消費期限終了

リタイアーのよもやま話

野心のすすめ

2013-06-11 21:25:07 | 読書

野心のすすめ
林 真理子著
講談社現代新書

という本を読み終えた。

新聞の書評欄で紹介されていた本である。
その文章を読んで、興味深く思ったので、
読むことにした。

本の帯には、人生は何度でもリセットで
きる

〝高望み〟で人生は変わる

なんて,書いてある。

彼女が書いた「ルンルン買っておうちに帰ろう」
って本があったのだが、読んだ記憶がある。

本人も言ってはいるが、「ブス」である。一瞬
わたしとしては、かなり気持ちが引いてしまう
くらいの。

ということで、彼女については、印象に残ってい
る。

その彼女が、「野心のすすめ」なんて本を書いた
ので、興味深かった。

昔見たことのある彼女が、こんなにも切羽詰まっ
た生き方をしていたなんて、びっくりである。

ある意味で、彼女の評価をし直さなくてはと、感
嘆するものがあった。


容姿の好みの問題は別として、実際の人柄が、気
にいるかどうかは別として、それだけの生き方を
してきた彼女に、敬服するものがある。

残念ながら、住んでいる世界がまったく違う人だ。
世に出てくる人は、違うな。である。

しかしながら、彼女の〝あがき〟は、他山の石と
したいものだ。

 

その中で、興味深い内容があったので、抜粋してみた。

以下、抜粋。

 

「止まっている不幸」の恐ろしさ

 「業が深い人は幸せになれない」というのは、
一部当たっているようにも思えます。

 業と欲が深いと、仕事に恋に、しょっちゅう悩
んでは泣いたり、悶え苦しんだり、歯ぎしりした
りしなければならない。

 成功したい、モテたいと、欲望を叶えるために
必死にもがき続けていることを不幸と呼べば、た
しかに不幸かもしれません。仕事でも挑戦すれば
するほど、あれこれ苦労したり落胆したりするこ
とも増えますし、高望みの相手と付き合うほど、
傷つく可能性だって高い。

 しかし、そんな「走っている不幸」は、本人に
は辛くても、端から見ていて明るい爽感がありま
す。きっと、どうにかなるよ、と肩を叩き、励ま
したくなってくる。

 本当に恐ろしいのは「止まっている不幸」だと
思います。出口が無くて、暗く沈んでいくだけの
モヤモヤとした不幸。

 望んでいた仕事に就けず、無力感のまま働く若
い人が、資格を取るとか転職しようという努力も
何もせず「こんなはずじゃなかった」と社会を恨
むことしかしない。

 子どもを育て上げた専業主婦が生き甲斐を失い、
「夫と子どもに捧げただけの不幸な人生だった」
と口にする。それも世の中のせい、男性社会のせ
いで不幸になったと、なぜか自分の不幸を社会制
度と結びつけて愚痴を言ったりする。

 意地悪な私は、「夫選びを間違えだのは誰です
か。結婚したいと願っていたのは誰ですか」と詰
問したくなってしまいます。

 自分が何を欲しているかわからないまま、「こ
んなはずじゃなかった」と世の中を呪う寂しさほ
ど惨めなことはありません。自分の欲望さえ把握
できない人たちは、何を目指して努力したらいい
のかさえ見当がつかない。すると、いっそうの無
力感に襲われ、ますます不幸の濃度が高まってい
くのです。

 それに比べると、何か欲しいかはハッキリとわ
かっている「走っている不幸」にはいつか出口が
見えてくる。走ることを知っている人たちは、諦
めるということも知っています。

 実際に、運が悪い人とは見切りが悪い人でもあ
る。いまが楽しくないなら、何かを切り捨てるこ
とだって必要です。「新規まき直し」をして、生
き方を変えることは運の強さにつながっていきま
す。

 年齢を重ねていくと、野心の飼いならし方もだ
んだんわかってきます。他人のことは気にならな
くなってくる。ひたすら自分の中に向かってくる
んです。もっと良い仕事をしたいということだけ
になり、野心が研ぎ澄まされていくわけですが、
自分との戦いほど辛いことはない。

 しかし、若いうちから野心を持って訓練してい
れば、その辛さに立ち向かえる強さも鍛えられて
いるはずです。

 そして、挑戦してたとえ失敗したとしても、世
の中はほどほどの不幸とほどほどの幸福で成り立
っていると達観する知恵者の域にまで達すること
ができれば、もはやそれは「不幸」ではない。野
心の達人が至る境地といっていいでしょう。

 人生に手を抜いている人は、他人に嫉妬するこ
とさえできないんです。それほど惨めなことはあ
りません。成功した人、幸せそうな人を見ても、
自分が努力していたらまた違う感慨があったのか
もしれないのに、「ああ、私は嫉妬する資格すら
ない」と自覚しているから、いじましく、自らの
不幸を呪うことしかできない。

 どうしてこんなに嫉妬するんだろうと思って、
自分の弱点が見えてくることだってある。頑張っ
ている人だけが抱くことのできる「健全な嫉妬心」
はまったく悪いことではないと私は思います。む
しろそれは宝物、自分が努力してきたことへのご
褒美なのです。

以上。

本人が実践してきただけに、それなりの説得力を
感じた。

ちと、角が立つ文章があるが、それも彼女にしか
言えない内容だから、それなりに受けとめるしか
ないのかもしれない。

それにしても、母親の存在は大きいし、母親なく
しては、彼女がここまでのし上がることはできな
かっただろう。そして、時代にも恵まれたと思う。

そういう意味では、「野心のすすめ」は、自らの
半生を語る自叙伝本と言ったほうがよいのかも
しれない。

だから、彼女が思うほどは、そして語るほどは、
一般化できないとは思う。

彼女が、生まれつきもっていたものを誰もが、持ち
得ているとは思えない。

本の中で、彼女は、結構卑下している言い回しが
あるが、どうしてどうして、選ばれた人だと思う。

それにしても、いい本だとは思う。中学生、高校生
に一度読んでもらえたらと思っている。

will you dance?-ジャニス・イアン

林真理子が、不遇の時代に、テレビの「岸辺のアルバム」の
主題歌として聴いた曲ということだ。

だいぶ前に、ブログでも取り上げたわたしにとっても、懐かしい
曲である。
ハバネラのリズムが心地よい。途中から入ってくるベースの
演奏を聴いていると、ボーっとしてしまう。