Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

金子三勇士@かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール 7/4

2010-07-04 23:53:52 | ピアニスト 金子三勇士
葛飾と聞いて浮かんでくるのは渥美清主演の映画シリーズ「男はつらいよ」のフーテンの寅さん。
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又、帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
人情に厚く本音で語り合う下町のイメージの葛飾。
そんな葛飾区のシンフォニーホールで行われた「おなじみのクラシック音楽大集合」
は思った通り、アットホームで熱かった!

梅田俊明指揮クラシックオーケストラ
ピアノ 金子三勇士

ハチャトゥリアン 組曲「仮面舞踏会」より「ワルツ」(浅田真央ショートプログラム曲)

ガーシュウィン ピアノ協奏曲 へ調 エディット、アレンジ版(キム・ヨナ フリープログラム曲)

ショパン ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11 第1楽章(「のだめカンタービレ」)

チャイコフスキー 組曲「くるみ割り人形」より「あし笛の踊り」
(ソフトバンク モバイル 「白い犬のお父さん」シリーズ)
                      「こんぺいとうの踊り」

ボロディン オペラ「イーゴリ公」より「ダッタン人の踊り」

***休憩***

ベートーベン 交響曲 第7番 イ長調 作品92 

アンコール
ラフマニノフ 前奏曲作品3-2「鐘」(浅田真央フリープログラム曲)

いつの間にか耳に馴染んでいるようなクラシック音楽、そして読売新聞のサイト"yorimo"で
ユーザーの投票により選出されたクラシック曲を選曲した親しみのある曲ばかり、
初めて聴いても楽しめる曲を厳選したコンサート。

指揮者の梅田俊明は「のだめ」の指揮指導、演奏を担当。
コントラバス、ピアノ、チェレスタの演奏も学生時代に学んでいる。

司会の進行の元に曲の解説、
金子三勇士、指揮者の梅田俊明のそれぞれの曲へのアプローチの説明があり、
演奏曲、演奏者、指揮者を身近に感じることができる。

老若男女で1400席は満席。
コンサートの2時間、飽きさせないプログラム構成、解説も入り、
会場にいた子供たち、クラシックは余り聴かない、あるいは初めてだった観客も
心からこのコンサートを楽しんだ。

オーケストラのメンバーが若くてエネルギッシュ。
和やかな雰囲気で演奏会は始まる。

金子三勇士のガーシュウィン、リズム感のある躍動する曲。
これは本来、30分近い曲をその6分の1程に縮めるアレンジ。
現代音楽独特の変調が激しい曲を編曲することでいきなり右のパーツから左へと移動したり、
短縮バージョンはより複雑になる。
クラシックだけでなくジャズや映画音楽、ミュージカルの作曲もあるガーシュウィンの曲、
その雰囲気をがしっと捉えて金子三勇士は豪快に愉快にピアノを奏で観客をぐっと惹きつけた。
後半はジャジ―と言うか、もうR&Bに近い要素も入っている。
今更ながら金子三勇士のオールラウンドなピアノ演奏の底力を思い知った。

このホール、空間がゆったりしていて音の響きも美しい。
それでいながら、観客との一体感を強く感じる。
オーケストラや指揮者との相性も完璧だ。
スタンウェイのピアノ、Dタイプの音も豊かだ。

ショパン ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 第1楽章
今年の4月にオペラシティーで東京フィルと金子三勇士が共演したこの曲。
今回は第一楽章のみだが、前回も素晴らしかったが今回は更に、
激しさと優しさの対照がはっきりと描かれ、弱音の美しさが際立った完璧な演奏だった。
柔らかさ、繊細さ、そしてクリアな部分はよりくっきりと。
ガーシュウィンの曲で弾けた金子三勇士、
その勢いでショパン ピアノコンチェルトに突入し、見事に演奏しきった。

さて金子三勇士の出番はこれで終わりなのかと思ったら、
チャイコフスキー「くるみ割り人形」の「葦笛の踊り」で登場。
ピアノは既に横に片付けられている状態。
どこに行くのかと思えばハープの隣にある楽器の元へ。
チェレスタの調べをピアノの大役を終えた三勇士はリラックスして思いっきり楽しげに奏でている。
メインのピアノだけでなくオーケストラのパートとも言えるチェレスタの演奏。
ずっと彼のファンとして演奏を聴いてきて、こういう思いがけないサプライズは嬉しい。
ビブラフォンの演奏者としてもプロ級だそう。

「くるみ割り人形」不思議な音がたくさん登場する曲だ。
今回、生で聴いてみて、それぞれの音にどのような楽器が使われているかを
初めて観ることができてたいへん興味深かった。
金子三勇士もこの曲のミステリアスな世界を作り上げるのに貢献した。

アンコールのラフマニノフの「鐘」
この時も金子三勇士はチェレスタでオーケストラに加わった。

金子三勇士、主役も脇役もどちらも演じ分けられる演奏者。
それは20才でも音楽家としての経験を長く積んでいるから。

ところで司会者の紹介で年齢の話になり会場はどよめいた。
円熟した演奏を聴いた後に彼の年齢を聞くと観客はびっくりしたようだ。

この日、更に嬉しいニュースがあった。
この前日のリハーサルで今回の演奏曲がレコーディングされて、
Best Classic NOVAとして9/1にリリースされると聞いた。
金子三勇士のピアノとオーケストラの演奏を合わせて聴くことができる。
そして金子三勇士のピアノソロ、リストの名曲を集めたCDは10月に発売になる。

今回、金子三勇士の演奏会に初めて実家の両親を誘って一緒に観賞した。
二人とも大満足で終了後、目を輝かせている。
元気に帰って行く両親の背中を見送りながら、
金子三勇士のお陰で親孝行できたことに感謝の気持ちで一杯になった。

帰り道、iPodでショパン「ピアノコンチェルト」ラン・ランのバージョンを聴きながら、
車中を過ごした。
次回は程なくリリースされる金子三勇士の演奏したこの曲を聴きながら
きっと家路につくことができるだろう。