私的図書館

本好き人の365日

五月の本棚 『ドラゴンがいっぱい!』

2008-05-07 23:58:00 | ファンタジー

ドラゴンと聞くと、どんな姿を想像しますか?

大きな体と翼を持ち、火を吹く怪物?

テレビゲームに登場する最強のラスボス?

それとも黄金の上に寝そべり、太古の言葉を話す偉大な生き物?

トールキンの『ホビットの冒険』では、主人公のビルボは13人のドワーフと共に、竜のスマウグから宝を奪い返すためはなれ山に向かうことになってしまいます。

アーシュラ・K・ル=グィンの『ゲド戦記』に登場した竜のカレシンは、魔法の力を無くした主人公のゲドを、ゲドの故郷ゴント島まで送り届けてくれました。

時に悪の象徴となったり、時に偉大な賢者として登場するドラゴンたち。

ちなみに私のお気に入りの竜は、エンデの『はてしない物語』に登場する幸いの竜フッフールです☆

さて、そんなドラゴンたちが普段はどんな生活をしているのか?

とんでもないことを考えた女性作家がいました。

赤い竜が紋章にもなっているウェールズ出身のジョー・ウォルトンが、自分の大好きなヴィクトリア朝小説の世界にドラドンたちを当てはめて、創作したドラゴンたちの日常生活!

今回は、2004年度世界幻想文学大賞受賞、ジョー・ウォルトンの『ドラゴンがいっぱい! ―アゴールニン家の遺産相続奮闘記―』をご紹介します☆

ドラゴンの遺産相続…それは食べちゃうこと!!

まるで人間のように、屋敷に住み(寝室は洞窟だけど)、帽子をかぶり、オフィスで仕事をするドラゴンたち!!

汽車にも乗るし、教会にも通います!(この時だけは翼を使ってはいけません)

自分の土地で農民たち(もちろんドラゴン)を働かせ、お金持ちで身分の高い家に娘たち(もちろんドラゴン)を嫁がせることに熱心な様子は、まるで昔のイギリス貴族のよう。

お茶も飲むし、パーティーもする!!(豚や牛を生でむさぼり食んだけれど…)

肉親が亡くなると涙を流し、悲しみにくれたりもするけれど、その後その遺体を食べちゃうのがドラゴン流!!

ドラゴンがドラゴンを食べると魔法の力で体が大きくなり、強くなれるのです。

どんなに近代化していても、やっぱり基本は大きくて強いものが生き残るのがドラゴンの世界!!

そんなのあり?
さすが、人間のものさしじゃ計れません!!

ドラゴン社会の設定が面白くて、どんどん先を読みたくなってしまいます♪

男性に心を動かされるとウロコがピンクになってしまう娘のドラゴン☆

しかも一度変色してしまうと元には戻らないのだから大変!

へたな男に言い寄られて、うっかりピンクに染まろうものなら、結婚するしかない!!

飛べないように翼を縛られた召し使い達。
自ら翼をしばり教会に仕える牧師。
人間(ヤアルゲ)に蹂躙された征服時代。
伝説のトマリン竜王の財宝?
弁護士に陪審員の並ぶ裁判所。

老アゴールニン啖爵(だんしゃく)の遺産をめぐり、兄弟姉妹、娘婿や息子の嫁や、珀爵(はくしゃく)家に甲爵(こうしゃく)家を巻き込んでドタバタ騒動が巻き起ります。

古くからの慣習に縛られた社会に疑問を持ったり、宗教革命みたいな動きがあったり、遺産相続の争いと共に、ストーリーも楽しめるお得な一冊♪

あなたも、ドラゴンたちのドタバタ騒動に付き合ってみませんか?

でもご用心。

ちょっと油断すると、うしろからパックリなんてことになるかも☆





ジョー・ウォルトン  著
和爾 桃子  訳
ハヤカワ文庫




最新の画像もっと見る

コメントを投稿