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本好き人の365日

五月の本棚 2 『タラン・新しき王者』

2005-05-15 11:18:00 | プリデイン物語
物語を読むのは楽しいけれど、読み終わった時は少し寂しい。

そう思わせてくれる本に出会えるって、本当はそれだけで幸運なんですけどね♪

今回ご紹介する本も、そんな読み終わった後もずっと心に残る物語。
ロイド・アリグザンダーの

『タラン・新しき王者』

です☆

ファンタジー小説は数々あります。
「指輪物語」「ナルニア国物語」「ゲド戦記」「はてしない物語」「空色勾玉」「ハリー・ポッター」などなど☆

魔法使いに戦士。モンスターに妖精に偉大なドラゴン。現実には存在しない世界なはずなのに、それらの物語を通して読者に語られるのは、どれも現実に直面しそうな人生の障害だったり、生きる上での苦悩だったり、友情だったり、愛だったり。どれも大好きな作品です☆

このロイド・アレグザンダーの作品、「プリデイン物語」もそんな逸品!
武勇と冒険に憧れる”豚飼育補佐”の少年タランが、英雄ギディオン王子や、老預言者ダルベン、よき理解者コルなどの助けを借り、旅の仲間と共に様々な苦難に打ち勝ち、成長する物語。

神託を下す豚ヘン・ウェンや、死者を甦らせる黒い釜、人の一生の織物を織る運命の三人の女神といった神秘的な要素から、少年の旅立ち、出会い、別れと悲しみ、裏切りに友情といった、人間が成長する上で困難だけれど通らなければならない大切な問題が、「プリデイン」という神話や伝説に登場しそうな、それでいてまったく新しい世界を舞台に語られていきます♪

第一巻「タランと角の王」
第二巻「タランと黒い魔法の釜」
第三巻「タランとリールの城」
第四巻「旅人タラン」

これまでご紹介してきた四冊で、タランやドンの一族の活躍もあって、しだいに力を奪われてきた死の国の王アローン。

この第五巻、最終巻で、ついに彼は炎の剣、王者にしか抜くことのできないディルンウィンを奪い去ることに成功してしまいます。

迫り来る死の国の不死身の軍隊。
仲間が殺されるごとにその力が強くなる不気味な狩人。
人々に死の訪れを告げるというグウィンの角笛が響く中、プリデインに滅亡の危機が迫ります!

もう読んでいてハラハラ。

ずっと共に旅をしてきたような気持ちになっていたので、仲間たちが次々と戦いに身を投じるたびに、なんて戦争は大切なものをこんなにも簡単に奪ってしまうのかと、怒りさえ感じました。

王様のくせに放浪くせのあるフルダー・フラムや、頑固な妖精族ドーリ、いつもタランのそばを離れなかった毛むくじゃらの忠義者ガーギといった仲間たちに襲いかかる危険と苦渋の決断。タランがずっと世話をしてきた白い牝豚ヘン・ウェンや、いたずら好きが玉にきずな優秀な斥候カラスのカア。人を乗せて疾走する巨大な山猫リーアンに、タランの愛馬メリンラスや巨大な怪鳥ギセントまでが、過酷な試練にさらされます。

そして、タランの思い人、リール王家の末娘、エイロヌイ王女までが、混乱する戦場の中で…

あぁ、この物語がこれで最後だなんてもったいなさすぎる~

夢物語や、どこか抒情詩的な物語と違って、アメリカの作家の描く世界はどこか現実的。そこがいつものファンタジーと違ってまた魅力。

タランたちの暮らすカー・ダルベンなんて、ほんと貧乏くさくて、まるで西部の開拓小屋みたいだし(笑)
フルダー・フラムの持つ、おおげさな話をすると弦がひとりでに切れる竪琴も好きだった。

いっそ、スタジオジブリでアニメ化してくれないかな?
ブタも出てくるし、猫のリーアンなんて、まるで猫バスみたいだし、怪鳥ギセントと名前の似た巨大空中戦艦もどっかで飛ばしてたような気がする…

実をいうと、「プリデイン物語」には、別巻として、「コルと白ぶた」「正直な竪琴」という二冊の絵物語と、タランの出生の秘密を描いた「すてご」という短編集があるそうです。

欲しい!
読みたい!

でもネットで探しても品切れで手に入らない~
根気よく探すっきゃないかな?

できれば、中高生の方に読んでいただきたい。

もちろん、ファンタジー初心者から、かなりの読書家にも、納得していただける作品だとは思います。

まあ、多少のアラは大目に見て下さい(苦笑)
もっとも、物語を愛する想像力のある方で、まだこの物語を知らない方に「こんないいもの見つけたよ~」と自慢したくなる作品であることは確かです♪

五月の爽やかな日差しの中。
あなたもどうぞ、豚飼育補佐の少年タランたちと共に、プリデインの大地を旅してみませんか?

エイロヌイ王女のおしゃべりや、フルダー・フラムの奏でる竪琴の音色が、きっとあなたを待っていてくれますよ☆


「あなたくらいすばらしい豚飼育補佐はプリデインじゅうさがしてもいないと、わたしはかたく信じてるは。 ほかに何人いるか、わたしは全然知らないけれど、それは今問題じゃないでしょ」









ロイド・アリグザンダー  著
神宮 輝夫  訳
評論社


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