発声セミナー終了

2013年03月30日 | 日記
第8回の健康発声セミナー(連続3回)は本日が最終回。前2回が記録的な人数だっただけに、今日ははたして何人来て下さるかと案じていましたが、入門編7人、応用編10人と今回もたくさんの方がご参加下さいました。
毎度同じことの繰り返しですが、リピーターさんもビギナーさんも基礎の大切さは同じですから、いつもの如くストレッチから始めました。普段いかに体が縮んでいるかを実感して頂くのが第一段階です。ほんの数分のストレッチですが、皆さんふーっと大きなため息をつかれます。ここから呼吸法の練習。椅子に腰かけて吸気の反射作用の練習、そしてマットレスを使って横隔膜とその拮抗筋を鍛えるエクササイズに、骨盤底筋エクササイズも導入。次は発声器官のレクチャーに続き、声帯を閉じる練習、喉頭蓋を開ける練習、裏声の練習、声帯を傷めない地声の出し方の練習、さらに舌根をゆるめる練習、口の奥を開ける練習。こうして体系的に進めて行きますが、すべてのエクササイズで体の筋肉を動員しているので相当に体力を使います。
一時間の後、数分間の休憩を挟んで応用編では歌の練習をしますが、その前にまず舌と唇、表情筋などのストレッチを念入りにやります。舌をぐるぐる回したりばたばた動かしたりしてストレッチ。口を思い切り横に引っ張り、次に縦にすぼめて「イオイオ」を繰り返す練習。これがなかなか大変で、鏡を見ながらやって頂くと口の形と発音がズレているのがわかって大笑いになります。「アエイオウ」の順で発音の練習もやり、ウの時に口の奥が閉まらないよう気をつけて頂きます。これだけの準備をしておいて、「花のまわりで」を教材として歌の練習をしました。この曲は最初にスタッカートが出てきます。「大笑い」を声楽的に変換してスタッカートにしますが、その時息を吐かないように気をつけます。胸を張ったまま高笑いをすると横隔膜が盛大に動いてスタッカートがうまくできます。「まわれ」という歌詞で音を伸ばす時には、エの発音で舌の両側面を奥歯にくっつけるように持ちあげて息モレを防ぎます。
途中、頭部共鳴を体得して頂くため、マットレスに頭頂部をつけて「でんぐり返り」の体勢になり、腰をしっかり使いながら高音を出して頂きました。喉頭蓋が閉まるとむせるので、喉の奥はよく開けて。体勢を戻してからもう一度歌います。頭によく響く声になっています。共鳴の練習のついでに、「イ」の発音で側頭骨に響かせる練習もしました。
10人とは思えない豊かな響きの歌声になったので、低音を付けて2部合唱にしてみました。低音部は地声をミックスしないと響かないので、その時息が声帯に溜まらないよう高速で頭上に抜きます。その時、腰をとても使います。部分的に練習をしながら前後につなげていきます。最後には高らかな2部合唱が響きました。
今後のためにアンケートをお願いしたところ、「わかりやすくてためになりました」、「いかに筋肉が固いか思い知りました」、「楽しいです」、「とてもためになるが、続けないと忘れてしまいます」などのコメントが寄せられました。皆様のニーズに多少なりともお応えできたようで嬉しく思いました。次回のセミナーは夏休みです。来週から新年度。また新たな出会いが楽しみです。

2013年03月28日 | 日記
今日は、謡曲をやっている方たちのグループに呼吸法をお教えする機会を頂きました。謡や仕舞を教えている友人が「腹式呼吸を教えるのが難しい」と言うので、少しばかりお手伝いさせて頂くことになったのです。
事前にW先生に相談すると、「謡もおそらく喉は使ってないと思うのよ。でも、声楽と違って頭には共鳴させないわよね。多分息を胸に落とすんだと思うわ」とおっしゃいました。まあ、ともかく呼吸の原理をレクチャーして、あとは成行きで私にできる範囲のことをしようと思い、いつものセミナーのように資料を作って行きました。
最初に胸式呼吸、腹式呼吸の生理学的な定義を説明した後、大笑いをしたりあくびをしたりして横隔膜の動きを意識する練習、背筋や側筋での「息の支え」(拮抗筋を使って横隔膜の戻りを抑制すること)の練習などをやりました。床にマットを敷いて仰向けになり、背中の浮いたところを床にくっつけるように息を吐く練習、椅子に腰かけて足の裏で床に抵抗しながら息を吐く練習、骨伝導や、反射的に吸気を取り込む練習などもやりました。いろいろなアプローチで呼吸筋の活性化を図っていくと、ベテランの方たちは「今まで無意識にやっていたことが意識化できました」とおっしゃり、ある男性は「私はヘルニアで腰の筋肉が弱いんですが、寝てやるエクササイズは腰筋のトレーニングにすごくよさそうなので、これから毎日やります」とおっしゃいました。皆さんとても喜んで下さって、呼吸は体を使うすべての技芸に通じる共通項だと改めて思いました。
重心が少し高い方がいらしたので、試しに骨盤底筋エクササイズをやってみたところ、重心がぐっと下がって安定し、肩が上がる癖が取れました。「下半身をこんなに使うんですね」とのご感想。我が友人は、このエクササイズが仕舞のすり足に通じると言っていました。そう言えば私、この数日、まるでマラソンの後のように脛や腿の筋肉が凝っているのですが、考えてみたら先週の土曜日の発声セミナー、日曜日のオハイエくまもと、月曜日の福祉サービス事業所のヴォイトレ、昨日の県南への出張レッスンと、大人数を相手に奮闘が続いています。こんなに足に来るんだなあと今更ながら再認識。呼吸も発声も下半身がちゃんと使えるかどうかが決め手ですね。

