行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

消費者不在のTPP国会質疑

2013-02-28 23:14:28 | Weblog

最近のTPP問題、国会での議論を聞いていると、質問も、首相の答弁も全て生産者側に立った議論で、消費者のことは全く考慮されないでいるのにはうんざりする。農業を守るため例外品目を死守せよといったことに対する首相の答弁も何とか勝ち取るといったまるでTPPは環太平洋の国々特に米国との戦いのような議論に聞こえる。

TPP、FTAといった自由貿易の枠組が現在何故盛んになったのか、日本だけが何故参加率が低いのか、基本に立ち返って議論をして貰いたい。信長、秀吉が行った楽市楽座は日本国内で初めて行われた自由貿易といって良いだろう。道路を整備し、橋を架け、諸国から特産物を安土に集め、誰でもが参加できる市場を開設し、庶民の生活向上と経済の発展をねらったものだ。今やかつて無いほど世界的な規模で楽市楽座が行われている。貿易または交易は輸出入を通じて、国民の生活を向上させ、より大きな経済圏へ発展させるから自由な枠組を作ろうと努力してきた。そのおかげで私たちの生活は豊かになってきた。

しかしまだ日本の消費者は世界で一番高い米やパンを買わされている。700%(米)や250%(小麦)の関税がかかり、その税は農業関係者に補助金として使われている。消費者の負担で日本の農業を支えているのがこれまでの農政であった。それに風穴をあけようとしたのが補助金を止めて農業者の所得補償制度であった。TPP議論に合わせて消費者の負担を減らす農政に転換して貰いたい。

円安で輸入小麦の価格を9.7%上げると農水省は言っているが、それぐらいは関税を減らせば済むことで高いパンを更に高くすることはない。讃岐うどんの小麦までが豪州に依存していること自体日本農業の矛盾を現している。

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日本のデフレの原因

2013-02-26 23:45:25 | Weblog

3回にわたり先進国所得格差の拡大について4カ国シンポジウムの内容を紹介してきた。そのことから日本のデフレの原因がおぼろげながらわかってきた。英、米とも生産性が伸びても賃金の伸びが追いつかないことが格差の原因で背景には非正規雇用現象があることが判った。

ところが日本の場合は1997年から2010年まで生産性が2割近く伸びても、賃金は欧米のごとく多少でも伸びることは無く、逆に10%も減少してしまった。生産性が伸びた分は価格の低下と企業の内部留保に取られてしまったわけだ。

アベノミックスが今喧伝されてるが、デフレ脱却には結局は賃金が上がらないことには難しいことが判りつつあるが、一番判ってないのが経団連なのかもしれない。日本の労組を束ねる連合の弱体化も賃金が上がらない要因だ。今回のシンポジウムで理想とされたスエーデンはホワイトカラーも含め組合の組織率は70%で、経営が傾いたら解雇できるが労使で基金を作り、再訓練、再就職を促す積極的労働政策を展開し、所得格差も低い。

 

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先進国での所得格差拡大、英国の場合

2013-02-24 15:48:58 | Weblog

英国では、1991年までは生産性の伸びと賃金の伸びは同じであったが、それ以降は米国と同じく生産性の伸びが増加したにも拘わらず、賃金の伸びは停滞ている。フルタイムの労働者の実質賃金で見ても20年間年26000ポンド前後の凍結状態で、この点は日本とよく似ている。最近でも2011年の大企業100社(ロンドン証券取引所FTSE)における管理職給与は平均49%上昇したにも拘わらず、一般従業員の賃金は2.7%増に止まった。

この背景は、この5年間で見てもフルタイム雇用が34万人減少し、パートタイム雇用が66万人増え、失業者が85万人増えるという労働市場の変化がある。この流れは今年も公共支出830億ユーロ削減の具体策で、公共部門55000人カット、公共サービスの民営化(アウトソーシング化による)、福祉予算の40%カットで加速される。

英国労働組合会議(TUC)としては、かつて4割近くあった組合組織率が26%まで低下し、特に民間企業の組織率は15%まで落ち込んでいるので、先ず組織率回復へ全力を注ぎ、リビングウェッジ(生活賃金)キャンペーンを開始すると言っている。同時に、アマゾン、グーグル、など税金を払ってない先端企業から徴税するキャンペーンにも参加する。

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先進国における所得格差拡大、ドイツの場合

2013-02-22 22:21:42 | Weblog

いまやEUの盟主的な存在となったドイツはリーマンショック後の0.5%マイナス成長を乗り切り、昨年は0.7%の成長に回復したが。所得格差拡大という大きな犠牲が伴った。1年前はギリシャ問題でEU始まって以来の危機をむかえ、現在はスペイン、ポルトガル、イタリアにまで拡大し、ドイツへの負担は更に大きくなるリスクも存在する。

