私がこれまで最も印象を受けた「油断」の作家堺屋太一氏が亡くなった。あまりにも石油ショックが大きかったせいかもしれないが、日本のエネルギー問題に警鐘を鳴らし、その後私自身エネルギー問題に取り組む動機となった。当時の通産官僚の情報力を結集した作品だった。石油に関しては1970年代とあまり変わらず、ホルムズ海峡が今もって日本経済の生命線だ。油城の楼閣と表現された氏の警句は今でも否定できない。
堺屋氏はその後、「団塊の世代」を発表、人口ボーナス後の人口問題にも警鐘を鳴らした。政治はそれに答えられず、人口減少社会に直面している。国会では今もって「子供を産まなくなった」などと責任回避をする財務大臣が居直る。その後の「知価革命」ではソフトの重要性を気付かせ、いまや知財が国家経済の要となっている。米中の貿易交渉も知財をめぐってつばぜり合いをしている。残念ながら、日本政府も経営者も氏の提起に答えられなかった。
1970年代、大阪で勤務していたとき以来、何回か堺屋氏の講演を聴く機会が有り、その都度感銘を受けた。最後にお会いしたのは氏が経済企画庁長官の時だった。1998年だったか、不況脱出への金属労協政策要請を当時の得本議長と経済企画庁へ行き、堺屋長官と1時間ぐらい懇談した。たまたま、得本議長が行革委員をやっていたので、経済企画庁の重要組織の存続を逆に要請された。その時の感じを今でも覚えているが、堺屋長官は講演を聴いた当時の覇気が無く、疲れていた。この方は政治には向いてないのだとの印象を持った。
やはり、氏は民間にあって、作家活動を通して未来を予見する巨人だと思う。
合掌