Bobby Enriquez Live In Tokyo
ジーンノーマンというプロデューサーがいる。Gene Norman Presents(GNP)と銘を打ちJust Jazz Concertを主催し、クレッセンドというクラブを経営する一方で、ラジオのディスクジョッキーもやっていた。そして、GNP Crescendoというレーベルも作りその演奏を広くアルバムでも提供した。
このジーンノーマン、名前は良く聴くがノーマングランツやジョージウェインほどビジネス的に実績を残したプロデューサーではなかったようだ。しかし、そのようなプロデューサーほどその仕事には商売抜きで何か拘りを持っていたように思う。
GNPのアルバムにはライオネルハンプトンのスターダストのアルバム、マックスローチ&クリフォードブラウンやチャーリーベンチュラのIn Concertのような歴史に残るアルバムがある。バップムーブメントを支え、それらのコンサートライブを出すレーベルかと思っていたが、GNPには他にもトラディショナルからモダンまでジャズの歴史の節目となるアルバムが何枚かある。
’78年になってから、思い出したようにDave PellのPrez Conferenceのようなチャレンジングなアルバムを出したりもした。レーベル自体は、ジャズに限らず他のジャンルを含めて今でも存続しているようだが、なかなか活動の軸足がよく分からないレーベルだ。
リッチーコールのグループに加わって話題になったフィリピン出身のボビーエンリケという個性的なピアニストがいた。コール共々破天荒なプレーぶりで有名になったが、このエンリケが、ジーンノーマンの目に留まりこのGNPレーベルの専属となった。
そして、そのエンリケが来日した時のライブ録音がある。80年代になって日本発のアルバムも増えてきた時代だ。エンリケのピアノにベースとドラムは日本から参加。場所は六本木のピットイン。たまたま録音が行われたのではなく、事前に企画されたアルバムのようである。というのも、このアルバムの冒頭にはジーンノーマン自身が登場、エンリケをジャズ界でこの30年間で最もエキサイティングなピアニストだと紹介するMCも収められている。80〜81年とリッチーコールのグループで有名になったエンリケを、オーナー自身が期待を込めて日本でセッティングしたレコーディングライブであった。
エンリケのピアノは独学だそうだ。そしてその技はジャンルを問わず、ラグタイムからビバップ、そしてラテン、さらにジャズだけでなくロックから、クラシックまで分け隔てなく吸収していった。それらを時と場合によって子供がおもちゃ箱から好きなおもちゃを取り出すように自由に引き出せるのがエンリケの特徴であったようだ。そして、ピアノを、まさに打楽器のように操るプレースタイルも。
MCの後、ベニーゴルソンのキラージョーから始まるが、リッチーコールと一緒にやっていたせいか、パーカーやガレスピーの曲が多い。かと思うとジョビンのボサノバや、ミスティーなどのバラードもあるが、いずれも力強く輝くスインギーなピアノだ。世の中フュージョンが流行、新しいスタイルのピアノが広まっていた中ではかえって、特異なスタイルといってもいいかもしれない。ジーンノーマンもこれに惚れ込んだのかもしれない。
バックを務めたのはベースの当時売り出し中の福井五十雄、ドラムは守新治。縦横無尽に飛び跳ねるエンリケを良くサポートしている。
このエンリケ、残念ながら大ブレークはしなかったが活動は地道に続けていた。しかし、’96年にその生涯を閉じ過去の人となってしまった。
このようなユニークなピアノも、また楽しいものであったが。
1. Killer Joe Benny Golson 6:07
2. Airegin Sonny Rollins 2:56
3. After Hours Mark Gordon / Erskine Hawkins / Avery Parrish 5:35
4. Meditation N. Gimbel / Antonio Carlos Jobim / N. Mendonça 6:13
5. Misty Johnny Burke / Erroll Garner 7:15
6. Groovin' High Dizzy Gillespie / Charlie Parker 4:15
7. Ain't Misbehavin/Honeysuckle Rose Harry Brooks / Andy Razaf / Fats Waller 3:28
8. Holiday for Strings David Rose 3:41
9. Donna Lee Charlie Parker 1:52
10. Bluesette Toots Thielemans 5:40
11. Confirmation Charlie Parker 4:24
12. Del Sasser Sam Jones / Donald Wolf 4:31
13. Could It Be Magic Barry Manilow 6:18
14. Softly, As in a Morning Sunrise Oscar Hammerstein II / Sigmund Romberg 4:22
15. Scrapple from the Apple Charlie Parker 4:06
Bobby Enriquez (p)
Itoo Fukui (b)
Shinji Mori (ds)
Produced by Gene Norman & Kazuo Takeda
Engineer ; Hatsuro Takanami
Recorded at Roppongi Pit Inn, Tokyo on August 7, 1982
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