大木昌の雑記帳

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貴乃花親方の理事解任―相撲協会・評議会の不公正な判断―

2018-01-07 08:47:00 | スポーツ
貴乃花親方の理事解任―相撲協会・評議会の不公正な判断―

2018年1月4日に開かれた、日本相撲協会の臨時評議員会で、貴乃花親方の理事解任が全会一致で決まりました。

この決定の問題については後に述べますが、一応、評議員会とはどんな組織なのかを確認しておきます。

委員会の構成は、全部で7人、うち外部委員が4名で内部(親方)委員が3名です。現在、議長は池坊保子(元文部
科学副大臣、引退前は公明党所属)、千家尊祐(出雲大社宮司)、小西彦衛(日本公認会計士協会監事)、海老沢勝
二(元日本放送協会会長)です。

そして、内部委員は、南忠晃(湊川親方 元小結 大徹)、佐藤忠博(大嶽親方 元十両 大竜)、竹内雅人(二子
山親方 元大関 雅山)の3名のです。

ただし、この委員会の議長や委員は、誰がどこで、どのような手続きで、どんな基準で選ばれたのかは、必ずしも明
らかでありません。

評議員会は、役員(理事 監事)の選任、解任の権限をもっている、公益財団法人日本相撲協会の最高決定機関とな
っています。今回の、貴乃花理事解任も、この権限を発動したことになります。

1月4日の臨時評議会では、委員7人のうち、海老沢氏と千家氏が欠席しており、評決は議長を除き4人で行われた
ことです(議長は、議決権は評決が半々の場合以外、ありません)。

海老沢氏の欠席理由は明らかではありませんが、12月の理事会の決定と、事前の報道などで、貴乃花理事の解任が
ほぼ既定路線となっていることが分かっていたので、海老沢氏は、出席をためらったのかもしれません。

また千家氏ですが、出雲大社の宮司という立場を考えれば、正月4日は現場を離れられないことは池坊議長も当然、
事前に分かっていたはずです。

史上、初めての理事解任という重要な問題を審議・決定するのですから、全員が出席できる日にちを設定すべきだっ
たと思います。池坊議長の日にち設定に疑問が残ります。

もし、二人が出席していて、それぞれの意見を言う機会があったら、評議会の雰囲気も審議も決定内容も変わってい
た可能性は十分にあります。

評議員会を急いだもう一つの理由は、1月14日の初場所までに、なんとか決着をつけてしまおう、という八角理事
長の意図があったのではないか、と推測されます。

私が納得できないのは、評議員でもない八角理事長と、協会ナンバー2の尾車親方(巡業部長)と高野危機管理委員
会委員長が同席していたことです。高野氏は、中間報告を書いた責任者ですから、評議会から質問を受ける可能性が
あるので、分かるとしても、八角理事長と尾車親方の同席は問題です。

内部委員の3人の親方は評議員としての経験も浅く、この二人の幹部の前ではとうてい自由に物が言える状況ではあ
りません。

実際、1月5日の上記テレビ番組で紹介された取材によれば、つまり、3人の内部委員のうち1人(テレビでは実名
は伏せてある)が、貴の花親方が提出した報告書にある、「12月巡業での診断書に関する部分は事実ですか」との
質問をしたそうです。

これは、貴の花親方が提出した報告書には、(貴の花または貴の岩)が一歩外に出れば報道陣に囲まれ病院にも行け
ず診断書が出せない、と理事会に説明したところ、八角理事長は「うなずき」、尾車親方は「わかった」、と言った
くだりを指しています。

この質問に激怒した八角理事長は声を荒げて「そんなこと言うわけないだろ。それだったら救急車を呼べばいいじゃ
ないか」と怒鳴ったということです。

その後、この委員は、シュンとなって何も言わなくなったようです。

以上はあくまでもテレビ局側の取材に基づくもので、事の真偽は分かりません。しかし、評議委員会の委員でもない
八角理事長とナンバー2が評議員会に同席すること自体(違法とはいわないまでも)やはり、異例のことで、もし、
そこで恫喝的な発言したとしたら、評議員会そのものの正当性にかかわる重大な問題です。

池坊議長は、貴の花理事会見の理由として、「巡業部長としての報告義務を怠ったこと」「その後協会の危機管理委
員会による事情聴取への協力要請を断り続け、理事として協会への忠実義務違反」を指摘しています。

また、会議後の記者会見で、八角理事長からの数回におよぶ電話にもかかわらず、まったく返信しなかったが、これ
は理事長という上司であり先輩に対して礼を欠いた行為である、と厳しく批判しました。

さらに池坊氏は、相撲道は『礼』に始まり『礼』も終わるのに、貴の花親方はこれを全く無視していた、という趣旨
の批判をし、そのうえで、「決議を厳粛に受け止め、真摯に反省し、今後は礼をもって行動してほしい、と厳しい批
判もしました。

池坊氏は、テレビの会見で「本当は日馬富士には引退してほしくなかった」と発言しています。下の者に暴行を加え
た調本人は礼を欠いていないとでもいうのでしょうか?

