昨日29日、国際労働財団で中国の組合、中華全国総工会のトップを招き組織の現状と課題を聞いた。総工会については共産党の下部組織で労働組合とは違うという人もいるが、組織人員2.5億人の労働者を束ねている組織であることは事実で、工場ごとに組織されているため、そこでの苦情処理や経営協議会での活動は日本の工場での労組活動とよく似ている。
昨日のメインテーマは団体交渉の実践で、2008年に労働協約法が制定され、9割の各企業、工場で団交が行われていると報告があった。この末端の組織を基層工会と呼び、賃金や福利厚生の課題が団交で解決されている。ただ、基層工会のトップには副工場長や副社長がなっていることが多く、組合員の代表制に問題があると指摘され、その問題は悩ましい一つの課題と認識しているようだ。組合員から信頼されない団交では意味が無いからだ。
もう一つ、大きな課題は団交の背景にはスト権があるからこそ交渉力が付くのであるが、中国の団交にはスト権が無い。これに対し、総工会の答えはとにかく粘り強く団交して解決することが労使双方のためで、話し合いがどうしても付かなければ仲裁、裁判ということになる。あくまでもウィン・ウィンで平和解決を求めるとのことだった。
組織対策では、農民工(出稼ぎ労働者)が都会では帰農しない新たな労働者となり、2008年のリーマンショック後では2000万~3000万人が失業したため、これらの労働者に職業訓練や社会保障を付与した。日本の制度を導入した派遣労働者(2000万人)に対しては同一労働同一賃金・労働時間を守る運動をしているとの報告があった。
これに対し、多くの労働者が不満を募らせ、ストを行っているが総工会ではできないのでNGOが指導しているのではという指摘があり、総工会としても39万件の労働争議を解決したとし、NGOについては関知しないという答だった。
全体の問題としては、技能労働者の不足に対し、膨大な未熟練失業者というミスマッチの問題が大きな課題で、職業訓練の重要性を強調していたが、農民工だけでも2.5億人で組織化したのは9000万人という日本人には想像のつかない大きな数字で指導者の苦労は大変だろう。