発声セミナーのご案内

2014年02月27日 | 日記
昨日は県南に出張レッスンに行ってきました。6名の方のレッスンをしましたが、皆さんとても反応が良く、みるみるうちに声が変わっていくのにびっくりしました。ここはもともとレベルの高い方が揃っているのですが、これはやはり先日のW先生のレッスンが効いているのだと思います。自分が勉強した分だけ如実に反映するのですね。嬉しいです。持ってこられる曲も素敵なものが多く、こういう生徒さん達に囲まれているとこちらのモチベーションも上がります。
ところで、3月2日(日)はパレアまつりで発声セミナーを開講します。午後2時からのコースと3時半からのコースがありますが、内容は同じです。場所は鶴屋百貨店東館10階パレアの音楽室P。参加費1,000円。飛び込み参加歓迎です。ご来場をお待ちしています。
昨日はPM2.5の濃度がかなり高かったようで、アレルギー症状なのか、昨日から今日にかけて目が痒いのと喉が腫れぼったいのと内臓が重い(?)ので妙に調子が悪くて困っています。他のものなら多少の防衛手段がありますが、空気ばかりは防ぎようがないので、免疫力を高めるしかありません。疲れをためないようにしないといけませんね。皆様も体調にご注意下さい。

イとオ

2014年02月25日 | 日記
母音の中でも「イ」は、平べったい金属的な声になりやすい母音です。鼻筋を引き上げ、舌先は下の前歯に軽くつけ、舌の両側を奥歯に軽くつけます。口角をあまり横に引き過ぎないようにして、横隔膜を下げ、胸郭を少し開いて吸気筋を使いながら、息をなるべく高く取って声にします。側頭骨(耳の後ろの骨)に響くように息を後ろに回します。
「オ」は下あごに力が入りやすく、息も下に落ちやすい母音です。下あごは下げ過ぎず、力を抜き、やはり鼻筋を引き上げて舌先を下の前歯につけ、喉の奥を縦に開け、額で発音するようなイメージで声を出します。舌根が硬いと舌が奥へ引っ込んで喉の奥が塞がるので、鏡を見ながら練習するといいですね。そして、この「オ」と同じフォームで口先をすぼめたものが「ウ」です。西欧語の「ウ」は日本語の「ウ」とは全く別物で、軟口蓋が高く上がり、喉の奥も開いた音です。
ところで、イの母音は側頭骨に響きますが、側頭骨は鱗部・岩様部・鼓室の3つの部位に分かれていて、さらに岩様部は錐体と乳突部に分かれています。耳の後ろのゴリゴリした出っ張りが乳突部です。この乳突部の内部は乳突洞という空洞で、蜂の巣状の小さな穴がたくさんあるので声が響くのです。そして、深く窪んだ内部に通っているS状洞溝という太いパイプが後頭骨につながっているので、側頭骨が響けば後頭部も響く、という仕組みになっています。
「声は後ろに響かせる」というのは声楽発声の大原則。息が後ろへ回らないと側頭骨が鳴らず、後頭骨に響きが伝わらないので背後の空間が鳴らないわけです。耳の後ろの骨を触りながら声を出してみて、指先にビリビリという振動が伝わってくれば側頭骨が共鳴している証拠。どうぞお試し下さい。

