昨日の夜中、ツイートの誘いに応じてモスクワで開催中の第16回チャイコフスキー音楽コンクールピアノ部門の日本人のファイナリスト、藤田真央の弾くチャイコフスキーのコンチェルトを聴いてしまった。モスクワ音楽院ホールからのライブ映像がこうして観られるというのはIT時代のたまものであるが、いかんせん眠気の方が強すぎて、ファイナルの成績発表を待てずに眠ってしまい、最終成績はやはり今朝のツイートで知ることになった。
優勝はフランスのアレクサンドル・カントロフ、藤田はロシアのドミトリ・シシキンと二位を分け合ったという。「こんなに上位とは思っていなかったのでびっくりした」というのが個人のコメントらしいが、こちらもそう思った。ご祝儀というわけでもあるまいが。
それでも、2002年の第12回で上原彩子が優勝して以来、日本人では二人目の上位ということもあってか、祝いツイートも結構に盛り上がっている。音楽業界のツイートが多いというのも、「2位なら売れるぞ」と読んだのだろうか。
夕刊記事によると、藤田は東京都出身、三歳でピアノを始め、2017年にはスイスのクララ・ハスキル・コンクールで優勝するなど、国際的にも名を上げており、今秋公開の映画「蜜蜂と遠雷」の演奏担当ということもあって、未だ二十歳というのに人気が高いピアニストらしい。可愛いベビーフェースが得をしているようだ。
今シーズンのコンサートプログラムを収録した〈Passage〉というCDを聴いてみた。リスト:ハンガリー狂詩曲第二番;モーツアルト:ソナタ第十八番;ショパン:ソナタ第三番;シューマン:献呈;ショパン:夜想曲第二十番:バラード第一番;ヴォロドス:トルコ行進曲と、ポピュラーな名曲が並ぶ。彼とも縁の深い浜松のコンサートホールの録音らしい。現代のピアニストらしくテクニックは抜群だから破綻はないのだが、繊細性を狙うあまり音の芯がないように聞こえるのはこちらの耳の所為か。浜松だから楽器にヤマハかカワイを使っているのだろうか。
昨夜のモスクワ音楽院ホールでも同じように感じたのだ。繊細なタッチだが腰がきまったダイナミズムには欠ける気がする。こちらは靭い音を出せるスタインウェイを使っているのだから、これが彼の音楽性ということなのだろうか。音楽家はいろいろな意味でスポーツ選手と同じフィジイックでないといけないのかもしれない。かわいらしい華奢な身体での音づくりにはおのずと限界があるのではないのか。
デジタル音源を聴くようになってもうどれほどが経過したのだろう。テクニックばりばりの若い演奏家たちを起用したデジタルサウンドはどこか「乾いている」気がして、すべてが同じように聞こえてしまう。だから、本家帰りというのか学生時代に買ったLPのアナログ音源を聴くとほっとする気分になれる。藤田の〈Passage〉も一度聴けばそれでおしまいか。大事に聴き続けようという気持ちにさせてくれる音づくりができるようになるまで、まだしばらくは時間が要りそうだ。
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