合宿

2013年09月30日 | 日記
一昨日から昨日にかけて、小国の木魂館で合唱の合宿をしました。講師はM先生です。1日目の参加者は女性6名、2日目は男性2名と女性1名が合流して、「メサイア」の中から「For unto us a child is born」、「Glory to God」、「His yoke is easy」、「Hallelujah」の4曲を練習しました。
M先生の合唱のレッスンでは、最初にメンバーの一人一人に「子どもの頃歌った歌」を訊ね、即興的に伴奏を弾いて下さることがよくあります。世代差があるので出てくる歌は様々で、それを皆で一緒に歌うのです。私など、ふと思い浮かぶ歌は讃美歌が多いのですが、ミッションスクール出身の方やクリスチャンの方はご存じで、一緒に歌っているうちに皆さん何となく覚えて下さいます。今回はロケーションに誘われたのでしょうか、「おお牧場は緑」、「小さな木の実」、「里の秋」、「ふるさと」、「赤とんぼ」、「故郷の廃家」、「冬景色」、「365歩のマーチ」、「船頭小唄」、「夕焼け小焼け」、「赤とんぼ」、「旅愁」、「踊ろう楽しいポーレチケ」、「埴生の宿」などが飛び出しました。
こうして懐かしい歌を歌っているうちに、実は私たち誰もが膨大な歌のレパートリーを持っているのだと気づかされます。歌うことが人間にとっていかに自然な営みであるかも。自然にモチベーションが高まったところで、入念にストレッチをしていきます。足の指や膝の裏から舌のストレッチまで、つまり足先から頭部へという流れです。そして曲の音とりに入ります。1曲目の「For unto us a child is born」はキリストの降誕を喜ぶ歌ですが、M先生は一人一人に「今までで一番嬉しかったことは何ですか?」と訊かれ、「子どもの誕生」、「大学合格」、「就職した時のお祝い会」などと皆が答え終わると、「それらの喜びの何倍も大きい喜びなんだ、とイメージして下さい」とおっしゃいました。誰もが持つ世俗の喜びの経験を手掛かりにして宗教的な喜びのイメージを誘導されると、この16分音符の羅列は喜びに震える心を表しているんだと実感的に納得できます。
合唱指導にあたっては発声だけでなくイメージ喚起、音とり、ハーモニーやリズム、ポリフォニックな動きの確認など、やらなければならないことがたくさんあり、発声はヴォイストレーナー、音とりはパート練習、音楽づくりは指揮者が担当するという分業制が大勢だと思いますが、M先生は全体を俯瞰しながらすべての要素を網羅的に指導されるので、とても充実感があります。音とりも、一通り通した後で一人一人に「どこか確認しておきたい箇所はありますか?」と尋ねて下さり、各自の申告に従って部分練習をして下さるのですが、皆違ったところにウィークポイントを持っているので、こういう練習は効率的だと思います。
今回は個人レッスンも受けたいという方たちのためにも時間を作って下さいました。発声や指揮法のレッスンを受けて、皆さん「とても勉強になりました」とおっしゃっていました。
大自然の中で十分に時間をかけて思う存分合唱の練習ができるなんて、何という贅沢でしょう。思い切り心の洗濯をした気分で帰途に付きました。12月26日のクリスマスコンサート、どんなふうになるのかわかりませんが(笑)、少し楽しみになってきました。今回の合宿に参加できなかった方たちのために10月2日の夜にも練習が組まれました。今回の参加者も、都合のつく方は来られます。読者の皆様の中に参加ご希望の方がいらっしゃいましたら、ご一緒に歌いましょう。


