熊澤良尊の将棋駒三昧

生涯2冊目の本「駒と歩む」。ペンクラブ大賞受賞。
送料込み5000円。
残部僅少ながら、注文受付中。

目次

作品 文章 写真 販売品

「書き駒」と「盛上げ駒」、その3

2023-01-30 17:32:21 | 文章

1月31日(月)、晴。

今日も寒い一日でした。

ある方からのお尋ねです。
「書き駒では、どんなことが難しいですか」。

それにお答えいたします。
「そうですね。盛り上げ駒と比べて難しいことはいろいろありますね。
まず第一は文字の位置を揃えること。そして文字の形を揃えることです。

盛り上げ駒の場合、下地に文字の形と位置が明確に示されているわけですが、書き駒の場合は、何もないところに、いきなりフリーハンドで漆の文字を書くのですから、文字の位置取りをピタリと見極めるのが難しい。
すなわち、第一画の筆の降ろし先、それを確実に間違いないところに下ろす。
これが難しいということになります。その時、迷いがあってはいけません。迷いがあると、よい位置になることは無いわけです。
そういう時は、木地を余分に用意して、残り4枚を補正した位置になおして、文字を書くことになります。
文字の形も、下地がある盛り上げ駒の時は、揃えるのは容易ではありますが、書き駒の時はフリーハンドなので、精神を整え、統一した状態で筆を運ばせなければなりません。ですが、これが結構揃うのですね。
筆に付ける漆の量は、ある程度たっぷり。
これが、一筆書きのポイントです。
漆が少ないと、一筆書きにはならないのです。

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雛駒について

2023-01-30 11:58:40 | 文章

1月30日(月)、曇り。

あい変わらずの寒空です。

仕事は引き続いての「雛駒」。
それに関して、ある方からのコメント。

非公開扱いのコメントでしたが、コピーして掲載させていただきます。
ーーー
非公開扱い
雛駒は、普通サイズの駒より安いようです。工賃を考えれば、むしろ高くなっても納得です。今日も、国会中継を視聴しながらのお仕事でしょうか。
ーーー

そうですね。雛駒の場合、木地の材料は、普通にレギュラーサイズに成型したモノから、都度、雛駒のサイズに再成形します。
木地の端を面取りするのも大変で、利き手の親指と人差し指でしっかりと持ちながら、サンドペーパーにあてがって擦ることで、いつの間にか爪先が削れ、指の皮も一緒に擦ってしまう。そして、駒の角が繰り返し当たる指先の指紋があるところなどは、皮が破れて痛みをこらえての
繰り返し、という訳です。

一組作る場合でも、リスクを考慮して、ある程度の余裕を持たせて1組半とか、2組分とかの木地を用意することになります。
今回の場合は、書き駒のほかに、一組は盛り上げで作ろうかと、3組分の木地を用意したわけです。

雛駒でも、もう少し大きい盤の大きさが30x27センチの駒の場合は、時にして盛り上げ駒で作ることもあるのですが、今回のように半分程度(面積では1/4)の小さな場合は、専ら書きゴマで作っておりました。

ですが今回の場合は、フトしたことで、盛り上げで意図した駒が作れるかどうか、チャレンジすることにしたわけです。

普通サイズに比べて、極端に小さい雛駒の場合、文字を彫るだけでも結構困難なものになるわけですし、一旦彫り埋め状態にして、最終的には小さな文字で書き上げなければなりません。
はたして納得できるものができるかどうか。その辺がチャレンジという訳です。

途中工程の、彫り埋めで仕上げることもできますが、私の感覚では、彫り埋め駒というのは、あくまで途中工程の中途半端な仕上がりのモノであり、含みとか奥行きの点で物足らない。そのように思っています。
ご指摘のように、手間がかかっているにも関わらず、価格は安いのではないか、とのことですが、私の場合、雛駒に関しては、コストにかかわらず、もっと使ってほしいとの思いがあり、出来るだけ入手しやすい値段にしております。

工業製品なら、コストが値段に大きくかかわるのでしょうが、手作りの駒の場合は、作者の思いと買っていただけそうな方、使ってくださいそうな方の見方と気持ち、それこそが重要であり大切にしたいと思っています。

