テキスト解析(2)

2014年05月24日 | 日記
「春への憧れ」第1節後半の解析を行います。

3行目。
Wie:ヴぃー。「いかに」、「どんなに」という意味。英語のhowに当たります。
moecht:メひと。oeはウムラウトで、「お」の唇の形で「え」と発音します。chはここでは「ひ」から母音「い」を取り去った舌音。「~したい」という意味の助動詞で、行末の動詞sehn(「見る」)とセットになって「見たい」という意味になります。
ich:いっひ。この文の主語で、「私は」という意味。chはここでも舌音。
doch:どっほ。文意を強調して「だって~ですもの」というニュアンスを出す語です。このchは喉音で、「は」から母音「あ」を取り去った音。直前のoの母音の口形のまま発音するので、どっほと聞こえます。
so:ぞー。「そのように」、「それほど」という副詞で、ここでは次のgerneとセットになっています。母音の前のsは濁音になるので、「ぞー」です。
gerne:げるね。「喜んで」、「好んで」という意味の副詞です。
ein:あいん。英語のa, anに当たる不定冠詞で、次のVeilchenにかかっています。eiの読み方は「あい」。
Veilchen:ふぁいるひぇん。スミレです。vは英語のfと同じ発音、chはここでは舌音。
wieder:ヴぃーだー。「再び」という副詞。wは英語のvと同じ発音、ieの読み方は「いー」。語尾のerは音便化して「あー」。
sehn:ぜーん。「見る」という動詞。sは濁ります。本来はsehenですが、韻律の関係で2つめのeが脱落しています。hは前の母音を伸ばす機能を持ち、音はありません。

「ぼくはどんなにスミレの花に再会したいことか。」

4行目。
Ach:あっは。「ああ」という詠嘆。chは喉音。
lieber:りーばー。形容詞lieb「親愛なる」、「愛しい」に男性1格語尾がついた形です。
Mai:まい。5月のこと。ドイツ語の名詞はすべて男性、女性、中性に類別されますが、1月から12月までの月の名前はすべて男性名詞です。性別は名詞の前に置かれる冠詞や形容詞の語尾変化によって表されます。
wie:ヴぃー。「いかに」。
gerne:げるね。「喜んで」、「好んで」。
einmal:あいんまーる。ここでは「(未来の)いつか」という意味です。
spazieren:しゅぱつぃーれん。ぶらぶら歩くという意味ですが、次のgeh(e)nとともに「散歩する」という意味になります。語頭のspは「しゅぷ」という音になります(正確には「しゅ」から母音の「う」を取り去った音+「ぷ」から母音の「う」を取り去った音)。zは「つ」から母音「う」を取り去った音。
gehn:げーん。「行く」という動詞ですが、「spazieren gehen」で散歩するという意味です。これも本来はgehenですが、韻律の関係で2つめのeが脱落しています。

「ああ、いとしい5月よ、早くまた外を散歩したいなあ!」

ドイツの冬は長くて厳しいので、花が一斉に咲き始める5月を待ち焦がれる気持ちには切実なものがあるようです。この詩には、早く表に出て思いっきり走り回りたい、きれいな花の色や明るい新緑に目を喜ばせたい、という春への憧れが子供の視点で表現されています。

韻律図式は基本的に「弱・強・弱・強...」のパターンで、各行に3つの強拍があります。奇数行は弱拍で終わり、偶数行は強拍で終わっています。
各行の行末を見ると、奇数行はmache/Bache,gerne/gerne、偶数行はbluehn/gruen, sehn/gehnと脚韻を踏んでいます。このパターンは「交叉韻」と呼ばれます。

モーツァルトは詩の韻律に合わせて6/8拍子の弱起で作曲しています。ドイツリートは(ヨーロッパの歌曲は全部そうですが)言葉の強弱と音楽的な強弱が一致しているので、歌いやすく聞き取りやすい。その点、昨今の日本のポップスとは大違いです。

それではこれにて。

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2 コメント

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Unknown (ばんぺいゆ)
2014-05-25 20:21:43
先生、涙が出るくらいに嬉しいです(((o(*゜▽゜*)o)))
わかりやすーいU+203CU+FE0E
どんどんお願いします。

疲れさせるかな(笑)

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Unknown (吉田)
2014-05-25 22:20:10
ばんぺいゆさん、喜んで頂けて嬉しいです。こんなレアな記事を真剣に読んで下さる方が本当にいるだろうかと、かなり不安でしたが、多少はお役に立てたことがわかってほっとしました(笑)。第2弾を考えます。
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