ジェニーの家族と別れて家に帰るとルースも帰宅していた。
ルースはこれから海岸線を北上して海沿いの町、グロースターへ案内したいと言ってくれた。
帰りは高速だったが、行きは雰囲気を見せてくれるためにあえて海沿いの道を選んでくれた。
途中、漁師町の裏通りを車で見せてくれる。
ロブスターは網の仕掛けを使って獲るそうでその道具が積み上げてあった。
そしてこの街並みには一番古くて1710年、その他にもその年代に建てられた家々が保存されている。
というか、現在も住居として使われている。
アメリカの建国、大学受験前に覚えた年号、「卵割って雛なろう(ヒナ・ナ・ロ、1776)」
のフレーズが浮かんできた。
この辺り、ボストン周辺は建国前から栄えた古い町がたくさんある。
グロースター、「パーフェクトストーム」という映画を私は見ていた。
本来なら行かないはずの漁場に出掛けてあり得ない嵐に遭遇してしまい遭難した漁師たちの物語。
「私は絶対にあの人達は最後には戻ってくると信じていたのに。
ジョージ・クルーニーが死んでしまってダイアン・レインが一人になるなんて、
考えられないわ。」と言うと、
二ーナはばっさり「ほんとうの話だからしょうがないのよ。」
海岸には生きて戻ってこられなかった漁師たちの碑が立っていて、すべての人の名前が刻まれている。
私の夫は海産物の取引をしているが、この辺りの漁場からの品物もある。
こういう漁師の人達の命懸けの仕事の上に夫の仕事が成り立っているかと思うと、
感動が深まって涙ぐんでしまい、ルースにもそれを伝える。
ルースも黙って頷いてくれた。
海岸線は陽に照らされて波もなく静かだ。
この海が荒れることなど想像もできない。
改めて自然の力に畏敬の念を抱く。
海に面したシーフードを出すレストランで食事。
寿司のカウンターまである。
皆でアボカドソースのガスパチョ風スープ、トマトとシーフードの煮込み、
ハマグリのフライなどを頼む。
日差しが強く、二ーナは日焼けしようとしていて、ルースは避けようとしているので、
日焼けしても構わない私がルースと席を変わる。
ルースもかつてはP博物館でガイドをしていたそうだ。
その頃は館長の方針でM博士が大切にされていて、来館者にも彼の話をするように指導されていた。
しかし時代は変わり、今は現代的な物、スタイリッシュな作品や展示の仕方になり、
あまり郷土色の強い民芸的な物よりもモダンな雰囲気が好まれるようになったと言う。
今ではS市の人でさえ、M博士を知らない人も多いそうだ。
ところでルースはアーティストなのだが、以前町の一角にアトリエを構えていた。
そこの建物も観に行く。
風格のある窓の大きいアンティークな建築。
そしてその近くにある美術館、Cape Ann Museumに案内してくれる。
港町の風物とこの町にちなんだアーティストの作品が展示されている。
やはり東洋の物も飾られている。
大きな窓がたくさんある美術館。
そこからは外の緑や海が臨める。
それもまた美術館の作品のようだ。
日本から現在は直行便もないボストン。
意外に年配の人でボストンに行ったことのある人がいることを旅行前に知り驚いた。
今はサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンジェルス、ラスベガス辺りが日本から旅行する人気都市のイメージがある。
それなのに昔は船で行き来があったためか東洋からの美術品がこのような地方都市の美術館にも見られる。
美術館を出てから近くのお店でチャイを飲む。
こちらはどこの店に入っても大きなカップがあたりまえのように出てくる。
ルースと二ーナ行きつけのビーズやガラス、自然石のアクセサリー店へと入った。
Beth Williams Studio、オーナーで作家が感じの良い対応してくれて、
そこで二人ともピアスやネックレスを楽しそうに見て買い物をした。
私もネックレスで欲しい物があったのだが、端の処理をしていないため、