早春コンサート

2014年02月23日 | 日記
熊本モーツァルト協会の例会コンサートが無事終わりました。この数日は極力外出を控えて体力の温存に努めていたのですが、昨夜ふと鏡を見ると目の上と下が真っ黒。やはり疲れているのでしょうね。早めに就寝しましたが、片側顔面けいれんで何度か目が覚めました。それでも今朝はすっきりさわやかに目覚めることができ、神に感謝の心境。
午前中に美容院へ行き、お昼前に会場入りしてリハーサルをしましたが、今日はPM2.5の濃度がかなり高かったようで、目は痒いし、痰はからむし変な咳も出るしで声帯がピタッと閉じません。この状態で歌おうとするとかなり筋力を使います。もう一人のソプラノMさんも同じことを言っていました。そのMさんのリハーサルを聴いて、伴奏のSさんの弾かれるシューベルト歌曲の繊細で温かい前奏に陶然となりました。素朴でシンプルな曲なのに、ぐっと引き込まれます。前奏だけで涙がこみ上げてきました。
さて、自分のリハーサルも終え、いよいよ開演です。第1ステージはモーツァルト歌曲。Mさんが4曲歌われた後に私が2曲歌います。Mさんはウィーンで勉強された若手で、つややかな声をお持ちです。好感度の高い素直な歌いぶりでした。私が歌う「すみれ」と「夕べの想い」はどちらも長めの曲で、「すみれ」はドラマ性があり、「夕べの想い」は大規模ですが淡々とした曲です。1曲目はどうしてもやや硬めになってしまいますが、まあ想定内。しかし2曲目の途中で異変が起こりました(笑)。鼻から喉に粘液が落ちてきて噎せそうになったのです。この曲は悪く言えばだらだらと長く、切れ目があるようでないので、ちょっと咳払いをするということができません。曲想表現に影響が出ない程度に声量を絞ったり、予定外のところで何ヶ所かブレスを取ったりしてようやく最後まで漕ぎ着けましたが、もともと長い曲がさらに長く感じられました。
第2ステージはオペラ「フィガロの結婚」からの抜粋で、3人がそれぞれ1曲ずつアリアを歌い、Mさんと私は二重唱もしました。若いMさんがスザンナを歌うので、必然的に私は伯爵夫人です。しかし、この役は本来は私の声のキャラではなく、今日歌う「手紙の二重唱」も今までスザンナ役ばかり歌ってきたので、ついスザンナのパートを歌いそうになります。気をつけてはいたのですが、やはり途中で事故が起きました。伯爵夫人のメロディをスザンナの歌詞で歌ってしまったのです(爆)。動揺したのか単にぼんやりしていたのか、この後は上手(かみて)に捌けると打ち合わせていたのに下手(しもて)に退場してしまいました(笑)。
休憩を挟んで第3ステージはバリトンのYさんとソプラノのMさんのドイツリート。そして最後の第4ステージはエレクトーン伴奏で3人が1曲ずつオペラアリアを歌います。私はワーグナーです。1曲だけにしてもらって本当によかった。この1曲だけでもヘロヘロでした。最後にバリトンのYさんと歌った「ドン・ジョヴァンニ」の中の有名な二重唱では、ちょっとばかり振付をして芝居っ気を出しましたが、たくましいプルプルの二の腕が露わになるドレスを着た私と190㎝の長身ながら60代のYさんが、おぼこ娘と好色漢を演じるという、かなり無理のある設定でした(笑)。まあ、そこはご愛嬌ということで。
アンコール代わりに、会場のお客様と一緒にウェルナーの「野ばら」を歌って終演しました。知人が「最初は会場の雰囲気が少し冷たかったけれど、後半どんどん温かくなってきて、とってもいい空気感でしたよ」と言ってくれました。よかった!
このような会に出演させて頂けて本当に有り難く、光栄でもありました。慰労会で協会の方たちが口々に「ヴァラエティに富んだプログラミングで楽しい時間でした」と言われたことも嬉しかったのですが、私は協会の皆様に深謝しつつも「本音を言えば、モーツァルトとワーグナーという組み合わせは声楽的には大変な暴挙で、オファーを頂いてから今日まで約1年間ワーグナーのことが片時も頭から離れませんでした。こんな機会でもなければ一生歌うことはなかったワーグナーですから、その意味ではとてもよい経験をさせて頂きましたが、もう十分ですので、次の時はもっと軽いものを歌わせて下さい」と言わずにはいられませんでした(笑)。
帰宅して荷物を片づけ、ほっと一息ついたら全身筋肉痛に襲われました。今日も早寝をすることにします(笑)。

明後日は本番

2014年02月21日 | 日記
昨年暮れからの長い不調を脱し、お陰様でやっと何とか歌えるところまで来ました。時は折しも冬季オリンピックの真っ最中。昨日の浅田真央選手の素晴らしい演技が世界中に感動を呼んでいるようですが、NHKの解説員が引用していたかつてのスター選手の言葉が心に残りました。「スポーツは最大限の努力をして勝つもの。しかし最大限の努力をして負けるのもスポーツ。大切なのは最大限の努力をすること」と。また、私が子供の頃、冬季オリンピックが開催されるたびにうちの父が札幌オリンピックで銅メダルだったジャネット・リンのことを話していましたが、その時誰が1位だったのか私は知りません(笑)。歴史に名を残すのは必ずしもトップに立った選手とは限らないという好例でしょうね。
テクニックと芸術性の両方が要求されるという点でフィギュアスケートは音楽の演奏と似ているので、数あるスポーツの中でも特に親近感を覚えるのですが、私がいたく心を動かされたのは、浅田選手がバンクーバーオリンピックの後スケート技術を根本から修正してきたことです。お姉さんの舞さんが「それは例えて言えば利き腕を右から左に変えるようなもの」と言っていましたが、この言葉の意味が私にはよくわかるような気がします。発声にも同じことが言えますから。
今日レッスンに来られたIさん、うちへ来られるようになってから発声の進境が著しく、今日も息のポジションが非常に高く、ぬけの良い素晴らしい声でウォーミングアップを終えました。そしていざ歌を歌い始めると...あんなに完璧に後ろに回っていた息が前に出てきてしまう。楽譜を見ながら歌うとなおさらです。息を前に吐かないようにして下さいね、と言うと「ああ、そうだった、歌に夢中になってすっかり忘れていた」と。夢中になればなるほど昔の癖が出てくるのです。長年声を前へ押し出す歌い方をしてこられたので、歌おうとすると反射的に呼気筋が優位に動いてしまうのでしょう。これはうちに来られるほとんどの生徒さんに共通の傾向です。声は後ろへ。息は足から背中を通って上へ。これは、完全に身につくまでは絶えず意識し続けている必要があります。
私も、歌っている最中にフッと集中が途切れるとアッという間に息が胸に落ちて苦しくなります。長いフレーズや下行音型は特に気をつけないといけません。明後日はモーツァルト協会の例会コンサート本番。モーツァルトの声楽作品は発声の試金石とよく言われます。真央ちゃんのセリフではありませんが、これまでやってきたことを信じて、今の自分に歌える最高の歌をお客様に聴いて頂けるよう、精一杯歌いたいと思います。

