コンサート報告

2017年11月28日 | 日記
わが合唱団の創立15周年コンサートが無事終了しました。
入場無料のホームコンサートなので、お客様にくつろいだ気分で楽しんで頂きたいと思い、バラエティを考えたプログラミングにしました。まずオープニングは、宗教改革500年を記念して、バッハのコラール「主よ、人の望みの喜びよ」をオルガン伴奏とフルート2本の助奏付きで歌いました。続いてア・カペラでドイツ民謡。蛙の歌、小鳥ならば(夜汽車)、かすみか雲か、この山光る、の4曲です。次はドイツの名歌。野ばら、ローレライ、眠りの精、ハイネの詩による3つの民謡。最初の2曲はお客様と一緒に歌いました。眠りの精は女声合唱で、ソロ付きです。休憩をはさんで後半は、ドイツ語の歌詞のついた日本の歌。もみじ、赤とんぼ、荒城の月、田原坂。これも最初の2曲はお客様と一緒に歌い、田原坂は男声合唱で歌いました。次がシューベルトの「ドイツ・ミサ曲」全曲演奏で、これがいわばメインステージです。熊本地震の犠牲になられた方々への追悼の祈りをこめ、オルガン伴奏でしめやかに歌い上げました。そしてクロージングに「ムシデン」。いずれ必ず帰ってくるよ、と恋人に誓って徒弟修業に旅立つ若者の歌です。私たちも次の節目に向かって旅立ちますが、いずれまたコンサートで皆様と再会しましょう、という気持ちをこめました。最後に「恋人よ、さよなら」という歌を歌いながら退場。しめて90分間のステージでした。
あいにくの雨降りでしたが、90名以上のお客様にご来場頂き、アットホームなコンサートになったと思います。打ち上げの席では、「荒城の月」を歌いながら泣きそうになりました、という方あり、今年は西南戦争から140年目ですよね、それで田原坂を選ばれたんでしょう?と仰る方あり(恥ずかしながら全然気が付いていませんでした)、教会の雰囲気にぴったりのオルガン伴奏で宗教曲を歌えてよかった、という方あり、「この数日は、夏休みの終わりに大量に残った宿題を持て余している小学生の気分でした」と仰る新入団員さんもありました。曲数が多かったのと、直前まで曲目や歌い方が変更になったのと、出入りが多かったのとで、皆さんさぞ身も心もアタマも忙しかったことでしょう。伏してお詫び申し上げます。
今回は7名の方が友情出演して下さり、ステマネや録画、照明なども外部から応援をお願いし、たくさんの助力を頂いたコンサートでした。実行委員の皆さんも本当に献身的によくやって下さいました。どんなにささやかなコンサートでも、準備の仕事は無数にあります。前日夜中まで連絡のメールが飛び交い、MCの打ち合わせは当日朝の練習後にまで持ち越されました。肝心の歌の方も、何しろ曲数が多いのに練習日数が少ないので、本番間際まで歌詞の読み方の確認や音取りをしているような状態でした。それでも、アマチュアの方たちというのは本番となると大化けするものでして(笑)、普段の練習のレベルから考えたら信じられないほど良い演奏になり(爆)、指揮者冥利に尽きる思いでした。
とはいえ、小さなアクシデントはいっぱい。1曲目の演奏が終わったまさにその瞬間、指揮者用の譜面台がどすんという音を立てて落ちたり(笑)、ステージ上で並び替えをするはずのところで一旦退場してしまう方がいたり、指揮をしっかり見ていながら全然違うテンポで歌い出す方がいたり。極めつけは、4拍子の曲を3拍子で振り始めてしまった私(-_-;)。それなのに全員一斉に見事なスタートを切ってくれました(爆)。しかも私自身は、自分が拍子を間違えたことに最後まで気づかなかったのです。次の小節から何食わぬ顔で(?)4拍子に戻っていたらしく、打ち上げの席でそれを聞いて我ながらボーゼンとしました。いやはや、人間って、大事なシーンで信じられないようなことをやらかすもんですね。なんて、全人類を自分と同列にしてはいけません。これは完全に私の落ち度です。顔を洗って出直すことにします。
ともあれ、一昨年に刊行した愛唱歌集のお披露目もこれで無事に済み、節目の年に一つの刻印をしるすことができ、肩の荷が降りました。これからも息長く活動を続けていきたいと思います。今後ともどうぞわが合唱団をよろしく。


