The Persuasive Trombone Of Urbie Green Vol.1
ペッパーアダムスの軌跡を追っているが、いよいよ1960年に入る。
世の中的にも区切りとなる年だ。ところが、年表を改めて見返してみても、この年はこれはという印象に残る出来事は見当たらない。東京オリンピックが4年後、日本でも色々変化が始まるのはこの年からだったのかもしれない。
自分も、此の頃はまだジャズを聴いてはいなかった。この年のヒット曲、パーシーフェイスの「夏の日の恋」や、ブラザースフォーの「グリーンスリーブス」などは記憶に残っている。よく聴いた曲だ。
一方で、レコードの世界はこの時期大きな変化があった。2年前にステレオレコードが世に出て、ジャズに限らず音楽アルバムはステレオ盤とモノラル盤の両方が世に出回り始めた頃だ。当時のオリジナル盤だとまだまだモノラル盤が主流を占めていた。どちらの方が、音が良いかとよく話題になるのがこの頃のアルバムに多い。録音自体がステレオで録られていたのはもう少し前からだったようなので、後にステレオ盤として世に出たアルバムも多い。一方で、ステレオが一般的になると、モノラル録音を無理矢理ステレオにした、偽ステなども登場してきた。
このステレオ効果と、音の良さを売りにするアルバムがこの頃は良く作られた。
最初にステレオレコードを出したといわれるAudio Fidelityの音は確かに良かった。時には、ステレオ効果を前面に出すために、左右のチャンネルで別のバンドやプレーヤーを配したバトル物などもあった。ベイシーとエリントン両オーケストラの共演や、マックスローチとバディーリッチドラム合戦のようなアルバムが記憶にあるが。
その後も各社、技術の粋を駆使して高音質のアルバム作りを行ったが、ジャズアルバムでも時々そのようなアルバムに遭遇する。
このアルバムも、たまたまそのような一枚。
楽器ごとのマイクロフォンからカッティングマシーンまで細かくクレジットされているが、ここで試されているのは今では当たり前のマルチャンネル録音。このCommandレーベルの特徴は、録音テープに通常の磁気テープ使わず、いわゆる光学フィルム、映画のサウンドトラックの技術を使ったようだが、果たして方法とその効果は素人の自分には良く分からないが??
このアルバムでは、リーダーのアービーグリーンはソリストとしてメインな存在だが、時にはトロンボーンセクションの一員として、そしてオーケストラ全体の指揮者でもあるわけで、その3つの役割を一つの場所でうまくできるようにして、そしてその結果をアルバム上に上手く再現するのが課題の一つであったと記されている。さらには、物理的な風圧もありトロンボーンは録音しにくい楽器のひとつで、トーンレンジが広く、他の楽器とのブレンドも難しい。さらには、楽器とマイクの距離を等距離にするトランペットやサックスセクションの音のバランスも変わるとか・・・。きっと今では色々な経験とテクニックで解決されたことが、此の頃はまだ試行錯誤であったのかもしれない。
自分は録音に関しては素人だが、確かに、トロンボーンの好録音のアルバムを聴くと実に心地よく感じるのはこの楽器の特質が上手く再現されているということなのかもしれない。
結果は、当時の録音としては、各楽器のセパレーションが明確であるが、全体がオンマイクで録った割には多少エコーが掛かったようなホールトーンに包まれ、そのバランスがいいように感じる。
何と言っても、演奏を含めてアービーグリーンのスムースで甘いサウンドがオーケストラに上手く乗り、時には包み込まれて、最上のダンスミュージックに仕上がっているのが一番だ。その点では、素材の選び方も、アウトプットも、アルバムの制作主旨に照らし合わせてこのアービーグリーンのビッグバンドは最適だった様な気がする。
肝心な演奏は、メンバーも当時のニューヨークのスタジオミュージシャンの一流どころを集めた豪華版。スタンダード曲を並べ、前年のアルバムよりは、多少モダンなタッチは影を潜めているが、グリーンのトロンボーンは十分に満喫できる。
ペッパーアダムスにとっては年初めのスタジオワークで、2日間の内一日のセッションに参加しているが特にソロは無く下支えに徹している。前作ではソロパートもありアダムスの存在価値はあったように思うが、今回は声が掛かっての付き合い参加のようだ。
1. At Last M.Gordon-H.Warren 2:52
2. Prisoner of Love R.Columbo-C.Gaskill 3:27
3. Dream J.Mercer 3:00
4. I've Heard That Song Before J.Styne-S.Cahn 2:50
5. Moonlight Serenade Glenn Miller / Mitchell Parish 2:52
6. Stairway to the Stars M.Malneck / M.Parish 2:38
7. Let's Fall in Love H.Arlen / T.Koehler 2:39
8. My Silent Love E.Heyman / D.Suesse 2:44
9. My Melancholy Baby E.Burnett / G.Norton 2:12
10. I Had the Craziest Dream Gordon / Warren 2:25
11. I'm Getting Sentimental over You G.Bassman / N.Washington 2:45
12. I Can't Get Started V.Duke / I.Gershwin 3:02
Nick Travis, John Bello, Don Ferrara, Doc Severinsen (tp)
Urbie Green, Bobby Byrne (tb)
Gil Cohen (b-tb)
Hal McKusick (as),
Rolf Kuhn (as,cl),
Eddie Wasserman (fl,ts),
Pepper Adams (bs)
Dave McKenna (p),
Barry Galbraith (g)
Milt Hinton (b)
Don Lamond (d)
On half the tracks, Gene Allen (bar) and Nat Pierce (p) replaced Pepper Adams and Dave McKenna.
