20年程まえ、母から「お願いがあるの」と電話をうけた。
母からお願いなんて実に珍しいことがあるものだと思い「どうしたの?」と
聞くと、もう元気で行ける最後だと思うので田舎(富山)へ行って兄弟たち
に会って来たい。一人じゃ心もとないので一緒に行ってもらえないかと言う
お願いだった。勿論、否やはない。快諾した。
両親とも富山出身なので、昔は特急で何度も行ってるが、上越新幹線が出来
てからは父方の伯父が亡くなった時兄とお葬式に出て以来だ。
どうせ行くならと欲がでて「伯父さんの家に行く前に米原廻りで岐阜の温泉
に一泊しましょうよ!」と提案。
母も久しぶりの旅に心が弾んだらしく「行こう行こう」と快諾。
新穂高温泉に一泊し、富山もはずれの入善に向かう。
伯父の家は駅から近い。
家は何年か前に建て替えられていて昔の風情はない。
祖父母の時代は、お米屋と精米所を営んでいたので天井の高いつくりで、独
得の匂いがしていた。
その仕事場の匂いがとっても好きだった。懐かしいなあ!
でも、もうその匂いはしない。
翌朝、伯父が「ちょっと来てご覧!」と呼ぶので、庭に出てみると
「これは珍しい木なんだよ、知ってるかい?」
初めて見る葉っぱが茂り、あれ、見たことのない青い実がぶらさがっている。
「初めて見ます!何という樹なの?」
「これはねえ、ポポーっていう樹だよ。熟すと実に甘いんだ!」
その得意そうなドヤ顔は忘れられない。
それは、まさにタカタッタの伯父の顔だった!
家に帰り、調べると北米原産の樹。実はバナナのような濃厚な味だという。
一度食べてみたい。但し、傷みやすいと書いてあった。
もうその伯父も母も居ない。
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