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錦旗の雛駒づくり

2023-01-29 17:02:06 | 文章

1月29日(日)、晴れ。
大寒波は小休止。道路の雪も消えました。

仕事は、雛駒「錦旗の彫り」。
彫った後は、錆漆の刷り込み。
レギュラーサイズの駒なら、5回を要しますが、小さな雛駒ゆえ、3回程度で埋められるかと。
しかし何せ小さなものなので、指先を酷使することになり、こんな感じです。

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「角馬・一灯破闇」と「玲」

2023-01-28 16:58:33 | 写真

1月28日(土)、曇り雨。

本日の映像は、根付駒と、雛の駒。
根付駒は、ふるさと納税返礼品でのリクエスト。
表が「角馬」。裏は「一灯破闇」の文字。
雛の駒は、ある方からのリクエスト。
それに付属する「玲」一文字駒。
雛駒の玉将サイズ。

いずれも昨日、黒漆のフリーハンドで、太めに漆たっぷりと書いたものですが、只今の時期、なかなか乾かずに、まだ濡れています。

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小さい雛駒でチャレンジする盛上げ

2023-01-27 19:11:02 | 文章

1月27日(金)、雪交じり。
今日も、雪が降りました。
気温は2℃とか、4℃とか。とにかく寒かった。
でも、仕事は漆仕事もやりました。止まらないですね。
室温は10℃少し。漆が手につかないほどに固まるのは、何時もの2倍とか3倍もかかります。

雛駒も、進めています。
書き駒の前に、一組「錦旗」で盛り上げで作ろうかと彫り始めています。
駒の大きさは1/2なので、文字の面積は1/4。それでも、チャレンジしたくなりました。
さて、上手くゆくかどうか。楽しみではあります。

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ある会話

2023-01-25 20:05:36 | 文章

1月25日(水)、雪雨。

今日は、最強寒波。
朝からチョンボが発覚しました。
朝、駐車場に行くと、車は真っ白の雪だるま状態。
この時の為と、やおらフロントガラスにセットした防雪シートをはがそうとしたら、シートがありません。昨夜、シートを掛けたつもりが、昨日に限って忘れていたのです。
5分ほどかかって、フロントと両サイドガラス、サイドミラー、10センチほど積もった雪を掻いての雪下ろし。おかげさまで、手の指はチジコマるやら、しびれるやら。ヤレヤレと
いう感じでした。

閑話休題。
今日、電話がありました。
「今日、午後からお伺いしたいのですが」。
「あ、いいですよ。用件は、どんな事でしょうか」。

「駒づくりについてです。字母紙も欲しいのですが」。
「ハイ、分かりました。どうぞお待ちします」。
ということで、奈良からお一人が訪問されました。

年齢は50代半ばと見ました。1年前から駒づくりを始めたのだそうで、これまで5組ほど作って、そのうちの一組を見せていただきました。「ゆくゆくは、これで身を立てたい」ということでした。
「そうですか。しかしそれはヨシた
方が良いですよ。趣味とか余技なら,おおいに続けるのが良いですが、駒づくりでは生きてゆけませんよ」と。

「いやあ、いろいろ考えてこれで頑張ろうと・・」。
「そうですか。でもね、将来、自分なりに良い駒が作れるようになったとしても、おいそれと売れるものではありませんよ。
世の中、駒を作っている人はたくさん居ますが、生計が立っているのは、おそらく一人か二人しかいないと思います。かく言う私も食えるか食えないかです。駒づくりは、そんな世界なんですよ」。
「いや。とにかく人生をかけてみたいのです」。

「そうですか。ところで、駒づくりで生計を立てるには、具体的にどのような姿になれば良いと考えているのですか? 駒の値段とか数とかで表せば、どのようなイメージで」、と尋ねることにしました。