Produced by Enoch Light
Recording Engineer : Robert Fine
Reorded on February 1960 in New York
ペッパーアダムスの軌跡を追っているが、いよいよ1960年に入る。
世の中的にも区切りとなる年だ。ところが、年表を改めて見返してみても、この年はこれはという印象に残る出来事は見当たらない。東京オリンピックが4年後、日本でも色々変化が始まるのはこの年からだったのかもしれない。
自分も、此の頃はまだジャズを聴いてはいなかった。この年のヒット曲、パーシーフェイスの「夏の日の恋」や、ブラザースフォーの「グリーンスリーブス」などは記憶に残っている。よく聴いた曲だ。
一方で、レコードの世界はこの時期大きな変化があった。2年前にステレオレコードが世に出て、ジャズに限らず音楽アルバムはステレオ盤とモノラル盤の両方が世に出回り始めた頃だ。当時のオリジナル盤だとまだまだモノラル盤が主流を占めていた。どちらの方が、音が良いかとよく話題になるのがこの頃のアルバムに多い。録音自体がステレオで録られていたのはもう少し前からだったようなので、後にステレオ盤として世に出たアルバムも多い。一方で、ステレオが一般的になると、モノラル録音を無理矢理ステレオにした、偽ステなども登場してきた。
このステレオ効果と、音の良さを売りにするアルバムがこの頃は良く作られた。
最初にステレオレコードを出したといわれるAudio Fidelityの音は確かに良かった。時には、ステレオ効果を前面に出すために、左右のチャンネルで別のバンドやプレーヤーを配したバトル物などもあった。ベイシーとエリントン両オーケストラの共演や、マックスローチとバディーリッチドラム合戦のようなアルバムが記憶にあるが。
その後も各社、技術の粋を駆使して高音質のアルバム作りを行ったが、ジャズアルバムでも時々そのようなアルバムに遭遇する。
このアルバムも、たまたまそのような一枚。
楽器ごとのマイクロフォンからカッティングマシーンまで細かくクレジットされているが、ここで試されているのは今では当たり前のマルチャンネル録音。このCommandレーベルの特徴は、録音テープに通常の磁気テープ使わず、いわゆる光学フィルム、映画のサウンドトラックの技術を使ったようだが、果たして方法とその効果は素人の自分には良く分からないが??
このアルバムでは、リーダーのアービーグリーンはソリストとしてメインな存在だが、時にはトロンボーンセクションの一員として、そしてオーケストラ全体の指揮者でもあるわけで、その3つの役割を一つの場所でうまくできるようにして、そしてその結果をアルバム上に上手く再現するのが課題の一つであったと記されている。さらには、物理的な風圧もありトロンボーンは録音しにくい楽器のひとつで、トーンレンジが広く、他の楽器とのブレンドも難しい。さらには、楽器とマイクの距離を等距離にするトランペットやサックスセクションの音のバランスも変わるとか・・・。きっと今では色々な経験とテクニックで解決されたことが、此の頃はまだ試行錯誤であったのかもしれない。
自分は録音に関しては素人だが、確かに、トロンボーンの好録音のアルバムを聴くと実に心地よく感じるのはこの楽器の特質が上手く再現されているということなのかもしれない。
結果は、当時の録音としては、各楽器のセパレーションが明確であるが、全体がオンマイクで録った割には多少エコーが掛かったようなホールトーンに包まれ、そのバランスがいいように感じる。
何と言っても、演奏を含めてアービーグリーンのスムースで甘いサウンドがオーケストラに上手く乗り、時には包み込まれて、最上のダンスミュージックに仕上がっているのが一番だ。その点では、素材の選び方も、アウトプットも、アルバムの制作主旨に照らし合わせてこのアービーグリーンのビッグバンドは最適だった様な気がする。
肝心な演奏は、メンバーも当時のニューヨークのスタジオミュージシャンの一流どころを集めた豪華版。スタンダード曲を並べ、前年のアルバムよりは、多少モダンなタッチは影を潜めているが、グリーンのトロンボーンは十分に満喫できる。
ペッパーアダムスにとっては年初めのスタジオワークで、2日間の内一日のセッションに参加しているが特にソロは無く下支えに徹している。前作ではソロパートもありアダムスの存在価値はあったように思うが、今回は声が掛かっての付き合い参加のようだ。
1. At Last M.Gordon-H.Warren 2:52
2. Prisoner of Love R.Columbo-C.Gaskill 3:27
3. Dream J.Mercer 3:00
4. I've Heard That Song Before J.Styne-S.Cahn 2:50
5. Moonlight Serenade Glenn Miller / Mitchell Parish 2:52
6. Stairway to the Stars M.Malneck / M.Parish 2:38
7. Let's Fall in Love H.Arlen / T.Koehler 2:39
8. My Silent Love E.Heyman / D.Suesse 2:44
9. My Melancholy Baby E.Burnett / G.Norton 2:12
10. I Had the Craziest Dream Gordon / Warren 2:25
11. I'm Getting Sentimental over You G.Bassman / N.Washington 2:45
12. I Can't Get Started V.Duke / I.Gershwin 3:02
Nick Travis, John Bello, Don Ferrara, Doc Severinsen (tp)
Urbie Green, Bobby Byrne (tb)
Gil Cohen (b-tb)
Hal McKusick (as),
Rolf Kuhn (as,cl),
Eddie Wasserman (fl,ts),
Pepper Adams (bs)
Dave McKenna (p),
Barry Galbraith (g)
Milt Hinton (b)
Don Lamond (d)
On half the tracks, Gene Allen (bar) and Nat Pierce (p) replaced Pepper Adams and Dave McKenna.
Produced by Enoch Light
Recording Engineer : Robert Fine
Reorded on February 1960 in New York
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