アウフタクト

2013年09月28日 | 日記
今日から大学の新学期が始まりました(既に午前0時を回っているので、正確には昨日ですが)。今日はドイツ語の授業を担当している方の大学の日でした。夏休みの間にドイツ語を忘れてしまわないよう、私宛にドイツ語で5行程度の暑中見舞いメールを送る、というのを夏休みの宿題にしておいたのですが、一昨日、昨日とメールの集中砲火で(笑)、受け取りましたという印の「Danke schoen(ありがとう)」メールを返すのに大わらわでした。
さて、今日はまだ9月ですが「10月の歌」としてブラームスの子守歌のCDを聴きました。この歌は、私が受け持つ1年生のクラスでは毎年必ず紹介することにしていますが、今日の1限のクラスには、この曲を知っているという人が3割ほどいました。こんなに多いのは初めてです。そこで、CDを聴かせた後で「この曲、何拍子?」と訊くと「3拍子!」と即座に答えが帰って来ました。「それじゃ、何拍めから始まってる?」と訊くと、また「3拍め!」と即答。「stimmt(ご名答)!こんなふうに、1拍めから始まっていない曲のことを何と言うか知ってる?」と訊くと、これもすぐさま「弱起!」と返って来ました。「弱起のことをドイツ語でAuftaktと言うのよ。直訳すれば上拍。指揮をしてみるとわかるけど、強拍である1拍めは手を振り下ろすでしょ、それに対して弱拍は上へ行くから上拍。」と言うと、分かったような分からないような顔つきです。
後で思い返してみて一つの混乱に気づきました。「弱起」と「弱拍」は厳密には同じではありませんね。弱拍から始まる曲のことを弱起と言うのです。アウフタクト(上拍)とは厳密には弱拍のことですが、「アウフタクト(弱拍)から始まる楽曲」を縮めて「アウフタクトの曲(=弱起の曲)」と言っているわけです。そう説明すべきでした。
合唱の指揮をしていると、リズムとかテンポ感というものは「弱い」、「強い」という言い方では表しきれないように思えます。強拍で手を振り下ろして止めると音楽が重くなり、テンポが遅くなりますし、振り下ろすより持ち上げる方により多くのエネルギーが必要です。
明日は小国での合宿です。M先生の合唱のレッスンにはいろんなヒントが満載なので、アウフタクトの振り方も勉強できればと思います。

一つの思い出

2013年09月25日 | 日記
夏の疲れか、昨日はPCに向かうのが億劫で、一日遅れの更新となりました。
お彼岸も過ぎ、いよいよ「芸術の秋」の到来です。今日は県南に出張レッスンに来ていますが、生徒さん達もそれぞれにリサイタルや合唱のコンサートなどを控えていらっしゃいます。ここは有り難いことにレッスン会場のスペースが広く、寝ころんだり歩いたりのウォーミングアップが思う存分できるお陰で、とても効率よくレッスンができます。今日は、仰向けに寝て両足を上げ、開脚と両足の交差を繰り返すエクササイズをしました。内転筋エクササイズの応用編です。四つん這いになって背中を盛り上げるようにしながらスタッカートをしたり、壁に張り付いて両手を上げ、スクワットをしたり、椅子に深く腰掛けて、背もたれを腰で押すようにしながら低いうなり声を出したり、片足ずつドスンと踏みしめながら声を出し、足先まで骨伝導を確認したり。スペースが必要なエクササイズを縦横に駆使しながらウォーミングアップをしたせいか、皆さん本当に伸びやかな声が出ました。
さて、時節柄でしょうか、今日はお二人の方が小林秀雄の「落葉松」を持ってこられましたが、この曲はおそらく日本歌曲の中でも最も人気のある曲の一つでしょう。私も高校時代に女声合唱用に編曲されたものを歌った他、だいぶ前にソロでも歌いましたが、その時初めてこの曲を聴いたという生徒さんが、後日「あの曲を聴いて客席で号泣しました」とおっしゃっていました。よほど琴線に響いたのでしょう。非常にウエットな曲ですよね。私は若い頃はかなりウエットな性格だったので、同質のものどうしが反発しあうのか、このウエットさがちょっと苦手でしたが、年とともにだんだんドライになってきたせいで(?)最近は素直に「いい曲だなあ」と思えるようになりました。
高校時代、コーラス部でちょうど小林先生の作品を練習している時に、突然その小林先生ご本人が音楽室を訪ねてこられたことがありました。声楽家の奥様がうちの高校の卒業生だとおっしゃっていました。その時小林先生を囲んでみんなで一緒に撮った写真が私のアルバムにも残っています。皆でお礼状を書いたら、100人ほどもいた部員のために、一人一人に違ったメッセージとサインを書いた色紙を小包で送って下さいました。なるほどやっぱり「落葉松」の作曲者だ、と、その時感じ入ったのを覚えています。デリケートでお優しく、若い女性がお好き(笑)な方なんだな、と思ったものです。そんなことを回想しながら「落葉松」を聴くと、より一層味わいが増すような気がします。良い思い出を持った幸せを噛み締めた日でした。

