昨年より企業業績の回復が見られ、経団連も定期昇給は容認する姿勢を示し、昨年の定期昇給すら保証はできないという姿勢が軟化している。これにはデフレ脱却には個人消費の活性化が必要だという背景がある。
一方の連合は賃金ピーク時の97年から30兆円もGDPが減少しているのは年収が5.1%下落していることが原因で、今春闘で配分を企業から個人へ戻すと主張し、「すべての労働組合が賃金カーブ維持分を確保したうえで、賃金や一時金、手当などを加え、1%を目安に配分を求めていく」との方針を決めた。賃金カーブ維持分とは定期昇給のことで、定期昇給が不明確なところもあるのでこういう表現を使っている。
今回の連合の1%要求は、賃金のベースアップ(賃金カーブの上方移動)でも、ボーナスでも、何らかの手当でも良いから企業からもぎ取れという今までに例のない要求だ。
ただ、連合傘下の産別の足並みが連合の方針通りでなく乱れているところに疑問が湧く。古賀連合会長は電機連合の出身でかつ春闘の中核、金属労協の議長だったのに肝心の金属労協傘下の自動車総連や電機連合の春闘方針が連合の1%要求を考慮に入れてないのだ。
自動車総連や電機連合は賃金カーブ維持分中心の要求で1%要求には言及してない。また中小企業の多いJAMでは「賃金構造(カーブ)維持分の確保」としているが、賃金制度がなく構造維持分の推計もできないところについては、「平均賃上げ4,500円以上」を要求基準としている。
私もかつて経験したが、数十人ぐらいの小企業では賃金制度が定められて無い例が多く、賃金カーブなど描けないので、とりあえず1年齢もしくは1勤続年上がれば4500円アップ要求にするということだ。
化学・エネルギー関連労組でつくるJEC連合の要求は連合の要求に沿うもので、「目安として1%の財源の分配を求める」こと。すべての組合が賃金構造維持分を確保した上で、1%の原資分配を求めて、ベースアップや賃金カーブの歪み是正、諸手当の見直しなど様々な形で月例賃金を改善するとしている。
非正規労働者の要求について連合は時給ベースで正社員を上回る賃上げを目指し、正社員と変わらない働き方をしている非正規労働者は時給40円の引き上げを要求している。この点は各産別とも要求の方法は違うが一斉に改善要求をしている。例えば電機連合は産業別最低賃金制度があるので最低賃金1000円(月額)のアップを掲げている。
要は賃金構造(カーブ)維持分は共通の歯止めになるので、これにどう上積みするかが今後の交渉経過を見ての焦点だが、足並みの乱れがあってはせいぜい払えるところは賞与で考えろということになるのではないだろうか