私的図書館

本好き人の365日

失われたものを求めて

2004-06-27 18:15:00 | 日々の出来事
うちの車は、大きな荷物を積む時など、荷室の上のカバーを取り外して積み込むことができます。

春先に荷物を運んだ時、このカバーを取り外したのですが、面倒くさくてそのままにしておいたんですね。

このところ日差しが強くなってきたので、そろそろ取り付けようかと思って、久しぶりに物置を見てみたんです。

ところが、置いておいたところにない。

気が付いてみると、物置がキチンと片付けられていてスッキリしている。
どうやら父親が、定年で退職してヒマなものだから、整理したらしいのです。

どこに置いたのか訊いてみるんだけれど、まずその部品を説明するのがひと苦労。
あーで、こーでと説明して、ようやく分かったみたい。
そして、一言。

「ああ、あれなら捨てた」

「…す、捨てた!?」(←ガ~ンとショックを受けている)

「いるのか?」

い、いるに決まってるじゃないか~*(汗)*
あまりのことにしばらく絶句。

「あ、待てよ、捨ててないかもしれないな」

「!」(←ちょっと復活している)

「燃えないゴミなんかには持っていってないし、どうしたかな…」

「うん、うん、それで?」(←かすかな希望がわいてきたので立ち直りかけている)

「ああ、そうだ!」

「うん?」(←期待に目が輝いている)

「埋めた」

「・・・う、埋、め、た?」(←体がボロボロくずれているところをご想像下さい)

…埋めたって言葉がよく理解できなかったけど、絶望的なことには気が付きました*(涙)*

どうやら石垣を組んだ時(ヒマなので父親は石垣の補修を一人でしていたのです)、あいた隙間に不用品を詰め込んだらしい。
その中に哀れその部品も含まれていたらしいのです。

い、一万円もする部品なのに~!!
なんてことするんだ!!

いまさら掘り返すわけにもいかず、諦めて新品を注文しました。
えらい出費だ~*(汗)*

それにしても、埋めたはないよな、埋めたってのは。
お店の人に「壊れたの?」って訊かれて、思わず「捨てられちゃって…」と言って笑って誤魔化しました。

説明する自信がなかったんです。
説明できないですよね~

六月の本棚 3 『母さん、ぼくは生きてます』

2004-06-27 16:59:00 | 日々の出来事
戦乱のアフガニスタンから、母を残して命からがらたどり着いた希望の国ニッポン。
しかし、待ち受けていたのは、信じられないような冷たい運命だった…

今回ご紹介するのは、過酷な運命の中で今も必死に生きるアフガニスタンの青年、アリ・ジャンの本。

『母さん、ぼくは生きてます』です。

アリ・ジャンは1982年生まれ。
アフガニスタンはヒンズクーシー山脈のふもとで五人兄弟(兄2人、姉2人)の末っ子として育ち、小学生の時に首都のカブールに引っ越します。
アリ・ジャンが中学生の時、タリバンがアフガニスタン全土を制圧。
過激なイスラム原理主義による支配が始まります。
その後、兄2人はタリバンの手を逃れるためにカブールを離れますが、父親は逮捕され投獄されてしまいます。

「あなただけでも生き延びるのよ」

母の言葉を胸に、母と姉達を残し、隣国パキスタンに一人渡るアリ・ジャン。
その地で長兄がタリバンに拘束されたこと、そして自分にも逮捕状が出ていることを知った彼は、安全な国、日本へと旅立ちます。

戦争がない国、日本。
あした食べるものにも困ることなく、自由に勉強できるすばらしい国。

日本に行って、一生懸命勉強しよう。
そして戦争が終わったら故郷に戻ろう。
また母さんや姉さん達と一緒に暮らそう。

不安と希望を胸に成田空港に降り立ったアリ・ジャン。
しかし、彼を待ち受けていたのは、あまりにも、あまりにも厳しい日本の法律の壁でした…

この本を読んだ時ショックでした。
自分の国でこんなことが行われているなんて知らなかった。

空港を一歩も出ることなく、七ヶ月もの間、閉じ込められた生活を余儀なくされるアリ・ジャン。

いつ出られるのか、何年ここにいなくてはならないのかわからない不安。
狭い部屋で様々な国の人と暮らす不自由さ。

そんな中、アメリカで同時多発テロが起こり、数週間後、アメリカ軍による首都カブールへの空襲が始まります。

「あなたは難民ではありません」

「この国から出て行きなさい」

平和で、戦争がなくて、美しい国、ニッポン。
親切な人がたくさん住んでいる国、ニッポン。

そのニッポンという国が、アリ・ジャンに突きつけた通告は、あまりにも冷たいものでした。

家族のいるアフガニスタンの状況は日々悪化し、犯罪者でもないのに、手錠をかけられたり、自由のない収容所生活に、精神的に追い詰められたアリ・ジャンは、入管職員の一瞬のスキに、散髪用のハサミをつかんで、自分の体に突き立ててしまいます。

「あなただけでも生き延びて」

世界中で道を作ったり、日本のすぐれた技術を現地の人に教えたする、NGOの人道支援活動を見てきた人々は、日本の国そのものがやさしくて人道的な国だと信じていた。
それなのに、日本の難民に対する政策は、厳しすぎる。

アリ・ジャン達を助けるために、東奔西走する弁護士の先生達や、ボランティアの人々の姿には頭が下がります。

自分のことで精一杯の今の自分の生活。
アリ・ジャンに比べれば、恵まれた環境にいるにも関らず、逆にアリ・ジャンに教えられてしまいました。

なぜ、こんな人々を、日本という国は受け入れることが出来ないのでしょう。

戦争は、もう日本でも始まっているのです。
他人事では済まされないほど身近に…

仮釈放という形だけれど、なんとか外に出られたアリ・ジャンは、多くの人の骨折りで学校にも通えるようになり、いつの日か家族に再会できることを夢見て、頑張っています。

自分の無関心さに、恥じ入ると共に、多くの人々に、いま彼等の置かれている状況を知ってもらいたい。
そんな気持ちで読み終えました。

「たいへんなのは僕だけではありません」

この青年の言葉を、一人でも多くの人に…



「アッラサーム・アコイラム」

~あなたに平安がありますように~





アリ・ジャン  著
池田 香代子  監修
マガジンハウス

〈絵・アフガニスタン難民の子ども達〉