私的図書館

本好き人の365日

「東山魁夷 心の旅路館」

2011-11-15 18:01:00 | 旅行
先日銀行に行くと、ATMの前で話し込んでいる行員とご婦人の会話が聞こえてきました。
どうやらご婦人が振り込みたい口座が使えない状態になっているみたい。
「この口座だって言われたんだけど。知人が財布の入ったバッグを無くして困っているの。大丈夫、知っている人だから振り込め詐欺じゃないわ」

…いやいやおばさん、振り込め詐欺はたいてい知人を名乗るのでは?

行員は辛抱強くもう一度本人に確認の電話をするように勧めていましたが、「とても困っているから何とかならない?」とねばるご婦人。

なぜ電話を拒む!?

このご婦人の知人は本当に財布を失くして困っていたのかも知れませんが、まだまだ振り込め詐欺やそれに類する詐欺は多いですからね。注意するに越したことはありません。

まずは自分ひとりで判断せずに誰かに相談すること。
私の信条は「だますな! だまされるな!」です。

この間紅葉を見に長野県まで行って来ました。
帰りに寄ったのが、木曽の山の中にある道の駅に隣接した小さな美術館「東山魁夷 心の旅路館」というところ。
何でも日本画家の東山魁夷(ひがしやま かいい)が青年の頃、山登りに来て夕立に遭い、このあたりの農家にかけこんで一夜の宿を求めたことがあったそうです。
その時に思いがけないほどの温かいもてなしを受けた東山魁夷は、木曽の人たちの素朴な生活と雄大な自然に心を打たれ、風景画家の道へ歩む決意をしたんだとか。

本当に小さな美術館なんですが、日本各地の山々、ドイツや北欧の森などを深い緑と青で描いたリトグラフや木版画の作品がいくつも展示されていました。
また外の庭には碑文があり、


 歩み入る者にやすらぎを 去り行く人にしあわせを


と彫られていました。
これは東山魁夷が旅行で訪れたドイツのローテンブルクという街で、門に刻字されていたラテン語の銘文を見て、本人が訳したものなんだそうです。

なんだか若き日の東山魁夷と木曽の人々のエピソード、泊めてあげた農家の人のかざらないもてなしの心を彷彿とさせる言葉でした。

一方で他人をダマす人間がいるかと思えば、一方では他人を、何の見返りも求めずに心配し、もてなす人間もいる。
なぜそんな人間がいるのかと悩むよりも、自分がどっちの人間になりたいかと考えた方が健康的ですね。

さ湯でよければもてなしますよ(苦笑)