「水泳や陸上競技の練習前に準備運動をするように、発声練習の前にはストレッチをして下さい。筋肉を使う前には準備運動が不可欠です。声楽発声は想像以上に筋肉を使いますから、練習の前のストレッチは必須メニューですよ」と私はずーーっと言い続けていますが、歌うことが肉体労働であるという認識が薄いのか、巷には練習前に体を動かすエクササイズをしない(それどころか発声練習さえしない)合唱団も多いとか。レクリエーションのカラオケならいざ知らず、かりそめにも指揮者や伴奏者のいる合唱団の定期的な練習でいきなり歌を歌い始めるというのは、かなり乱暴な話ですよね。ラジオ体操のようなごく一般的な体操で構わないので、必ず体をほぐしてから発声練習をする習慣をつけたいものです。
それはともかく、声楽の練習前に体をほぐすのはとても大事なこと。過労や睡眠不足で筋肉が凝り固まると、横隔膜を下がった状態に保つ(息を支える)ことや声帯を引っ張ること、呼気を高く飛ばすことが難しくなります。その弊害の最たるものがヴィブラートと喉声です。音程が不明瞭になるほど声が不自然に揺れたり、声帯や舌根に力を入れて高音を出そうとしたり、体で支えきれなくて下顎が硬くなってしまったり、といった現象は、体をよくほぐし、緊張と弛緩が自由にできる筋肉にすることでかなり解消されると思います。
私がよくやる一番簡便なストレッチは「伸び」です。両手を組んで掌を上に向け、あくびをしながら伸びをします。途中から「アーーー」とあくび声を出します。体をねじる運動や関節をゆるめる運動もします。しかし、ひどく体が凝っている場合は、ゴザかバスタオルを敷いた床の上に仰向けになって完全にリラックスし、何度か深い呼吸をした後で、息を長く吐きながら背中全体を床につける運動を繰り返します。次に膝を立て、低い声のハミングで頸椎や背骨を振動させます。呼気を強くして骨盤、大腿骨、脛骨と腓骨、足の先まで振動を伝え、両掌で顔を覆って掌にも振動を伝え、その両手をゆっくりと体側に戻しながら肩から指先まで振動を伝えます。かなり強い呼気圧が必要ですが、喉に力が入らないように気を付けます。
全身の骨が響いたら、今度は四つん這いになって低い声で短いハミングを繰り返します。下腹部に腹圧がかかり、背中がアーチ状にぐーっと持ち上がります。ハミングでできたらアの母音で。
椅子の背もたれに両手を掛けて上体を床と水平にし、上下にバウンドさせながら声を出したり、片手で背もたれを掴んでもう片方の手を上に伸ばし、その手で背もたれを掴むように体側を伸ばしながら声を出したりするのも効果的です。必ず裏声で、短く切ったりロングトーンにしたりします。
壁があれば、壁にもたれかかって踝と腰と肩と頭を壁につけ、両手を上げて手の甲も壁に付け、壁にもたれたままスクワットや伸びをします。呼吸を止めないよう気を付けて。
体をほぐしたら唇や舌のストレッチもしましょう。即効性があるのはタングトリルとリップロール。無声でやったり、いろいろな音程でもやってみます。できれば軟口蓋のストレッチも。消毒した指で軟口蓋をマッサージしたり、顎関節の後ろに親指を突っ込んで、人差し指で頬骨を持ち上げたり。
こうしたことを15分ぐらいかけて丁寧にやると声が出やすくなり、呼気も音程も安定します。急がば回れ。お疲れが溜まっている方、どうぞお試しください。
それはともかく、声楽の練習前に体をほぐすのはとても大事なこと。過労や睡眠不足で筋肉が凝り固まると、横隔膜を下がった状態に保つ(息を支える)ことや声帯を引っ張ること、呼気を高く飛ばすことが難しくなります。その弊害の最たるものがヴィブラートと喉声です。音程が不明瞭になるほど声が不自然に揺れたり、声帯や舌根に力を入れて高音を出そうとしたり、体で支えきれなくて下顎が硬くなってしまったり、といった現象は、体をよくほぐし、緊張と弛緩が自由にできる筋肉にすることでかなり解消されると思います。
私がよくやる一番簡便なストレッチは「伸び」です。両手を組んで掌を上に向け、あくびをしながら伸びをします。途中から「アーーー」とあくび声を出します。体をねじる運動や関節をゆるめる運動もします。しかし、ひどく体が凝っている場合は、ゴザかバスタオルを敷いた床の上に仰向けになって完全にリラックスし、何度か深い呼吸をした後で、息を長く吐きながら背中全体を床につける運動を繰り返します。次に膝を立て、低い声のハミングで頸椎や背骨を振動させます。呼気を強くして骨盤、大腿骨、脛骨と腓骨、足の先まで振動を伝え、両掌で顔を覆って掌にも振動を伝え、その両手をゆっくりと体側に戻しながら肩から指先まで振動を伝えます。かなり強い呼気圧が必要ですが、喉に力が入らないように気を付けます。
全身の骨が響いたら、今度は四つん這いになって低い声で短いハミングを繰り返します。下腹部に腹圧がかかり、背中がアーチ状にぐーっと持ち上がります。ハミングでできたらアの母音で。
椅子の背もたれに両手を掛けて上体を床と水平にし、上下にバウンドさせながら声を出したり、片手で背もたれを掴んでもう片方の手を上に伸ばし、その手で背もたれを掴むように体側を伸ばしながら声を出したりするのも効果的です。必ず裏声で、短く切ったりロングトーンにしたりします。
壁があれば、壁にもたれかかって踝と腰と肩と頭を壁につけ、両手を上げて手の甲も壁に付け、壁にもたれたままスクワットや伸びをします。呼吸を止めないよう気を付けて。
体をほぐしたら唇や舌のストレッチもしましょう。即効性があるのはタングトリルとリップロール。無声でやったり、いろいろな音程でもやってみます。できれば軟口蓋のストレッチも。消毒した指で軟口蓋をマッサージしたり、顎関節の後ろに親指を突っ込んで、人差し指で頬骨を持ち上げたり。
こうしたことを15分ぐらいかけて丁寧にやると声が出やすくなり、呼気も音程も安定します。急がば回れ。お疲れが溜まっている方、どうぞお試しください。