A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

20年ぶりのビッグバンドだったが、めでたくグラミー賞を・・・・

2015-03-01 | MY FAVORITE ALBUM
Walk On The Water / Gerry Mulligan &His Orchestra

1981年2月、テレビ番組用のディジーガレスピーのドリームバンドの企画に主役の一人として参画したのがジェリーマリガンであったのは先日このDVDの紹介の中で述べたとおりだ。
メインソリストとしても登場していたが、バックのドリームバンドのオーケストラのスコアも、スライドハンプトンに加えてマリガンもアレンジで加わったようだ。ガレスピーのビッグバンドにマリガンのアレンジでは?というのも気になったが、マリガンの出しゃばりぶりには、他のメンバー達はへそを曲げていたようであった。

バリトンサックスの第一人者として名を成したマリガンであるが、そもそもマリガンのミュージシャン生活の始まりはアレンジャーとしてであった。まだティーンネイジャーの時にプロのアレンジャーデビューを果たしている。7歳からピアノを初め、クラリネットを学び、そしてテーナーを学んだ先生でもあったSam Correntiからの勧めもあってアレンジの勉強を始めたという。決して専門的な教育を受けた訳でもなさそうだ。演奏だけでなく、作編曲を含めて、マリガンのメロディアスな音楽性は天性のものなのだろう。

アレンジャーとして後世に残る大役を果たしたのは、マイルスの名盤「クールの誕生」が最初だろう。この時一緒だったギルエバンスの影響もあるのか、まだスイング時代の名残が普通のアレンジとは一線を引く特徴あるものだった。
マリガンは大きな編成だけでなく、カルテットでもアレンジを施した演奏をする。日頃からアレンジは数多く手掛けていたとは思うが、やはり本格的なアレンジとなると大編成になる。

そのマリガンが、大編成のアレンジと演奏にチャレンジしてビッグバンドを編成したのはちょうど60年代に入った時だった。コンサートジャズバンドと命名され、ダンスバンドではない事を宣言し、じっくり聴かせるための演奏活動を行った。このオーケストラに加わっていたベースのビルクロウが著書「さよならバードランド」の中で語っているが、このバンドに参加していたミュージシャンも、この仕事を最優先にして演奏にも熱が入っていたという。しかし、スポンサーでもあったノーマングランツが去ると、この大きな編成のグループは解散となった。それ以降、マリガンのビッグバンドが編成されたという話を聞く事はなかったのだが・・・・。

実はこのアルバムを作る数年前、70年代の後半からメルトーメのバックを務めるビッグバンドを編成し、マリガンはビッグバンドの活動を再開していた。そして、ガレスピーのドリームバンドの企画を詰めていた時、自らのビッグバンドを編成して各地でコンサート活動も行っていた。最初は昔の曲の再演であったようだが、徐々に新しい曲やアレンジも加わって、新生コンサートジャズバンドは確実に活動を続けていた。
バリトンサックスではアダムスの急迫を受け、長年守っていた王座の地位も危うくなっていたが、アレンジャー&ビッグバンドとしては再び注目を浴びつつあった。
そして、一年以上に渡るその活動の成果ともいえるのが、このアルバムとなった。

ちょっと聴くと軽い感じの何の変哲もない演奏に聴こえる。ビッグバンドでお馴染みのセクションごとのアンサンブルの対比も無い、強烈なハイノートがある訳でもない。マリガンのアレンジというのは、先日紹介しているデュークピアソンと同様、コンボ用のアレンジを拡大した感じになる。ギルエバンスを源とする、ボブブルックマイヤーや、マリアシュナイダーと相通じるものだ。トランペットのトムハレル、ピアノのミッチェルフォアマン、そしてマリガン自身のバリトンもペッパーアダムスのそれとは好対照だが、時にはソプラノを交えて、皆、アレンジに実にピッタリなソロを繰り広げる。
メロディーを大事にするいいアレンジとはこのような物をいうのだろう。小難しい複雑なアレンジが必ずしもいいアレンジだとは思わない。

そして、このアルバムは翌1982年のグラミー賞のビッグバンド部門で見事に受賞を果たす。60年のコンサートジャズバンドと較べると活動も地味だったし、アルバムも(多分)このアルバムしかないが、60年代同様、再びビッグバンドの新時代の幕開きを務めたのもマリガンのコンサートバンドであった。

1. For An Unfinished Woman       Gerry Mulligan 7:13
2. Song For Strayhorn          Gerry Mulligan 6:08
3. 42nd And Broadway          Gerry Mulligan 5:07
4. Angelica               Mitchel Forman  6:25
5. Walk On The Water          Gerry Mulligan 4:24
6. Across The Track Blues        Duke Ellington  3:10
7. I'm Getting Sentimental Over You  George Bassman / Ned Washington 6:06

GERRY MULLIGAN AND HIS CONCERT JAZZ BAND
Gerry Mulligan (bs, ss, arr)
Laurie Frink, Barry Ries, Tom Harrell, Mike Davis, Danny Hayes (tp)
Keith, O’Quinn, Dave Glenn, Alan Raph (tb)
Eric Turkel, Gerry Niewood, Ken Hitchcock (as)
Gary Keller, Ralph Olson, Seth Broedy (ts), Joe Temperly (bs)
Mitchel Forman (p), Jay Leonhart (b), Mike Bocchicchio (b), Richie de Rosa (ds)
Tom Fay (arr)

Recorded at Downtown Sound Studios, New York City, N.Y., September, 1980


Walk on the Water
クリエーター情報なし
Drg
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする