能「道成寺」「一生のうちでもう観ることはないだろう。今日、この能を観られてほんとうに幸せだった」と、そんな気持ちを抱いて金沢能楽堂を出る。まだ、興奮が冷めないまま、雨の中駅へのバスに乗った。...
↑は、昨年の金沢別会能である。なはさんと能「道成寺」を観に行っている。今年の別会能は、9/1(日)、なはさん、ANさん、杉○さんと4人で能「野宮」と「乱(みだれ)」、狂言「千切木」を観に行った。
高岡薪能に続き、図らずも「源氏物語」の六条御息所(ろくじょうみやすどころ)の続編となった。
↓は、一昨年「蒼山会」からの謡蹟巡りの旅で、京都嵯峨野の野宮(ののみや)神社を訪れた時のブログである(竹林の中の神社の写真が載っているので興味のある方はご覧ください)。「野宮」は謡も習っていないし、お能も観ていなかった。「源氏物語」もこの辺りはよく知らない。念願かなってお能だけでも見ることができ嬉しい。
http://blog.goo.ne.jp/67kiyoh/d/20110824
「野宮」・車乃伝と小書(こがき)がついている。
シテ(里女・御息所):島村明宏 ワキ(旅僧):平木豊男 間:野村祐丞
後見:佐野由於 佐野玄宜 藪克徳
大皷:亀井広忠 小鼓:住駒俊介 笛:片岡憲太郎
地謡:渡邊荀乃助他
晩秋の嵯峨野の野宮。木枯らしが吹く頃、ここを訪れた旅僧の前に、里女(六条御息所の亡霊)が現れます。女は、「六条御息所が、自分の娘が斎宮(さいぐう=伊勢神宮に仕える女性)となったので一緒に伊勢へ下ることを決め、御禊ぎのためにこの野宮に籠っていた。そこへ光源氏が訪れ、いろいろと慰留されたけれども、頼りない源氏の愛情に失望し、娘と共に伊勢へ下った…」と語り、黒木門から消え失せます。(中入り)
ここまでが前場。動きもあまりなく謡の聞かせどころらしいが、本がないので言葉もわからず、正直何度も睡魔がおそって来た。ただ、地謡が上手で揃って力強く、島村さんのシテもホントに女性のよう。
後場が始ると、後見が網代車(あじろぐるま)の作り物を持って出る(普通は出さない、この日は’車乃伝’の小書つきだから)。↓は、ポスター。おそらく、御息所が車から降り、鳥居をくぐるところだろう。
旅僧が菩提を弔っていると、ありし日の姿で、網代車(あじろぐるま)に乗った御息所の霊が現れます。その車は賀茂の祭の時に、源氏の正妻・葵上との場所争いをした恥ずかしく因縁深い車です。「光源氏と恋におち、捨てられた悲しみが妄執となり、迷っている。この苦しみから救ってほしい……」と僧に頼みます。そして昔を偲びつつ「序の舞」を舞います。その後、シテと地謡のかけ合いの謡になり、源氏が訪れた時のことを懐かしく思い出し「破の舞」を舞い、再び車に乗り、立ち去ります。
車に乗り降りする演技が、舞台と橋掛りで2度あった。また、髷物の太鼓の入らない曲で序ノ舞の後に、破ノ舞も舞われるのは珍しい形だそうだ。長い優雅な序の舞の後、短いが早い破の舞が続く。お若い二人の大小の鼓と、シテ舞の呼吸が素晴らしかった。謡、囃子、舞の見せ場が多い能ではないかと思う。
この日は、家元の「乱」が目的だったが、「野宮」は初めての能で大収穫だった。