行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

限定正社員の落とし穴

2013-11-11 23:41:17 | Weblog

甘利明経済財政・再生相は10日のNHK番組で、非正規社員の待遇を改善する手立てとして仕事内容や勤務地を限定する「限定正社員」を普及させたい考えを示した。「日本の雇用形態は正規と非正規の2極しかない。その中間を作りたい」と強調した。

日本の大企業の正社員の雇用形態は、必ずしもコンクリートのように固まったもではなかった。勤務地でいえば、ホワイトカラーは限定されていないが、地方の工場で採用されたブルーカラーについて言えば、勤務地が採用された地方・地域限定という暗黙の合意が労使間であった。かつて、高度経済時代、製造業は人手不足を解消するため地方に工場を展開した。地方に工場を作る場合、そこで製造する製品は必ずしも新製品と言うことでは無く既製品の移管が多く、その場合移管に伴い大量の転任が発生した。当然地域出身現場のブルーカラーの転任が生じるため、労使間ではそれが最も難題であった。

工場の分散化が進み、ブルーカラーの地域限定化はなし崩しになったが、いまだその原則は残っている。政権が考えているのは、ブルーカラーだけでなく全ての労働者が対象だと思うが、日本企業の海外展開が急速に進んでいることを考えると、地方に分散化した工場を海外へ生産移管事例が多くなる。限定正社員は雇用の場をその瞬間、失うことになり、地方経済に与える影響は多大だ。

一方、経営にとっては、これまで工場閉鎖に伴い、人員を再配置するのに苦労したが、限定正社員だとその苦労はしなくてすむことになる。当然、今後地方工場での採用は限定正社員が多くなり、非正社員がその分少なくなるということでなく、正社員が減少し、結果的には不安定雇用が増えるということになるだろう。
 


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