告知

2017年11月17日 | 日記
あっという間に11月も半ばを過ぎ、急に寒くなりました。クリスマス会まであと1ヵ月ちょっとです。わお~(-_-;)
さて、2つお知らせがあります。
11月26日(日)午後4時半より日本福音ルーテル健軍教会で、熊本日独協会合唱団コール・クライゼルの創立15周年記念コンサートがあります。不肖わたくしめが指揮を務めます。入場無料(要整理券)。昔懐かしいドイツ民謡やドイツ名歌の数々をお楽しみ頂きます。肩の凝らない楽しいコンサート(になる予定(笑))です。どうぞお気軽にお越しください。
12月18日(月)午後3時より、熊本男女共同参画センターはあもにいリハーサル室Bで、声楽家向けのアレクサンダー・テクニーク講習会があります。受講料は3,000円、グループレッスンの前後に個人レッスンの枠も作ります。どちらもオープンですので、ご参加希望の方や詳細を知りたい方はご一報くださいませ。
これからの季節、体調管理が難しくなります。風邪をひきかけて何とかやり過ごすこと2週間、ここで油断せずしっかり摂生しなくては。皆様もどうぞお身体にはくれぐれもお気をつけ下さい。


ある日の授業

2017年11月04日 | 日記
先日のドイツ語の授業でのこと。
なぜかこの日は、受講者の約半数が欠席という異常事態でした。「何かあったの?」と出席している学生さんたちに訊きましたが、特に何もないとのこと。
まあ、たまにはこんなこともあるのでしょう、と思いながら授業に入りましたが、あまり進めると今日の欠席者が次回の授業についてこられません。ちょうど新しい単元に入ったところだったので、導入部分に時間をかけてゆっくり進めていました。ちょっと一区切り、というところで突然、前列の女子学生が私に向かって「Alles Gute!」と声を上げるではありませんか。びっくりして一瞬頭が真っ白。このAlles Guteという言い回しは「お達者で」(←古いなあ(苦笑))というようなニュアンスを持っていて、これから旅行に出る人に対する挨拶として、あるいは卒業や引っ越しなどでお別れする時によく使う表現なのです。固まってしまった私に、しかし彼女はにこやかな表情を送っています。そこでやっと気づきました。「Alles Gute zum Geburtstag!」なんだ、と。つまり「お誕生日おめでとうございます」と、数日前の私の誕生日を祝ってくれたのです。忘れっぽい私は、先月の授業で自分の誕生日をドイツ語で言う練習をしたこと、その時、私の誕生日を尋ねられて答えたことをすっかり忘れていたのでした。ちょっと感激してVielen Dank!と返し、10月31日(私の誕生日)は何の日だか知っていますか?と訊くと、一斉に「ハロウィ~~ン!」という答え。そこで、ハロウィンがもともとケルト人の収穫祭で、それがキリスト教と習合して11月1日の万聖節(カトリックの諸聖人を記念する日)の前夜祭になったこと、その翌日の11月2日は万霊節(すべての物故信者の霊を祀る日)で、この2日間は日本的に言えばお盆のようなもので、カボチャの提灯やオバケの仮装は、この2つの文化の混淆がシンボリックに表現されているのだ、というような話をしたら、ドイツ語よりずっと真剣な顔で聞いています(笑)。それで、10月31日はプロテスタントの方ではルターの宗教改革記念日で、今年は500周年なんだ、という話をしたところ、ある男子学生が「先生はなんでそんないろんなことを知っているんですか?」と訊いてきました。はっは、倫理学を専攻したからよ、というと「え、音楽じゃなかったんですか?」