花見

2013年03月26日 | 日記
予想より早く桜が満開になってしまったので、毎年恒例だった熊大北キャンパスでのお花見をする時間が今年は取れそうにありません。そこで昨日、お弁当を作って小学生の姪たちと一緒にほんの1時間ほど花岡山に行ってきました。お天気もよく、仏舎利塔の前はたくさんのお花見客で賑わっていました。桜ってどうしてこんなにきれいなんでしょうね。普段は目立たない木だけに、花が咲くと「あら、あなたも桜だったのね」とつい呼びかけてしまいます(笑)。
今まで見た中で最も見ごたえのあった桜は、世界文化遺産に登録されている醍醐寺の桜です。10年以上前、春休みに1週間ほどウィーンに旅行した折、関空発着だったので帰りに伏見まで足をのばしました。4月の半ばにさしかかっていましたが、さすがに「醍醐の花見」で有名なだけあってそれはそれはみごとな光景でした。散りかけの桜があんなにあでやかだとは知りませんでした。醍醐寺は笠取山の全山が寺域になっています。時間もあまりなかったので山麓の下醍醐だけしか見られませんでしたが、その美しさにすっかり酔いしれて帰ってきました。
昨日の花岡山の桜は淡く優しく、ペンキ塗り替え中の仏舎利塔の白さとよくマッチしていました。束の間の花見を楽しみ、その足で福祉サービス事業所のヴォイトレへ。3月はユーミンの「卒業写真」を練習しましたが、「来月は何にしましょうか?」と言うと、すぐに「森山直太朗の「さくら」がいいです!」との声が上がりました。ベストチョイスですね。
今、市民病院に医療交流でドイツ人のドクターや看護師さんたちが来られています。ちょっとしたご縁があって今晩の懇親会に私も参加させて頂いたのですが、彼らも日本の桜の美しさを絶賛していました。来週京都方面に旅行されるそうで、「桜のきれいなお寺はどこですか?」と訊かれたので醍醐寺を強くお勧めしておきました。
余談ですが、この懇親会に参加していた市民病院のドクターたちの中に、私がドイツ語の教師になって初めて担当した医学部のクラスにいた男子学生がいました(今は研修医です)。彼に「先生の授業は1年で教科書一冊終わってしまったんですよね。ムチャクチャ進度が速くて大変でした」と言われました。初年度は私も勝手がわからず、1年で初級文法の教科書1冊分を終えるものだと思っていたのです。苦労をかけてしまったことを丁重にお詫びしておきました(笑)。
さて、桜が散る頃にはヴォイストレーナーとドイツ語講師の「2足のわらじ生活」の再スタートです。体力気力ともに充実させて新年度に臨みたいと思います。

