風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

風のうた

2010年04月29日 | 詩集「風のことば」
Yoshimi


夕方の6時に
ミュージックサイレンが鳴る
愛らしくて淋しい
いぬのおまわりさん


からすなぜ鳴くのではなく
赤とんぼでもない
ゆうやけこやけでもなく
家路でもなかった


だからときどき
ぼくは迷子になった
古い山の道をだれも知らない
名前を聞いてもわからない


風はただ歌うだけ
ひぐらしの山の上から
盆地の家々の屋根をこえて
さらに山の向こうへと


おまわりさんも知らなかった
逗子の海を愛した詩人を
60歳で念願のヨットを手に入れたが
詩人が風になってしまった


どんなに滑走したとても
風よりのろい MISS YOSHIMI号
風のうたは ピープー
カモメのうたは ギイヨ ギイヨ



きょうも迷子が泣いている
犬のおまわりさんも泣いている




*****


* 詩人の名は佐藤義美。詩の中に彼の詩の一部を引用しました。
* 童謡『いぬのおまわりさん』はよく歌われているが、作詞家の名を知るひとは殆どいません。


(2008)


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