■レキシントンの幽霊/村上春樹
■ストーリ
古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは
何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな
運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極へ行こうとしたのか。
次々に繰り広げられる不思議な世界。七編を収録。
■感想 ☆☆☆☆
ずっと村上春樹が苦手だった。
するすると頭の中を流れていくような綺麗な文章が頭に残らなかった。
丁寧に説明するのではなく、投げ出すように終わるラストにいつも
戸惑いを覚えていた。
しかし、今年の夏、友人が村上春樹の作品を大量に貸してくれたため、
彼の作品にまとめて触れることができ、自分が食わず嫌いだった
ことに気がついた。私はどうやら彼の作品が嫌いではないようだ。
むしろ、どちらかというと好きみたい。
ただ、私にとって、彼の作品は私とあまりに感性が違いすぎるが故の
憧れのようなものが強く、「わかる!わかる!」という感想よりも
「こういうふうに考える人もいるんだな。」「こういうふうに
世界と接することができたらいいな。」という感想を抱くことの
ほうが多い。
さて、そして今作品。
表題作の他に「緑色の獣」「沈黙」「氷男」「トニー滝谷」
「七番目の男」「めくらやなぎと、眠る女」が収められており
私は「トニー滝谷」が読みたくて手を取った。
結果、私は初めて村上作品に共感することができた。
全編通して感じられるのは「孤独」。
人は完全にひとりで生きることはできない。必ず誰かと関わって
生きていくことになる。それにも関わらず、完全に誰かを理解し
分かり合うことなどできないという「孤独」。
一緒に生きているからこそ感じる「孤独」。そういったものが
どの作品からも感じられた。
感じるのは硬質の薄氷のようなもの。透明で透けていて
いくらでも人を近くに感じられるけれど、触れることはできない。
そういった感覚。
特に「トニー滝谷」から発せられる孤独感は強い。
この作品のラスト一文の寂しさに読み終わってしばらくは
呆然と過ごした。
「レコードの山がすっかり消えてしまうと、トニー滝谷は
今度こそ本当にひとりぼっちになった。」
■ストーリ
古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは
何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな
運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極へ行こうとしたのか。
次々に繰り広げられる不思議な世界。七編を収録。
■感想 ☆☆☆☆
ずっと村上春樹が苦手だった。
するすると頭の中を流れていくような綺麗な文章が頭に残らなかった。
丁寧に説明するのではなく、投げ出すように終わるラストにいつも
戸惑いを覚えていた。
しかし、今年の夏、友人が村上春樹の作品を大量に貸してくれたため、
彼の作品にまとめて触れることができ、自分が食わず嫌いだった
ことに気がついた。私はどうやら彼の作品が嫌いではないようだ。
むしろ、どちらかというと好きみたい。
ただ、私にとって、彼の作品は私とあまりに感性が違いすぎるが故の
憧れのようなものが強く、「わかる!わかる!」という感想よりも
「こういうふうに考える人もいるんだな。」「こういうふうに
世界と接することができたらいいな。」という感想を抱くことの
ほうが多い。
さて、そして今作品。
表題作の他に「緑色の獣」「沈黙」「氷男」「トニー滝谷」
「七番目の男」「めくらやなぎと、眠る女」が収められており
私は「トニー滝谷」が読みたくて手を取った。
結果、私は初めて村上作品に共感することができた。
全編通して感じられるのは「孤独」。
人は完全にひとりで生きることはできない。必ず誰かと関わって
生きていくことになる。それにも関わらず、完全に誰かを理解し
分かり合うことなどできないという「孤独」。
一緒に生きているからこそ感じる「孤独」。そういったものが
どの作品からも感じられた。
感じるのは硬質の薄氷のようなもの。透明で透けていて
いくらでも人を近くに感じられるけれど、触れることはできない。
そういった感覚。
特に「トニー滝谷」から発せられる孤独感は強い。
この作品のラスト一文の寂しさに読み終わってしばらくは
呆然と過ごした。
「レコードの山がすっかり消えてしまうと、トニー滝谷は
今度こそ本当にひとりぼっちになった。」