この店に頼むと一週間ほどかかるそうで、持ち帰って日本でどこかの店に頼まなければならない。
その上、45とあったのを$かと思ったらこれは重さで、値段は290ドルほど。
あきらめました。
店から出て家へと向かう。
車の中でいろいろな話をするが、二ーナは科学者で、
2年間、観測船に乗りこんでいたと言うことも知る。
「船の生活ってどんな感じ、慣れるの?」
「自分は平気だったけど、最後まで慣れない人もいたわねぇ。
一月に一度は陸に上がって食料や必需品も詰め込むのよ。
むしろ船から降りてからもシャワーを浴びる時に壁に張り付いて頭を洗ったり、
船の上の習慣が抜けなかったわ。」
ルースから二ーナの年を聞いてびっくりする。
思っていたよりも10歳は年上だ。びっくりしていると、
ルースは「Aこそ、その年には見えないわよ。」と二人で笑っている。
家に帰るとジョージはソファーで寛いでいた。
家の中にこういうコーナーがいくつもある。
「今日は何をしていたの?ガーデニング?それとも株の取引をネットで?(笑)」
「ガーデニングで一仕事終えたところだ。」
夕方になると二ーナはご主人と愛犬のレトリバーが住むニューハンプシャーへと車で帰っていった。
山の中に住んでいるそうだ。
別れ際、ルースは「もっとしょっちゅう会いたいわ。二ヶ月に一辺じゃねぇ。」
ルースとハグ、ジョージも言葉には出さないが娘との別れを惜しんでいるのが、わかる。
どこの家も同じだ。
自分の両親のことを思い浮かべる。
二ーナを見送った後、地元のレストランで簡単な食事をしようということになる。
日本で言えば食堂、居酒屋だろうか。二人とも店の人と懇意にしている。
ここで食べたリブステーキが絶品だった。
店を出る時、70年代のロックが掛かる。
ジョージが「この時代の音楽はほんとうにいい。自分もいろんなのを聴いたなぁ。」
と目を輝かせる。
「えっ、どんなのを聴いていたの?グループ名や歌のタイトルを言ってみて!」
「ディープパープル、レッド・ツェッぺリンとか。」
その話の詰めは翌朝に持ち越される。
ルースはこれから海岸線を北上して海沿いの町、グロースターへ案内したいと言ってくれた。
帰りは高速だったが、行きは雰囲気を見せてくれるためにあえて海沿いの道を選んでくれた。
途中、漁師町の裏通りを車で見せてくれる。
ロブスターは網の仕掛けを使って獲るそうでその道具が積み上げてあった。
そしてこの街並みには一番古くて1710年、その他にもその年代に建てられた家々が保存されている。
というか、現在も住居として使われている。
アメリカの建国、大学受験前に覚えた年号、「卵割って雛なろう(ヒナ・ナ・ロ、1776)」
のフレーズが浮かんできた。
この辺り、ボストン周辺は建国前から栄えた古い町がたくさんある。
グロースター、「パーフェクトストーム」という映画を私は見ていた。
本来なら行かないはずの漁場に出掛けてあり得ない嵐に遭遇してしまい遭難した漁師たちの物語。
「私は絶対にあの人達は最後には戻ってくると信じていたのに。
ジョージ・クルーニーが死んでしまってダイアン・レインが一人になるなんて、
考えられないわ。」と言うと、
二ーナはばっさり「ほんとうの話だからしょうがないのよ。」
海岸には生きて戻ってこられなかった漁師たちの碑が立っていて、すべての人の名前が刻まれている。
私の夫は海産物の取引をしているが、この辺りの漁場からの品物もある。
こういう漁師の人達の命懸けの仕事の上に夫の仕事が成り立っているかと思うと、
感動が深まって涙ぐんでしまい、ルースにもそれを伝える。
ルースも黙って頷いてくれた。
海岸線は陽に照らされて波もなく静かだ。
この海が荒れることなど想像もできない。
改めて自然の力に畏敬の念を抱く。
海に面したシーフードを出すレストランで食事。
寿司のカウンターまである。
皆でアボカドソースのガスパチョ風スープ、トマトとシーフードの煮込み、
ハマグリのフライなどを頼む。
日差しが強く、二ーナは日焼けしようとしていて、ルースは避けようとしているので、
