年の瀬も押し詰まった12月27日、今年最後のイヴェントである東北復興支援チャリティコンサートが無事終わりました。
最初にM先生のオルガン演奏によるクリスマスキャロルを2曲、ア・カペラの古い合唱曲を1曲、そして小林秀雄の「飛騨高原の早春」と「落葉松」を歌って前半を終え、後半は昨年同様、このコンサートの会場であるルーテル教会のS牧師による聖書朗読を挟みながらの「メサイア」抜粋演奏でした。
私たちの合唱は月1回1時間の練習で本番を迎えているので、当日は薄氷を踏む思いですが、主催者で指導者のM先生には大きな見通しと信頼がおありのようで、どんな状況でも一言も不安を口に出されず、とにかくその場その時における最善を目指して根気よく、的確に熱く指導されます。その姿勢には私も大いに学ぶものがあります。今回は教会のオルガンの位置が会堂右後方に移動されていて、祭壇左手のアップライトピアノと遠く離れてしまっていました。この配置での演奏はオルガニストもピアニストも相当に骨が折れたでしょうが、指揮者のM先生のご苦労はそれ以上だったと思います。加えて、私を含め体調不良のメンバーが数名いて、前日リハでは合唱もかなり危なっかしく、最初はどうなることかと思いました。しかし「火事場の馬鹿力」で、ア・カペラの曲も小林作品も練習より数倍良い出来で、歌いながらちょっと感動してしまいました。
第1部の後、M先生が被災地の現状を聴衆の皆様に少しお話され、休憩をはさんで後半はいよいよ「メサイア」です。抜粋とはいえ量的には昨年の倍ぐらいあったと思います。メサイアは素晴らしい作品ですから、これを歌うことはメンバー一同にとって大きな喜びではありますが、腰痛・咳・五十肩のトリプルパンチからようやく脱却したばかりの私にとって、6曲の合唱曲と7曲のソプラノソロを併せてぶっ通しで歌うのは体力的にかなりの負担で、途中から姿勢を保つのもしんどくなってきました。しかし、お客様の雰囲気が非常に温かく、その空気に支えられて何とか最後まで歌いきることができました。最後の「ハレルヤ」合唱は昨年同様、M先生が「皆様もどうぞご一緒に」と呼びかけ、客席からお2人の女性が出てきて私たちの合唱に加わって下さいました。他のお客様も客席から唱和して下さってのグランドフィナーレとなり、演奏後、S牧師のお祈りで幕となりました。音楽会で皆で心を合わせて祈るということはあまりないことかもしれませんが、非信徒のお客様が「とても有意義だった」と感想を寄せて下さいました。高揚した心が祈りによって鎮められ、深い余韻とともにコンサートは終了しました。
会場にはくみさんの義理の妹さんと、くみさんの2人の姪御さんの姿も見えました。昨年夏の合宿でくみさんも一緒にメサイアを練習したことが思い出されました。今日もくみさんはきっと私たちと一緒に歌ってくれていたと思います。終演後、M先生と3人をお引き合わせすることもできました。くみさんも喜んでくれたことでしょう。
終演後の打ち上げも和やかに盛り上がり、11時過ぎに散会。そして翌28日、午前中の用事を済ませてJRで県南へ向かいました。Nさんが歌のコンサートをされるのです。Nさんは旅館の女将さんで、還暦を機に、旅館に併設のホールで毎年コンサートを開催しておられます。毎月のレッスンもここでさせて頂いています。理解あるご家族に支えられ、多忙な毎日の隙間時間にコツコツと練習を積み重ねられるお姿にはいつも頭が下がる思いです。今年は、前半に日本歌曲、イタリア近代歌曲、ドイツリート、そして後半は「いつか歌ってみたい」とおっしゃっていたシューマンの連作歌曲「女の愛と生涯」全8曲にチャレンジされました。2週間前のレッスンでは絶好調だったNさん、このところの寒さと忙しさも相俟って疲労の蓄積が限界に達したようで、開場30分ほど前に私が会場入りした時にはかなり辛そうなご様子でしたが、少しだけ発声の調整をしていざ開演。固定客の皆さんが温かく見守られる中、Nさんの美しい歌声が響きます。女将というお立場の宿命で、万全のコンディションで本番に臨むことはなかなか難しいNさんですが、歌声を聴いていると、与えられた環境の中で精一杯の努力を重ね、歌を愛する気持ちをこうしてお客様と分かち合おうとされる意欲こそ、演奏者として最も大切な資質なのだと教えられる思いがします。時折ハッとするほど伸びやかな声が響き、じっと聴き入っているお客様から感嘆の吐息が漏れます。心を尽くして歌いおさめられた後、アンコールに歌われた「落葉松」の日本語の美しさは出色でした。
終演後はお身内や親しいご友人たちとの楽しい宴が設けられ、私もお招きにあずかりました。Nさんのお身内はお互いとても仲が良く、皆でNさんの歌を理解し、支えておられます。この素晴らしい応援団とNさんのお人柄との相関関係は部外者の私にもよくわかります。何か打ち込むものを持っている人にとって、身近な人たちの応援がどれほど心強いか。お互いに対する深い信頼がなければ応援してもらうことはできません。Nさんのこれまでの生き方がここに反映しているのだと思います。
M先生とNさんと私の共通項は「制約の中での音楽活動」です。世界をまたにかけているM先生とてそうなのです。しかし、気持ち次第て制約は「くびき」ではなくチャレンジの踏み台となります。すべてが意のままになる身の上では却って頑張る意欲が湧いてこないものですよね。そう思えば、自分の置かれている環境にもっと感謝しなくては、という気持ちにもなります。Nさん、素敵な演奏を有難うございました。どうもお疲れ様でした!