とくだんの女子学生。音楽は最初の専門で、次にドイツ文学をやって、それから倫理学をやったのよ、と答えると、「へえ、何かきっかけがあったんですか?」とさらに追及の手が(笑)。いえいえ、特別なきっかけはないんです、成り行きです、自分の関心が自然と移っていったんです、と答え、「あなたたちは人生100年の時代を生きるんだから、長い人生の中ではきっと、今やっていることとは違うことに関心が向くこともあると思うよ。だから、いくつになっても新しいことにチャレンジできるんだ、って思っておくといいよ。その気さえあれば、いくつになっても勉強はできるからね」というと、これまた真剣な面持ちで聞いています。すると今度は「お誕生日には何をしたんですか?」と質問が飛んできました。はい、免許の更新に行きました。ゴールド免許がブルーに格下げになりました。「それじゃブルーな気分だったんですね。」はい、その通り。手続きが終わって外へ出ると、秋晴れの爽やかな青空が広がっていました。「またブルーですか」はい、そう、今度は爽やかなブルーです(笑)。そよ風に吹かれながら青空を見ていたら、八木重吉という詩人の「素朴な琴」という詩がふと心に浮かんできました。「どんな詩ですか?」――もう完全にドイツ語の授業を逸脱していますが、まあいいでしょう。この有名な4行詩を板書しました。「このあかるさのなかへ ひとつの素朴な琴をおけば 秋の美しさに耐えかねて 琴はしづかに鳴りいだすだらう」――このクラスは日本語学科と英語学科の学生さんたちですが、一読して「意味わかんね」という声が。琴線に触れるという言葉を知っていますか?「知っています。心に響くこと!」そうそう。感動すると、心の中のお琴がびーんと音を立てるわけです。この詩では、そのお琴が、心の中ではなくて美しい秋の景色の中にあるわけよ。「なーるほど。」
さて、そろそろドイツ語の授業に戻りましょうか。今月の歌はシューベルトの「菩提樹」です。知ってる?「知りません。」―ま、知らないだろうね。昔は日本でもよく歌われたんだよ。それでは歌詞を音読してみましょう。
あむ ぶるんねん ふぉあ でむ とーれ だ しゅてーと あいん りんでんばうむ...
弱、強、弱、強のリズムに則って書かれていますね、これ、ヤンブスっていう韻律形式です。詩の強弱が音楽的な強弱とぴったり合っています。CDを聴いてみましょう。ピアノの前奏が、菩提樹の葉っぱが風に吹かれてさわさわと音を立てている様子を表しているんですよ。(CD鑑賞)―じーっと耳を澄ませて聴いてくれています。へ~、今時の若者の心にも感じるところがあるのかな。「どうですか、素敵だな、って思った?」―微妙な表情(笑)。それじゃ一緒に歌ってみましょう。
あむ ぶるんねん ふぉあ でむ とーれ...
歌い終わった後、ふと思いついて、「あ、そうそう、ドイツ語の歌しか歌わない合唱団があってね、私が指揮をしているんだけど、今度コンサートをします。入場無料です。私の後ろ姿を見たい人は(笑)どうぞ来て下さい」と言ってみたら、授業の後何人かが場所と日時を確認に来ました。どうやら本当に来る気らしい(-_-;)
何とも不思議な授業と相成りました。授業でこんなに個人的な話をしたのは初めてです。誘導尋問にうまく乗せられた気分(笑)。でも、出席者が少ないのであまり先に進むわけにもいかないし、たまにはこういうイレギュラーな日があってもいいでしょう。案外こういう授業を後々まで覚えていたりするものですよね。それに、何だか学生さんたちとの距離がぐっと近くなった気がしました。