準備運動

2015年06月29日 | 日記
「水泳や陸上競技の練習前に準備運動をするように、発声練習の前にはストレッチをして下さい。筋肉を使う前には準備運動が不可欠です。声楽発声は想像以上に筋肉を使いますから、練習の前のストレッチは必須メニューですよ」と私はずーーっと言い続けていますが、歌うことが肉体労働であるという認識が薄いのか、巷には練習前に体を動かすエクササイズをしない(それどころか発声練習さえしない)合唱団も多いとか。レクリエーションのカラオケならいざ知らず、かりそめにも指揮者や伴奏者のいる合唱団の定期的な練習でいきなり歌を歌い始めるというのは、かなり乱暴な話ですよね。ラジオ体操のようなごく一般的な体操で構わないので、必ず体をほぐしてから発声練習をする習慣をつけたいものです。
それはともかく、声楽の練習前に体をほぐすのはとても大事なこと。過労や睡眠不足で筋肉が凝り固まると、横隔膜を下がった状態に保つ(息を支える)ことや声帯を引っ張ること、呼気を高く飛ばすことが難しくなります。その弊害の最たるものがヴィブラートと喉声です。音程が不明瞭になるほど声が不自然に揺れたり、声帯や舌根に力を入れて高音を出そうとしたり、体で支えきれなくて下顎が硬くなってしまったり、といった現象は、体をよくほぐし、緊張と弛緩が自由にできる筋肉にすることでかなり解消されると思います。
私がよくやる一番簡便なストレッチは「伸び」です。両手を組んで掌を上に向け、あくびをしながら伸びをします。途中から「アーーー」とあくび声を出します。体をねじる運動や関節をゆるめる運動もします。しかし、ひどく体が凝っている場合は、ゴザかバスタオルを敷いた床の上に仰向けになって完全にリラックスし、何度か深い呼吸をした後で、息を長く吐きながら背中全体を床につける運動を繰り返します。次に膝を立て、低い声のハミングで頸椎や背骨を振動させます。呼気を強くして骨盤、大腿骨、脛骨と腓骨、足の先まで振動を伝え、両掌で顔を覆って掌にも振動を伝え、その両手をゆっくりと体側に戻しながら肩から指先まで振動を伝えます。かなり強い呼気圧が必要ですが、喉に力が入らないように気を付けます。
全身の骨が響いたら、今度は四つん這いになって低い声で短いハミングを繰り返します。下腹部に腹圧がかかり、背中がアーチ状にぐーっと持ち上がります。ハミングでできたらアの母音で。
椅子の背もたれに両手を掛けて上体を床と水平にし、上下にバウンドさせながら声を出したり、片手で背もたれを掴んでもう片方の手を上に伸ばし、その手で背もたれを掴むように体側を伸ばしながら声を出したりするのも効果的です。必ず裏声で、短く切ったりロングトーンにしたりします。
壁があれば、壁にもたれかかって踝と腰と肩と頭を壁につけ、両手を上げて手の甲も壁に付け、壁にもたれたままスクワットや伸びをします。呼吸を止めないよう気を付けて。
体をほぐしたら唇や舌のストレッチもしましょう。即効性があるのはタングトリルとリップロール。無声でやったり、いろいろな音程でもやってみます。できれば軟口蓋のストレッチも。消毒した指で軟口蓋をマッサージしたり、顎関節の後ろに親指を突っ込んで、人差し指で頬骨を持ち上げたり。
こうしたことを15分ぐらいかけて丁寧にやると声が出やすくなり、呼気も音程も安定します。急がば回れ。お疲れが溜まっている方、どうぞお試しください。

もうすぐ完成

2015年06月21日 | 日記
我が合唱団で編纂中の「ドイツ愛唱歌集」、編集委員会を組織して約一年半に亘り編集会議、校正会議を重ねてきましたが、今日最終の校正会議が終わり、いよいよ来月初旬には出来上がります。素人集団には大事業でしたが、作業全般に適材適所を得て、編集会議も校正会議も終始活発に和やかに熱心に進行しました。
楽譜だけではあちこちに空きスペースができるので、コラムや挿絵、そして「日本人の好きなドイツ民謡」を歌詞だけ載せようということになり、日本で親しまれているドイツの童謡を中心に7曲の歌詞をドイツ語、日本語両方で掲載しました。これらのドイツ民謡、皆様はどれぐらいご存知でしょうか。

1.Haenschen klein(ちょうちょ)
2.Kuckuck(かっこう)
3.Der letzte Abend(故郷を離るる歌)
4.Summ, summ, summ(ぶんぶんぶん)
5.Ach, du lieber Augustin(かわいいオーガスチン)
6.Ein Maennlein steht im Walde(池の雨)
7.Fuchs, du hast die Gans gestohlen(こぎつね)

