行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

労働経済まで踏み込んだ経済財政白書

2009-07-29 23:08:13 | Weblog
今回の白書では「格差」にも焦点を当て、非正規雇用が格差を生んだ要因の一つとして分析し、事業所が非正規雇用を活用する理由として、「賃金の節約のため」が最も多く挙げられている。しかし派遣労働者だけについて集計すると、「即戦力・能力のある人材を確保するため」が最も多く、2 位、3位がそれぞれ「正社員を確保できないため」「景気変動に応じて雇用量を調整するため」となっている。一方、派遣労働者は応募理由として「正社員として働ける会社が無かったから」が多く、業種間、あるいは職種間等の様々なミスマッチがあるとしている。

最近の三菱自動車の求人再開方針で派遣労働者でなく、期間契約社員を生産再開要員とし、契約期間後に正社員に採用することも考えていると発表したが上記のミスマッチを解消する一つの方法だろう。

只、白書は非正社員の賃金分析で年収は200万円(中央値)高くても300万円と低く、正社員との賃金格差の問題を指摘しながら、数字をいじりまわして非正社員の家庭の貯蓄率は失業に備えて高くなると分析しているが、年収200万円の家庭で貯蓄ができるのか実態を見て欲しい。派遣村にたどり着いた労働者は小銭しか持っていなかったけど

最近、外需より内需を振興せよという議論があるが、この点白書は妥当な分析をしている。「世界的な景気後退の中で衝撃的だったのは、リーマンショックのあと、日本における外需の減少、結果としてGDPの減少が主要先進国中で最大となったことである。これは、輸出相手国の内需の落ち込み、輸出に占めるウエイトの高い自動車やIT製品への影響の集中、円高などが重なったためである。」

日本の輸出依存度はGNPの15%でEU諸国に比し低いから特に外需を減らす必要はない。問題は自動車やエレクトロニクスの比率が高かったことだ。他の産業の輸出を振興することと、白書が別途分析しているが、輸出先地域の中で欧米が極端に落ち込み、アジア向けの落ち込みがそれほどでもない。したがって輸出先は欧米から新興国に力を入れるという方向性が導かれるが白書はそこまで踏み込んでいない。
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最低賃金の引き上げを

2009-07-28 17:03:56 | Weblog
米国からの報道によると、7月24日以降、米国の連邦法定最低賃金は1時間当たり6.55ドル(約620円)から11%増の7.25ドル(約690円)に引き上げらる。管理人や食堂従業員、保育士など、年収1万5000ドル(約140万円)以下で働く200万人を超える労働者の月収は、120ドル(約1万1000円)ほど増加すると見られる。

ヒルダ・ソリス米労働長官は、「これは極めて妥当な賃金引き上げであり、不況に苦しむ労働者の家計の助けとなるだろう。特に喜ばしいのは、最低賃金で働く労働者の3分の2を占める女性が、この恩恵を受けられることだ」と述べた
米経済諮問員会の委員であるアッペルバウム教授は「景気を回復軌道に戻すために最も重要なのは、消費者の自信の回復だ。中・高所得層は、所得が増えても増加分を貯蓄に回すだけなのに対し、日々の生活費にも事欠く低所得層は、物資も所得も不足しており、賃金が上がれば、その分を消費に回すことが調査結果から明らかになっている」と分析している。

日本では最低賃金の改定額の目安を審議してきた中央最低賃金審議会の小委員会は28日、2009年度の改定額を決定した。労使の意見は折り合わなかったが、中立委員の見解として全国加重平均で時給を7~9円引き上げる目安をまとめ、最低賃金額は710~712円となる。

財政負担のない景気対策として最低賃金の引き上げは是非実行して貰いたい。生活保護給付より賃金が低いなどとは!これまで無責任にも放置してきた。民主党のマニフェストでは当面、中小企業の法人税率引き下げと併せ全国最低賃金を800円とし、将来的には1000円を目指すとしている。EUの最低賃金、仏1137円、英国834円に比べると見劣りはするが妥当な目標だろう。
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日本は高齢者が働きすぎるよ麻生さん

