前から見たいと思っていた映画「少年 H」があと二日で終わる、と聞いたので慌てて見に行った(実際には、まだ上映中)。ちょうど娘たちが新穂高温泉へ行った日である。
↓は、「喜久屋書店」の店頭に並んだ文庫本。私は、発刊当時図書館で借りてハードカバー本で読んだ。
今度、水谷豊と伊藤蘭のご夫婦が共演して話題を呼び、さらにモスクワ国際映画祭で特別作品賞を受賞した。ポスター、ちらし、新聞の写真を中心に簡単に紹介します。
昭和初期、神戸。洋服の仕立屋を営み、柔軟な考えを持ち、家族を温かく見守る父親、盛夫(水谷豊)。大きな愛で家族を包むクリスチャンの母親、敏子(伊藤蘭)。そんな二人のもと、好奇心旺盛に育つHこと肇(吉岡竜輝)と妹の好子(花田優里音)。
戦争が始まる頃から、戦時中、終戦、戦後の日本の様子が、この妹尾一家を通して丁寧に描かれます。つましく、幸せに暮らしていた家族が戦争に巻き込まれて行く様子です。
私自身は、昭和21年4月に♪国民学校1年生~♪(こんな歌がありました)になっているので、戦後世の中がすっかり変ったことも、教科書を印刷物でもらい家で綴じたこと、一部墨を塗ったこと、我が家の2階に疎開の2家族がすんでおられたことを覚えているくらいです。
最近、NHKで「おしん」や「純情きらり」の再放送を見て、戦中戦後の国民の生活のドラマに涙していますが、この映画ではもっと詳しく、しかし淡々と描かれます。
Hが慕う近所のうどん屋の兄ちゃんが政治犯で逮捕され、元女形の旅芸人だったオトコ姉ちゃんに召集令状が来て入隊するが脱走し、自ら命を絶ちます。そんな姿をHは目の当たりにします。
そして、神戸の町で外国人の洋服も仕立て、外国人の知り合いも多かった盛夫が、ニューヨークから届いた絵葉書が原因で、スパイ容疑者とて捕えられます。警察で拷問を受ける盛夫。嫌疑は晴れ帰宅しますが、大事な指に怪我をします。家族に黙っている盛夫。でもHは気づきます。
中学に入ったHは軍事訓練ばかりで不満、しかも教官に睨まれてしまいます。妹好子は泣く泣く疎開し、母親敏子が隣組の班長になり率先してバケツリレーの訓練をする…。盛夫も消防署に勤め、一家皆が戦争に巻き込まれて行きます。
ついに神戸が大空襲を受けた時、教わった通り夢中で防火用水で消火をする敏子とH。家は燃えますが、盛夫は焼け跡からミシンを見つけ出します。修理して磨いて、動いた、と喜ぶ4人です。
一家4人が潜り抜けた戦争、すべてを失ったけれども、4人とも無事に生き残れ、新しい生活を始めるところで終わります。
原作:妹尾河童 監督:降旗康男 脚本:古沢良太
その他の共演者:小栗荀 早乙女太一 原田泰造 佐々木蔵之助
國村隼 岸部一徳