがあるから。
アーティストのスケジュール、時として3年先まで決まっていたりする。

しかしここでゴスペラーズが"Stuff Like That"を歌ったので、
本編でのパーフォーマンスはないことになる。
Kが"One Hundred Ways"を歌った時も、ジェームズのこの曲は今日は聴けないのかと、
若干複雑な気持ちに。

休憩時間に客席にいたデビッド・T・ウォーカーと遭遇する。
マリーナ・ショウとのライヴの後も引き続き東京に滞在し、
この日は観客として観に来ていると話していた。
立ち上がると通路に向かう間にさっとジャケットを着た。
いつもダンディーさに拘るデビッドらしい。

9時からの後半はクインシーが連れてきた若手。
ニッキー・ヤノスキー、19歳だがしっとりした曲は情感たっぷりに
アップテンポも軽快に歌い上げる。
またアピアランスもとても映え、若手にしてエンターテイナーだ。

個人的には才能あるピアニストの演奏のそれぞれの個性を堪能できたことに大満足だった。
アルフレット・ロドリゲス、キューバ出身とのことだが、
ラテン独特のリズム感と感性、力強いタッチ、ペダル遣いが絶妙でグイグイ惹きつけられる。
ジャスティン・コフリン、盲目のピアニスト、繊細な演奏を聴かせる。
心の純粋さが滲み出る。
エミリー・ベアーはまだ11歳。
日本のピアノ教育は演奏の正確さ、欧米では感情表現に重点が置かれると聞くが、
まさにエミリーは子供でありながら豊かな感性と創造性が伝わってくる。
それでも初々しさが何とも可愛らしい。
余談だが10時過ぎに子供を働かせて労働基準法とかに障りはないのか、
アメリカでは映画の撮影の折など子供の労働時間に法的な制限が加わるそうだが、
日本ではどうなのかなどとその日にご一緒した方と内輪の会話をする。

この日のピアノ、スタインウェイ、会場の大きさから小振りに見えてしまうが
おそらくDタイプ、休憩時間中も調律が入らないまま全員が弾く。
小曽根真のみ、YAMAHAが運び込まれる。
もちろん小曽根の要求には違いないはずだが、
小曽根はYAMAHAアーティストだったかなとふと考える。

ブラッシュ、「Xファクター」アメリカのオーディション番組にある「グループ部門」
そこに登場しそうな女性5人組。
出てきた瞬間、後ろの席の人が「先週温泉で観たのがあんな感じ。」などとのたまうが、
歌って踊り出したら、とんでもない。
クインシーがアメリカからわざわざ連れて来るだけの実力と迫力があった。
この中に一人いた日本の女性、彼女がメンバーの中で一番光っていた。

10時20分をまわった頃、ようやく御大達の登場となる。
最初のインストの二曲目"Killer Joe"
2009年のニューオリンズ、エッセンスフェスティバル、
スーパードームのラウンジでのエリック・べネイのライヴ、
観客を二班に分けてエリックはこのメロディーを歌わせた。
あの時にチャーチ化した雰囲気に圧倒されたこと、
この曲はアフリカ系アメリカ人の人達にとって、
馴染みの深い曲なんだなとバックグラウンドの違いなどを痛感してしまった、
そんなことを振り返りながら聴いていた。

クインシーのヒストリーを遡る映像が左右の画面に映し出される。
以前観たレイ・チャールズの伝記映画「レイ」の中で、
ある地方にツアーで行こうとするレイにクインシーが、
「あの辺りは差別が厳しいからやめた方が良い。」
とアドバイスするシーンがあったのをこの時に思い出す。
クインシー・ジョーンズの80年の人生、音楽活動の中には、
様々な差別との戦いもあったはずであることを忘れてはならない。

Pati Austinがステージ上に現れると、いきなり「愛のコリーダ」を歌い始めた。
楽しみにしていたこの曲、しかしアンコールかと思っていただけに
不意を襲われスタンディングし損なう。
続く"Say You Love Me"
パティー・オースティンが「私が若い頃に書いた初めての曲なのよ。」
との説明と共に歌い始めるとそこに登場したのは松田聖子だった。
初めて観る松田聖子、パティーと並んでも全く遜色ない。
互角にデュエットし、パティーを立て、観客にもアピールする。
長年エンターテイナーとしてやってきただけでなく、
海外でも通用するレベルを目指して努力してきたことがわかり、
すっかり見直してしまった。