被害を受けた側を非難し、礼を欠いた加害者を露骨に擁護する、というのはたんに不公正であるだけでなく、池坊氏
個人の中で矛盾を感じないのでしょうか?

日馬富士は自ら引退したから、彼の罪はそれで帳消しになった、というのです。これほど、貴の岩や貴の花親方にた
いして礼を欠いた発言はありません。

日馬富士の引退は個人の判断ですが、理事会と評議員会は、刑事事件として有罪となった日馬富士の行為に対して、
当然、懲戒解雇を含む処罰の対象として審議すべきなのに、それをしていません。もはや、理事会も評議委員会もそ
の機能と責任を果たしていません。

実際、12月20に開かれた横綱審議委員会の臨時会合で、北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は会見で、日馬
富士の暴行について「引退を勧告するに相当する事案だ」と述べています。これが普通の感覚でしょう。

会議の中で、池坊氏は、貴乃花親方から提出された報告書を全員で読んだ、言っていましたが、全体で59分しかな
かった審議時間のなかで、15ページもある貴乃花親方の報告書を、本当に全部読んだのだろうか? 私は信じられ
ません。

昨年の理事会の際には、理事の一人から八角理事長に、この報告書についてどう扱うかについて問われて初めて触れ
ましたが、貴の花親方に「何かありますか」と聞いただけで、まともに審議の対象にはしませんでした。

おそらく、評議委員会でも同様に、事実上この報告書を無視したのではないかと思われます。

審議会後の記者会見で池坊氏は、記者に、質問などはでなかったのかという質問に、正面から答えず、高野危機管理
委員長の最終報告もよく読んだうえで総合的に判断したと言っていました。

しかし、出席者の一人は、この報告の中の3か所だけに付箋が付けられており、全部読まれたわけではない、と言っ
ています(テレビ朝日 上記の番組)。

恐らく、貴の花親方に不利な部分だけを読んだのでしょう。

しかも、貴の危機管理委員長は、12月の中間報告で「すぐ貴の岩が『すみません』と謝ればその先に行かなかった」
と、被害者を悪者するという、とんでもない報告を書いた人物です。

私が相撲協会に不信感をいだくのは、例えば、八角理事長が事件後に関係者を集めて訓話を行ったさい、日馬富士の
暴力事件を念頭に、「何気ないちょっとした気持ちでやった暴力」と発言していますが、これも日馬富士の露骨な擁
護の姿勢がありありで、大いに問題です。

つまり、八角理事長は、こんなことは深刻に考える暴力ではなく、「ちょっとした気持ちでやった暴力」で、ことさ
ら大げさに取り上げるべき問題ではない、と言っているのです。

池坊氏がもし、「礼」の重要性を強調するなら、審判の判定に不満を示したり、優勝後に観客に万歳三唱を求めたり、
貴の花親方が巡業部長なら巡業に参加しない、日馬富士も貴の岩も二人とも土俵に上げたい、などという越権行為的
発言が行われた時、直ちに問題にすべきだったのです。

事件の5日後にはこの件について知っていた八角理事長が、直ちに問題の解決に乗り出さず放置しておいたことが大
きな問題です。つまり、現執行部は暴力体質を根本的に改める気はほとんどないようです。

もし、スポーツ紙にすっぱ抜なれなければ、内々に、うやむやにしてしまおうとしたのではないか、と疑われてもし
かたありません。

ところで、貴の花理事解任に関して、『朝日新聞』は5日の「社説」で、協会側の不手際を指摘しながらも、全体と
しては、貴の花親方に対しては、池坊氏の論調と同じ批判に重点をおいています。

また、5日の『毎日新聞』も、報告義務違反と、聴取に応じなかったという理事としての忠実義務違反を前面に出し
ています。やはり、記者クラブメディアの限界でしょう。

多くの力士も親方も、今、体制側につこうか中立を通すか、あるいは貴の花親方につこうか、じっと事態の推移を見
ている、といったところです。どちらにしても、相撲という伝統に自己保身や自己利益などをめぐる政治的な要素が
持ち込まれ、一相撲ファンの私としては不愉快です。

ところで、メディアは「貴の花親方は、少しでもみんなの前で言いたいことを言うべきである」と言っています。

これは一見、しごく当然のように聞こえますが、私は必ずしもそうだとは思いません。

協会幹部、危機管理委員会、評議員会や、テレビや新聞などのメジャーなメディアはこぞって、貴の花親方に批判的
であり、話しベタな貴の花親方が話しても、良い結果は生まれない、と貴の親方は考えているのでしょう。

貴の花親方にとって、もっとも賢いのは、批判も処分もしたいだけさせておいて、いつかの時点で、弁護士を通して
法廷で一挙に反撃にでることを考えているのかも知れません。


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