最初にM先生のオルガン演奏によるクリスマスキャロルを2曲、ア・カペラの古い合唱曲を1曲、そして小林秀雄の「飛騨高原の早春」と「落葉松」を歌って前半を終え、後半は昨年同様、このコンサートの会場であるルーテル教会のS牧師による聖書朗読を挟みながらの「メサイア」抜粋演奏でした。
私たちの合唱は月1回1時間の練習で本番を迎えているので、当日は薄氷を踏む思いですが、主催者で指導者のM先生には大きな見通しと信頼がおありのようで、どんな状況でも一言も不安を口に出されず、とにかくその場その時における最善を目指して根気よく、的確に熱く指導されます。その姿勢には私も大いに学ぶものがあります。今回は教会のオルガンの位置が会堂右後方に移動されていて、祭壇左手のアップライトピアノと遠く離れてしまっていました。この配置での演奏はオルガニストもピアニストも相当に骨が折れたでしょうが、指揮者のM先生のご苦労はそれ以上だったと思います。加えて、私を含め体調不良のメンバーが数名いて、前日リハでは合唱もかなり危なっかしく、最初はどうなることかと思いました。しかし「火事場の馬鹿力」で、ア・カペラの曲も小林作品も練習より数倍良い出来で、歌いながらちょっと感動してしまいました。
第1部の後、M先生が被災地の現状を聴衆の皆様に少しお話され、休憩をはさんで後半はいよいよ「メサイア」です。抜粋とはいえ量的には昨年の倍ぐらいあったと思います。メサイアは素晴らしい作品ですから、これを歌うことはメンバー一同にとって大きな喜びではありますが、腰痛・咳・五十肩のトリプルパンチからようやく脱却したばかりの私にとって、6曲の合唱曲と7曲のソプラノソロを併せてぶっ通しで歌うのは体力的にかなりの負担で、途中から姿勢を保つのもしんどくなってきました。しかし、お客様の雰囲気が非常に温かく、その空気に支えられて何とか最後まで歌いきることができました。最後の「ハレルヤ」合唱は昨年同様、M先生が「皆様もどうぞご一緒に」と呼びかけ、客席からお2人の女性が出てきて私たちの合唱に加わって下さいました。他のお客様も客席から唱和して下さってのグランドフィナーレとなり、演奏後、S牧師のお祈りで幕となりました。音楽会で皆で心を合わせて祈るということはあまりないことかもしれませんが、非信徒のお客様が「とても有意義だった」と感想を寄せて下さいました。高揚した心が祈りによって鎮められ、深い余韻とともにコンサートは終了しました。
会場にはくみさんの義理の妹さんと、くみさんの2人の姪御さんの姿も見えました。昨年夏の合宿でくみさんも一緒にメサイアを練習したことが思い出されました。今日もくみさんはきっと私たちと一緒に歌ってくれていたと思います。終演後、M先生と3人をお引き合わせすることもできました。くみさんも喜んでくれたことでしょう。
終演後の打ち上げも和やかに盛り上がり、11時過ぎに散会。そして翌28日、午前中の用事を済ませてJRで県南へ向かいました。Nさんが歌のコンサートをされるのです。Nさんは旅館の女将さんで、還暦を機に、旅館に併設のホールで毎年コンサートを開催しておられます。毎月のレッスンもここでさせて頂いています。理解あるご家族に支えられ、多忙な毎日の隙間時間にコツコツと練習を積み重ねられるお姿にはいつも頭が下がる思いです。今年は、前半に日本歌曲、イタリア近代歌曲、ドイツリート、そして後半は「いつか歌ってみたい」とおっしゃっていたシューマンの連作歌曲「女の愛と生涯」全8曲にチャレンジされました。2週間前のレッスンでは絶好調だったNさん、このところの寒さと忙しさも相俟って疲労の蓄積が限界に達したようで、開場30分ほど前に私が会場入りした時にはかなり辛そうなご様子でしたが、少しだけ発声の調整をしていざ開演。固定客の皆さんが温かく見守られる中、Nさんの美しい歌声が響きます。女将というお立場の宿命で、万全のコンディションで本番に臨むことはなかなか難しいNさんですが、歌声を聴いていると、与えられた環境の中で精一杯の努力を重ね、歌を愛する気持ちをこうしてお客様と分かち合おうとされる意欲こそ、演奏者として最も大切な資質なのだと教えられる思いがします。時折ハッとするほど伸びやかな声が響き、じっと聴き入っているお客様から感嘆の吐息が漏れます。心を尽くして歌いおさめられた後、アンコールに歌われた「落葉松」の日本語の美しさは出色でした。
終演後はお身内や親しいご友人たちとの楽しい宴が設けられ、私もお招きにあずかりました。Nさんのお身内はお互いとても仲が良く、皆でNさんの歌を理解し、支えておられます。この素晴らしい応援団とNさんのお人柄との相関関係は部外者の私にもよくわかります。何か打ち込むものを持っている人にとって、身近な人たちの応援がどれほど心強いか。お互いに対する深い信頼がなければ応援してもらうことはできません。Nさんのこれまでの生き方がここに反映しているのだと思います。
M先生とNさんと私の共通項は「制約の中での音楽活動」です。世界をまたにかけているM先生とてそうなのです。しかし、気持ち次第て制約は「くびき」ではなくチャレンジの踏み台となります。すべてが意のままになる身の上では却って頑張る意欲が湧いてこないものですよね。そう思えば、自分の置かれている環境にもっと感謝しなくては、という気持ちにもなります。Nさん、素敵な演奏を有難うございました。どうもお疲れ様でした!