学びの時間

2020年03月03日 | 日記
先月とあるイヴェントで、発声のワークショップのチラシを見ました。裏面いっぱいに箇条書きで発声の要諦が書いてあったのですが、その内容が、かつてW先生に教わったことや、私自身が日頃からレッスンやセミナーで言っていることとぴったり重なっていたので、興味を惹かれて参加してみました。コロナウィルス禍でかまびすしい中にも20名ぐらいの参加者があり、うちの合唱団の団員さんも2人お見かけしました。こういう場所でお会いするのは嬉しいですね。
私よりは若そうな講師のY氏は、柔らかな物腰と分かりやすい語り口で、詳しい図解を元に懇切丁寧なレクチャーを展開されました。私もセミナーでは図解を使いますが、ここまで詳細な資料を作ったことはあまりありません。コーカソイド(白人種)、ネグロイド(黒人種)、モンゴロイド(黄色人種)の頭蓋骨を比較するための写真(モンゴロイドの後頭部が絶壁で、口唇からの奥行きが明らかに他人種より短いことが一目瞭然)、田植えをしている人と馬に乗っている人の写真(農耕民族と騎馬民族の体の使い方の違いを説明するため)などもあり、口で説明するだけの私との違いに感じ入った次第。なかんずく興味をそそられたのは、母音の構音点を示す図解です。私が音大生の頃はまだディクション(歌詞の発音の仕方)のレッスンがなかったこともあり、ディクションは私のウィークポイントなのです。昨年のリサイタルのDVDを見て下さったW先生からも「もう少し音色の変化が出せると、表現力が増すと思うわ」と言われていて、これはつまり口腔内の形の変化が乏しいということだと思います。ドイツ語のディクションに関してはM先生が濃やかにご指導くださるおかげで、最近は母音の発音に以前よりは神経が使えるようになってきましたが、この領域は私自身まだまだこれからというところ。良いモチベーションになりました。
翌日は個人レッスンがあったので、レスナーとしての関心から聴講させて頂きました。合唱をなさっているお2人の女性のレッスンを聴かせて頂きましたが、発声上の課題に対するアプローチが、狙いがよくわかって参考になりました。大胸筋、前鋸筋、僧帽筋のストレッチなどは私もレッスンで頻繁に使いますが、Y先生はそれに発声を組み合わせておられます。例えば、後ろ手に組んだ両手を体から遠くへ離してmiの発音で声を出したり、肘〇体操をしながらuの発音で音階を歌ったり、腰に手を当てて少し反りながら高音でhoーーと伸ばしたり、両腕を前に伸ばして円を作り、少し前屈して声を出したり。私は声帯やその周辺のことはあまり説明しない(できない)のですが、Y先生は一つ一つのエクササイズをリードしながら、その都度声帯周辺のどの筋肉をどの方向に引っ張っているのか、図解付きで説明されます。なるほどね。
枠が空いているのでぜひどうぞとY先生に促され、私も譜読みを始めたばかりのバッハのカンタータでレッスンを受けてみましたが、ディクションを中心に懇切で的確なご指導を頂き、良い勉強ができました。W先生のご指導ともM先生のご指導とも矛盾せず、その両者を繋ぐような、不思議に体にしっくりなじむ感じ。ジグソーパズルのピースが嵌った感覚に似ています。
全国を飛び回っておられるY先生、熊本にも時々おいでになって合唱団の指導などなさっている由。うちの生徒さん方にも合唱をやっている方が多く、その話を聞くにつけ、熊本には発声に問題を抱えた合唱団が多そうな気配で、良いトレーナーが増えないといけないなあと陰ながら常々思っていたので、何だか嬉しくなりました。
今月は大学も春休み、合唱団もコーラス部も聖歌隊も練習中止、出演予定のコンサートもすべて中止、おまけに合気道の稽古も体育館が使えず休止で、何というか、牙を抜かれた猛獣のような気分でしたが(笑)、お蔭でちょっとスイッチが入りました。有難い学びの時間でした。
皆様のご参考に、母音の構音点の図表をアップします。解像度が悪いのはご容赦下さい。


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