「うーん。一組xx万円として、月に2組くらい」。

「はあ、今の世の中、お客様が一組XX万円で買ってくれそうな駒を作れる人はざらにいませんし、何か光るものを持っていないとそれにはなれないと思います。さらに、思い通り実際に買ってくれる人はもっと少ないですよ。駒で身を立てようなんて思うのは甘すぎるどころか勘違いも甚だしい。趣味なら続けるのは大いに結構。技術のみならず運も大切で、運を引き寄せる力も不可欠で、誰かが引き上げてくれる幸運、これも重要です。気持ちだけ持っていても、万事上手くゆくことは100%無いと思います」。

こんな会話が続き、参考事例として私が進んだ道、やってきたこと、人々の出会いや掴んだ幸運もお話ししましたが、話し終えて、はたして分かってもらえたのかどうか。
終始、率直に話したつもりなんですが、やや心もとない心境ではあります。

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問いかけにお答えして

2023-01-24 20:30:46 | 文章

朝から寒い北風。それが午後になって冬の嵐に変わり、雪も降りだしました。予報では明日も、10年に一度の大寒波とか。
野外の水道栓には、凍結対策も怠りませんように。

さて、先ほど、鈴木様より次のような問いかけをいただきましたので、私なりの解釈を述べさせていただきます。

ーーー
(前略)書き駒から盛上げ駒のお話は、解り易くこま駒作りに理解が深まりました。
駒作りの変遷の中で、疑問なのは、書き駒から彫駒に変化した発想は、どのようにして起こったのか?
ということです。
文化文明の歴史の中で、後世に残すために石に彫られる碑文などがあります。
つまり、書いた文字はいずれ消えますが、彫れば消えないで長く残ると、連想したのでしょうか?
彫るというのは、書くとは別の技術が必要です。そして、彫られた駒を手にしてみて「これは、良いアイデアだ!」となったのでしょう。
江戸時代には、版画があり、版画の印刷技術もありました。字母を印刷して、文字の通り彫るのは容易だったと想像されます。
如何でしょうか?
ーーー

そうですね。おっしゃるように、碑文は後世に残すためのものですから、何百年も残るように、石に彫って残すという発想で作られたことに間違いはないと思います。
対して、「駒」(彫り駒)の方は、違った別の発想と要因で生まれたと思っています。
元々、遊びの道具は作るのが簡単だったり、入手が容易だったりすることが肝要です。
将棋の駒も同様で、外国では貝殻とか石、あるいは木片を加工したものが使われていました。
一方、日本の将棋駒は、元々から身近にあった木片を方向性のある5角形に加工し、文字を墨で書かれていたわけですが、いずれも身近な素材と道具を使って、各自が自給自足していたという歴史があります。
やがて、その道に得意な人が現れると、その人の作った駒は上等品としてもてはやされました。その一つが400年前に一世を風靡した「水無瀬駒」でありました。

ところで「彫り駒」は何時、どのように表れたのでしょうか。
現時点で確認できる最古の彫り駒は、福井県下の朝倉遺跡から発見された177枚ほどの中に、墨書文字をなぞって彫った跡がある駒があって、確か、それは1枚だったと記憶しています。
しかし、それは本格的な彫り駒というよりも、「そういう駒もあった」と見るべきではないかと考えています。

ここまで書いてきましたが、またまた長くなりました。この続きは、また後日にて、今日はこの辺で失礼します。

 

 

 

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雛駒づくり

2023-01-24 12:47:39 | 写真

1月24日(火)、雨。

数日前から、新しい雛駒の木地づくりをしていて、必要なのは1組ですが、この際、3組分ほどをまとめて制作しています。
で、その様子。
玉将以下歩兵それぞれの大きさと、色合いの具合を確認すべく、クライアントから届いた盤枡目のコピー上に並べてみました。
対比のための普通サイズの歩兵も添えました。マズマズです。

文字の仕上げは、小生肉筆の「書き駒」を予定しているのですが、一組、「錦旗」か何かで、「盛り上げ」でも仕上げようと考えています。

 

 

