金融庁は目指すのは投信市場の正常化だとして、長期で資産を増やすのが投信本来の役割だと月々支払う毎月分配型の投信を「顧客本位ではない商品」(森長官)と批判した。顧客本位とはどういうことか?顧客のニーズに合った商品を販売するのはどの業界でも共通だ。
投信の役割は株や債券などに投資して得られた利益を再び投資に回して資産を増やす「複利効果」だ。長期運用最大の利点で、例えば利回り5%で運用した場合、資産を2倍に増やすのに単利なら20年かかるが複利なら15年になる。これは顧客が長期に運用し、将来住宅資金や教育資金にというニーズに応え、NISA等には最適だろう。
しかし、高齢者には長期で運用する余裕は無い。かつてのように5%の定額預金金利が付く時代とは違いスズメの涙ぐらいの金利しか付かない時代だ。だから今もって投信で人気があるのは毎月分配型だ(注)。もちろん運用益を払い戻せば複利効果が得られにくくなる。分配金に投資家が払い込んだ元本を充てるファンドは多く、分配金が全て元本の投信さえある。つまり毎月得る分配金の一部は運用益ではなく自分たちが払ったお金というケースもある。それが判っていても高齢者にとっては年金が減少する時代、毎月分配型投信は魅力がある。自分の余命と毎日の生活の豊かさを天秤に掛ければ、財産を残しても相続税で取られるのが落ちだ。
相続税を増税し、年金を減らしている政府を当てにせず、自分の資産を運用したい高齢者のニーズは金融庁には判らない。金融機関はこうしたニーズに応えて投信をつくり、よく説明した上で販売してもらいたい。70歳用、80歳用の毎月分配型投信があっても良い。但し投信の乗り換えを薦めて手数料稼ぎだけは禁じ手だ。
注、13日付けの朝日新聞、売買ランキングで上位を占める毎月分配型
4月の投信資金流入額ランキングのランク5位までの中の3つは毎月分配型
流出額ランキングでは5位まで全てが毎月分配型
4月の投信資金流入額ランキングのランク5位までの中の3つは毎月分配型
流出額ランキングでは5位まで全てが毎月分配型
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