あれは何だったんだろう。
消灯前の筋トレ(筋肉トレーニング)の話は前に書いた。
それは消灯まで続く。
つまり就寝時刻を過ぎてから、自分の棟にかえるのである。
舎監に見つからないように渡り廊下のコンクリート壁に隠れて帰りたいのだが・・・
先輩がありがたい話をしてくれていたのである。
その話とは、いわゆる怖い話だ。
これ、渡り廊下の下である。 別名雨天トレーニング場・・・
1 夜の渡り廊下を走って帰ると、後ろから追いかけてくるのがいるよ。
2 渡り廊下の真ん中を通らないと、何かに憑りつかれるよ。
3 絶対に振り向かない方がいいよ。
つまり、筋トレで痛くなった足を引きずりながら自分の棟の舎監に一番見つかりやすい状態で渡り廊下を歩くのである。
そんな状況だから、自分の部屋に戻った時には体だけでなく神経も疲れている。
さて、寝る前にかいた汗を拭き、着替えをすませ布団に入る。
「寝れるわけがない。」
体の興奮は覚めていないのだ。
寝る前に30分も筋トレをやれば当然だってえの。
まぁ、あの当時は激しい運動をして水を飲むとバテると教えられでいた時代だ。
鍛えた分だけ強くなると思ってやっていたのも事実である。
そして冴えた目をつぶっていると、聞こえてくるのは同室の奴の寝息。
起きているのは自分一人と気づく。
そんな時、勉強机の上に置いてある湯呑カップにさしてあるスプーンが音を立てる。
「チン・・・」
誰もスプーンをいじってはいない。
「まあ、偶然だろうなぁ。」と思っていると、「チン・・・」
うーん、寝れない。
しょうがないので目を閉じて無理やり寝ようとする。
「うん、いいぞ。もう音は聞こえない。」
と思って目を開けたら、大変恐ろしいことになっていた。
さっきまで真夜中だったはずなのに、窓の外に朝日が差していたのである。
まったく、あの音は何だったんだ・・・
昭和51年4月。1棟16室でのお話し。