先日、毎日新聞にて「戦争と異なる解決の道ー学問と報道が示す責務(藤原辰史氏)」というテーマで、戦争が引き起こす影響について掲載されていました。
記事から、「戦争は最大の環境破壊である」について、記事の一部を転載します。
戦争は最大の環境破壊である、ということがよく言われる。しばしば勘違いされるが環境破壊は人間以外の自然の破壊という意味ではない。木々や水や空気が汚染されれば、それは甚大なる人間破壊にほかならない。
この点、毎日新聞の宮川裕章記者の記事は興味深い。戦場には大量の不発弾や地雷が残り、地下水はそれに含まれる有害物質で汚染される。ウクライナ当局の1月の発表によると、戦争開始から331平方キロの森林が火災などで消失した。また1,597トンの汚染物質が水中に放出され、8,300万トンの二酸化炭素が排出されたという。このような被害は戦争の被害として取り上げられにくいが、たとえ停戦が実現したとしても持続的に住民の健康をむしばむ「兵器」は消えない。ベトナム戦争で米軍が投じた枯れ葉剤が炎の中でダイオキシンに変化し、農地や森林と人びとの体を蝕み続けたことを思い起こしてもよいだろう。未来の世代からすれば、あるいは、トルコーシリア地震で生活の危機に直面している人からすれば戦争などしている暇はないのだ。
もちろん、こんな議論によって即座に戦争を止められるとは思わない。言論統制が厳しく敷かれ、反戦を明言しただけで逮捕され体の一部に監視の機器を取り付けられるようなロシアで、このような声が簡単に広がるとも思えない。だが、戦争とは異なる問題解決の道が無数に存在することを示す責務が少なくとも学問や報道に関わる人間には存在する。原爆と公害を経験した日本はそんな絶好の位置にいるはずだ。
ところが現実は暗い。閣議決定された「安保3文書」を詳細に分析した軍事ジャーナリストの前田哲男は、この文書は「第二次沖縄戦」に向けて身構えている、と述べている。奄美諸島、琉球諸島、先島諸島とつなぐ地域で、政府は米軍基地の自衛隊使用も視野に入れているという前田の議論は、まだ比較的戦争とは異なる論理を世界に示せる位置にある日本もまた、生態系の豊かな島々の環境と人間を破壊する野蛮な道へと一本化を進めていると感じさせる。
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