続・口の奥

2014年02月19日 | 日記
この頃どうも声の抜けがイマイチ良くないのと、今度の日曜日にモーツァルト協会で歌うことになっているモーツァルトの歌曲「すみれ」と「フィガロの結婚」の「手紙の二重唱」の中に、部分的にどうしても発声がうまくいかないところがあり、W先生のところにご相談に行ってきました。W先生は「すみれ」の冒頭3小節を歌ってみたところですぐに「ああ、口の奥が開いてない」とおっしゃいました。そして、いつも私が生徒さん達にしているように背後から頬骨を持ち上げて下さって、「左側が開いてないね」とおっしゃり、指を口の中に突っ込んで内側から開けるようにと言われました(先日この欄に書いたのと同じプロセスを辿っています(笑))。蝶形翼突鈎(軟口蓋の両端のゴリゴリ)の外側をしっかり拡げるようにと言われました。私はこれまで内側を拡げていましたので、ああ、外側なのかと目からウロコ。そして、耳の後ろの骨(側頭骨)に響くように、と(これも先日のブログに書きましたっけね)。上咽頭腔(目の後ろ)を開けておいて、篩骨(眉間の少し下)を緊張させ、息を足から背面に回すように(=息を吐き出さないように)するのです。文章で書くと長ったらしいですが、これらは一連の動きです。最初なかなかうまくいかなかたのですが、やっと息が後ろに回るようになり、声が顎から抜けました。できてしまうと本当にラクで気分爽快。「ちょっとしたことなのよねえ」とW先生もおっしゃる通りです。顎の力が抜けるためには、息が後ろから回ることが必須です。
もうひとつの「手紙の二重唱」は、私が歌う伯爵夫人のパートの冒頭の「che(ケ)」の発音がうまくいかなかったのですが、これも一声聴かれて「あ、口の奥の形が平べったくなってる。もっと縦っぽく、台形になるようにしてごらんなさい」と言われました。舌の両側は上の歯に付けていいですか、とお尋ねすると「そうね、いや、浮かした方がいいかも」と言われました。台形を保つには確かに舌を浮かした方が良いようです。途中の「questa(クエスタ)」という言葉も、「クよりエを上に持ってきて」と言われ、その通りにしようとするとやはり口の奥が台形になります。なーるほど。「canzonetta」という中音域の16分音符のところも、各音符でポンポンと息を上げるようにしてごらんなさい、と言われ、その通りにすると歌いやすくなりました。
伸ばす音で息を後ろへ持っていこうとするあまり少し顎が上がってしまったのですが、そうすると声帯の位置が変わるので、あまり上げ過ぎないようにして、息を下から後ろへ回して頭の後ろ3mぐらいのところに響かせるつもりで、とおっしゃいました。これは下半身の筋力がないとうまくいきません。普段から下半身の筋力アップに励んでいる甲斐あって、ちょっとふらつきますが何とかできるようになりました。
今回は、普段から生徒さんに言っていることを自分自身ができていなかったことがよくわかり、発声というものはわかったつもりでもちょっとずつズレていってしまうんだなあ、レスナーは常に勉強していないといけないなあ、と痛感させられました。また、今回の大きな収穫は「上咽頭腔」を開けることの大事さを再認識したことです。そういえば、イタリアに留学して、口を開けることを声帯を開くことだと思って喉を壊した方がいらっしゃる、という話も出ました。口を開けるとは上あごを上げること、と私はよく言っていますが、正確にいえば上咽頭腔を開けることなのだとW先生はおっしゃいます。解剖学も大事ですね。
話は変わりますが、W先生の門下生の発表会が来年2月2日に東京文化会館小ホールで行われることが正式に決まり、光栄にも私も出演させて頂けることになりました。W先生のお弟子さんたちは錚々たる方たちばかりなのでちょっと尻込みしましたが、「リートを歌う人は少ないから」と言われ、有り難く出演させて頂こうと決心しました。今年は私にとって年齢的に節目の年でもあります。今年は思い切ってできるだけW先生のところに通おうと思います。