イヴェント2つ

2013年03月24日 | 日記
昨日は連続発声セミナーの2回目、今日はオハイエくまもと、春休みのヤマとも言うべき2日続けてのイヴェントでした。今日は心配された雨も何とか持ちこたえ、野外ステージもつつがなく進行したことと思います。
昨日の発声セミナーは入門編、応用編各9名ずつと、前回に引き続き盛況でした。アシスタントのSさんが「それほど宣伝もしていないのに、どうして今回はこんなに多いんでしょうね?」と不思議がっていましたが、本当に嬉しい限りです。前回から続けてご参加の方も多かったので、前回とは少し違うエクササイズを導入しました。一つはマットレスに仰向けに寝て頂いて、息を強く吐きながら背中の隙間をつぶしてマットレスに押し付ける練習、もう一つは足を肩幅に開き、壁に背面とかかとをつけて立ち、両腕を挙げて手の甲も壁につけ、壁に触れている部分が壁から離れないようにして息を吐きながらスクワットをする練習です。鍛えにくい背中側の呼吸筋もこうすれば鍛えることができます。応用編では「ふるさと」を教材にしてフレーズを歌う練習をしました。最初は歌詞を付けずに母音でメロディを歌います。音程やリズムが変わっても呼気の方向とスピードが変わらないように、常に息を上へ高速で飛ばしながら歌います。そのためには腰回りの筋肉がしっかり使えないといけないので、体側の肋骨と骨盤の間に拳を入れて拡げます。歌詞をつけて歌う時は、母音によって響きが変わらないよう、口腔の広さを保つためにワインコルクを奥歯に挟んで歌ってみます。上あごを上げる感覚がつかめたらコルクを外して歌います。終了後に「どこが疲れましたか?」とお尋ねすると、顎関節まわりが疲れたという方、腰が疲れたという方、脇腹、腹筋など人それぞれです。発声には全身をバランスよく使うことが必要ですが、人によって弱いところが違うので、それに応じて疲れるところも違うわけです。喉に負担をかけない発声は喉ではなく体を使うのだということを、多少は感じて頂けたのではないかと思います。
一夜明けて今日はオハイエくまもとの音楽祭でした。市内各所で同時に行われるイヴェントで、わが合唱団の演奏会場は現代美術館。会場に入ってみると、知り合いの顔がちらほら見えます。私の2人の姪(小学生)と3歳の甥も両親に連れられてやってきました。野ばら、ふるさと、流浪の民、おおひばり、ウィーンわが夢の街、メリーウィドウと、皆さん楽しんで歌って下さったようです。後で何人もの方が「よかったですよ!」と声を掛けて下さいました。嬉しいですねえ。私はこういう言葉は真に受けることにしています(笑)。実は演奏中にちょっとしたハプニングがあったのです。「ウィーンわが夢の街」で間奏の16小節の間、2組のペアに踊って頂いたのですが、そのうち1組が歌に戻るタイミングを逸して間奏が終わっても踊り続け、メンバーはハラハラ、私はヘラヘラ(笑)、会場の皆さんは大喜び(笑)。ゴスペルのM先生がよく「間違えてもいいのよ、間違えるとお客さんが喜ぶから(笑)」とおっしゃいますが、なるほどホントだ、と思ったひとときでした。弟夫婦は「子どもたちが「流浪の民」が聴けて喜んでいたよ」と言っていました。彼らはこの曲を「どんどんもり」と呼びならわしていて、私が訪ねていくといつも「どんどんもり弾いて!」と言うお気に入りの一曲なのです。前奏の部分と「ぶなの森の葉隠れに」という日本語の歌詞の「森」をくっつけたオノマトペのようです(笑)。
このイヴェントはかなり大掛かりで、スタッフも大人数です。準備や進行、出演者の世話と大変な労力だと思います。心のバリアフリーをめざす意義あるイヴェントに参加させて頂けたことを感謝しつつ、充実感に包まれて会場を後にしました。

ナイチンゲール

2013年03月22日 | 日記
「小夜啼き鳥」とか「夜啼きウグイス」などと訳されるヨーロッパの美声の鳥、ナイチンゲール。ドイツ歌曲にはこの鳥の名を題名に冠した曲がたくさんあります。一度本物の鳴き声を聴いてみたいと願っていましたが、留学中には見参し損ねました。よく似た声だと言われるクロツグミは時折見かけましたが。生息環境の変化でいなくなってしまったのでしょうか。
春に鳴く鳥らしいので、5月のリサイタルにナイチンゲールという名前の入った曲を歌いたいと思い、他の曲目との取り合わせを考えながら探していたら、アリャビエフというロシアの作曲家の作品に行き当たりました。そのものズバリ「ナイチンゲール」という題名で、切々たる哀愁のこもる魅力的な小品です。原詩はロシア語ですが、ドイツ語の訳詩もあります。譜読みをしながら「どこかで聴いたことがある曲だなあ」と思っていたら、フランスの歌姫ナタリー・デセイが歌っている手持ちのCDの中に入っていました。コロラトゥーラの艶やかな美声を聴いていると、ナイチンゲールの声のイメージがかきたてられます。
アリャビエフという作曲家、初めて聞く名前です。調べてみると、本職は軍人で、デカブリストに与するリベラリストだったため冤罪に問われてシベリア送りになったそうで、「ナイチンゲール」は恋の嘆きに託して追放者の真情を吐露した作品だとか。そう思って聴くとなお一層哀切さが胸に迫ってきます。
今度のリサイタルではテーマの一つを「望郷」ないし「憧憬」にしようと思っているので、この曲はぴったりです。それにしても、スラヴ系の音楽はどうしてこうも切ない響きがするのでしょう。他にもスラヴ系の曲を予定しているのですが、並べて歌ってみると胸苦しいほどです。心のひだにピタッとフィットする感じがありますね。
こういう曲をステージに乗せるのは初めてですが、ちょっと楽しみになってきました。