2009-07-26 22:46:19 | Weblog
麻生首相が若手経営者の会で「日本は65歳以上の人たちが元気。その元気な高齢者をいかに使うか。この人たちは皆さんと違って働くことしか才能がないと思ってください」と述べ、さらに「80を過ぎて遊びを覚えても遅い。遊びを覚えるなら青年会議所の間くらいだ」「60過ぎて、80過ぎて手習いなんて遅い」
私の知ってる友人は退職してから手習いで植栽を覚え、好きな植木屋をやっている。長いサラリーマン生活の中で長く暖めていたことを退職後実現して第2の人生をエンジョイしている人は多い。それが新しい仕事か趣味・遊びかは別として「働くことしか才能がない」とは麻生首相の現実離れ認識がまたもや暴露された。

65歳以上の男性就業率を見ると、日本は29%と異常に高い、その次に高い米国が19%、EUの中で英国が高いが9.9%あとは仏2%、独5.3%、伊6.0%と一桁だ。日本の労働者は良く言えば働く意欲が強い、悪く言えば老後が不安だからとにかく働かなくてはという強迫観念が強い。この国際比較数字は労働時間と同じ傾向が見られる。政治家はこれをどう見るのだろうか。麻生さんはもっと働けと言っているようだ。

ワークシェアリングのもう一つの側面から言えば、日本は65歳以上就業が高く若者の雇用を奪っているとも言える。私は麻生首相の期待に反して、働く才能がないが60過ぎての手習いと遊びで忙しい。
かつてイタリア人の友人が40年働くと年金生活には入れるその日を楽しみにしていると言っていた。仕事止めて何するのと聞いたら気の置けない仲間とゆっくりワインでも飲んで過ごすと返事が返ってきた。それでも日本より労働生産性は高い(6月25日ブログ参照)。
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アマルフィ女神の報酬 娯楽作としては合格

2009-07-24 23:29:26 | Weblog
イタリア好きだけに題名を聞いて近所のシネマコンプレックスへ行ってしまった。2つの劇場で上映しているところを見るとヒットを予測してのことだろう?その根拠は織田祐二、天海祐希、佐藤浩市といった当代人気の俳優陣とやはりイタリアが舞台ということだろう

筋立てはNGOがテロリストになってローマ訪問中の日本の外務大臣を日本大使館で襲うというやや無理筋のもので、NGO関係者としてはおもしろくないが、それはともかくとしてローマの遺跡群、コロセウム、フォロロマーノ、の映像が美しい、ダビンチコードではパリが舞台で主人公がパリ中をかけずり回るが、ここではローマの観光スポットが事件の舞台、サンタンジェロ、スペイン階段、テルミニ駅などを主人公がかけずり回り、最後は200km離れたアマルフィ海岸が舞台となる。アマルフィ海岸は上空から撮影し、たっぷりとその美しさを見せてくれる。

日本の大臣のスケジュールが遅れ、テロリストは時間稼ぎにアマルフィまで舞台をひっぱってきた。娯楽作品なら近辺のカプリ島(写真)やポンペイ、ナポリまで舞台を広げて貰いたかった。だけどサラ・ブライトマンを登場させ、たっぷりとテーマソングを聴かせてくれたサービスでこの映画は合格点 。
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皆既日食の天体ショーから政治ショーへ

2009-07-22 23:25:37 | Weblog
本日は日本国中皆既日食の話題で大変なものであった。船で見に行った人が大正解で、東京では曇っていて太陽が見えなかったためか75%欠けた割には薄暗くなっただけ、逆に25%でも明るいという太陽のすごさを認識したしだいだ。

一方、昨日解散した衆議院、いよいよ最近にない政治ショ-が始まった。40日という長距離レース、山有り、谷有りで暑さに負けず日本中盛り上がって欲しい。久しぶりの政治参加へのチャンス、都議選の時にも触れたが日頃政治が悪いと何でも政治のせいにしないでまず投票だ。都議選のように10%ぐらい投票率が上がれば政治地図が変わるだろう。投票率が低いと特定団体や特定階層の影響が大きくなるからだ。

現在の情勢は、自民党の崩壊で政策マニフェストもまだできず圧倒的に民主党が有利、日経の調査だと比例代表で投票する政党は民主党40%に対し、自民党は20%だ。麻生総理も細田幹事長も民主党のマニフェストを批判するばかりで「見事に野党になっている」(岡田幹事長)と言われる始末、だが40日も時間はあるので自民党も若手を中心に立て直し、しかるべきマニフェストを早急に提示し、ここは政策論争を盛り上げて欲しい。

