のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

氷点/三浦綾子

2008年03月09日 17時04分56秒 | 読書歴
25.氷点/三浦綾子

■ストーリ
 医師の辻口啓造は、妻夏枝が他の男と一緒にいる時に娘のルリ子を
 殺されてしまう。啓造は「汝の敵を愛せよ」という言葉と、殺人犯
 の娘と知らずに育てていく夏枝を見たいという理由で、犯人の娘を
 引き取る。引き取られた陽子が小学1年になったとき、夏枝は陽子
 が殺人犯の娘であることを知り、彼女に対して憎しみの感情を持つ
 ようになる。
 高校生になった陽子は、徹の友人、北原と出会い、結婚を申し込ま
 れる。報告を受けた夏枝は、陽子が殺人犯の娘であることをふたり
 に明かし、追い詰められた陽子は・・・。

■感想 ☆☆☆☆☆
 何度、読み返したのか分からないぐらい好きな作品。
 先週、実家に帰った際、軽い気持ちで手に取ったところ、やめられ
 なくなってしまい、帰りのバスの中で、息もつかずに読み続けた。

 何度読んでも古さをまったく感じさせない。
 勿論、1970年の作品なので、女性に対する考え方や言葉遣い
 などに古さは感じさせられる。けれども、基本ストーリや
 登場人物たちの感情の揺れにはまったく古さを感じさせない。
 まるで自分のことのように、共感したり、考えさせられたり
 心を力いっぱい刺激される作品だ。
 作品終盤の怒涛の展開では高まる緊張に息をすることも忘れて
 読み、ラストの衝撃の展開では、人間の弱さを突きつけられて
 その突きつけられた人間の弱さや醜さが決して他人事ではなく
 自分も持っているものだということに、涙腺を刺激された。

 人間はなぜ嫉妬や憎しみ、寂しさという感情を持っているのだろう。
 なぜ、他人を心から信じることができないのだろう。
 なぜ、それでも愛されたいと思ってしまうのだろう。

 登場人物はみな、悪い人ではない。しかし、弱い。その弱さゆえに
 思い合って、愛し合っていても、その想いがうまく絡み合わない。
 今回の読書では、そのことを自分の体験と重ねあわせて、
 しみじみと実感し、改めて人間と人間の関係のもろさを思った。

 人間の存在そのものが、お互いに思いがけないほど深く、係わり合い、
 傷つけあっていることに、今更のように啓造はおそれをかんじた。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
三浦綾子 (生駒山のいも男爵)
2008-03-09 20:26:48
懐かしい。作品は読んだことないけど懐かしい。
なぜなら私とのりぞうが高校時代に私が三浦綾子と曽野綾子は同一人物って言い張って(曽野綾子の旦那は三浦朱門、二人ともクリスチャン)のりぞうが違うーって言い張って、結局のりぞうのお母さんに確認して別人であることが判明。
あれから干支が一周しました。
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お返事☆ (のりぞう)
2008-03-12 22:35:21
■いも男爵どの
 そーいえば、そんなことあったよねー。
 信じてくれなかったよねー。
 三浦さん、読んでみなさいな。
 「氷点」と「塩狩峠」はワタクシのバイブルですわー。
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