リーマンショック後、ドイツは政労使の社会対話の中でマイナス成長を克服した。対策の柱は廃車をすれば補助金を出すという経済刺激プログラムと短時間労働(ワークシェアリング)を柱とした労働市場プログラムで、それなりの効果をあげた。しかし労働市場プログラムは失業率の低下というプラス面があったが賃金格差の拡大という結果と雇用保障の低下というマイナス面も生み出した。

2012年、低所得層の所得が減少しているにも拘わらず、第10分位の富裕層は13.4%も所得が増えている。1%の富裕層は所得を47.7%まで増やしている。また、非正規労働者は23%を占め、2009年以来失業率が下がっているのに貧困率が15%へ悪化したという現象も起きている。今や800万人が時間給8ユーロ以下で働いている。

これを乗りきるには、より手厚く保護された終身のフルタイム雇用と言いきり、日本の終身雇用制が欧州で見直され始めたようだ。

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先進国における所得格差拡大、米国の場合

2013-02-21 23:06:26 | Weblog

国際労働財団で米、英、独の労働運動トップリーダーを招いて、各国の経済状況と所得格差についてのセミナーを開催した。グローバリゼーションが作用しているのか、最低賃金は800円~900円でほぼ揃ってきているが最高の方は米国がダントツで1%の富裕層が35.6%の分配を受けている。この36年間で20%の最貧層は所得が6%減少しているのに0.1%の上位富裕層は454%も増加し、平均所得は300万ドルに達している。

労働者の時間給で見ると、1973年ぐらいまでは生産性の伸びと賃金の伸びは一致しているがその後は生産性が倍伸びても賃金が殆ど停滞している。組織率の高い製造業の雇用減少がこの背景に有り、具体的には北米貿易自由協定で中南米に工場が移転し、70万の雇用が減少したこと、対中貿易で270万(内、210万は製造業)の雇用が減少したことにあると分析した。一方医療費は高くなり、ヘルスケアは崩壊しつつある。

オバマが大統領になった背景はこの格差を縮小することを期待したからだが、現実はそうなっていない。戸別訪問してオバマの支持を労働組合員は訴え、当選に寄与したが、期待外れでがっかりしている。

カッコイイオバマ大統領も苦悩しているかも、2期目に期待したい。

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2013春闘定期昇給だけで良いのか?

2013-02-19 18:26:44 | Weblog

春の交渉も3月中旬の一斉回答にむけて開始されたが、先日電機労使トップのコメントが朝日に掲載されていた。その中で、日立製作所の労働担当常務(労担とかつて言ったが今は死語なのか変換不可能)は「労組側は賃上げをしてないと言うが、定期昇給などの賃金体系維持は実質的な賃上げにあたる。一律に年齢に応じて給与が上がっていくことが働き方としてふさわしいとは思わない」と言っている。

定期昇給は個人にとって見ればまさに年齢に比例して定期的に上がるので月2000円とか3000円とかのレベルだが賃金は増える。しかし、会社にとっては原則賃金総原資は増えない、実質、賃上げではないのだ。毎年必ず退職者がいるから、新入社員の昇給は退職者のそれと相殺されるからだ。団塊の世代のような社員層が固まっている時には賃金原資がよけい必要になるのでそのような原則論は通らないが。現在のように卒業生が多く、若い人が少ない社員構成の古い大企業では定期昇給をしても賃金原資がうくことになる。

以上のことは賃金論のイロハで、労担であれば良く認識していると思うが上記のような発言をする真意は何なのか気になる。デフレが長く続き、ベースアップ無き時代が労担をもとにかく賃金を削れば利益増に貢献できるという錯覚を起こさせてしまったのではないだろうか。それで社員はやる気を起こし、利益増へ邁進出来るのだろうか?

1997年をピークに毎年賃金が下がってきた現実を見ると、年功序列賃金体系はデフレ時代に相応しい賃金体系で、企業の内部留保を貯め込むのに寄与したのではないかと思わざるを得ない。

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梅が開花し始めた昭和記念公園

2013-02-17 16:24:57 | Weblog

寒い今年の冬だが梅が開花し、ようやく春が訪れようとしている


梅園のまんさくは満開

日本水仙も咲き始めた

福寿草、今年は不作で残念、一面に咲いているはずの福寿草だが今年はチラホラ


アイスチューリップは見納め


元気なツグミと出会った

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消費税軽減税率考その2

2013-02-15 18:21:52 | Weblog

軽減税率を侮ってはいけない。産業構造に大きな影響を与えるからだ。前回紹介したとおり、軽減税率で優遇されている伊、仏のカフェや各種のレストランは華やかに栄え街のシンボルとなっている店さえあるが、25%VAT適用のコペンハーゲンではマックを見つけるのも苦労する。夜の夕食はチボリ公園のレストランで済ませることが多かった。