米国のようなお祭り騒ぎでなく、我が国が直面している不安定雇用、年金、医療、介護、少子化などじっくりと国民の前で論争してして欲しい。NHKなどはゴールデンアワーに毎日1時間でも良いからテーマを絞って論争の場を提供したらどうだろうか、ネットで流すことも良いだろう。まさに政治ショーの始まりとなる。
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大雪山の悲劇

2009-07-19 14:04:33 | Weblog
私と同年代の方々が大雪山系で10人も遭難した。残された家族の悲しみは如何ばかりのものだろうか?中には出るとき夫にこれが最後の山行だと言って亡くなった人もいた。先月、私は同じ大雪山系に行ったが北海道の山は本州の3000mクラスに匹敵する植生で天候も厳しいと感じた。

何年か前、登った旭岳、今回訪れた黒岳、十勝岳全て1500mあたりからほとんど木がなくなり、岩山となる。風よけは無く強風が吹いたらまともに受けることになり、夏山でもダウンの入った防寒具が必要になる。遭難したパーティはそれぞれ旭岳温泉、十勝温泉に泊まってからの山行となった。温泉につかり翌日からの楽しい山行を思い浮かべていたことだろう。写真(6月の十勝岳)で見るように木が全くないので、天気が良ければ見晴らしはすこぶる良く、富良野平野や美瑛の丘陵を見渡せる。

冬山であれば濡れても体温が保たれる毛糸の肌着を着ていただろうが、夏山だと暑さ対策の方に気が向く、ほとんどの人が低温で体力を消耗し亡くなった。 しかし、天候が悪化したら中止することが基本で、今回はガイドの判断ミスか経験不足で悔いが残る。

夏山は高山植物が咲き乱れ、好天の時は天国だが、悪天候になると地獄になる。私も一度、立山の山スキーで足下が見えないくらいの吹雪で仲間とロープで結び合い脱落者が出ないようにして下山した記憶がある。良きリーダーがいて犠牲者は出なかったがゴーグルの性能が悪く眼をやられた仲間がいた。

亡くなった方のご冥福と多くの山好き中高年はこれを教訓として山の恐さを肝に銘じたい。                           合掌
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昨今のオフィス事情

2009-07-17 15:23:29 | Weblog
昨日は元連合会長の鷲尾氏の叙勲を祝うパーティが六本木ヒルズのホテルで行われ、久しぶりに六本木に出かけた。中心は当然六本木ヒルズ族のオフィスタワー、かつてライブドアの本社があり、今回の世界金融危機を何とか乗り越えたゴールドマンサックスの豪華なオフィス(専用の玄関とエレベータ)があり、今や日本の代表的なビジネスセンター、ヒルズ族はOLやビジネスマンのあこがれだ。

私が三菱電機に入社した1966年当時、オフィス街といえば何と言っても丸の内であった。会社が成長し、社員が増えるに従い、オフィスをたこ足のごとく増やした。当時としては赤坂とか青山の新築ビルへ一部の事業単位を移動させざるを得なかった。男子社員は安い飲み屋があると喜んだが、労使ともにに悩んだのが「丸の内から移動するくらいなら辞めます」という女子社員の移動拒否でファッション街青山も赤坂も嫌われた。そのくらい丸の内のネームバリューは大正以来のものだった。

今や、都内だけでも新宿副都心から最近できた六本木ミッドタウンまで多くのオフィス街ができている。横浜まで行けばみなと未来地区があり、日産も近々都内から本社を移す予定だ。

昨日の六本木ヒルズでも感じたことだが、昔の丸の内地区と違うのは人種が入り乱れていることと、ホテル、ショッピング、レストラン、飲み屋が場合によっては劇場までそろったコンプレックスになっていることだろう。今や丸の内でさえ中通りはブランド店の集積地となっているし、深夜まで飲食店は利用できる。
今も昔も変わらないのはサラリーマンの懐具合か
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モンゴル経済協力は先ず道路から

2009-07-14 15:00:12 | Weblog
外務省はモンゴルのバヤル首相が15日から20日まで来日すると発表した。16日に麻生太郎首相と会談するようだが、最悪の時期に来られる。今回のバヤル首相訪日は経済協力支援、特にウラン鉱山の開発への打診にあると来日前の記者会見で述べている。

5月にプーチンロシア首相がモンゴル訪問時に要請した内容とほぼダブる。悪く言えば両天秤にかけるやり方だが、これまでの石炭開発では中国にうまくやられモンゴル国民の勘定を害し、カナダとの開発は国内事情で進んでいない。

