私的図書館

本好き人の365日

蕪とHした男

2011-11-26 17:15:00 | 本と日常

昔の地下鉄銀座線って、到着直前に一瞬車内が暗くなったんですってね。

どうやらレールから電気をとっていた関係で、切り替え線などがあると一時的に電気の供給が切れていたみたいですが、そこから作家の村上春樹さんは、

「人が目的地に着く直前には常に深い闇が訪れるんだ」

と思ったそうです。

「夜明け前が一番暗い」ともいいますもんね。
生きているといろいろあって、お先真っ暗と感じることもしばしば。だけど、その暗闇の先には光がある…
自分自身、将来に対して不安を感じる、定期的に巡ってくる不安定期の中にいたので、この文章を読んだ時にとても心に響きました。
今は暗闇の中だけれど、もうちょっと頑張ろう…
ちなみに心の不安定期は、ちょっと美味しい物を食べるとか、ちょっと面白い映画を見るとかでも抜け出すことができます☆

読んでいたのは村上春樹さんのエッセイ、

『おおきなかぶ、むずかしいアボガド 村上ラヂオ2』(マガジンハウス)

雑誌「anan」に連載されていたもので、大橋歩さんの魅力的な銅版画も見ることができます。

海外生活やオシャレな村上さんについても読めますが、「挨拶」という漢字がいまだに書けないとか、ロールキャベツが見るのも嫌いとか、ちょっと抜けたところもある村上さんが面白い♪

その中で、「大きな蕪(かぶ)」というロシア民話を紹介しながら、日本の今昔物語に出てくる「子だねの蕪」という話についてもふれています。

昔々、ある若い男が東国に行く途中、どうしても我慢ができなくなって畑の蕪に穴を開けてHをしてしまいます(笑)
その畑の持ち主の娘が、その蕪を知らずに食べてしまうとあら不思議、娘は妊娠してしまい、それを知った両親は大慌て。娘は憶えがないと言い張るし、まさか蕪のせいだとは思わない家族は困惑するばかり。しかたなく、もう嫁にもやれないからと娘と産まれた子供を養うことに。
数年後、京に帰る男が再びその地を訪れ、そういえばあの時こんなことがあったと笑い話で口にした蕪との情事が娘の家族に知られ、男は娘と自分の種で生まれた子供に初めて対面します。これこれこういうわけで、と事情を聞き、男は不思議なこともあるものよと思いながらも、これも宿縁と、娘と一緒になり子供ともども末永くその土地で暮らした、というお話。

教訓もなにも無い! ヒドイ話だ、と村上さんは笑っているけれど、私はこのお話を知らなかったのですごく面白かった♪

今昔物語や古事記もそうですが、日本の古典ってこういう現代から見たらけっこう危ない話がちらほらありますね。
さすがにこんな変態男の話は教科書には載せられないでしょうけど(苦笑)

それとも、うがった見方をすると出来ちゃった婚の言い訳? なぜだかわからないけれど赤ちゃんができちゃったの、きっと蕪を食べたせいだわ…(しらじら)
「通い婚」とかの時代なのでそれはないかな?
身分の差があったとか?
ま、どっちにしろ、めでたしめでたしで良かった。
未成年の方が読んでいたらごめんなさい。
大人の世界は複雑なんです♪

その他、アボガドの食べ頃をいいあてるおばさんとか(あれは難しい)、太宰治と三島由紀夫の話とか(そういえば先日11月25日は三島由紀夫の命日でしたね。自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺。享年45歳でした)、村上さんもよく走るというマラソンの話、レタスやお酒、気持ちのいいホテルのサービスなどについて書かれていて、作品だけではわからない作家村上春樹が読めて面白かったです。

本屋さんでコバルト文庫の棚やライトノベルの棚に近寄るのは割と平気なのですが、「anan」はなぜか手に取りにくいんですよね~

ついでに荻原規子さんの『RDG(レッドデータガール)はじめてのお使い』(角川文庫)の文庫本も買って来ました。
株主優待でもらった図書カードで支払い。
荻原規子さんのこの本、前から読んでみたかったんです。

冬眠するクマではありませんが、そろそろお正月休み用の本を買いためておかないと。