ようやくジェームズ・イングラムが紹介され"Just Once"
8年前のブルーノートのライヴの時と較べると、
心なしか痩せて声も細くなったような気が。
パティー・オースティンとのデュエットで"Baby Come To Me"
この二人のデュエットを聴ける一期一会の機会、
今後、それぞれのライヴがあったとしてもデュエットはバックコーラスとになるはず。

Siedah Gared、個人的にはこの日、一番のパーフォーマンスだった。
サイーダ、生で観るのは初めてだったが、親しみがある可愛らしい雰囲気。
でもこの曲を歌えるのは彼女しかいないと思わせるだけの存在感がある。
もっとサイーダの歌を聴きたかった。

この後、インストを挟み、
最後はマイケル・ジャクソン・トリビュートのスニペットで客席を沸かせる。
アンコールはこの日の出演者全員での"We Are The World"

終了して国際フォーラムの外に出たのは11時15分頃。
盛り沢山だったが、貫いていたのは音楽のパワーの偉大さ。
私事だが事故のようなものに遭い怪我をしてしまい、
以来数か月ぶりのコンサートだっただけに、
ライヴミュージックを聴く恩恵に授かれること、
音楽の持つ力の素晴らしさに改めて感謝する特別な夕べとなった。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
卒業証書 (syu)
2013-08-05 13:51:56
私は、Blue Note Tokyo 28日の1st と8月1日に行ってきました。

ちょっとした、こぼれ話がありましたよ

小曽根さんが、私がバークリーの卒業式の日、卒業証書を授与してくれたのが彼(Quincy)です。ってトークしてくれましたよ。

そして、Qwest にも、誘われたそうです。
でも・・・私はその誘いを断ってしまいました。(笑い)
と話されてましたよ。
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そうだったのですか! (AK)
2013-08-05 16:13:03
クインシーから卒業証書、なんて名誉なことでしょう。
ブルーノートのライヴはいかがでしたか?
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ブルーノート (syu)
2013-08-05 19:54:32
28日の1st
ライブは、7時5分前にQuincyが登場し最前列に着席。
そして、隣に座っていらした松田聖子さんを紹介されました。
その後は国際フォーラムでも流れたビデオが両脇のスクリーンで放映されました。

その後は、国際フォーラムでのライブでのアルフレッド・ロドリゲス トリオから始まるライブからニッキー・ヤノフスキーが「Ain't No Way」を歌うまでは、まったく一緒でしたよ。
Pattiが登場してきたときは、大拍手で迎えられ、それこそ「Ai No Korrida」を披露してくれるのかと期待した方が、大勢いらっしゃると思いますが・・・披露してくれたのは「Soul Bossa Nova」でした。

70年代後期のQuincyの楽曲を期待してきた方は、ちょっとガッカリしたのではないでしょうか?

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意外!? (AK)
2013-08-05 20:58:55
やはりクインシーの今回の目的は平和の祭典、広島がメインで東京は後についてきたものなのかもしれませんね。
ブルノの方が、クインシー色が出たのかと思っていたので、意外でした。
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広島公演 (noriko)
2013-08-06 17:29:56
はじめまして。いつも楽しみに拝見してます。
広島公演もクィンシーの部分は基本的にフォーラムと同じでした。クィンシーが「毎日、神戸ビーフ、しゃぶしゃぶを食べておかげで元気です」と言ってました。
私もジェイムズとパティのデュエットを聞けて感動でした。
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コメント、ありがとうございます! (AK)
2013-08-06 21:18:49
norikoさん、はじめまして!
広島公演、ご覧になられたのですね?
羨ましいです。
たぶん広島が一番、素晴らしかったのでは?
「神戸ビーフ、しゃぶしゃぶ」
私も80歳にしてパワフルなクインシーに続くべく、この夏は肉食を心掛けたいと思います(笑)
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