のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

姫椿/浅田次郎

2008年02月24日 18時31分47秒 | 読書歴
20.姫椿/浅田次郎
■ストーリ
 飼い猫が死んでしまったOL、経営に行き詰まり、死に場所を
 探す社長、三十年前に別れた恋人への絶ち難い思いを心に秘めた
 男、妻に先立たれ、思い出の競馬場に通う大学助教授。
 凍てついた心を抱えながら日々を暮す人々に、冬の日溜りにも似た
 微かなぬくもりが、舞い降りる八篇の短編集。

■感想 ☆☆☆*
 小説に感情移入をして楽しむほうだ。
 だから私が本に望む面白さの基準は「いかに作品世界に入り込めるか」。
 短編集は世界の中に入り込むための説明が長編よりも少なく
 また、その世界に滞在する時間も長編に比べると短いため
 どうしても、それぞれの世界には入りにくい。
 だから、短編集は今ひとつ好きにはなれないで入る。
 好きな作家さんの長編小説を全て読み終えたあとに手を出すのが
 短編小説。私の中ではそういった位置づけにある。

 しかし、この作品集は作品に触れる短い時間の中で
 しっかりと作品に入り込めた。鮮明に作品世界の登場人物を
 思い描くことができた。彼らの言葉を彼らの声で耳に
 響かせることができた。
 彼らの言葉と彼らの不器用な生き様に胸が熱くなった。

 さすが浅田さんだな、と思った。
 浅田さんは「弱っている人」「ちょっぴりダメな人」
 「自分に自信がないのに、プライドが高い人」を生き生きと
 魅力的に描き出す。人間の弱さを愛情をもって描き出す。
 同様の愛情で「自分の生き様にプライドを持って生き抜いて
 いる人」のことも凛とした筆で描き出す。こうありたい
 こう生きたい、という理想を具体的に魅力的に描き出す。
 8編の短いお話の中でも、その愛情の深さは変わらない。
 長編と同じように人に焦点をあてて、くっきりと描き出している。

 特に「マダムの喉仏」では、マダムが亡くなったところから
 お話が始まり、マダムについての直接的な描写はまったく
 ないにも関わらず、彼女の魅力が、品性が伝わってきた。


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2 コメント

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Unknown (れお)
2008-03-02 19:53:51
色んな角度から本についての印象を述べられるあなたにいつも脱帽。
私もこれ読んだけど、そんな深い感想など抱かないもの…。

今は「薔薇盗人」を読んでます。
「死」を意識させられ、ちょい切ない。
いや、私は死なないけどね!
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お返事☆ (のりぞう)
2008-03-03 22:32:30
■れお
 浅田さんはね、たぶん「ツボ」なんだよね。
 たまに「ベタだなー」と思うこともあるけれど
 そういいつつもしっかりと心動かされちゃうの。
 「薔薇盗人」未読だわー。
 読み終わってからも、感想聞かせてね。
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