モンゴルには国際労働財団の安全面の技術援助で2006年9月に訪問した。これまで40数カ国に行ったがもっとも印象に残った国で、大げさに言うと鉄道はあるけど道路のない国とと言える。確かに首都ウランバートルには道路はあるが地方都市への道路が未整備なのだ。正確に言うとかつてあった道路は穴だらけ、危険で走れず、みんなが通った平原の轍を走らざるを得ない。私は西のアルベルヘールへ10時間かけて走り、3時間のドライブでカラコルムに行き、10時間かけて首都に帰った。皇太子様が訪問されたときはカラコルムまで飛行機を使ったが当然だろう。

プーチン首相は鉄道(すでにモスコワまで繋がっている)の整備支援を約束したらしいが、日本が本気に戦略的、地政学的な観点からウラン鉱山の開発に乗り出そうとするならまず道路の整備が必要だろう。宿泊した地方のホテルは朝青龍ホテルを除くと社会主義時代の古いホテルで老朽化し水も満足に出ない。観光資源の支援も併せて必要だ。
モンゴル紀行記は http://wwww.ajima.com/yukuo/mongol.htm に詳しい
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あきれた百貨店のネットショップ

2009-07-13 00:18:58 | Weblog
百貨店の売り上げ不振が大きく報じられている3~5月期の利益が5割から9割減少だという。一方ユニクロの8月決算はは23%増の最高益と報じられている。業態の違いや経営戦略の違いで対照的な結果となったのだろうが、私自身の最近の中元利用で百貨店はもっと基本的なことができてないのではないかという疑問を持った。

百貨店の最大の売りはブランドであり信用だろう。百貨店の品物なら信頼できる、安心だというブランド力だと思う。今回の中元では忙しいこともあり、ネットショップを利用することにし、ある大手の百貨店のネットショップで北海道の特産品を選んだ。私はワインからパソコンまでこれまでネットショップをかなり利用している。オンラインネットショップの全国の売り上げが急速に伸びているのは私みたいな不精者が増えているからだろう。

ところが今回の中元で驚いたのは6月29日に発注したのだが10日経っても届いていないことが判った。しかも品物がどの過程にあるかも判らない。どうにか7月中旬までに届き恥をかかずに済んだがオンラインネットというからには3日か5日ぐらいで届くと思ったのが間違いであった。百貨店の担当者は10日ほど時間をいただいておりますと平気で答えた。それなら注文するカタログ画面に品物の値段の横にでもお届け日数10日と書いておくべきだ(びっくりして誰も利用しない)。

それにしてもネット販売で何故そんなに時間が掛かるのか理解できない販売方法だ。思わず米国の製品でなく国産品だよ、北海道の空港から送った品物は2日もあれば東京に届くよ、どうしたら10日以上もかかるのか教えてといったのだが、すいませんだけしかかえってこない。カッコだけのネットショップは迷惑だ。
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ウィグルの悲劇

2009-07-10 11:51:57 | Weblog
新疆ウィグル自治区、ウルムチの暴動についての日本の新聞、テレビにおける報道ではウィグル人への弾圧に重点を置いたものが多い。しかし今回の犠牲者156人では漢民族も含まれており、その悲劇が昨日のニューヨークタイムスで概略次のように報じられている。

漢民族の新疆地区への移民は国家政策として奨励され行われてきた。1949年にはこの地方で6%だった漢民族は2000年には40%にまで増えた。こうした政府の奨励で貧しい河南省の農村から移り住んだある漢民族の一家が今回の悲劇にあった。仕事は果物や野菜を売ることで毎日屋台を引いて市場に通った。その市場で暴徒化したデモ隊に襲われ、逃げ遅れた一人息子が撲殺された。

こうした報道を見ると、私は日本のかつての満州政策を思い浮かべる。国家政策で貧しい農民が満州に渡り、敗戦後棄民の状態の中で塗炭の苦しみを味わった歴史だ。中国政府の資源確保という政策のもと、1990年代新疆だけでなくチベットにも漢民族が移民しているが地元民族との融和がおろそかにされ、新疆でも漢民族が来なかったら現在の発展はなかったなどと言っている。

自治区であるなら漢民族の数で圧倒するやり方は民族の対立を生み、上記のような悲劇を生むだけだ。中国発展の陰の部分で、その重要性を認識しているからこそサミットを欠席して急遽胡錦濤主席が帰国したのだろう。今の指導部で今回の暴動を力でなく、世界から指を指されることなく解決できるか注目したい。
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