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「書き駒」と「盛上げ駒」-その2

2023-01-23 17:41:31 | 文章

1月23日(月)、雨。

冷たい雨が降り続いています。

今日の話題は、「書き駒」と「盛上げ駒」の続き。
それぞれ、漆で文字を書きあげに要する時間には、かなり隔たりがあります。「盛上げ駒」の場合、表の2文字を書き上げるには、概ね15分くらいを要します。
それは「歩兵」であっても「玉将」であっても、おおよそ同じくらいで、時間がかかるのは、下地に彫って埋めた痕跡に沿ってズレないように、はみ出さないように、しかもブレないように神経を使うことで、時間がかかってしまいます。

一方、「書き駒」の場合は、2~3分程度で書き上げることができます。
それは、文字がレタリングされたものではなく、自分の筆跡そのもので、癖を含めて何のためらいもなく自然のまま筆を進ませれば良いという訳です。

ですが、時間が短いので簡単という訳ではないのですね。
歩兵なら20枚。玉将や飛車角なら2枚ずつ。そのほかの駒なら4枚。それらの文字を、揃えることも必要です。
「盛上げ駒」の時は、下地の文字をなぞればよいのですが、ブランクで下地が無い「書き駒」の場合は、自分の筆の動きに頼るしか方法が無いのですね。

ですから「書き駒」は、誰にでも作ることは簡単でも、筆の技量が重要で、それは一朝一夕では到達できない積み重ねた練磨が欠かせません。
かく
言う私の場合は、マアマア他の人に見てもらえるレベルに達するのに、20年以上かかってしまったのですね。
それでも今も、今もなお、ヨチヨチ歩きという状況ではあります。

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嬉しい話

2023-01-22 20:20:00 | 文章

1月22日(日)、晴れ。
寒さが戻りつつあるようです。

「書き駒」と「盛上げ駒」の続きは、少し後に延べることにします。

今日は、嬉しい話。
名古屋から、お二人の訪問がありました。
2人で、ということは知らされていて、てっきり将棋友達の男性二人だと思っていたのですが、女性とお二人での訪問でありました。

大体、普通は男性なので、今回もそのように思い込んでいたのですが、違っておりました。
男性は32歳。将棋指導員の資格取得者で、大学卒業後、鬼頭さんには種々指導者としての薫陶を受けたとのことでした。(小さい頃には鬼頭さんに習っていたと書いたのは小生の勘違いで、訂正します)

女性同伴での訪問は非常に珍しく、話を進めていると、お二人は婚約中で、間もなく結婚されるということが分かりました。こんなことは初めてで、大体は男性お一人か、男性同士の訪問が通例なのですね。

男性曰く、「結婚記念品では、時計を考える人が多いのでしょうが、何せ将棋好きなので、結婚記念品として駒を考えていて、それで今回、この訪問につながった」ということでした。
「へーッ。それは嬉しいことです。気に入った駒が有ればいいのですが」と用意した何組かの完成品をご覧いただき、「2か月ほど待ってくだされば、新しく作ることもできますよ」と別途用意した木地も何種類かもご覧いただいて、最終的には新しく作ることになりました。
書体は空蝉、宗歩好み、無双の中から今月中に決めてもらって、木地は御蔵島ツゲの杢、盛り上げ駒、出来上がるのは4月上旬と決まりました。
「事前の予約金はいただいておりません。代金は、出来上がってからのお支払いで」ということでお願いしました。

それにしても「結婚記念品としての駒」。
これまでは、退職記念にという駒」は、何回かお受けしたことはありましたが、「結婚記念品」としては初めてで、大変うれしいことであります。
あ、それに「駒箱」のこと。
近頃は対局用の四角い駒箱を別途求められる人は、めっきり少なくなっていて、余りお見せしたことはないのですが、今回は通常の平箱とは別に、四角い対局用にとっておきの駒箱(奥山正直さん作。25年くらい前からのとっておきの品)も別途お求めいただくことになりました。
しかもそれは、私が持っている中で最上等品で、ギラっとした島桑杢が自慢の駒箱。いつぞやのタイトル戦で使用されたものです

さてさて今夜は、グッスリ眠ることにいたします。

あ、そうそう。気になっていました王将戦。
羽生さんが勝利して、1対1。
こちらも面白そうですね。

 

 

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駒の写真集

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