日本では、居酒屋、ファミリーレストラン、各国料理のレストラン、郷土料理など世界でも最も充実した外食産業があり、待遇にはイマイチ問題があるが多くの労働者が働いている。特に牛丼チェーンでの競争は激しく、10%以上の消費税が適用されたら経営が成り立たない公算が強い。

欧州各国では食料品は殆どの国で軽減税率を適用して庶民の生活に配慮している。だからVAT20%でもパンも肉もワインも日本より安いか同程度だ。私が普段飲んでいる豪州産ワインイエローテールの値段もパリのカールフールでほぼ同じ値段で買える。フランスのテーブルワインはその半分の値段で買える。

ドイツのようにマックで食べると標準税率の19%、テイクアウトだと7%の軽減税率というやり方もあるが、日本で実行したら店の外で食べる客が多くなり、椅子のない屋台が流行ったり街の風景も変わってくる。

文化・スポーツへの軽減税率も課題だ。観客の動員が採算と結びつき、税率によっては存続すら危ぶまれるものも出て来る。
消費税の軽減税率を考えるに当たっては、雇用の問題と伝統文化や食文化を念頭に置いて貰いたい。

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消費税の軽減税率考その1

2013-02-13 22:49:50 | Weblog

消費税は2014年4月に消費税率を8%、15年10月に10%に2段階で引き上げる公算が大きい。これからの焦点は軽減税率になってくるだろう。軽減税率とその対象品目をどうするかが課題で、日本特有の業界のエゴが出て来ると限りなく品目が多くなり増税効果が薄められる。

欧州を長期間旅行していると日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)が付いてまわるので領収書を見る度に気になってくる。EUは指令でなるべく統一した税率を目指しているがVATの歴史も有り、国により税率も27%から15%まであり、軽減税率やその適用品目も各国の事情でばらばらだ。一応EUは適用品目を食品、水道水、書籍、医薬品など、21項目の商品やサービスに限定して、加盟国は独自の判断でこのリストの中から適用品目・サービスを選択している。

伊、独、仏、英は税率が20%前後でほぼ真ん中に位置しているが、軽減税率となるとかなりその国の事情が反映され異なる。共通しているのは食品、水道水、書籍、新聞ぐらいだが、英国はさらに運賃、障害者用器具を含め税率はゼロと徹底している。フランスは5.5%の軽減税率だが、観光立国であるため宿泊、運賃、外食、医薬品を7%の軽減税率にし、同じくイタリアは10%で、更に農産品、住宅は4%という低さだ。

デンマークは軽減税率がない唯一の国でしかもVATは25%と高率だ。フランスやイタリアのごとく外食産業への優遇はなく、レストランは少なく、夜ともなるとコペンの街は寂しいかぎりだ。またレストラン料金の高さに驚くが福祉や公的扶助の高さで国民から支持されているのだろう。

さて日本だが、現在の5%の消費税は馴染んできたので日常接する食品や外食にはこの率での軽減は誰でも認めるだろうが、今回の2段階増税がやっかいだ。10%の段階から軽減税率を適用すると政府自民党は考えているようだが、そうすると15年10月に軽減税率を8から欧州並みの5%へ下げられるかどうかだ。日本では米、パンが世界でも飛び抜けて高いから8%のままでは庶民は納得できない、8%に上げる来年から5%の軽減税率を導入し、将来欧州並みの20%消費税になったとしても食品や外食は5%にするという方向を打ち出した方がよい。とにかく今から業界や役所のエゴが出ないように消費者皆が議論すべきだ。

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ゆめぴりかの出世

2013-02-12 00:13:51 | Weblog

先日、テレビの放送で日本の米、新3大ブランドとして北海道ゆめぴりか、佐賀のさがびより、山形のつや姫を食べ比べながら紹介していた。2010年の秋、北海道の天人峡へ行った時温泉宿からお土産としてゆめぴりかを持たされた時には正直、重さもあり持って帰るか迷った。聞いたこともない米だし、北海道の米はもう一つということもあった。

何とか持って帰ったのだが、食べてびっくり、実にしっかりした味の米で探したが東京では手に入らなかった。ところが近所のスーパーで一昨年あたりから出回り、店頭にあったらとにかく買うことにした。昨年の新米もゆめぴりかは遅いデビューで、店に入荷時期をたずねたほどであった。

それが、テレビで新3大ブランドなどと紹介され、驚くほど早い出世で嬉しくなったが、手に入りづらくなるのではと心配し出している。今のところ北海道だけで栽培しているから量的には全国で作付けをしているコシヒカリよりはるかに少ないからだ。

もう一つ、北海道関連では、エゾ鹿の肉にはまっているのだが東京ではなかなか売っている店がないのが残念だ。ゆめぴりかのように観光客に配って全国ブランドにして欲しい。日本の肉屋やスーパーでは豚・牛が主体で知恵が無い。ラムや鹿ぐらいまで品揃えを広げて貰いたい。フランスではウサギも日常的に食されているくらいだ。

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