うちの団の副団長は40代ですが、「故郷を離るる歌」を知らないそうです(-_-;)
「池の雨」と訳されている歌は、オペラ「ヘンゼルとグレーテル」の中にも挿入歌として入っている有名な童謡です。直訳すれば「小人が森に立っている」ですが、日本では某音楽教室がなぜか「池の雨」という題で訳しています。しかし訳詞の内容はちゃんとドイツ語の歌詞に対応していて、歌詞には池も雨も全然出てこないというミステリー(笑)。
この歌集の第1部はそのものズバリ「ドイツ民謡」で、混声合唱用に編曲したドイツ民謡をたくさん載せました。「かすみか雲か」、「小鳥ならば(夜汽車)」、「ムシデン」、「もみの木」などは私たち世代までなら誰でも知っている歌です(よね?)が、最近入ってきた我が団のニューフェイスの若者たちにはなじみが薄いようです。かつては幼稚園、小学校で盛んに歌われ、親しまれてきたこれらの曲も、今や歌われる機会は確実に減ってきていますから、こうして歌集として残すことにもそれなりの意義があると思います。
装丁も重厚で、なかなか見栄えがします。出来上がるのがとっても楽しみです。非売品ですが、欲しい方には実費頒布しますのでお申し出を(笑)。

発音と発声(2)

2015年06月14日 | 日記
このところ体調が不安定なのと忙しかったのとで、久し振りの更新です。随分前に「発音と発声」というタイトルで書いたこととほぼ同じ内容ですが...
昨日、とある合唱団からのオファーでドイツ語の発音指導に行ってきました。ドイツ語の合唱曲を練習しているのだそうです。
ラテン語やイタリア語ならまだしも、一般の合唱団がドイツ語の歌を歌うのはかなりハードルの高い取り組みだと思いますが、最近はドイツ語どころかマジャール語やロシア語など、私などネイティヴの発音を聞いたことさえない言語の歌を歌う合唱団も珍しくないようで、その意欲には脱帽します。昨日の合唱団はメンバーが皆若く、高校生もたくさんいましたから、慣れない言語で歌うことにもさほど抵抗がないのかもしれません。
一度通しで歌って頂くと、音取りはほぼ完全にできているのがわかりました。これは手間が省けます(笑)。聴いていてまず基本的に問題なのは「口の奥が開いていない」ことでしたが、これは想定済みでしたので(笑)、予て用意のワインコルクを「奥歯の間に挟んで下さい」と言って全員に配りました。すると、ワインコルクを挟んだだけで顎関節がしんどくて困っている人が数人いました。日本人にとって口の奥を開けることは本当に大変なことですから、こういう補助具を使って体に覚えさせないとなかなか身に付きません。ワインコルクを挟んだままでa,e,i,o,uと母音を発音してもらいました。次にコルクを外し、上の前歯の裏に付けた舌先を上あごの奥へとスライドさせて軟口蓋の位置を確かめ、声を軟口蓋に当てるようにしてもう一度母音を発音します。これだけでもう、声の響きが全然違います。「母音は常に軟口蓋で発音する」と取り決め、次に子音の練習。子音は体に抵抗がかかるので、子音から母音に移った時に反射的に体の緊張を緩めてしまいがちですが、それでは姿勢が崩れて息モレ声になってしまいいます。母音で体をもっと外側へ開くつもりで子音プラス母音の練習をします。母音と同じ位置にアンザッツのあるカ行とガ行から。「カ、ケ、キ、コ、ク」と短く切って発音、次に「カーケーキーコークー」と母音を伸ばし、その伸ばしている間に上あごが落ちてこないよう、軟口蓋に当たった声を口蓋垂の後ろまでスライドさせるように意識します。「ガ、ゲ、ギ、ゴ、グ」も同様。次に歯の裏と舌先を使うタ行、ダ行、ラ行、前歯の隙間を使うサ行、唇を使うパ行、バ行、マ行、下唇と上の前歯を使うfとvの発音。ナ行は歯の裏を使いますが、鼻に抜く音なので、nのアンザッツを目頭の間に取り(篩骨に響きを集めるのです)、母音は篩骨の真裏で発音するイメージで。ハ行は上あごの手前から奥へ向かって息を滑らせ、口蓋垂の裏で母音を発音するイメージで。
こうして子音と母音の組み合わせを一通り練習した後でもう一度歌ってもらうと、だいぶ響きが変わってきました。今度は歌詞の一語一語の発音練習です。2重母音では2つ目の母音を1つ目より奥で発音すること、語尾の子音はウエストを外側へ拡げながら発音すること、語尾のenは口を開けずに暗く発音すること等々、いろいろレクチャーしながら少しずつ歌ってもらいました。子音の多いドイツ語であっても母音をつなげるように歌わないと音にならないので、母音だけで歌う練習も必要です。
丁寧にやればどれだけ時間があっても足りませんが、集中力や体力との兼ね合いもあるので、1時間ちょっとで終えました。それでも、皆さん歌いながら「変わった」実感があったようです。指揮者の先生も「ネイティヴかと思うような響きが時々聞こえました」と仰って、「もう少し仕上がった頃にもう一度来て下さい」と言われました。次に行く時が楽しみです。