日焼けしても構わない私がルースと席を変わる。
ルースもかつてはP博物館でガイドをしていたそうだ。
その頃は館長の方針でM博士が大切にされていて、来館者にも彼の話をするように指導されていた。
しかし時代は変わり、今は現代的な物、スタイリッシュな作品や展示の仕方になり、
あまり郷土色の強い民芸的な物よりもモダンな雰囲気が好まれるようになったと言う。
今ではS市の人でさえ、M博士を知らない人も多いそうだ。
ところでルースはアーティストなのだが、以前町の一角にアトリエを構えていた。
そこの建物も観に行く。
風格のある窓の大きいアンティークな建築。
そしてその近くにある美術館、Cape Ann Museumに案内してくれる。
港町の風物とこの町にちなんだアーティストの作品が展示されている。
やはり東洋の物も飾られている。
大きな窓がたくさんある美術館。
そこからは外の緑や海が臨める。
それもまた美術館の作品のようだ。
日本から現在は直行便もないボストン。
意外に年配の人でボストンに行ったことのある人がいることを旅行前に知り驚いた。
今はサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンジェルス、ラスベガス辺りが日本から旅行する人気都市のイメージがある。
それなのに昔は船で行き来があったためか東洋からの美術品がこのような地方都市の美術館にも見られる。
美術館を出てから近くのお店でチャイを飲む。
こちらはどこの店に入っても大きなカップがあたりまえのように出てくる。
ルースと二ーナ行きつけのビーズやガラス、自然石のアクセサリー店へと入った。
Beth Williams Studio、オーナーで作家が感じの良い対応してくれて、
そこで二人ともピアスやネックレスを楽しそうに見て買い物をした。
私もネックレスで欲しい物があったのだが、端の処理をしていないため、
この店に頼むと一週間ほどかかるそうで、持ち帰って日本でどこかの店に頼まなければならない。
その上、45とあったのを$かと思ったらこれは重さで、値段は290ドルほど。
あきらめました。
店から出て家へと向かう。
車の中でいろいろな話をするが、二ーナは科学者で、
2年間、観測船に乗りこんでいたと言うことも知る。
「船の生活ってどんな感じ、慣れるの?」
「自分は平気だったけど、最後まで慣れない人もいたわねぇ。
一月に一度は陸に上がって食料や必需品も詰め込むのよ。
むしろ船から降りてからもシャワーを浴びる時に壁に張り付いて頭を洗ったり、
船の上の習慣が抜けなかったわ。」
ルースから二ーナの年を聞いてびっくりする。
思っていたよりも10歳は年上だ。びっくりしていると、
ルースは「Aこそ、その年には見えないわよ。」と二人で笑っている。
家に帰るとジョージはソファーで寛いでいた。
家の中にこういうコーナーがいくつもある。
「今日は何をしていたの?ガーデニング?それとも株の取引をネットで?(笑)」
「ガーデニングで一仕事終えたところだ。」
夕方になると二ーナはご主人と愛犬のレトリバーが住むニューハンプシャーへと車で帰っていった。
山の中に住んでいるそうだ。
別れ際、ルースは「もっとしょっちゅう会いたいわ。二ヶ月に一辺じゃねぇ。」
ルースとハグ、ジョージも言葉には出さないが娘との別れを惜しんでいるのが、わかる。
どこの家も同じだ。
自分の両親のことを思い浮かべる。
二ーナを見送った後、地元のレストランで簡単な食事をしようということになる。
日本で言えば食堂、居酒屋だろうか。二人とも店の人と懇意にしている。
ここで食べたリブステーキが絶品だった。
店を出る時、70年代のロックが掛かる。
ジョージが「この時代の音楽はほんとうにいい。自分もいろんなのを聴いたなぁ。」
と目を輝かせる。
「えっ、どんなのを聴いていたの?グループ名や歌のタイトルを言ってみて!」
「ディープパープル、レッド・ツェッぺリンとか。」
その話の詰めは翌朝に持ち越される。