A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

最近「掘り出し物」にはとんとお目にかかれなくかったが・・・

2013-12-04 | PEPPER ADAMS
Message / Urbie Green Big Bnad

昔は、人に知られず人目に付かないところに知る人ぞ知るという「宝物」がたくさんあった。
ジャズのアルバムはもちろんのこと、食べ物屋であり、名産品であり、飲み屋であり、そして女性も偶然の出会いがたくさんあった。最近は何でもネットに情報が載る時代、簡単に情報を得て手に入れることができる。便利といえば便利だが味気ないものになった。

「宝物」を探してやっと手に入れた快感は格別である。そしてやっと探し当てたものが思っていた以上にいい出来栄えだと満足度は一段と上がる。まして人が見向きもしない中から見つけると。「掘り出し物」というと自分はこんなイメージだった。

最近では、何でもほとんどの物が規格品。全国どこへ行っても同じ店、同じ食べ物、そして女性も似たような雰囲気で変わり映えがしない。そして、いつの間にか掘り出し物というのは安く買える事の代名詞になっているようだ。

1959年2月の初旬、ペッパーアダムスは4日連続レコーディングをこなしたが、チャーリーミンガスのヘビーな演奏を求められたアルバム”Blues and Roots”に先立ち、2日3日の2日間はビッグバンドの一員としてレコーディングに参加した。

そのビッグバンドのリーダーはアービー・グリーン。

トロンボーン奏者として名前はよく聞く。スタジオワークが多く60年代、70年代にかけても色々なオーケストラのクレジットには必ずと言ってもいいほど名前を見かけた一人だ。
しかし、リーダーとしての活躍はというとすぐにはアルバムを思い出せない。自分も持ち合わせていなかったし、特に追っかけて聴き込んだ記憶もない。
アダムスの参加しているアルバムを追いかけていたら、たまたまこのアルバムに出会った。

58年から59年にかけてはビッグバンドの世界も大きく変化した時。ガレスピーも頑張っていたが解散した。スイングオーケストラからモダンビッグバンドへの変化の波が押し寄せたビッグバンドの世界、ベイシー、エリントンといった老舗のバンドも衣替えを図っていったし、ファーガソンやクインシーといった若手による新興ビッグバンドも生まれた頃だ。

前年1958年の秋にはベニー・グッドマンのオーケストラに加わって久々にスインギーな演奏に参加したアダムスであったが、このアービー・グリーンのビッグバンドも基本はスインギーなダンスミュージックオーケストラだ。
改めてアービー・グリーンのキャリアを追ってみると、ジーンクルーパーのグループに参加し、バッククレイトンのジャムセッションシリーズにも。そしてハーマンのサードハードとキャリアを積む。ベニー・グッドマンのビッグバンドにも在籍していた。
そこで50年代の後半、一度は自分のビッグバンドはという思いで自己のバンドを編成し、何枚かのアルバムを出している。

60年代に入るとトミードーシーオーケストラを引き継ぎ、ベイシーにも在籍した。基本はスイング時代の流れを組む綺麗なトーンのトロンボーンの第一人者だ。そして、その後はスタジオワークが多く長く現役で活躍していた。まだ健在のようだ。

この1958年2月のセッションが入っているアルバムを探したら、ちょうど1956-1959年のコンプリートアルバムがあったので早速購入したが、4枚のアルバムがパッケージされている。その4枚目がこの日のセッションだ。オリジナルのアルバムタイトルは“Message”。ところが、このアルバム録音は1959年だが世に出たのは1986年になってからとのこと。いわゆるお蔵入りになっていたアルバムだった。



駄作だったのかと多少気になりながらCDを聴き進むと、前作からこのアルバムのタイトル曲“Message”になると、突然雰囲気が変わる。
ライナーノーツを見ると、アレンジはアービー・グリーン自身が行っている。曲を見渡すと、ベイシーのワンオクロックやハーマンのアーリーオータムなどが入っている。そしてグリーンのオリジナルも。

アレンジのせいか、録音のせいか、はたまたプレーヤーのせいか、オーケストラの響きが前作までと異なる。アダムスのバリトンがアンサンブルの中の低音域を歯切れよく下支えしている。スイングオーケストラというよりは、明らかにモダンビッグバンドだ。周囲の変化に影響されたのか、グリーンも「自分だって」という気持ちで制作されたのかもしれない。

アンアンブルとソロのバランスも絶妙だ。アレンジもワンオクロックのお馴染みのリフをうまく料理している。曲毎に細かい配慮を随所に感じさせる。最後のアーリーオータムもお馴染みのアンサンブルはサックスではなくトロンボーンのアンサンブルで、アダムスのバリトンがソロを引き取り、キューンのクラリネットに繋げて締めくくる。全9曲があっと言う間に終わる。

単なるダンスバンドと思ったら大間違いだった。このアレンジだとアダムスを起用する意味合いも十分に理解できる。アダムスのソロでの出番も多い。
アダムスのおかげで、久々の「掘り出し物」に出会う事ができた。
ライナーノーツの最後も「便り(Message )が届くまで大分長い時間が掛かったが、待つ価値は十分にあった」と締めている。

当時ダンスオーケストラと甘いトロンボーンで人気を得てアルバムを出し続けていたグリーンだが、この豹変ぶりにメジャーレーベルは出し渋ってお蔵入りにしたのかもしれない。
訳アリでお蔵入りしている未リリース録音にも「掘り出し物」はまだまだありそうだ。

1. The Message        Urbie Green 3:23
2. I'm Confessin'       Dougherly-Reynolds-Neiburg 2:13
3. But Not For Me       George & Ira Gershwin 2:36
4. Goodnight My Love     Gordon-Revel 2:38
5. One O'Clock Jump      Basie-Durham 6:48
6. I'm Through With Love   Kahn-Malneck-Livingston 4:05
7. Whirlaway        Urbie Green 5:32
8. I'm In A Dancing Mood   Sigler-Goodhart-Hoffman 2:37
9. Early Autumn         Burns-Herman-Mercer 3:25

Urbie Green (tb,arr,)
John Carisi, Bernie Burt Collins, John Frosk, Irving "Marky" Markowitz (tp)
Eddie Bert, Billy Byers, Marshall hawk (tb)
Hal McKusick, Rolf Kuhn (as,cl)
Don Lanphere, Dick Hafer (ts)
Pepper Adams (bs)
John Bunch (p)
Barry Galbraith (g)
Teddy Kotick (b)
Nick Stabulas (d)

Recorded on February 2 & 3 1959, in New York




Complete 1956-1959 Recordings
Urbie Green
Lonehill Jazz Spain

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