Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

金沢「観能の夕べ」 & 能楽美術館

2015-09-05 | 能楽

  8/29(土) 8月最後の土曜日、急きょ金沢へ行くことにした。例年 7,8月の毎土曜日に石川県立能楽堂で「観能の夕べ」が開かれる。今年は1度も行く機会(元気も)がなかった。最終日は宝生流家元による「天鼓」だ。山崎先生が「会の券がありますよ」と言われたので、連れはなかったが一人で行くことにした。一人で行くからには、高速バスに乗ってみようと思った。高岡駅前~戸出~砺波から高速に入り金沢へ、バス代が720円であいの風鉄道より100円安い。乗客もけっこう多く、戸出、砺波で乗る人もかなりおられた。広坂に着いたのはまだ4時半頃。久しぶりに「能楽美術館」に入った。65歳以上は200円。↓

  ↓ ちょうどプレ講座の最中、「どうぞ3階の研修室ですから」と言われ上がった。講師は佐野玄宜さん。以前何度か来たものだ。能「海人」と泉鏡花の「歌行燈」の講座も聴きに来た。

  2階の展示場では、”能を彩る植物”の企画展をしていた。能装束の他に「半蔀」の立花の作り物も飾ってある。↓は ポスター。

 後で「能楽美術館」をネット検索したら、面を作ったり、装束を試着したり、楽器を演奏したり、さまざまな体験講座を設け、幅広い活動を続けておられることがわかった。さすが金沢、お金をかけているな~と実感。
↓ は、すべてネットからの写真だが紹介します。 

 

 

 

  さて、広坂から出羽町までの登り道は短い距離だが、私にはなかなかきつく休み休み上がった。この日の演目は、仕舞「三山(みつやま)」、狂言「禰宜(ねぎ)山伏」、能「天鼓(てんこ)」である。いつものように金沢大学の西村聡先生の解説がある。いつもは、専門的すぎてよくわからない、と不満が残るのだが、この日はとてもわかりやすかった。おそらく私自身習った曲が増えたせいだろう。

 「三山」、「葵上」、「鉄輪」などに出て来る「うわなり打ち」についての話が面白かった。「うわなり」とは「後妻」のこと。こんな漢字 「嫐」を書くようだ。「三山」を ”山の三角関係” の物語と解説された。大和三山の「香具山」を男性、「畝傍山」と「耳成山」を女性と見たてた三角関係の物語と言うわけだ。耳成山(桂子)が畝傍山(桜子)を打ち据える場面を大坪喜美雄先生が舞われた。後妻ではないが、桂子は年上の女性、桜子は若い女性で、これも「うわなり打ち」と言うらしい。

 狂言は、次回改めて紹介することにして、能「天鼓」を紹介します。↓は、昨年の「三派能楽大会」の私のブログ。この時の能が「天鼓」で、能楽会のHPの写真も拝借してアップした。

  http://blog.goo.ne.jp/67kiyoh/e/45f1d9e5c7f416dd6d66b3b8d65290f9

 ↓は、昨年の舞台をコピーしました。

 《あらすじ》 中国、後漢の時代、王伯と王母と言う夫婦がいました。王母が、天から鼓が降り胎内に宿った夢を見て、男の子を生み、天鼓と名付けます。その後、本当に天から鼓が降り下り、天鼓はその鼓とともに育ちます。その鼓は妙なる音を奏で、人々を喜ばせました。
 その噂を皇帝が聞き、鼓を差し出すように命じます。天鼓は逆らって、鼓を持って山中に隠れます。が役人に見つかり、呂水に沈められ殺されてしまいます。鼓は宮殿に運ばれますが誰が打っても音を出しません。
 皇帝は、父王伯を呼び出し、皷を打たせようとします。王伯は、鼓が鳴らなければ自分も殺されるだろう、と死を覚悟し、子への思いを込めて鼓を打ちます。すると、この世のものと思えない清らかな音が鳴り響きました。親子の絆を示すその音色に皇帝も哀れと思い、涙を浮かべます。王伯に褒美を与え、家に帰します。
 その後、呂水の傍に天鼓を据え、管絃講を催します。するとその音に引かれて天鼓が現れ、懐かしそうに鼓を打ち、「楽」の舞を舞います。勅命に背いたのに、回向してもらい成仏できたと喜び、楽しげに舞いながら、夜がほのぼのと明けた頃、夢か幻のように消えて行きます。(↓の写真は、昨年の高岡での舞台で、シテは金森秀祥先生、笛は瀬賀尚義先生です)

 今年の金沢の舞台では:  
 シテ(前シテ:父親 後シテ:天鼓):宝生和英、ワキ(勅使):北島公之、間狂言(役人):荒井亮吉
 囃子は、大皷:飯島六乃佐、小鼓:住駒幸英、笛:藤田次郎、地謡:大坪喜美雄他 の皆さんでした。
笛の藤田先生は「一噌流」だそうで、瀬賀先生の「森田流」とは少し違うそうだが、いずれも「バンシキ」と言う小書きがついており、「楽」の舞が高く激しい調子になり、しかも長く吹き続けられる音色は人間技と思えないほどでした。

 「天鼓」は、「藤戸」とよく似ていると言われるようだ。前シテと後シテが別の人物で、親子関係。

 「天鼓」:前シテが父親、後シテが息子の亡霊、息子は天皇に殺される。天鼓は天皇の命に背いたのは自分の罪、管絃講で弔ってもらえ嬉しい、と喜びの舞を舞う。

 「藤戸」:前シテが母親、後シテが息子の亡霊 息子は佐々木盛綱に殺される。土地の男は、佐々木盛綱に浅瀬の場所を教え、戦功を立てさせたのに無残に殺されたことを恨み責める。「藤戸」は、数年前に米島さんがシテを務められた。