呼気圧

2013年09月22日 | 日記
呼気の勢いが足りないと呼気が副鼻腔(蝶形骨洞)まで届きません。よく響く声を出すためには、強く速く高く呼気を飛ばすことが基本中の基本です。
ところで、話し声のパワーアップのために入門される方が最近なぜか急に増えたのですが、この方たちのレッスンをしていると、合唱でも声楽でもカラオケでも、とにかく歌を日常的に歌っている方はかなり呼気圧が強いのだと再認識させられます。普段歌を歌う習慣がある方でも、身体や心が不調の時は呼気圧が落ち、呼気を強く吹き上げるエクササイズがかなりの重労働に感じられますが、それでも歌う習慣のない方と比べると雲泥の差です。
私はレッスンではいつも、肋骨と骨盤の間(ウエストの部分)に拳を突っ込んで軽く胸を張ったまま、その拳を弾き飛ばすように前歯の間から強くスーッと音をたてて息を吐くエクササイズをやって頂きますが、「軽く胸を張ったまま息を吐く」ことは意外に難しいようです。声を出さずに呼気だけでやるエクササイズではできても、実際にコンコーネなどを歌って頂くと、フレーズの終わり頃には胸郭が閉じる方向に引っ張られていきます。それに抵抗しようとすると腰がふらつき、身もだえしながら声を出す感じになるのです。下行音型の時も胸が閉じる方向に動きがちです。
ウエストのあたりの筋力が弱いと、猫背になり(=胸郭が狭くなり=息が浅くなり)、顎が前に出(=息の通り道が曲がり)、膝が開き(=内転筋が緩み)、立ち姿が崩れてしまいます。呼気圧(腹圧)を強めるために下腹を引くというやり方もありますが、下腹を引くことを意識し過ぎると力みが生じやすいので、今のところ私はウエストを拳で支える方法を取っています。あくびをする時、即ち吸気を取り込む時もウエスト部分は膨らみます。つまり、歌う時は常に身体を外側へと拡げるよう意識するわけです。
昨日と今日で計5人の方が「話し声のためのヴォイトレ」に来られましたが、改めてつくづくと「呼気圧を強くする」ことと「身体を拡げる」ことの重要さを痛感しました。呼気のスピードが遅いと蝶形骨に届かず、喉のあたりに息がまとわりつきます。これが声帯結節やポリープの原因になり、息モレの原因ともなります。トランペットのマウスピースを「胸を軽く張って」強く吹き鳴らし、呼気の時ウエストまわりにどれぐらい負荷がかかるかを体感的に知ると良いですね。

俳句

2013年09月20日 | 日記
ようやくパソコンが戻って来ました。マウスの不具合はなおったものの本体にも異常があり、いつまたクラッシュするかわからないので、速やかにデータのバックアップを取るようにとのことです。購入して5年のパソコンですが、やはり寿命でしょうか。
さて、今日は歌から離れた話題を。
下手な俳句を詠み始めて10年ほどになります。2つの句会に参加しています。どちらも月1回ですが、片方の句会にはほぼ皆勤で出席しているものの、もう1つの句会にはごくたまにしか参加できません。その、たまにしか参加できない方の句会で「100回記念句集」を出すことになり、11人のメンバーが一人厳選(?)30句ずつ持ち寄りました。今日、できあがった句集を受け取り、読んでみると...それぞれの個性が遺憾なく発揮されています。社会の第一線で活躍している方たちの句は切り口鮮やかでダイナミック、主婦業の方たちはスタイルの完成度が高く滋味あふれる句、学者の方々の句はさすがに高踏的。その中で、出席率も存在感も「付け足し」のような私の句は、やっぱり何ともスケールが小さく迫力に欠けます。でも、一つ一つ読んでいくと、その句を作った時のことがありありと思い出されます。日記代わりに俳句、というのもアリですね。
昨年の初夏、くみさんがドイツから子連れで一時帰国された時、大学のキャンパスでおしゃべりを楽しんだことがありましたが、その時のことを詠んだ句を今回の句集に入れました。
緑陰やバギーに眠る異国の児
今住んでいるマンションの裏手に民家が建築中だった時の句も、読み返してみると当時の状況や気分をありありと思い出します。
槌音の冴えて響くや寒の朝
今小6の姪がまだ幼稚園に通っていた頃、一緒に散歩した時の句もあります。
小(ち)さき手の指さす先の天道虫
毎月出張レッスンに通っている県外の教会は、周りが自然いっぱいで、ウグイスの時期にはひっきりなしに啼き続けています。
山里や囀(さえず)り頻(しき)りきりもなし
独身中年女性の気ままさ(自堕落さ?)が透けて見える句も。
夏掛けのかろさ愉(たの)しき独り寝(いね)
イメージを言葉にして紡ぎ出すのは、楽しくもありますが骨の折れる作業でもあり、句作を楽しむには心の余裕が必要です。普段ドタバタしている私は、句会が少しばかり心の負担になることもあります。事前に作る余裕がなく、句会の場で即興的に捻り出すこともしばしば。それでも、自分の句が活字になるのは嬉しいものですね。多少無理をしてでもこういう時間を確保することは、人生の味わいを深めるには大事なことかもしれません。皆様も俳句、いかがですか(笑)。