Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

新作オペラ「滝の白糸」 in 高岡

2014-01-20 | 音楽

 今から思えば、退職したばかりの頃、何にでも興味がありいろいろな講座やサークルに顔を出していた。ウイングウイングの「高岡が舞台の文学」(講師は米田憲三先生)もその一つである。泉鏡花の「義血侠血」が「滝の白糸」の原作で、高岡から話が始まると知ったのもその頃。ゲタ姫さんと一緒に、金沢の鏡花記念館や鏡花に関係のある寺、東茶屋街、浅野川巡りなどを楽しんだ。↓は、浅野川のほとりの「滝の白糸」像と梅の橋(ネットから)。   

                 
 水芸の白糸の話は、新派のお芝居にふさわしくてもオペラなんて、と言うのが私の正直な気持ち。だが前作の「高野聖」が素晴らしかったと言う感想を、MiTUで聞きチョッと興味が湧いている頃、風子さんから電話がかかった。ウイーンサロンオーケストラのチケットを買いに行った時、チラシだけ持って来ていたので、それを眺めながら「フムフム」と話を聞く。
 俳人の黛まどかさんの作詩、千住明さんの作曲で、高岡出身の森雅史さんも出演の新作オペラ、高岡が初公演、その後金沢、東京の新国立劇場で公演予定。市民会館を満席にして初日を迎えたい、と市民会館に係わる人から誘われたそうだ。その気持ちは、高岡市民としては当然。じゃ、と言うわけで、なはさんとMiTUの友人二人に声をかけた。

 そして、17日(金)、SAさんと待ち合わせ、なはさんとは駅で、TAさんとは会場入り口で、その前に夕食をなどプランを立て、出かけた。が、予定のお店はクローズド。幸い、公園内の「古城亭」前に止められたのでそこで野菜たっぷりパスタを食べる。なかなか美味しかった。          
 すっかり遅くなり、駐車をお願いするはずだった風子さんには迷惑をかけてしまった。市民会館ロビーはごった返し。高橋高岡市長、黛さん、千住さんも写真に収まっておられる。↓の写真は、ネットからいただきました。                 
 一幕から三幕まで、休憩を2度はさみ3時間に及ぶ大作です。
 高岡片原町から石動まで、乗合馬車に乗った「滝の白糸」こと水島 友。人力車より速いと聞き乗ったのに、人力車に追い越されてしまいます(原作で面白いこの場面も、乗客の合唱を入れコミカルに表現してあります)。馬丁の欣さんが馬を一頭外し、白糸を抱えて石動まで走ってくれ、気を失った白糸を茶店に預けて行きます。真面目で学問好きな欣さん、としかわからない…。

 その後、浅野川天神橋のたもとで二人は再会します。彼、村越欣弥は、あの一件で職を解かれ金沢まで来たが働き口が見つからず疲れて眠っていた、と言います。法律の勉強をしていたが、父を亡くし、高岡の母との生活費を稼いでいたのでした。白糸は突然仕送りを申し出て、彼を東京へ行かせます。高岡の母親にも仕送りを約束するのです。↓は、再会の場面。(写真はすべてネットから)          

 この後は、皆さんご存知でしょうから、写真だけ。
 ↓は、滝の白糸の水芸。水は光の映像です。光線が動くので水のように見えます。           

 ↓は、最後の裁判の場面。金沢地方裁判所。検事代理になった欣弥が、殺人の罪を犯した白糸を裁くことになり、死刑を言い渡します。        

 舞台の上に、歌のセリフの字幕が大きく出るのでわかりやすい。もちろんソリストも合唱も歌詞をはっきり歌われた。黛さんは、さすが俳人、古語が含まれているのか(私にはわからないが)、言葉が柔らかく美しい。オペラはアリアが大切だから、特に気を配ったと言っておられる。その言葉を生かすような千住さんの音楽が、またこのうえなく優しいのだ。ソリストが静かに、切々と歌う声が心を打つ。

 舞台の下にオーケストラピットが設けられるので、私たちの席はけっこう前の方だったがやはり距離がある。表情までは見えず、オペラグラスを持って来ればよかった、とTAさんが何度も呟いておられた。私も、超よく見えるプリズム眼鏡を忘れ、残念だった。でも、風子さん、みきこさんと我々4人が横並びの席で、幕間のお喋りも楽しく、夢のようなひと時だった。↓は、新聞記事より。「世界遺産級の公演」とあるが、まさにその通りと実感した。ぜったいに後世に残る名作オペラになるに違いない。       

 ここでも、オペラ鑑賞のマナーとしての拍手が気になった。切々と歌い上げるアリアやデュエットの後、次の曲に移る間合いがある。皆シーンとして待っている(実は私もそうだった)。余韻に浸っているとも言える。だが、途中から、ここは拍手の間(ま)じゃないかと気づいた。欣弥の母親が白糸への感謝の気持ちを歌う場面(しっとりとした心に沁みるメゾソプラノ)の後、拍手したかったが1人ではヘン。2幕、3幕目からは拍手が起こるようになった。
 最後に処刑前、二人がデュエットを歌いあげて、欣弥が去る場面。欣弥の死ぬ場面を割愛してあったね、と私。なはさんが、「後で、銃声が聞こえたけど、拍手が早くてよく聞こえなかった」と仰った。これは帰り道の会話である。感想を話しあわないとわからないことがずいぶんあると思った。新作オペラの初演、聴衆にとっても初体験。金沢ではどうだったのだろう?

 委嘱新作オペラ「滝の白糸」
 作曲:千住明  台本:黛まどか  原作:泉鏡花「義血侠血」
 演出:十川稔  指揮:大友直人  テーマアート:千住博
 キャスト:滝の白糸 中嶋彰子   村越欣弥 高柳圭   
       欣弥の母 鳥木弥生   
南京出刃打ち 森雅史    他
 コーラス:「滝の白糸」アンサンブル・ゾリスデン
 オーケストラ:オーケストラ・アンサンブル金沢

 なお、風子さんのブログに、「義血侠血」の乗合馬車の出発点だった片原中島町の稲荷神社のことや、オペラの舞台の写真などがアップされているので、↓をご覧ください。http://blog.goo.ne.jp/sakasita1292/e/a0f47cb81cf1e6219a00df3d92d0e79c?fm=entry_related