のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

少年少女飛行倶楽部/加納朋子

2009年11月07日 12時01分33秒 | 読書歴
100.少年少女飛行倶楽部/加納朋子

■ストーリ
 私たちは空が飛べる。きっと飛べる。かならず飛べる。
 中学1年生の海月は幼馴染の樹絵里に誘われて「飛行クラブ」
 に入部する。クラブのメンバーは2年生の変人部長・神
 (通称カミサマ)をはじめに癖あり、ワケありの部員ばかり。
 果たして、彼らは空に舞い上がれるのか。

■感想 ☆☆☆☆
 爽やかでちょっぴり甘酸っぱい読後感を味わえる青春小説。
 両親に愛され、まっすぐに健やかに育った海月だからこそ、
 この爽やかな読後感になるのだろう。
 彼女のキャラクターがとにかく魅力的。
 気が強く、部長だろうが年上だろうが、言うべきところは
 言うまっすぐさ。
 なんだかんだと文句を言いつつ、困っている人を見過ごせない温かさ。
 ちょっぴり苦手だと感じている人に対しても、自分の感情は別にして
 分け隔てなく接することができる公平さ。
 頼まれたことはしっかりとやり遂げる責任感の強さ。

 そんな海月だからこそ、クラブのメンバが信頼感を抱き
 ついつい甘えてしまったり頼ったりしてしまう描写に説得力があった。

 お互いがお互いを刺激し、海月もメンバも少しずつ成長していく。
 少しずつ素直に自分の感情と向き合えるようになっていく。
 その過程は本当にオーソドックスな「青春小説」で新鮮味はない。
 けれど、そういったことがまったく気にならない。
 「ありきたり」と思わせないのは、ひとりひとりのキャラクターが
 とても魅力的だから。そして、それぞれが抱えている孤独感や
 焦燥感に無理なく共感できるからだと思う。
 そして、そういった癖あるメンバたちを「困ったさん」だと
 思わせながらも「愛すべきキャラクター」に仕上げられるのが
 加納さんの加納さんたるところなんだよね、と憧れる。

 そして、飛行クラブのメンバではないけれど、忘れてはならないのが
 海月の母親。主要キャラクターではない。
 それなのに、彼女のおおらかさ、ポジティブなものの見方、
 人生の楽しみ方がこの作品のテイストを見事に表している。

 「男の子が欲しかった?女の子が欲しかった?」
 という海月の問いに対する
 「海月が欲しかった。」
 という彼女(とその夫、つまり海月の父親)の答えは、
 とても素敵なエピソードで、私もこんなふうに自分の子供と
 会話ができたらいいな、こういうふうに余裕をもって大きな
 愛情を注いであげられる母親になりたいな、と思った。

 こういった人との関わり方、まっすぐさが作品のあちこちに
 満ち溢れていて、爽やかな読後感に結び付くのだと思う。
 あまり難しく考えずに読んでほしいし、さらさらと読める作品。
 読んでいると、作品の中のクラブメンバーといつのまにか、
 仲良くなれる。まるで、自分の友達のように、彼女たちのことを
 見守ってしまう。そんな作品だった。


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