のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

レキシントンの幽霊/村上春樹

2007年12月04日 22時54分50秒 | 読書歴
■レキシントンの幽霊/村上春樹
■ストーリ
 古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは
 何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな
 運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極へ行こうとしたのか。
 次々に繰り広げられる不思議な世界。七編を収録。
■感想 ☆☆☆☆
 ずっと村上春樹が苦手だった。
 するすると頭の中を流れていくような綺麗な文章が頭に残らなかった。
 丁寧に説明するのではなく、投げ出すように終わるラストにいつも
 戸惑いを覚えていた。
 しかし、今年の夏、友人が村上春樹の作品を大量に貸してくれたため、
 彼の作品にまとめて触れることができ、自分が食わず嫌いだった
 ことに気がついた。私はどうやら彼の作品が嫌いではないようだ。
 むしろ、どちらかというと好きみたい。
 ただ、私にとって、彼の作品は私とあまりに感性が違いすぎるが故の
 憧れのようなものが強く、「わかる!わかる!」という感想よりも
 「こういうふうに考える人もいるんだな。」「こういうふうに
 世界と接することができたらいいな。」という感想を抱くことの
 ほうが多い。

 さて、そして今作品。
 表題作の他に「緑色の獣」「沈黙」「氷男」「トニー滝谷」
 「七番目の男」「めくらやなぎと、眠る女」が収められており
 私は「トニー滝谷」が読みたくて手を取った。
 結果、私は初めて村上作品に共感することができた。
 全編通して感じられるのは「孤独」。
 人は完全にひとりで生きることはできない。必ず誰かと関わって
 生きていくことになる。それにも関わらず、完全に誰かを理解し
 分かり合うことなどできないという「孤独」。
 一緒に生きているからこそ感じる「孤独」。そういったものが
 どの作品からも感じられた。
 感じるのは硬質の薄氷のようなもの。透明で透けていて
 いくらでも人を近くに感じられるけれど、触れることはできない。
 そういった感覚。

 特に「トニー滝谷」から発せられる孤独感は強い。
 この作品のラスト一文の寂しさに読み終わってしばらくは
 呆然と過ごした。
 「レコードの山がすっかり消えてしまうと、トニー滝谷は
  今度こそ本当にひとりぼっちになった。」

おじいちゃんがおばけになったわけ(絵本)

2007年12月04日 22時31分19秒 | 読書歴
■おじいちゃんがおばけになったわけ/キム・フォップスオーカソン
■ストーリ
 死んじゃったはずのおじいちゃんが夜になって、エリックのところへ
 やってきた。なんと、おじいちゃんは土にも天使にもならずに、
 おばけになっちゃった。いったいどうして?
 大切だけど、ちいさな子には少しむずかしいことを、
 おじいちゃんとのユーモアたっぷりの会話から理解していく
 エリックの姿が心に沁みるデンマークの絵本。

■感想 ☆☆☆☆
 絵本です。
 立ち読みであっという間に読めてしまいます。
 けれど、立ち読みするのはやや危険。
 確実に目頭が熱くなります。心を揺さぶられます。

 死んでしまったはずのおじいちゃんはスーツにネクタイという
 いつもどおりの姿で現れ、「何か忘れ物をしている」と訴えます。
 夜しか出てくることのできないおじいちゃんと一緒に
 その忘れ物が何なのか探そうとするエリック。
 忘れ物を捜しながら、おじいちゃんとの思い出話に
 花が咲きます。その思い出話を描いたイラスト1枚1枚が
 あったかくてかわいらしくて親しみ深くて、思わず笑顔になります。

 忘れ物を捜せるのはおじいちゃんが出てこれる夜だけ。
 眠ることができないエリックは徐々にやつれていきます。
 絵本では、短いながらもそんなエリックを優しく見守る両親の姿を
 きちんと描き、物語に深みを出しています。

 プレゼントにお勧めの素敵な絵本でした。